泉健太・立憲民主党代表が16日、奈良市内で会見し、日本維新の会を巡って「次第に維新の政治のほころびも見えてきている」などとしたうえで、「立民は野党第1党どころか、政権交代を目指して議席を伸ばしていくので(維新が第1党になる)想定はない」と述べたそうです。いったいどこの世界の話でしょうか?短期的に見て、立憲民主党が議席を大きく伸ばす要因は見当たらないからです。
例の支離滅裂なコメント
『岸田自民体制を必死に擁護する支離滅裂な読者コメント』では、先日の当ウェブサイトの記事に付いた、かなり支離滅裂な読者コメントなどを紹介しつつ、岸田文雄・現首相が率いる自民党が、候補者公募に関する説明責任すらマトモに果たしていないのではないか、との懸念を指摘しました。
先日、大阪自民で支部長の更迭と候補者の公募がなされるとする件に関し、「惜敗率が低いはずの岸田派の候補2名が更迭されなかった」とする話題を取り上げたところ、当ウェブサイトには「前回衆院選での惜敗率は2年『も』前の数値」だ、などとして、岸田体制を必死に擁護する支離滅裂なコメントが寄せられました。よっぽど図星を突かれたのでしょう。こうしたなか、この「惜敗率逆転」に関する続報もあったようです。大阪自民の公募状況以前の『小選挙区と比例代表の票差に着目:数字で見る選挙協力』の冒頭では、こんな図表を紹介し... 岸田自民体制を必死に擁護する支離滅裂な読者コメント - 新宿会計士の政治経済評論 |
この「支離滅裂なコメント」とは、当ウェブサイトで引用した2021年衆院選における「惜敗率」が「2年『も』前の数値」だとしたうえで、「2年前の健康診断と直近の医師の診察で、いったいどちらが現在の健康状態を正確に把握できるか、という話だ」、などと主張するものです。
「2年『も』前」といわれても、正直、困ってしまいます。直近、衆議院議員総選挙が行われたのは、その「2年『も』前」の話だからです。
また、このコメント主は「2年『も』前の惜敗率」に代替し得る「直近の医師の診察」とやらに関する数値を一切示していないのですが、その後も、「大阪の候補者公募に関する具体的な判断基準は示されていない」とする報道も出ているほどです。
大阪自民はどこへ…異例の支部長“更迭” 本部の「断行」にくすぶる不満 「血を流す」覚悟で臨む刷新の行方は
―――2023/07/15 17:32付 Yahoo!ニュースより【FNNプライムオンライン配信】
ボーダー選挙区が多数
こうした支離滅裂かつ低レベルなコメントはとりあえず脇に置くとして、自民党の選挙調整に関する説明責任のなさは、これは「氷山の一角」のようなものでしょう。
たとえば、すでに東京都では公明党が自民党の候補者を推薦しないとする話題を筆頭に、自民党が次回の総選挙で票を減らす可能性が出てきていますが、これも岸田・茂木体制の実務能力を示すもののひとつといえるかもしれません。
懸念は、それだけではありません。
先日の『青木率50%超えも…「維新リスク」依然残る岸田自民』などを含め、これまでに何度となく触れてきましたが、最大政党である自民党と第2党(最大野党)である立憲民主党には、それぞれ2位の候補者との得票差が2万票以下であるという「ボーダー議員」が、合計99人所属しています。
岸田内閣の「青木率」は、時事通信の7月の調査においても、依然として50%を上回っています。内閣支持率は落ちたものの、自民党に対する政党支持率は、意外なほどに底堅いからです。ただ、なぜ内閣支持率が低下したのかに関する「本当の理由」に、既存メディアが頑なに触れようとしないのは不思議です。そして、自民党(と立憲民主党)にとっての本当のリスクは、立憲民主党からの大量移籍とボーダー選挙区での大量当選というシナリオでしょう。支持率調査≒藪医者の健康診断当ウェブサイトで不定期に取り上げる話題のひとつが、内閣支... 青木率50%超えも…「維新リスク」依然残る岸田自民 - 新宿会計士の政治経済評論 |
これらの候補者が引き続き、自民党、立憲民主党に所属し続けている限り、たとえば日本維新の会が自民、立民両党に代わって大躍進する、という可能性は、さほど高くありませんでした。
しかし、岸田首相が6月の衆院解散を見送ったことで、前提条件が大きく変わり始めています。
当ウェブサイトの試算だと、維新が全国289選挙区のうち180選挙区程度で候補者の擁立に成功し、各選挙区で自民党と立憲民主党の量候補者から一律で1~2万票程度が維新候補者に移ったとしたら、自民党の過半数割れ、立憲民主党の最大野党からの転落も、現実のものとなり得ます。
秋口に解散総選挙が行われた場合の議席イメージ
- 自民…262議席→230議席
- 立民…*97議席→*80議席
- 維新…*41議席→*90議席
(【条件】維新が全国289選挙区のうち180選挙区で候補を立て、2021年選挙時と比べ、自民、立民両党の候補者から1~2万票ずつを奪った場合のイメージ。獲得議席数は比例代表を含む)
立憲民主党は離党ラッシュで瓦解かこの期に及んで、自民党幹部らは支持率低下の理由を勘違いしているようです。LGBT法、増税、日韓通貨スワップなど、現在の自民党(というよりも宏池会政権)が有権者(とりわけ岩盤保守層)の期待を裏切り続けているという点から目を背けたところで、最適な処方箋が出て来るはずなどありません。衆院選が秋口以降にずれ込む場合、自民党が下野する可能性は低いにせよ、日本維新の会が90~100議席を獲得して最大野党となるというシナリオは現実のものとなりつつあります。政権交代が生じる条件は「... 衆院選秋口実施なら維新は100議席の大台もあり得る - 新宿会計士の政治経済評論 |
しかも、このシナリオは、自民、立憲民主両党からの離党ラッシュが生じないとする前提を置いています。
現実には、過去の選挙では、「沈みゆく選挙互助会」から「新たに浮上しつつある選挙互助会」に候補者が移籍する、といった現象も生じています。この「大量移籍」の影響について、現時点で正確に予想するのは困難ですが、選挙が近づけばおもに立憲民主党の党内で浮き足立つ動きが出て来るでしょう。
立憲民主党の代表は「政権交代」
もっとも、「当事者」は、そうは考えていないようです。
立民・泉氏が維新批判「ほころび見えている」
―――2023/7/16 18:03付 産経ニュースより
産経ニュースの報道によると、泉健太・立憲民主党代表は16日、奈良市内で記者団に対し、「次第に維新の政治のほころびも見えて来ている」、などとしつつ、維新が野党第1党になる可能性について次のように述べたのだそうです。
「立民は野党第1党どころか、政権交代を目指して議席を伸ばしていくので(維新が第1党になる)想定はない」。
はて?
泉氏は、いったいどこの世界の話をなさっているのでしょうか?頭の中に「?」マークがたくさん浮かびます。思わず小一時間ほど、考え込んでしまいました。
もちろん、日本維新の会が公表している政策のなかには、専門的な視点からはツッコミどころが多い項目もあるでしょうが、だからといって、立憲民主党が短期的に議席を伸ばしていく要因も見当たりません。
「小西問題」、すなわち同党に所属する小西洋之・参議院議員が「総務省の内部文書」と称するものをもとに、高市早苗・経済安保特命相を追及したり、衆院憲法審査会メンバーを「サル・蛮族」などと罵ったり、報道機関に圧力を掛けたりした問題などは、その典型例でしょう。
もちろん、自民党の側も「LGBT/財務省/韓国」の3点セットで、岩盤保守層を敵に回している可能性が濃厚ではありますが、「票が逃げる」可能性が高いのは、どちらかといえば立憲民主党の方でしょう。
(※余談ですが、著者自身は、次回衆院選では「維新タナボタ効果」で自民党はむしろ議席を増やす可能性もあると考えています。)
政権交代の前に150議席は?
そういえば、泉氏は次回衆院選での立憲民主党の勢力が150議席を下回った場合、代表を辞任すると述べていましたが(『辞任宣言?立民・泉氏「150議席下回ると代表辞任」』等参照)、政権交代以前に、まずは現在の状況でどうやって150議席を達成するのかが、いまひとつ見えてきません。
立憲民主党の泉健太代表が10日の両院議員懇談会で、次回衆院選で獲得議席が150を下回った場合に代表を辞任する考えを示したそうです。現在の97議席を死守するのも難しいと考えられる中で、えらく野心的な目標を掲げたものです。というよりも、背水の陣を装った、事実上の辞任宣言とみる方が正解でしょうか。「泉健太・新代表に期待する!」=2021年時点立憲民主党は2021年10月の衆議院議員総選挙で、109議席だった公示前勢力が96議席へと一気に13議席も減少。当時の枝野幸男代表がその責任を取るかたちで退き、泉健太氏が代表選を制し... 辞任宣言?立民・泉氏「150議席下回ると代表辞任」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
これに関連し、産経ニュースによれば、泉氏自身は衆院解散・総選挙の時期を巡って、「この秋の(臨時)国会の冒頭」、つまり10月22日や29日はあり得るとの考え方に立って党内準備を行っていると説明。
「政府のマイナンバーカードを巡るトラブルを挙げ、『何も見直さずに強行するということであれば当然、争点になってくる』と指摘した」、などと記載されていますが、そもそも政権支持率が低下している要因が「マイナンバーカード一択」というのも理解に苦しむところです。
すでにいくつかのメディアの調査では、日本維新の会は立憲民主党を政党支持率で追い抜いています(ただし自民党に対する支持率は、相変わらず高止まりしていますが)。
日本維新の会が立憲民主党を議席で追い抜くかどうかは、次の選挙における争点のひとつであることは間違いないと思うのですが、いかがでしょうか?
View Comments (19)
立民の足を引っ張る、他党ディスカウント方式って、本気で政権取るつもりならやりませんよね。ホント相変わらずと言うか何と言うか。
所詮、人は他人の欠点はよく見えるが、自分の欠点には気がつかない、ということでしょうか。
(※余談ですが、著者自身は、次回衆院選では「維新タナボタ効果」で自民党はむしろ議席を増やす可能性もあると考えています。)
↑
うん、今の自民の支持率見るとあり得ないと思いますが一意見として受け入れます。
>立民は野党第1党どころか、政権交代を目指して議席を伸ばしていくので(維新が第1党になる)想定はない
記者の前で冷静な分析を披露する必要はないものの、言葉の選び方が。これだと最悪を想定しないヤバいリーダーじゃないですか。
実際、選択肢無い無い尽くしで現実を見ずに突っ走る以外に無いでしょうから、ホンネでそう言ってても不思議ではない・・・
いや、選択肢はあったと思いますけどね。
東北の亡霊が泉おろしを始めてるようですが、泉氏も願ったりじゃないのと思います。早く総選挙したかったりして。
DEEPBLUE より:
2023/07/16 19:17 19:17
メディア調査で30%ですから、実際はもっと下がってるんでしょうねえ。まあ言ってる事と真逆の事しかやってないから当然か
↑
私はこの方に同意ですかね
自民は秋にやれば、議席を減らすと思いますよ普通に
民主党政権はもう起こらないと有権者も楽観視してますので、自民に優雅にお灸を据えられます。
僕も、肌感覚として、そんな気がしますね。
安倍と菅義偉の8年間、国政選挙では自民党が圧勝を続けました。
同じことを別の言い方をするならば、野党は惨敗を続けました。
普通に考えたら、それが民意ですわな。
特に野党第一党は、惨敗の度に責任者が辞任するのが最低ラインの責任の取り方ですが、知らん顔してますね。
そんなんだから、負けた理由の総括と反省と、次の政策提言へのフィードバックが、組織としてまったくできてないのです。
でも、それは与党自民党が積極的に支持されてることを意味しません。
前フリが長くなりましたが、与党の圧勝は、
①安倍と菅義偉のおかげ
②野党がマヌケ過ぎた
①は、すでにアドバンテージ消滅。
②は、相対的にマシな野党が台頭してきたことで解消されつつあり。
ある程度安心して
「与党にお灸を据える」
ことができる流れですから、維新や国民はなんにも提言しなくても、その立ち位置だけでチーンジャラジャラと出玉ザクザクなポジションに居てると思います。
全く同意です。
反自民というより、反KMHなんですよ。
(K岸田M茂木H林)
多分、今頃、泉健太は国民民主を脱退したことを死ぬほど悔やんでいるでしょう。
枝野が作った、一見、そうとは見えなさそうな実は大きな泥船に移ってしまった。
そして泥船の船長にもなってしまった。自業自得ですね。
潔く泥船と共に沈んだらあっぱれで、尊敬しますが。
また、維新にでも移ろうとしそうな気が・・。
泉氏は、引責辞任ポイントをせっせと稼いでいるのでしょう。
やっていることは無能リーダーにしか見えませんが。旧民主党からのお歴々はどいつもこいつも無能どころか悪意や売国すら感じられる人間ばかりで、その中にあって泉氏は今のところ悪意や反日は感じられません。お若いことですし、すっかり掃き溜めの呪縛から解放されたっぽい玉木党首のように、豹変する可能性はまだあるかもしれません。
まぁ無くても別に良いけど。
無理だと思います。
2009年の政権交代時は、民主党の支持率が自民を抜いて30%台ぐらいありました
リーマンショック後の景気対策で、麻生政権が壮大に失敗して円高不況になってたのと、
左翼マスゴミが麻生・自民叩きに奔走し、それに成功していたからです
2012年の政権交代時も、それと同じ様に自民党の勢いが復活していました
政権交代を起こすのは、それぐらいの勢いが無いとダメだという訳です
政党支持率 (2023.7 NHK)
自民党 34.2
維新 5.6
立憲 5.2
「立憲が政権の座を奪う」という賭けは、実現不可能なので賭けの成立すらしませんね
泉氏はおそらく立憲党首なんていう、損しか無い貧乏神みたいな役職を早く辞めたいんでしょう
余談になりますが、麻生政権が明確に経済失政していたので、左翼マスゴミも工作に成功したのです
安倍政権も同じ様にメディアリンチに遭いましたが、8年も政権保持出来た事で、
麻生政権の経済失政と、アベノミクスの一応の成功(増税などあって大成功では無いが)が、
証明できると思います。そして国民の投票行動の理由の第一が、
経済政策と景気であるという事も妥当だと思います
訂正
立憲 5.2 → 5.1
> 維新にほころび・立民は議席を伸ばしていく
これは逆ですね。維新が今後順調に伸びていくかどうかは分かりませんが、ほころびているのは立民です。ほころびと言うより裂けているのではないでしょうか。
既に他の方々も指摘していますが、やはり泉代表の本音は「早く代表辞めたい!」かと。
それプラス支持者やスポンサーに向けて
「もう駄目です、維新に負ける確率大です。政権交代?まだ信じてるの?」などと
”正直”に言う訳にはいかないのも当たり前なので、彼の今の立場では当たり前の発言かと。