久しぶりに、苛立つ記事を発見しました。散歩中に生後６ヵ月くらいの赤ちゃんが車内に放置されているのを発見したにも関わらず、「大事になるのが怖くて」警察に通報しなかった、などとするものです。この場合、「通報して大事にしたくない」という発想は困りものです。赤ちゃんが車内に放置されている時点ですでに大事であり、この場合は「積極的に通報して大事にしなければならない」からです。

これは酷い！イライラする記事

当ウェブサイトでは努めて使わないようにしている表現が、「腹が立つ」、「イラつく」といった感情表現です。

注意していても、どうしてもこの手の表現が出てしまうこともあるのですが、それでも「数字や客観的証拠に基づく議論」をモットーとしている以上、とくにウェブ主である怪しげな自称会計士の感情が表に出て来ることは、できるだけ控えたいと思っている次第です。

ただ、なかにはどうしても、「読んでいてイライラする」と感じてしまう記事に出会ってしまうこともあります。

『まいどなニュース』というウェブサイトが４日付で配信した、こんな記事が、それです。

車内から赤ちゃんの激しい泣き声→うろたえて通報に尻込み　後悔した投稿主がとった行動は…「放置する親をなくすために」

―――2023/07/04 08:10付　Yahoo!ニュースより【まいどなニュース配信】

失礼ながら読んでいて相当に苛立ってしまう記事ですが、要約すると、ある人物が「散歩していると生後６ヵ月くらいの赤ちゃんが車内に放置されているのを発見した」、「通報しようかどうか悩んだが結局は通報しなかった」、とツイッターに投稿した、とするものです。

この場合「大事にする」のが正解では？

いちおう、先に申し上げておくと、しばらく経つと母親らしき女性が車に戻ってきたということですが、記事によればこう書かれています。

「車に向かう時も急ぐ様子がなく、赤ちゃんが大泣きしていることにもノーリアクション。あくまでも想像ですが、いつものことなのかな？と。外気25度ぐらいの日だったので、窓も閉めた車内はもっと暑かったはず。どれだけ暑く、苦しく、心細かっただろう、と考えると悲しくなりました」。

「悲しくなりました」、で終わらせないでいただきたいと思います。

子供を車内に放置している母親に注意するでもなく、その場で警察に通報するでもなく、ただその様子をツイッターに投稿するだけというのも、なんだかイライラします。

ではなぜ、この人物はその場で警察に通報しなかったのでしょうか。あるいは、その自動車が停められている施設の管理人に知らせなかったのでしょうか？

これについてツイート主は『まいどなニュース』の取材に対し、こう答えたそうです。

「私自身、通報したほうが良いとわかっていながら迷って、結果、できませんでした。警察に通報すると大事になってしまうような気がして怖くてできなかったんです。見守らずに通報したほうが赤ちゃんのためだったんじゃないかという思いは残っています」。

「警察に通報すると、大事になってしまう」。

おことばですが、生後すぐの赤ちゃんを車内に放置していることが、すでに大事ではないでしょうか。

記事から判断するに、赤ちゃんを車内に放置した母親も、おそらくは「短時間」のつもりで赤ちゃんを置いたままで自動車を離れたのでしょうが、ちょっと油断し過ぎです。これを目撃した人物ががやるべきは、すぐに警察に通報することで「大事にする」ことだったのではないでしょうか。

発見したら即通報を！

ちなみに車内放置について、『まいどなニュース』も記事の末尾で、次のように警告します。

「車内放置は、『寝ているから』『降りたと思っていた』『確認し忘れた』などどんな理由があっても、許されることではなく、児童虐待に該当する行為。車内温度の上昇による熱中症罹患の危険以外にも、事件や事故に巻き込まれることもあります」。

「『ほんの数分』という一瞬の気の緩みが取り返しのつかない事態につながる可能性も。車内に子どもを残したまま、車から離れないでください。また、子どもが残っている車を見かけたら、すぐに110番通報を。虐待が疑われるときは児童相談所虐待対応ダイヤルの189番に（通話料無料　24時間365日対応）」。

まったくそのとおりです。

そして、この「通報したら大事になる」という発想を、「事なかれ主義」といいます。

重要なのは赤ちゃんの命を守るという発想であり、大事になろうがなるまいがは関係ありません。というよりもむしろ、警察に通報することなどを通じて「大騒ぎ」し、積極的に「大事」にしていく方が、この場合は正解でしょう。とにかく大至急、警察を呼ぶとともに、施設管理者に連絡するなどすべきでしょう。

ちなみに、車内に放置された子供を助けるために窓をハンマーでたたき割って良いかどうかに関しては、微妙です。（形のうえでは）「器物損壊罪」などに問われる可能性も出て来るからです。

（※余談ですが、窓ガラスを破壊して良いかに関しては、『弁護士ドットコム』に2018年８月４日付で掲載された『灼熱地獄の車内に子ども放置…救出のため、店がハンマーで窓ガラス割ってもOK？』なども参考になりますが、あくまでもそのときの状況次第、という側面も強そうです。）

「穏便に、どうか穏便に…」

いずれにせよ、日常生活であれ、ビジネスであれ、政治であれ、外交であれ、トラブルに直面し、「どうか穏便に…」、などとことを納めようとする者もいるのですが、相手がやっていることが明らかにおかしければ、「穏便に済ます」べきではありません。

その意味では、「どうか穏便に…」は、形を変えた「無責任の象徴」ではないかと思うのですが、いかがでしょうか？