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コロナ禍で発生した路上飲酒は「日本の文化」なのか?

路上飲みが大々的に日本に発生し始めたのはコロナ禍で種類の提供や飲み屋の営業時間が制限されていたのがきっかけと考えられます。こうしたなか、渋谷区が迷惑路上飲酒ゼロ宣言を行ったところ、テレビ番組に出演した「社会学者」の方が、「路上飲みは日本の文化みたいなもの」、「それを全部、排除というのはちょっと違う気がする」と述べたのだそうです。「路上飲みは日本の文化だ」――。正直、初めて聞きました。

日本に路上飲酒を禁止する法律はない

当ウェブサイトは極力、「自分自身の体験・経験を出発点とする話」や「~という気がする」、「~という印象がある」、といった「主観論」を中心とする話はできるだけやらないように努めているつもりですが、たまにはこの原則から少し外れた話をさせていただきたいと思います。

それが、「路上飲み」と「酔っ払い」です。

このうち「路上飲み」とは、読んで字のごとく、路上(道端)や公園など、「本来、酒を飲むことが想定されていない場所」で飲酒(や喫煙)などに及ぶ行為を指します。また、「酔っ払い」は、しこたま酒を飲んだためか、公道や通勤電車内などでフラフラになっている人のことを指します。

この「路上飲み」と「酔っ払い」、じつは似て非なる論点ではないか、というのが本稿の仮説です。議論の出発点は、ジャーナリストで翻訳家の猪瀬聖氏が約2年前に執筆した、こんな記事です。

「路上飲み」は日本固有の文化?

―――2021/05/01 17:58付 Yahoo!ニュースより

猪瀬氏は開口一番、こう指摘します。

新型コロナウイルス感染拡大防止のため飲食店での酒類の提供が制限されるなか、路上にたむろして酒を飲む『路上飲み』が問題になっている」。

2年前の5月頃といえば、まだコロナ禍の最中でしたが、記事を読めば当時を思い出すという方も多いでしょう。たしかに、当時は「路上飲み」が問題となっていました。

ただ、猪瀬氏は記事で、こうも指摘しています。

実は世界に目をやると、路上を含めた公共の場での飲酒を法律で禁止している国は多い。路上飲みをめぐって論争が起きるのは、海外からしばしば『酔っ払いに寛容すぎる』と指摘される日本ならではの現象とも言えそうだ」。

なかなかに、鋭い指摘です。

猪瀬氏によると、「海外から日本を訪れた観光客やビジネスマンが驚くことのひとつ」が、「路上や公園、駅、電車内などの公共の場で缶ビールや日本酒を飲んでいる人を見かけること」としつつ、日本で路上での飲酒が合法であることが外国メディアにも取り上げられたことがあると指摘します。

酔っ払いと路上飲みは似ているが別物

ただ、この2年前の記事を読んで改めて考えるに、日本国内ではたしかに、「酔っ払い」は見かけますが、公共の場で飲酒をしている人は、特殊な事例を除けば、あまり見かけませんでした(※過去形にしているのには理由がありますが、これについては後述します)。

このうち酔っ払いについては、著者自身の経験に照らせば(あるいは多くの人の報告例によれば)、夜の繁華街を少し歩けば、あるいは都会の電車に深夜に乗れば、発見することができるでしょう。酔っ払ってフラフラ歩いている人や大声で叫んでいる人、さらには公共の場でだらしなく寝ている人なども、昔からよく見かけます。

これなど、外国人から見れば、「日本は飲酒に寛容な国だ」、と映るようです。

しかし、それと同時にただ、(あくまでも想像ベースですが)これらの人たちは、すでにどこかの居酒屋などでしこたま飲んで帰る途中だったり、あるいは帰れなくなってしまったり、といったパターンではないかと思われるのですが、不思議なことに、彼らが路上でさらに酒を飲んでいるシーンは、あまり見かけません。

先ほども指摘したとおり、「酔っ払い」と「路上飲み」、一見すると「公共の場で酒に酔う」という意味ではよく似ているのですが、「酔っ払い」は日本全国で広範囲に観測される現象である一方、「路上飲み」については、あまり一般的ではなかったのではないでしょうか。

コロナ禍で一般化した路上飲み

祭りなどの際に、山車や神輿などを引きながら大人が飲酒をするシーンなどは、現代社会でもよく見られる風景でしょうが、この場合はそもそも自動車の通行を規制しているケースが多く、また、路上での飲酒が行われる時期も祭りの期間に限られることが一般的でしょう。

また、前世紀あたりだと、「東京六大学」の学生は東京六大学野球の期間、夜間に特定の公園などに集って飲んだりして周囲に迷惑をかけた経験を持つかもしれませんが(※こんな低レベルな行動、さすがに現在はなされていないと信じたいところです)、これもその「六大学野球」の時期に限定されたものです。

さらに、路上に立ち飲み店のようなものが立ち並ぶごく一部の繁華街では、屋外の立ち飲み店で瓶入りのビールなどを買い求め、そのままフラフラと歩きながら飲むという人たちがいるかもしれないこともまた間違いありません。

もちろん、公園や路上、電車などで安酒っぽいものを飲んでいる人はいますが、そういう行動をとる人たちは(まことに失礼ながら)社会の一部の属性に集中しており、ごく普通のサラリーマンが仕事帰りに歩きながら酒を飲む、というケースは一般的ではないように思えます。

(※ただし、『レタスクラブ』というウェブサイトにコロナ禍前の2019年3月5日付で掲載された『「気持ちは分かる!」 仕事の帰り道にお酒を飲んでいる人の意外な理由』によると、「帰宅ラッシュの時間になるとコンビニや路上、電車内でアルコール類を飲んでいるサラリーマンは少なくない」と記載されていますが…)。

ただ、こうした「例外」を別とすれば、想像するに、路上で飲酒をするという習慣は、日本ではあまり一般的でなかったのではないかと思います。つまり、「路上で酒を飲む」という行動と、「酒を飲んで公共の場でフラフラになる」という行動は、似てはいるものの、別のものではないか、という気がしてなりません。

こうしたなかで、渋谷区が先月30日、「迷惑路上飲酒ゼロ宣言」を行ったことが話題となっています。

渋谷路上飲酒ゼロへ 区宣言 区長「文化つくる」

―――2023/08/31 05:00付 読売新聞オンラインより

読売新聞の報道によると、今回の宣言は「深夜の騒音被害やゴミの散乱など悪質な路上飲酒をなくす」という取り組みだそうです。

記事によると、渋谷区の説明では路上飲酒が行われるようになったのはコロナ禍で飲食店の営業時間や酒類提供に制限がかかったことがきっかけであるとされていて、現在でも渋谷センター街などの路上で飲酒する人が日常的に見られるようになり、とりわけ「5類移行」後はその増加が激しいのだとか。

外国人も路上で酒を飲む:「本国では禁止されている」

渋谷区では条例で、ハロウィンや年末の時期などに、渋谷駅周辺での路上飲酒を禁止しているのだそうですが、読売新聞によると今回の取り組みは「地域住民からの苦情なども受け、平時から路上飲酒をなくす街を目指すことにした」ものであるとしています。

個人的には、今回の渋谷区の試みは高く評価できるにせよ、路上飲酒も路上喫煙と同じで、これも本来、地方自治体がではなく国が取り組むべき課題ではないかとも思います。そもそも日本では路上飲みがを禁じる法律がないからです。

ちなみにこれに関連し、こんな記事もあります。

渋谷で急増 外国人観光客らの“路上飲み” スラムダンク“聖地”鎌倉でも通報が急増 「オーバーツーリズム」への対応は?

―――2023.09.01 20:33付 よみうりテレビより

『日テレNEWS』などの報道によると、渋谷などの路上飲みは外国人なども積極的に行っているようであり、記事では渋谷区の今年6月の渋谷センター街における調査で、「外国人とみられる人の路上飲酒は日本人の約2倍にのぼる」、などと指摘されています。

まさに、オーバーツーリズムの弊害であり、観光公害そのものでしょう。

社会学者「路上飲みは日本の文化」

ただ、それよりも驚いたのは、この渋谷区の取り組みに対する、テレビのこんな反応です。

古市憲寿氏 渋谷区“迷惑路上飲酒ゼロ宣言”に「路上飲みは日本の文化…それを全部、排除というのは違う」

―――2023/09/04 12:04付 Yahoo!ニュースより【スポニチアネックス配信】

スポニチアネックスの記事によると、フジテレビの情報番組『めざまし8(エイト)』で4日、「社会学者」の方が「路上飲みは日本の文化みたいなもの」としたうえで、渋谷区の「迷惑路上飲酒ゼロ宣言」を「それを全部排除というのはちょっと違う気がします」と述べたのだそうです。

「路上飲みが日本の文化」、初めて聞きました。

先ほども指摘したとおり、特殊な事例では路上飲みをするという人がいることは間違いなく、また、それが白眼視されているフシもあるのですが、それを「日本の文化だ」などといわれても、ちょっと驚いてしまいますし、正直、こんな発言を放送するからテレビが廃れるのではないか、という気がしてなりません。

報道記事によれば、繁華街を抱える渋谷区で路上飲酒が問題になっている理由は、ゴミの問題点や深夜の騒音などであるとされますが、当然のことながら、歩行者が酔っ払って車道に飛び出す危険性も上昇しますし、酔っ払い同士のケンカの可能性だってあります。治安も悪化します。

この出演者の方が「社会学者」と名乗っておられるのだとしておも、いったい何を研究なさっているのか、よくわかりません。

いずれにせよ、路上飲酒や路上喫煙などの行動は、それ自体がたんに迷惑というだけでなく、危険でもあります。路上飲酒は騒音やごみの散乱に加え、治安の悪化や交通事故の増大などのリスクが、路上喫煙には副流煙の問題に加えて通行人が火傷を負うリスクなどが、それぞれ高まるのです。

いずれにせよ、たった2~3年で発生した路上飲酒という習慣(しかも本国で禁止されている外国人などがもたらした者)が「日本の文化」だとも思えませんし、百歩譲って仮にそれが「日本の文化」になろうとしているのだとしても、そんな文化は根絶した方が良いではないでしょうか?

新宿会計士:

View Comments (40)

  • お花見で酒を飲んで騒ぐのは日本の文化ですかね
    日本はアルコールにゆるすぎる
    アルコールは毒物です

  • 古市は,研究活動をしていないので,社会学者ではなく電波芸者と名乗ってほしい。

    • 古市に限らず日本の社会学者のほぼ全員が学術的と認められるレベルの研究なんてしていませんよ.

      何しろ日本の社会学界隈では学術論文は書かないのが常識だとされていますから.

      率直に言って日本において,社会学者と自称している連中に科研費どころか大学のポストなんて与える必要は皆無です.その分を理系(つまり理工医歯薬農学部系)で地道に研究しているポスドクたちが安心して研究に専念出来るようにするための安定したポストを増やし,科研費もそちらに与えれば宜しい.

      中学の理科レベルの基本知識さえ知らずにテレビや雑誌・新聞・与太本で好き勝手なデタラメを述べ捨て社会に害悪を垂れ流して風評被害などを引き起こしている宮台や古市ら自称社会学者は,電波芸者でも雑誌や新聞などへの売文業でもやって好き勝手に暮らせば良いのであって,こいつらに税金から給料(国公立大の教員は言うまでもなく私大の教員も私学助成金から大半が出ている)や研究費を与える必要はゼロです.

  • 日本の政治は、様々な思惑で、与党も野党もこぞって外国人を我が国に定着させようと躍起になっています。
    我が国の文化、伝統を尊重する人だけが来るのであればいいのですが、川口のように自分らのルールを持ち込むような者が、日本と自国の都合の良い部分だけを利用するようになれば、日本人だから成り立っていたものなどあっという間に破壊されてしまうことでしょう。

    日本が屋外での飲酒に寛容なのは、日本人が民度が高く、禁止しなくても問題を起こさないというのもあるでしょうが、そもそも日本人がアルコールに弱く、酩酊するほど飲める人が少ないので、問題が発生し辛いのも要因でしょう。
    そうした日本人の特性で成り立っていた状態は、外国人を受け入れることによって維持できなくなっていくのではないでしょうか。

  • 路上飲みはいいんだが、かつてはオレも運転免許を所持していた。残念ながら脳出血で倒れてからは、運転が許されていない。酒を飲むと酩酊状態になり、要らぬ交通事故を引き起こす。どんな状況でも運転手には前方不注意や側方不注意、後方不注意が課せられてしまう。オレの住む小田原では、バスの運転手が定年前でバスの死角から横切った歩行者が曳かれてしまった。歩道橋も横断歩道もない普通なら飛び出しはないだろう場所での事故で逮捕されたのだ。当時話題にはなったな。会社が補償したのか、状況酌量されたかはわからないが、気の毒な事故だったなぁ。退職金だって貰えたかどうか?今運転はできないけど、人様を死なせたり、傷つけないリスクがないとあきらめてはいる。

  • 私自身はアルコールを一切飲まないので、コメントし辛いですが……
    なんでわざわざ外で飲むのか?がとても疑問です。

    家に帰るまで待てないのだろうか?家に帰りたくない事情がある?
    それとも酔った状態でブラブラしたい?

    う~ん、酒飲みじゃないとわからないのかな、この気持ちは。

  • 深夜電車にのると、ビールだか発砲酒のカンが捨てられてて、電車の動きにあわせて、カラカラとあちこちに転げ回ってたりしてました♪

    お酒を飲む人の大半は節度を持って楽しんでると思うけど、ポイ捨てとか、大声で騒いでたり、関係ない人に絡んでたりするのをみると、酔って公共の場に出ること自体を禁止して欲しいと思うこともあるのです♪

  • 社会学者…
    思いつきで仕事になり金になる気楽な商売
    嘘まるけ
    東大以外では歯牙にもかからない教養学士を他大学の学士にする時に往々にして用いられる社会学士
    クイズ学士や大喜利学士と大差無し
    進路としてマナー講師や文化人になる者多数

  • >路上飲酒は日本の文化
    勝手に記憶を書き替えないでほしい。花見やBBQで飲むことはあったが、路上は普通しない。
    マスクはコロナ以前からのエチケットとか言ってた奴もいたような。

  •  例えば、どこぞの銃社会国家では所持者が泥酔した際は即危険物に早変わりですし、屋外が極寒でウォッカを飲んで凍死するような国もありますし、そもそも飲酒が禁忌な国も。日本ではそれらのリスクや障壁が少ないというのはあるでしょう。その違いを持って日本では路上飲酒が比較的容易とは言えるかもしれませんが……

     「社会学者って名乗る輩がロクなこと言わない」のは日本文化かもしれませんね。

    •  あ、そういえば地元の酒蔵らでは「飲み歩き」イベントをやっていました。徒歩圏の近隣の酒蔵数件や飲み屋で提携し、手軽な料金でそれぞれの飲み比べや一品料理を楽しめるというもの。
       ……つまりこういったイベントは「根付いた文化ではなく非日常的で特別な提案」として開催されたわけです。性質上危険が予想されるので、安全面に様々な対処をしながら。
       「日本の文化」ですかねぇこれ……

  • 「路上呑みは日本の文化」とは初めて聞きました。お花見シーズンには路上にまでゴザ(今時はブルーシート)を広げて呑めや歌えの宴会をやる方々は見かけますが、普段の日常生活において路上で酒を呑むのはあまり見たことがありません。自称社会学者さんはハレの日の宴会か何かと混同しているのではないでしょうか。

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