ついに休刊が朝刊紙に及びました。大阪の朝刊紙・大阪日日新聞は13日、「社会情勢の変化に伴うかつてない厳しい経営環境に直面」した結果、7月末で休刊するという決断に至ったと発表したのです。同紙は大手紙(全国紙やブロック紙)ではないため、「新聞の廃刊ラッシュが始まった」と現時点で判断することはできませんが、ごく近い未来、似たような動きが相次いでくることは間違いありません。
目次
紙の新聞は早ければ10年前後で消滅か
昨日の『【インチキ論説】日本の文化を守るため新聞に補助金を』を含め、当ウェブサイトでは最近、何度も指摘しているとおり、新聞業界には、未来はありません。
部数の急減、夕刊の廃止、購読料の相次ぐ値上げ、そして新聞報道に対する止まらない一般人からの批判――。正直、個人的には新聞業界の苦境は自業自得ではないかとの気もしないではないのですが、最近、新聞業界の苦境を知らせる話題には事欠きません。こうしたなか、本日は再び、例の「インチキ論説」の奇行…、じゃなかった、寄稿を受けました。今回のテーマは「新聞購読クーポンの配布などを通じた新聞社への補助金の提言」だそうです。論旨もムチャクチャですが、どんなことが書かれているのでしょうか?文化を守れ~先週の『「文化守... 【インチキ論説】日本の文化を守るため新聞に補助金を - 新宿会計士の政治経済評論 |
一般社団法人日本新聞協会が公表している『新聞の発行部数と世帯数の推移』というデータに基づけば、2022年10月1日時点の新聞部数は、それぞれ朝夕刊セット部数が593万部、朝刊単独部数が2440万部、夕刊単独部数が52万部です。
ここで「セット部数」を朝刊と夕刊に分解すると、朝刊は3033万部、夕刊は645万部で、合計すると3677万部ですが、最も古い2000年時点だと朝刊は5189万部、夕刊は2001万部ありましたので、それぞれ42%、68%減った計算です。
しかも、この部数が減る速度は激しくなってきており、直近5年間だと朝刊で1086万部、夕刊で419万部、それぞれ減少しています。単純平均だと、年間で朝刊が217万部、夕刊が84万部失われた計算であり、このペースでいけば朝刊は14年弱で、夕刊に至っては8年弱で、それぞれ部数がゼロになる、というわけです。
早ければあと10年前後で、紙の新聞が世の中からほとんど姿を消してしまうでしょう。
損益分岐点売上を割り込む前に廃業を決断しなければならない
ただ、こんなことを申し上げていると、やはり「新聞がなくなるなんて、そんなことはあり得ない」、という印象を持つ人もいらっしゃるかもしれません。
新聞の社会的な影響力は(かつてとくらべて減退したとはいえ)依然としてそれなりに残っているため、「主要紙がやがてなくなってしまう(かもしれない)」、などといわれても、「ちょっと想像がつかない」というのが実情に近いでしょう。
しかし、先ほどの「日本新聞協会のデータから予測される新聞業界の未来」が正しければ、そろそろその兆候が出て来るはずです。
詳しくは『新聞朝刊の寿命は13.98年?』や『新聞夕刊は7.68年以内消滅か』などでも議論したとおり、「損益分岐点売上」の議論からすれば、通常の会社では、事業を営むうえで、最低限、固定費を賄えるだけの売上が確保できなければ、廃業を余儀なくされるからです。
実際、『今度は毎日が値上げ…新聞業界のカギ握るのは日経新聞』などでも引用したとおり、株式会社朝日新聞社の2022年3月期決算の事例で見ると、材料費、労務費、印刷費など、印刷や運搬にかかっていると思われるコストだけで、売上高の4割以上を占めていることがわかります。
株式会社朝日新聞社の場合はそれでもまだ余裕がある方ですが、余裕がない地方の新聞社のケースだと、現在の売上高が損益分岐点ぎりぎり、あるいはすでに逆転している可能性すらあります。
いずれにせよ、企業は損益分岐点売上を割り込むより前の時点で、廃業を決断しなければならないのです。
すでに夕刊の廃刊ラッシュが始まった…!?
したがって、まずは夕刊の廃刊ラッシュが生じ、続いてこれが朝刊にも及ぶ、というのが当ウェブサイトにおけるメインのシナリオのひとつなのですが、これについてはすでに兆候が生じています。
たとえば、東海地区ではすでに朝日新聞と毎日新聞が夕刊から撤退しています。東海地区の場合は中日新聞が圧倒的に強いという特殊事情もあるのかもしれませんが、それでも今まで発行されていた夕刊の発行が取りやめとなったというのは、夕刊が採算ラインに届いていないという証拠でしょう。
この点、東日本で夕刊を発行していない産経新聞の例を見るまでもなく、大手新聞社であっても、一部地域で夕刊から撤退する、という事例はありますが、さすがに主要全国紙とブロック紙のなかで、夕刊から全面的に撤退したという事例はまだありません。
しかし、一部メディアの報道によれば、ブロック紙の一角を占める北海道新聞が夕刊廃止を検討中との情報も出てきました(『ブロック紙の北海道新聞が今年の秋にも「夕刊廃止」か』参照)。もし実現すれば、主要紙(全国紙やブロック紙)のなかで、夕刊からの全面撤退に踏み出す最初の事例となるかもしれません。
ついに、夕刊廃止ドミノはブロック紙に波及したようです。『財界さっぽろ』が金曜日に配信した記事によれば、北海道新聞が今年秋にも夕刊を廃止する方向で関係先との調整に入ったそうです。同紙にとっては夕刊廃止は長年の課題でしたが、いわば、用紙代の高騰が背中を押したようなものかもしれません。そして、こうした事情は北海道新聞だけの話ではありません。夕刊廃止がほかのブロック紙や全国紙にも広がるのかどうかもさることながら、その次の本丸は朝刊そのものなのかもしれません。夕刊はいったいどうなる?新聞業界といえば、... ブロック紙の北海道新聞が今年の秋にも「夕刊廃止」か - 新宿会計士の政治経済評論 |
いずれにせよ、いったん動き出すと、そこから先の展開は意外と早そうです。
大阪日日新聞が7月末で「休刊」
そして、業界で夕刊の廃刊という流れの次に来るのは、朝刊の廃刊でしょう。
とくに経営体力がないメディア(とくに大手全国紙のなかでも某メディアなど)を中心に、下手をするとごく数年以内に廃刊という動きが出るのではないか――。
そんなことを思っていた矢先に出て来たのが、こんな話題です。
「大阪日日新聞」7月末で休刊のお知らせ
―――2023/06/13 09:45付 大阪日日新聞より
大阪の朝刊紙『大阪日日新聞』の発表によると、同紙は7月末をもって「休刊」となることが決まりました。
同紙の『会社概要』によると、大阪日日新聞は前身の『帝国新聞』が設立された1911年から起算し、2010年で創刊100年を迎えたという「老舗メディア」です。
同紙はながらく夕刊紙でしたが、2000年以降、鳥取県の県紙である『日本海新聞』を発行している新日本海新聞社が経営を引き継ぎ、これに伴い朝刊紙として再出発。
同紙はまた、「テレビなどの電波媒体発達とネット社会の本格到来」で「すでに夕刊はその存在意義を失いつつある」との観点から、「いち早く朝刊単独紙として再スタート」し、購読料も「どこよりも安い1部100円、月ぎめ2050円」とのことでした。
しかし、同紙は「社会情勢の変化に伴うかつてない厳しい経営環境に直面」し、最終的には「休刊という決断に至った」のだとか。
これから始まる県紙レベルの廃刊ラッシュ、そして…
考えてみれば、これも当然の動きでしょう。
もともと同紙は発行部数もせいぜい数千部程度とみられ、さすがに大阪のローカル紙としての存続も厳しかったのでしょう。そして、似たような動きは今後、県紙レベルで相次いでいく可能性は濃厚です。
ただし、もともと同紙は大手新聞社(全国紙・ブロック紙)ではなく、発行部数も数千部程度とみられていることから、同紙の休刊をもって、「いよいよ本格的に新聞の休刊・廃刊ラッシュが始まった」、とまでは見ることはできません。
やはり本格的に新聞時代が終了するかどうかは、主要紙において、まずは夕刊、続いて朝刊の廃止にまで至るかどうかで判断する必要があります。
とくに日経新聞のように、(おそらくは)ウェブ戦略で成功を収めつつある場合は、紙媒体を事実上廃刊にしたところでほとんど影響はありませんが、ウェブ戦略で成功するポテンシャルがあるのは日経新聞と産経新聞くらいなものでしょう。
これに対し、「過去に国から格安で払い下げられた」とのうわさもある優良不動産物件などを持つ新聞社の場合は、実質的に「不動産業」を営みながら、なかば趣味の範疇として、新聞社の経営を続ける、という選択肢が現実化してきます。
また、中国共産党の宣伝や宗教団体の機関紙の印刷請負などの「副業」で儲かっている新聞社の場合も、新聞本体が売れなくても、そこそこ事業を続けることはできるかもしれません。
しかし、ウェブ戦略に特化できているわけでもなく、これといった資産もない新聞社の場合は、やはり「座して死を待つ」というのが、最も可能性の高いシナリオではないかと考えられるのですが、いかがでしょうか。
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公営企業を除いて、如何なる企業も損益分岐点を割って存続することは出来ないはずです。
その点から見ると、未だ、新聞紙が存続できている方が不思議なほど。多分、相当なリストラが内部で行われて延命を図っているのかも知れないです。
早く無くなって欲しいものです。
Wikipediaによると、西暦2000年に 「新日本海新聞社」 に買収されて、現在の発行元は 「新日本海新聞社 大阪本社」 だそうなので、「東京新聞」 を 「中日新聞 東京本社」 が発行しているようなもんですね。
その 「新日本海新聞社」 が発行する 「日本海新聞」 は、鳥取県内のシェアが約66%で、地方紙では最も高いと書いてあります。きっと 「鳥取県では圧倒的なシェアだが、鳥取県自体の過疎化と人口減少が激しいので、大阪に進出しよう」 と考えたんでしょうね。それから約四半世紀、頑張ってみたけど・・・。
う~む…、例えるなら
漫画雑誌
少年キングが休刊して別冊のヤングキングは生き残り、
そのヤングキングが母体となってヤングキングアワーズなどの派生を生んだと考えればよろしいのですかね?。
大阪日日新聞がまだ存続していたとは知らなかった。
かつて大阪は夕刊紙の激戦区でした。夕刊フジや日刊ゲンダイなどの東京勢では無く、地元夕刊紙がたくさんありました。大阪新聞(産経系)、大阪日日新聞(夕刊からのちに朝刊へ)、新大阪(駅ではないよ)、関西新聞、新関西、内外タイムス(うろ覚え)、、駅売りが盛んな頃、平積みされてました。しかし今やどれもありません。
「過去に国から格安で払い下げられたとのうわさもある優良不動産物件を持つ新聞社の場合は」(会計士さん)・・・あーあそこですネ。ま、リーシング業不動産業がメインで左傾ジジイのバイブルでも細々と刷ってください(笑)。でもATMのTMはしんどいでしょうね。
それと地方紙。「いや、お悔やみ欄が必要」とか言ってる人も居ますが、普段付き合いが疎遠なら別に知らなくてもいいんじゃないですか?「商売上必要」なら、新聞に頼らずとも、知人同士のコミュニケーションで常に情報を取り合うとかの方法もあると思いますが。
大阪日日新聞が休刊になるとなると、その読者を取り込もうと、他社が動き出すのではないでしょうか。(もちろん、上手くいくかは別の話です)
ふと思ったのですが、大阪日日新聞が休刊になった場合、「大阪日日新聞でなければ、新聞をとるのをやめる」という読者が、どれだけいるでしょうか。(もし、休刊から復活すれば、また新聞を取り始める、という意味です)
つられて悪口を書きたくなるのですが、東北に住んでおりますが、よくぞここまでという赤い新聞社が有ります。また政令指定都市の某市長やら、韓国まで出っ張って日本下げした女性参議院やら某党の国対委員長やら、此の地からなぜこれほど輩出するのかと思うほどです。
ニュースペーパーレス社会の実現が一歩近づいてたいへん喜ばしく思います。
紙の新聞で始末に困るのが旅行等で家を4-5日開ける時。
販売店に配達停止を頼まないと郵便受けが悲惨なことになる。
かといって「xxからxxまでいませんので新聞止めて」というのは躊躇がある。
家に誰もいない期間を赤の他人に教えるという事だから。
こういう時にweb版なら心配いらない。しかも旅先にノートPC持ち込めば毎日読める。
ATMK、早く日本から消滅して欲しい。それだけですわ。
ATMK、早く日本から消滅して欲しい。それだけですわ。
本業がダメでも不動産業で会社が好調といえばJR九州もそうですね。
コーポレートカラーも「赤」だし笑