自称元徴用工問題を巡る「解決策」が、さっそく、暗礁に乗り上げる可能性が出てきました。韓国の地裁が「日帝強制動員被害者支援財団」なる財団の供託申請を受理しないとする決定を、相次いで下しているからです。その理由はさまざまですが、なかでも問題になりそうなのが、韓国民法第469条第1項の「当事者が第三者弁済を許可しないとき」の解釈で、この問題次第では、自称元徴用工問題自体があらたな展開を迎えるかもしれません。
キシダの不誠実さ、実務能力の低さの証拠
韓国政府が今年3月に打ち出した自称元徴用工問題の「解決策」とは、政府傘下の「日帝強制動員被害者支援財団」がポスコなど韓国企業を中心とする寄付金を財源にして、裁判で勝った自称元徴用工らにカネを支払う、などとするものです。
正直、自称元徴用工問題自体が韓国側による日本を貶めるための悪質な虚偽であるという点に加え、2018年10月と11月の韓国大法院の判決が国際法違反であるという事実を踏まえておくならば、この「解決策」では解決になっていないことは明らかです。
その意味で、岸田文雄首相の対韓外交も、首相失格です。韓国のこの「解決策」を「評価する」などと述べてしまい、日韓シャトル外交の復活、韓国の(旧)ホワイト国への復帰、2018年12月の火器管制(FC)レーダー照射事件不問、日韓通貨スワップ復活などの対韓譲歩を矢継ぎ早に決めてしまったからです。
それに、依然として係属中の自称元徴用工訴訟も多数あること、韓国は政権が変われば必ず約束を破る国であることなども考えると、この「解決策」、早ければ数年内も経たずに破綻することは明らかです。
ただ、とくに韓国の約束破りの可能性を巡って、岸田首相は3月6日の会見で、こう述べています。
「仮定に基づいた御質問にはお答えいたしません。先ほど申し上げました、こうした措置を評価するとともに、日韓関係が前に進んでいくことを期待する、そのために意思疎通を引き続き続けていく、それに尽きると思っています」(首相官邸ウェブサイト・3月6日付『旧朝鮮半島出身労働者問題についての会見』より)。
「仮定の質問には答えない」。
これは、痛いところを突かれて逃げるという意味において、岸田首相の不誠実さに加え、実務能力の著しい低さを示す象徴的な発言と言わざるを得ませんが、それと同時にどうして自民党内で「岸田おろし」の動きが出ないのか、どうして野党がこの岸田ディールを国会で追及しないのかが不思議でなりません。
韓国民法第469条とは?
それはともかくとして、韓国政府が自信満々に打ち出してきたこの「解決」策に、さっそく、障壁が出現したようです。昨日の『供託不受理は徴用工合意を岸田政権ごと吹き飛ばすのか』でも取り上げたとおり、財団からの供託を認めないとする判断を下し始めたのです。
ほんの少しだけ、光明が見えてきたのかもしれません。自称元徴用工問題で韓国の裁判所が財団による供託を拒否したのです。これだけではまだ先行きはよくわかりませんが、もしもこの「供託拒否」が勢いとなり、自称元徴用工側が日本企業の金銭債権あたりを差し押さえてくれれば、今年3月の「岸田ディール」自体が岸田文雄政権を巻き込んであっけなく瓦解するかもしれないからです。岸田「仮定の質問には答えません」自称元徴用工問題を巡る「岸田ディール」とは、2018年10月、11月の大法院判決で損害賠償を勝ち取った自称元徴用工(や... 供託不受理は徴用工合意を岸田政権ごと吹き飛ばすのか - 新宿会計士の政治経済評論 |
韓国民法第469条第1項の規定によれば、いわゆる「第三者弁済」においては、「当事者の意思表示」がある場合、第三者の弁済を拒否することができると定められています。
大韓民国民法第469条
①債務の弁済は、第三者もすることができる。ただし、債務の性質又は当事者の意思表示で第三者の弁済を許可しないときは、この限りでない。
②利害関係のない第三者は、債務者の意思に反して弁済することができない。
韓国メディアなどの報道によれば、韓国の裁判所はこの規定を根拠に、財団が資金を供託しようとしている相手のひとり(存命中の自称元徴用工)が財団からの弁済を拒否する意向を明らかにしているとして、供託を不受理としたようなのです。
ほかの3件も不受理か
これに、こんな「続報」がありました。
韓国地裁 徴用賠償金供託の不受理続く
―――2023.07.05 19:40付 聯合ニュース日本語版より
強制徴用第三者弁済供託、裁判所で相次ぎブレーキ…韓国外交部「類例ないこと」
―――2023.07.06 07:21付 中央日報日本語版より
韓国メディア『聯合ニュース』、『中央日報』(いずれも日本語版)の報道をまとめると、今回の4件(存命の2人と遺族の2人)に関する供託がいずれも受理されなかったそうです。
具体的には、▼韓国民法第469条第1項を援用して不受理(生存の自称元徴用工、光州地裁)、▼書類不備(生存の自称元徴用工、光州地裁)、▼書類不備(自称元徴用工の遺族、全州地裁)、▼その他(自称元徴用工の遺族、水原地裁)――、などだそうです。
これについて中央日報の記事では、主務官庁である外交部は「類例がないことで承服しがたい」などとしたうえで、ただちに異議手続に着手したそうですが、このうち光州地裁の供託官はその異議申し立てを受け入れず、結局、裁判所の審理を通じて供託の可否が争われるようです。
まさに、泥仕合そのものでしょう。
金銭債権に手を出してはいかが?
さて、ここから先はあくまでも個人的な見解ですが、この自称元徴用工問題、もしも供託問題が長引くようであれば、韓国政府としてはおそらく日本側に助け船を求めて来るでしょう。要するに、この4人に対してのみ、日本政府または日本企業が直接、損害賠償に応じてほしい、といった依頼です。
そして、「韓国に3度騙された岸田首相」のことですので、こうした要求に応じてしまう可能性が濃厚です。
このような展開は、岸田文雄氏が2021年10月4日、菅義偉総理大臣の後継者として首相に就任した時から、ある程度は読めていたものではありますが、その展開の速さには改めて驚きます。
もっとも、日本にとって救いがあるとしたら、日本国民は岸田首相が考えているほどは愚かではないことと、韓国側が想定以上に強欲であることの2点でしょう。
とくに後者に関していえば、韓国側の強欲が行き過ぎれば、自称元徴用工側の代理人は、三菱重工・日本製鉄(あるいはそれらの子会社)が韓国国内の企業に対して保有している金銭債権(売掛債権など)の差し押さえを決断するかもしれません。
自称元徴用工らはこれまで、知的財産権(特許権や商標権)だの、非上場株式だのといった具合に、わざと「換金が難しい資産」ばかりを選んで差し押さえをしていたフシがあるのですが、もしも金銭債権に手を出したら、その瞬間、日本企業に「不当な不利益」が生じたことになってしまいます。
河野太郎・現内閣府特命担当大臣は安倍総理の下で外相を務めていたころ、日本企業に「不当な不利益」が生じた場合、韓国に何らかの「対抗措置」を講じると言明していましたが、岸田首相が安倍、菅両総理の後継者である以上、この河野発言は現在でも有効でなければなりません。
ただし、この場合は自称元徴用工らが韓国国内において、「せっかく改善の兆しが生じた韓日関係を破壊した」、などとする非難を受けることにもつながりかねないため、彼らがどういう行動を取るかについては、まだよくわかりません。
ここから先は国内問題:日本国民の賢明さに期待
いずれにせよ、岸田首相という「愚か者」が拙速に打ち出した「日韓関係改善策」は、そのスタート地点から綻びが出始めたということでもあります。ここから先は、日本の国内問題です。
もしも自民党議員らがマトモに判断できるのであれば、これ以上、岸田文雄氏に首相として日本のかじ取りをやらせるかどうかは微妙でしょうし、遅くとも来年9月の総裁選でその結果が判明します。
あるいはその総裁選の前に、岸田首相が衆院解散を選択したならば、今度は私たち有権者が、岸田首相(やその出身母体である自民党)の「LGBT」「財務省」「韓国」などの行動に対し、どういう判断を下すかが問われそうです。
もちろん、事態はそこまで単純ではありません。今朝の『立憲民主党幹事長「共産党との候補者調整を徹底追求」』でも説明したとおり、日本維新の会などが十分な数の候補者を立てることに失敗し、立憲民主党にも逆風が吹けば、自民党は難なく政権を維持すると考えられるからです。
とくに、小選挙区の場合、自民党に多少の逆風が吹いたとしても、立憲民主党にそれ以上の逆風が吹き、中途半端に「維新旋風」が吹けば、例の「維新タナボタ効果」によって自民党はむしろ議席を増やすかもしれません。
ただ、タイミング次第で、ちょうどその総選挙の時期にあわせて自称元徴用工問題が火を吹けば、また違った展開もあり得るでしょう。
なにより、日本の有権者は賢明です。
よく「国民のレベル以上の政府は出現しない」などといわれますが、現在の日本は、政府とマスコミが「国民のレベルに満たない」ことが最大の問題なのであって、これについては政治の側が国民のレベルに追いついてくるのを待つしかありません。
岸田政権禍も、こうした「政治が国民に合わせてレベルアップする過程で一時的に出て来た作業くず」のようなものといえるのかもしれません。
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どうするキシダ
この支援団体の供託金が成立しようがしまいが日本に関与するところではないのではないでしょうか。
韓国が勝手に解決策と蒸し返しているだけで、べつに日本側から提案した訳でもなし、解決済みの立場を崩す必要はありません。逆に立て替えたんだからと無理やり恩を着せようとした茶番が潰れたと見ればざまぁないぜと拍手したいところです。
私もそう思います。
1965年合意ですべて解決済み。
これは韓国の国内問題。
同意。
Red Line を超えてこない限り、日本としては見物気分でよいと思う。
大韓民国民法第469条第1項中「当事者の意思表示で第三者の弁済を許可しないとき」の『当事者』が「債権者」を意味するのであれば、条文自体が「債権者の意思表示で第三者の弁済を許可しないとき」となっている筈であり、『当事者』が「債権者または債務者のいずれか一方」を意味するのであれば、同条第2項は不要な規定になります。
したがって、『当事者』は「債権者および債務者の両方」と解釈するのが自然であり、日本民法第474条第4項の『当事者』と同じ解釈になると思います。
本件に当てはめれば、債権者(自称元徴用工)は第三者(財団)の弁済を許可していませんが、債務者(日本企業)は第三者(財団)の弁済を許可しないと意思表示した訳ではありませんので、大韓民国民法第469条第1項の「当事者(債権者および債務者の両方)の意思表示で第三者の弁済を許可しないとき」には該当せず、供託は有効であるという結論になると思いますが、K法学は時としてアクロバチックな解釈をしますので、裁判でどのような結論が出されるのか、楽しみで仕方がありません。
もうリタイヤ年齢の知人とチャットをしていて、日本人が求めているのは機能としての国家であって、立派(過ぎる)政庁建築とかにはまるで意味も魅力も見出していないという発言がありました。ロシアや大陸を見てください。なるほどと感じました。
サイト主どののおっしゃるように、この国の不幸は、政治や官庁各種報道機関の実力が、国民の平均レベルに達していないことでしょう。ポンコツ呼ばわり後進国呼ばわりされても仕方ないですね。
政権が苦しくなるか左派に変わればまた新たな賠償判決が出て、外交ルートに乗せてきてワチャワチャするんでしょうな。
解決してりゃその心配もなかったんでしょうが。
解決策でもないのにご褒美なんかあげちゃいけない。
人工知能の中の人さんが書かれているように、私も韓国の国内問題だと思うようになりました。
いくら韓国内で揉めようが日本は関係ありません。
ただ、懸念する点が2点あります。
1.韓国内で揉めにもめて、現金化された場合の対応
それこそ匿名さんの仰る「どうするキシダ」です。
(ただ、この可能性はほぼないと思います)
2.韓国に岸田は更なるご褒美をあげる
ただでさえ、分不相応な褒美を上げているのに、「うまくやってね」とか「現金化しないでね」とかを言い訳に、いや、むしろ自分からへりくだって、あれやこれや便宜を更に図りそうです。
3.単純に鬱陶しい
難癖が鬱陶しいです。
3点になってしまいましたw
まぁ、根本的な大法院の判決をそのまま解決せずに、見せかけの解決策を取るからこういうことになる、と言う教訓ですね。
何回もコメントしますが、キシダ言わんこっちゃない。必ず尹大統領はキシダにオネダリして来ますよ。全て1965年日韓協定が全てで日本は譲歩するな。2018年韓国大法院判決を認めた第三者基金からの支払では解決成らない、と散々言われながら、尹大統領を信じるだけで進めたキシダの罪重い。4日プライムニュースに久し振りに鈴置・真田両氏のぶれない発言を支持します。韓国を今回の件でも、絶対に信用しないと言い切った鈴置さん。尹大統領が国内を如何に納めて行けるか、乞うご期待します。キシダ手を貸したら国民はもう黙っていませんよ。
韓国の現大統領が、法律にはプロフェッショナルであるべき検察出身というところに、この国のどうしようもなさが顕われているように思います。前任のおバカ大統領が、おおよそ実態とかけ離れた「三権分立」なる、高度の民主主義国家でのみ成立しうる概念を、錦の御旗の如くに振り回して、珍判決の正当性を強弁したのは記憶に新しいところですが、結局の所この国の司法関係者は、最高法規たる憲法まで含めて、法律などときの権力の都合次第でどうとでもねじ曲げられるものと、腹の中で考えているから、とんでもない見込み違いが往々にして起きるんでしょうね。だからこそ、自分が政権を握れば、「代理弁済」などという法律論的に考えて杜撰としか言いようのない弥縫策で押し切れるなんて、甘い見通しでいたんでしょう。
この辺が、政治家としてはアマチュアと言われても仕方がないところ。裁判所を全部自分の言いなりになる判事に入れ替えるなんてこと、短時日で実現できようはずもない。まあ、裁判所の人事に手を入れながら、上級審への抗告を繰り返して正面突破を図ればなんとかなるくらいに思ってるのかも知れませんが、三審までもっていく頃には政権の期限切れ。任期が5年、一期限りって、この国の大統領制は、ただただこの国をグダグダにするための仕掛けとしか思えないですね。
韓流政治、韓流経営こそ堕落と失敗への最短コース。どうにも身覚えがあるように思えてなりません。すぐ近くに実例がいくつもあったような。
韓国の地裁が「自称元徴用工問題」の支援財団の供託申請を受理しないと決めたらしい。ホラ、言わんこっちゃない、イキナリ反故になってますよ〜(笑)。日韓友好なんて、どだい無理なの!相手は蛮民ですヨ、忘れないで。
大馬鹿者の岸田氏は、この事態でも昼寝中でしょうか?でもここまで来たら韓国内のハナシ。勝手にどうぞ。いつまでも内輪揉めして下さい。得意ですもんね〜。で、日本に延焼させないよう、お願いします。
>正直、自称元徴用工問題自体が韓国側による日本を貶めるための悪質な虚偽であるという点に加え、2018年10月と11月の韓国大法院の判決が国際法違反である
以上に加えて、日本統治を「不法」であると認めさせることで、不法行為に基づく精神的な損害等に対する補償を未来永劫日本に求め続けるための策略です。
なぜならば、大審院の判決は賃金未払いの債務対する支払命令でなく、日本統治が不法であったということを前提とした、植民地支配及び侵略戦争の遂行と直結した反人道的な不法行為による精神的苦痛に対する慰謝料の支払い命令だったからです。
以上の判決の本質は政府内で認識されていたからこそ、安倍さんは「解決済、韓国の国内問題」の一点張りでした、日本統治の不法性が国際的な議論のテーブルに乗るリスクを予想していたのでしょう。
ところがチワワ岸田さんは、上記リスクを知っていながら、韓国の案に対して「評価する」と答えてしまったのです、常識的に考えて「評価する」という言葉は、相手方の行為を褒めるということであり、また日韓の間に解決すべき「問題点」が存在していることを自ら認めたということにもなります。
まさに亡国の首相です。
チワワ岸田さんはバイデンさんの言いなりですので、バイデンさんの要請で今後ウクライナに対する莫大な支援金を負担するのでしょう。
山口敬之さんがYoutubeちゃんねるで、バイデンさんは20兆円を日本に負担させるという話があるとも言っていますね、大増税確実です。
このようにチワワ岸田さんは死に物狂いでバイデンさんに尻尾を振っていますが、来年共和党政権が誕生すればどうする気なのでしょうか?
トランプ大統領なら、バイデン政権と岸田さんの密約等を次々暴露し、岸田さんは日本にいれなくなってしまうかもしれないですよ!
同様に、次回韓国に左派政権が誕生すればどうする気なのでしょうか?
岸田さんの後の首相が尻を拭うのでしょうが、、、果たして次の首相は誰なんでしょうか?
不法行為に基づく精神的苦痛に対する損害賠償の支払い命令だからです。
すいません、以上の文章の最後に、以下の余計な文が入ってしまいました。
>不法行為に基づく精神的苦痛に対する損害賠償の支払い命令だからです。
当方はマイク・ポンペオ大統領を希望します
トランプが支持表明すれば一発当選、にはならんのか
はにわファクトリー様
そうですね、ポンぺオさんをすっかり忘れていました。
彼はトランプさん同様、民主党政権のやったことをぶっ壊してくれるのでしょうか?
思想的にトランプさんに近いなら応援したいです、若いですしね。
♪ 忘れっていませんか、ポのつく彼を~ ♪
Youtube 検索すれば精力的に発言していると分かります。
昨年ポンペオ氏は2度台湾訪問しており、講演の中身は動画投稿されています。
彼ずいぶんスマートに減量してます。こんなにハンサム男子だったとは。トランプ政権時代は忙し過ぎた?
言っていることは至極マトモです。短命に終わりましたがトラス前首相も同じくらいに演説は切れ味もよかった(日経が一方的にけなすのはどうかしています)
ポンペオ並みに正論を手短にすっきり整理できないアメリカはどうかしている気がするくらいです。彼、大統領の風格はあるんじゃないかなー(ちらり)