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「自公選挙協力解消」、結局は公明党の瀬戸際戦術か?

公明党から自民党に対し、東京における選挙協力の解消の申し出を受け、自民党内で浮足立っているとする報道も出てきています。ただ、本件について、個人的には公明党なりの「瀬戸際戦略」の一環に過ぎないのではないか、という気がしてなりませんし、これを機に、自民党内で本気で公明党との連立を見直す動きが出て来る方が、国民に対する説明上もすっきりしてわかりやすいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

自公、東京で選挙協力の解消か

先週は、公明党が次期衆院選に向けて、東京での自民党との選挙協力を解消すると通告した、とする話題がありました。

ただ、『「公明が東京で自民推薦見送り」の影響をデータで見る』でも指摘したとおり、数字で見てみると、かりに自公の選挙協力が解消されたとして、自民党にはそれなりの影響も生じる反面、「壊滅的な打撃」を受ける、ということはなさそうです。

東京都は選挙区の区割りが変更になるため、単純に前回との比較が成り立つというわけではないものの、敢えて2021年10月の総選挙のときの事例でいえば、自民党は東京25区のうち23区で公認候補を立て、うち15選挙区で勝利し、8選挙区で立憲民主党候補に敗れて落選しました。

また、残り2選挙区のうち東京15区では立憲民主党を離党した柿沢未途氏が無所属で出馬して当選し、自民党の追加公認を受けており、東京12区では公明党の岡本三成氏が当選しています。

東京25選挙区の状況(2021年総選挙時)
  • 自民党…15選挙区
  • 立民党…*8選挙区
  • 公明党…*1選挙区
  • 無所属…*1選挙区

影響はせいぜい3~6選挙区?

そして、自民党が制した15選挙区のうち、対立候補の惜敗率が90%を超えている選挙区が3選挙区あり、これらはいずれも得票差が1万票を割り込んでいます。

  • *1区…*9,090票差、2位の惜敗率90.831%
  • 10区…*7,203票差、2位の惜敗率93.743%
  • 23区…*6,474票差、2位の惜敗率95.140%

また、得票差が2万票以内という選挙区はほかにも3つあります。

  • 15区…17,283票差、2位の惜敗率77.337%
  • 21区…13,343票差、2位の惜敗率88.132%
  • 22区…18,958票差、2位の惜敗率85.567%

しかも、東京15区の柿沢氏の場合は、選挙戦当時は無所属でしたので、最初から公明党の支援なしでこの戦績です。このように考えると、公明党の組織票がゼロになった際に当落予想に影響を受ける可能性がある候補者といえば、せいぜい5~6人、といったところでしょう。

もちろん、区割りが変更になるなどの影響も生じるほか、全国的に日本維新の会が支持率を伸ばしているという状況もあり、前回の選挙戦の結果が今回もそのまま参考になるというわけではありませんが、巷間で唱えられている「組織票がなくなること」の影響は、そこまで大きいものとも考えられません。

個人的にはむしろ、次回の選挙では「おためし」で、自民党も、まずは東京選挙区で公明党との選挙協力を解消して戦ってみれば良いのではないでしょうか。

時事通信「妥協点見えず」

もっとも、これに関連し、今週も再び幹事長会談がもたれるようです。

自公協力解消、拡大懸念も 30日に幹事長会談、妥協案見えず

―――2023年05月29日07時03分付 時事通信より

時事通信によると、自公両党の幹事長は30日に再び会談するとしつつ、「自民は協力継続に向けて打開の糸口を探るが、妥協につながる妙案は浮かんでいない」と指摘。「自民内では協力解消の動きが東京以外にも広がりかねないとの懸念も出ている」、などとしています。

はて、そうでしょうか。

正直、自民党内で本当に危機感が広まっているようには見受けられません。

いや、もちろん、自民党が2012年12月の衆議院議員総選挙以降、8回連続して大型国政選挙を制しているという「安心感」のためでしょうか、正直、選挙区によっては緊張感がない議員も散見されるのが事実でしょうし、公明党との選挙協力が消えれば当落線上に押し戻される人もいるはずです。

結局は「瀬戸際戦術」

ただ、それ以上に、公明党側が今回、自民党側に対し、自党の影響力を過度に強調しているという側面はあるのではないでしょうか。

いわば、一種の「瀬戸際戦術」のようなものです。

というよりも、あえて意地悪な言い方をすれば、自民党側としてはこうした公明党側の「瀬戸際戦術」を見透かしているフシがあります。実際、時事通信によると、自民党の茂木敏充幹事長が28日に広島市内で講演した際、「安定政権をこれからもしっかりと維持していきたい」と述べた自公関係には言及しなかったのだそうです。

いわば、公明党側としては、自民党に対して「信頼関係はもう地に落ちた」、「選挙協力を解消するぞ」、と強い調子で迫ることで、自民党側から譲歩を引き出すつもりなのかもしれません。

もしそうであれば、むしろ自民党としては、以前から何度か浮上しては消えて来た「自国連立」を、そろそろ本気で持ち出しても良いのではないでしょうか。

ときどき取り沙汰されるとおり、国民民主党あたりは、憲法改正に前向きであるとされるだけでなく、とくに経済政策においては自民党内のリフレ派(清和会など)のそれに近いようですので、正直、政策的には「自公連立」よりも「自国連立」の方がすっきりするかもしれません。

(といっても、日本国民から見て、国民民主党が信頼に値する政党であるかどうかは別問題ですが。)。

いずれにせよ、自公選挙協力の解消自体は自民党の議席を減らす方向に影響する可能性が高いですが、その選挙協力の解消、あるいはそれをネタに自民党をゆすってくるような公明党と自民党が連立政権を維持すること自体、国民にとっての自民党に対する不信感につながっていることもまた事実でしょう。

もっとも、個人的に、明日の自公協議については結局、このまま本気で選挙協力解消に向けて突っ走るのではなく、どちらかの政党(おそらくは公明党の側)が折れておしまい、となる可能性が高いようにも思えるのですが、これについては明日の展開を待ちたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (8)

  • 創価学会の組織票が大きいのはわかるけど、
    統一教会と同様のことが創価学会で起きないとは言い切れないですよね。
    であれば、いつまでも公明党に頼っていてはダメでしょう。

  • 西の国に北海道・沖縄を乗っ取られる前に自公連立解消で良いのでは、連立解消で岩盤保守が戻れば本来の自由民主党に戻るのでは。

  • 公明党の我儘を切れるようなら岸田も大物だがね。
    公明党に「足元」を見られてる自民党のふがいなさ。
    憲法改正や人権問題等と両党で相容れない部分を曖昧にしながらの連立が賞味期限切れ。
    自民党の岩盤支持層は連立政権にうんざりしてるのが実情だよ。
    ここら辺で連立を解消して政策的に合う野党と連立するなり、単独政権を目指すなりすべき時が来たな。

  • 仮にこのまま、東京での都議会を含めた自公選挙協力関係が解消となった場合、公明の組織票はどこに向かうのか。

    ①国政比例・都区市町村議会議員票
    従来通り無駄なく自分の党へ行き渡る。

    ②国政小選挙区・都知事・区長・市町村長票
    表向き自主投票の形を取っても、実際には死票にならない
    よう有効利用するはず。
    この票が例えば立憲や維新に流れた場合、自民のダメージは
    大きく、自公の不仲は決定的なものになる。

    個人的には自公連立解消派ですがどうなるやら。

  • 長く政権にいてそれなりの脅し材料も蓄えているような気がする
    まぁどちらにとってもだが

  • 公明党って、いまさら、国交大臣の椅子を捨て、下野した先に居場所はあるのでしょうか?
    比例区にしたって、建設業界の組織票に助けられてたりするような気もするんですけどね。

  •  私の予想は、このまま当面ずるずる未決着です(従って、解散総選挙もできない)。
     公明=創価学会に代わり得る”計算された票”は、どこにもありません(国民民主や維新が代替できるわけもない)。自公連立で離れていた岩盤支持層が戻ってくる→本当ですか?
     一方、今回の騒動を引き起こした萩生田政調会長を悪者にして、公明党の顔を立てる、そんな安倍派を敵に回すほどの胆力が、岸田首相にあるとも思えない。
     選挙を仕切る創価学会の佐藤副会長とのパイプが太いとされているのは菅前総理ですが、自民党の誰が菅さんを動かせますか?茂木幹事長は頭は切れると思いますが、こういう折衝・着地ものは得手ではありません。森山選対委員長はお得意ですが、国対絡みが主体で、立民の安住さんとは太いですが、創価学会とのパイプは細いと思われます。
     最終的には、岸田さんが菅さんを動かすしかないと思いますが、さすがに最初から総理はないでしょう。まずは茂木幹事長のお手並み拝見。多分無理で、ずるずる未決着、と予想します。
     

  • とりあえず連立を崩して、現実を再確認することは短期的には「有」ですね。 選挙後の日本政治は面白いと思います。 弱者は屁理屈コネて直ぐに擦り寄って来ますから・・・。

    自民党と公明党の連立-爆笑 (? 陳述部署の国土交通省を与えたのだから、まともなゴミ拾いをやれよ! てのが当時と思いますが、野放しに10年以上やらしたら・・・おかしなゴミがいっぱい) 日本共産党より下の最下層を拾っている宗教団体が支持母体の政党ですが、ここ5年くらいですか? 随分ナマイキになっていますね。 選挙演説ではバァ~ちゃんサポーターを前に「ナッチャンですよ~笑」ってパフォーマンスをやっている党首。 この人、創価学会会員ではないのですよね。この辺が恐ろしい。 この人、基本的に表情がありませんよね。(ずっと観察していましたから、微妙な変化は分かりますが・・・) 

    日本共産党を含めカルト政党はダメでしょう。