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自民部会でLGBT法案を強引推進:岩盤支持層造反も

複数の自民党議員の証言によれば、自民党は例の「LGBT法案」を巡り、部会で反対多数であったにもかかわらず議論を強引に打ち切り、「部会長一任」としてしまったそうです。これは自民党の慣例に背くものだとの指摘もあります。政権公約に掲げてもいない法案を、自民党内の適正なプロセスすらすっ飛ばして強引に推進することが、自民党にいかなる影響を与えるのか――。さっそく、岸田文雄首相のツイートには、保守層と思しきユーザーからの非難コメントが溢れています。

岸田首相「世界一受けたい授業」に出演…コメント欄が大荒れ

性的少数者(いわゆるLGBT)らに対する「理解を促進する法律」(正式名称は「性的指向および性同一性に関する国民の理解増進に関する法律」、だそうです)を巡って、自民党に非難が集まっているようです。

著者自身が最初にその「異変」に気付いたのは、岸田文雄首相のこんなツイートを目にしたときです。

岸田首相はテレビ番組に「先生役」として出演する、などとツイートしたのですが、そのリプライ欄を見ると、保守層に近いと思しきツイッター・ユーザーを中心に、「LGBT法案反対」といったハッシュタグで溢れているのです。なかには「米国大使の圧力でそれを推進するのはおかしいじゃないか」、といった趣旨のリプライもあります。

故・安倍晋三総理大臣のころから、あるいは菅義偉総理大臣の頃も含め、首相のツイートには左派的なユーザーからの批判が付くのはいつものことですが、保守的な政治性向を持つと思しきユーザーからの批判が自民党の首相に対して大挙して寄せられるというのは、やはり異例です。

いったい、どういう事情があったのでしょうか。

高鳥氏、青山氏、和田氏らが証言

これに関し、複数の自民党議員のツイートやブログ記事などに基づけば、このLGBT法案を検討している自民党の「性的指向・性自認に関する特命委員会」は内閣第一部会の合同会議で、反対・慎重意見の方が賛成派よりも多かったにも関わらず、執行部が強引に「部会長一任」として散会したのだそうです。

(※ちなみに産経ニュースの『自民、LGBT法案一任 異論相次ぐ 与野党協議経て広島サミット前に国会提出へ』によると、特命委の委員長は高階恵美子氏、内閣第一部会の会長は森屋宏氏だそうです。)

ちなみに「賛成10名、反対・慎重18名」の根拠は、高鳥修一氏(安倍派)のこんなツイートです。

また、青山繁晴参議院議員も、やはり反対派が多数だったと自身のブログで明らかにしています。

反対議員18、賛成議員11、反対議員が過半数を制したにもかかわらず、「ひな壇に一任」をあろうことか強行しました。わたしはその場で「一任を認めません」と発言しました

―――2023-05-12 17:29付 On the road~青山繁晴の道すがらエッセイ~より

賛成議員の人数は高鳥氏のツイートと少し異なっていますが、青山氏は次のように断言しています。

反対の発言がわたしを含めて18議員、賛成議員が10~11、いずれにせよ反対派が多数なのは間違いありませぬ。/わたしは、一任をしていませんし、一任は成立したとはとても言えません」。

そのうえで青山氏は、こう指摘します。

それは、自由民主党には『全員一致したときに、一任が成立する』というルールがあるからです。<中略>国会での、いわゆる『強行採決』ではなく、同じ党内の議論の場で、強行で『一任を取り付けた』と主張するのは、見たことがありません。自由民主党の今後に、深刻な打撃となるでしょう」。

つまり、青山氏の説明通りなら、自民党は「部会長一任」は「全員一致」という慣例を破ったということです。

(※なお、余談ですが、和田政宗参議院議員はこの青山氏のブログ・エントリーを引用する形で、自身もこの法案の一任に反対したと明らかにしています。)

自民党は岩盤支持層を減らすことになりかねない

法案の背後には「ラーム・エマニュエル駐日米国大使が圧力をかけている」だの、「(政権関係者は法案を)G7に間に合わせようとして拙速に対応している」だのとする情報も錯綜しています(※)が、なぜ、自民党が法案の成立を急ぐのかについては、よくわかりません。

(※もっとも、ネット上では「法案提出を急ぐように指示したのが岸田文雄首相本人だ」、などとする情報もあるのですが、これについては個人的にまだ裏が取れているわけではないので、とりあえず現時点で「岸田(首相)が悪い」などと断言することは控えておきたいと思います。)

ただ、法案が自民党内の適正なプロセスをすっ飛ばして提出されるのだとしたら、不自然です。

というよりも、単純に「自民党支持層への影響」という観点だけで見ると、今回の自民党の行動にはくびをかしげざるを得ないのです。ツイッターなどでの反応を見ている限り、安倍総理や菅総理の頃は自民党を指示していたであろう「岩盤保守層」が自民党から離反する可能性があるからです。

もしLTGB法案が「無事に」成立したとしても、自民党の岩盤支持層を激怒させることになり、次回選挙で自民党に投票する有権者が減ることが懸念されます。

ただ、それと同時に、このLGBT法案が成立したところで、自民党がLGBT法案を支持しているであろう人たち(おもに左派でしょうか?)からの票を獲得することに役立つとも思えません。

だいいち、前回の大型国政選挙である2022年7月の参院通常選挙で、自民党は「LGBT理解法案の成立」を政権公約に掲げていたのでしょうか?(少なくとも政権公約パンフレットをざっと眺めても、「LGBT」という文言は見当たりませんが…。)

もし政権公約に掲げてもいない政策を、自民党内の適正なプロセスも無視してゴリ押しするというのであれば、それにより自民党が議席を減らしたとしても、ある意味では仕方がない話かもしれません。

自民党議員は危機感を持て

もっとも、逆に心ある自民党議員のなかには、本会議で「造反」し、反対票を投じるという事例も出て来るのではないでしょうか?党が全会一致の慣例を踏みにじって部会長一任を強引に取り付けたのであれば、それに反対した議員は、少なくとも本会議で反対票を投じても、党本部から文句を言われる筋合いはないからです。

あるいは、岸田首相の政策には、例の「1兆円増税」や対韓外交に関する自称元徴用工問題を巡る「岸田ディール」、「(旧)ホワイト国追加」など、どうも保守系の有権者の神経を逆撫でするようなものがずいぶんと多いように思えてなりません。

いずれにせよ、今回のLGBT法案で自民党議員が大挙して「造反」すれば、逆に自民党内で岸田首相の求心力が低下しかねませんし、こうした自民党内の混乱を見ていると、有権者の自民党離れが進む可能性には注意が必要です。

この点、自民党は4月の衆参補選で4勝1敗とかなりの成果を挙げましたが、これは『自民党が4議席制するも、うち3議席で「薄氷の勝利」』でも指摘したとおり、最大野党である立憲民主党に例の「小西問題」で猛烈な逆風が吹いたからではないでしょうか。

自民党は5つの国会議員補選で4議席を獲得しました。見た目は「自民党の圧勝」です。ですが、各選挙区の得票率などを詳細に確認していくと、本当の意味で「自民党の圧勝」と言って良いかは微妙です。というのも、4つのうち3つの選挙区では薄氷の勝利だったからです。また、獲得議席がゼロだった立憲民主党には、やはり「小西問題」の逆風が吹いている一方、日本維新の会や国民民主党が現実的な選択肢として浮上しつつあるのかもしれません。議席だけで見たら自民党の圧勝ふたを開けてみれば、獲得議席のみでいえば、「自民党の圧勝...
自民党が4議席制するも、うち3議席で「薄氷の勝利」 - 新宿会計士の政治経済評論

一部では6月の衆院解散、7月の総選挙、といった日程も取りざたされているようですが(とくに岸田首相にとっては維新の伸長を抑えるために、早期の解散総選挙に踏み切るインセンティブがあります)、タイミングを間違えると、自民党が保守層からの手痛いしっぺ返しを喰らうかもしれません。

個人的に、今後1~2回の衆院選で、勢力は次のようになる可能性が高いと考えています。

  • 自民党は公明党と合わせ、辛うじて過半数を維持するか、下手をしたら過半数を割り込む
  • 立憲民主党、日本共産党、社民党、れいわ新選組などの「極左」(?)政党が惨敗し、獲得議席が全体の2割前後に留まる
  • 自民党よりも「右」(?)にいる日本維新の会や国民民主党などの勢力が、全体の3~4割の議席を獲得する

維新や国民が「右」なのかどうかはともかく、このような状況になってくれば、自民党が維新、国民などと連立するという可能性だけでなく、維新、国民などが立民、社民などの「極左」政党と結託して政権を取ってしまうという選択肢も現実のものとなります。

自民党議員の皆さまには、是非とも危機意識を持っていただきたいと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (48)

  • むしろ、歓迎します♪
    自民党の弱体化かつ維新や国民の躍進が手に取るように分予想出来ますからね
    自民党も弱くなると、尻に火がついて高市さんなどの保守勢力の台頭につながるというメリットもあります
    もう、今の国民のためにならない自民党には衰退してもらいましょう!

  • 保守系支持者は少数派。舐められているんだよ。
    仮に、次の選挙で、自民が50議席以上減らすことになれば、岸田の責任問題になるだろう。
    結局、有権者次第なんだよ。

  • なぜこんな法案をゴリ押しするか。
    それは、岸田さんとその周辺がG7を成功させることに血道をあげているからですよ。それでここのところの動きがすべて説明がつきます。
    (部会での強行一任は明らかに民主主義を崩壊させてるんですけど、そうまでしてでも急いで国会に出そうとしているのは日程ありきとしか考えられません)
    ウクライナ訪問もそう。韓国をホワイト国に戻すのもそう。LGBT法案もそう。
    すべてはG7議長国として華々しく登場したいがための下準備でしょう(そうであってもウクライナ訪問についてだけは私は評価しておりますが)
    そのためには日本国内の雑音なんか、今はどうでもいいんでしょうね。
    G7を成功させ、マスゴミにそれを報道してもらい、そのまま選挙に突入すれば勝てるだろうと踏んでいるのではないでしょうか?もしそうだとしたら我々もなめられたもんです。
    あ、片山さつき議員のツイートを見れば、G7という日程ありきの法案だという予測は、たぶん確信に変わりますよ。

    • 追記です
      岸田氏とその周辺がLGBT法案に躍起になる理由↓

      LGBT権利保護、G7共同声明に明記へ 反差別の姿勢発信
      日本経済新聞
      ttps://t.co/aVDH7lUKly

      あと、岩屋氏とか稲田氏とかのいわゆる推進派議員の狙いは、G7がどうこうではなく「利権」じゃないかなと予想してます。法案が成立すると地方自治体にも大きく影響を与えるし、いわゆる公金チューチュースキームができます。NPO団体なんかが乱立し補助金が流れるのは目に見えていますので。
      本当に差別撲滅を目的としているならば、もっと活動家ではない当事者の声に耳を傾けるはずですし。国民への説明も議論も足りないまま、こんな強引に拙速に進めないですよ。

  • 結局のところ、岸田、木原、林といった連中の頭の中の思考構造は、
    国益<私益という事なのだと思います。防衛増税しかり、或いは韓国との関係改善を取り繕ったり、国柄にも大いに関わってくる今回のLGBT理解増進法案の進め方。全て、しっかりした党内議論を経ずして、つまるところ、結論ありきで、それを推し進める為のアリバイ作りに励む。国家意思を容易に他国の主張に任せてしまう...。国家として非常に大きなマイナスとなる意思決定方法となり、国家、国民そのものがまるで自分の物のような取り扱いになってしまっている。岸田内閣は今後も何をやらかすか非常に大きな不安を持たざるを得ません。要するに信頼出来ない。これが最大の問題。
    与党の公明は論外、ここで野党諸君に奮起してもらいたいが、立民、共産、れいわなども問題外、結局、当面は国民民主、維新、参政に正気に基づく堂々たる国益追及の姿勢、国柄維持をやってもらう他なし、との状況になりつつあるような気がします。

  • 先日、ジャーナリストの我那覇真子氏は LGBT 法案について、米国のFox News のインタビューを受け、「エマニュエル大使は内政干渉をやめろ!」「日本はLGBT法など必要としていない!」と強調していました。その中で、我那覇氏は渋谷の三代続いた銭湯が被害("ハッテン場" に使われている)を受けて廃業の瀬戸際に立たされている実情を報告し、同法案は日本の伝統文化を破壊すると危機感をあらわにしました。なお、エマニュエル大使に対する Fox News 側の反応(やっぱりと言いたそうな)も見ものです。

    また、我那覇氏は百田・有本氏の「あさ8」の番組に出演し、米国本土でのエマニュエル大使の評判はよろしくなく、日本への大使赴任は厄介払いされたようなものと説明していました。それを受けて、「日本はゴミ箱とちゃう!!」と百田氏が吠えています。また、エマニュエル大使は上院議員を狙っており、日本で手柄を立てようとしているそうです。東洋人など自分の出世の肥やしでしかないとでも思っているのでしょうか……非常に不愉快です!

    さらに、有本氏はLGBT法は女性を危険(トイレで襲われる等)に陥らせるものと指摘し、女性の安全安心が蔑ろにされる社会になると警鐘を鳴らしています。まったくその通りで、そんなのを「平等」と言う議員こそ「男尊女卑信奉者、差別主義者」だと、私は思います。

    Fox News
    https://www.foxnews.com/media/japanese-journalist-rips-interference-amb-rahm-emanuel-lgbtq-legislation-fix-chicago

    「あさ8 」(五月9日 1:04:32から)
    https://www.youtube.com/watch?v=vT9eaRA2jDc

    • 美術好きのおばさん様

      >「エマニュエル大使は内政干渉をやめろ!」

      これが最も重要な点かと思います、法案の是非については各国民意見があるでしょうから、時間をかけて国会議員と国民とが決めていけば良いだけの話です。

      これで味をしめ、今後も一層内政干渉をするかもしれないですね。

  • 鬼畜米帝の指導者たるに相応しい人種差別主義者のウッドロウ・ウィルソン大統領が、日帝が国際連盟に行った人種的差別撤廃提案を強行否決した一件を連想しますね。

    自由と民主主義の国を自称する米国ですが、その実態は強者・金持ちが《ロビー活動》なる合法化された賄賂で政策を決め、大多数の弱者・貧民を“自己責任”の名分で切り捨て、搾取する事を保護する人権侵害・弾圧国家であり、やっている結果を見れば中華人民共和国と同じです。

    互助・共助の精神はあっても実践は最低限と言っても構わないと考えます。

    安倍晋三氏という偉大な政治家を失った自民党の総裁職に居座る岸田文雄という玉無しは、従米ポチ保守ってところですね。

    嗚呼、代わりが居ない安倍晋三氏ではなく、幾らでも居る岸田文雄が殺された世界であれば。。。

    • 東京都のWPBC問題の発覚で利権を無くす事を危惧した差別推進主義者達が、巻き返しを無理矢理しようとしているのですかねぇ。。。

    • 同和利権、在日朝鮮人韓国人利権、アイヌ利権、WPBC利権ときて、お次はLGBTQ利権って事ですかね?

    •  何故こうも軽々しくテロを肯定するようなコメントを発するのやら。

      • 安倍晋三氏が生きてさえいれば、岸田文雄がサクッと殺されても変わりはナンボでも居ただろうなぁってなだけですけどね。

        •  でもこういうモノの言い方はパヨクに言質を取られそうなので注意した方がいいですね。「ネトウヨは赤報隊事件でテロを許すなとした一方で山上被告を擁護する朝日新聞を批判する資格はない」とか何とか。 
           彼らこそそのダブスタの最たる性癖の持ち主ですが、自分たちの事を棚に上げて平気で他者を責めますからね。

          •  コメント失礼します。

             >KY様

             奴さんは反統一カルトの野蛮人(気に入らないから潰す、殺す)なので。安倍総理暗殺に「統一が関与した証拠(暗殺犯に命令した等)が無い」のに潰せと騒いでた輩。
             財務省の狗総理は大嫌いですが、暗殺が失敗したのは良かったです。
             思うだけならまだしも、言ってはいけない事を言う無神経、品性の無さがサヨクさんやカルト(前提が変わっても結論は変えられない。異端と異論が許せない)のお約束なのであります。

          • 安倍晋三氏が亡くなる事と殺される事を同列に扱っていないし、人の命に軽重は無い的な事は述べていないので、パヨクに揚げ足を取られる事はないと思うんですけどね。

            岸田文雄が一万人、いや一億人居たところで安倍晋三氏ひとりの命の重さに比べて軽過ぎて、軽重に悩むなど有り得ない、という事ですし。

            >ネトウヨは赤報隊事件でテロを許すなとした一方で山上被告を擁護する朝日新聞を批判する資格はない

            私は「目的が正しい事は手段が正しい事を担保しない」のスタンスを維持出来てる筈なので、私をネタにそう述べる人は居ないと思うんですけどね。

            動機や背景の妥当性と手段の妥当性は無関係である、って事ですし。

  • 岸田応援団の読売からこの法案の拙速な成立を批判する社説。

    LGBT法案 拙速な議論は理解を遠ざける
    https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20230512-OYT1T50280/

    ネットには鈍感だけどマスコミの発する情報には敏感なキッシーですんで(当社比)、効くんじゃないですかね。

    こんな社説だしちゃって、ナベツネに怒られないかな。(笑)
    しらんけど。

    • 開成閥ナベツネ読売新聞の今日の社説は後付け確信犯。LGBTQ法案化の見通しが立ってからのもの。今まで一回も批判記事にしていません。キシダと歩調合わせた世論誘導。因みに読売新聞グループの日本テレビの今日のキシダ出演、岩盤保守層の反発にタイミング良くキシダ推し。見え透いていますよ‼️バイデンの来ないG7でキシダの孤軍奮闘、如何なりますか?読売新聞はお決まりの絶賛記事になるでしょう。

  •  この自民案に対しても野党は未だ不満タラタラって、一体彼らはどんな全体主義社会を目指してるのでしょうか。

  • いろいろあっても親中派総理に代わるよりマシだと思っていましたが、これは無いわ岸田さん。

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