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辞任宣言?立民・泉氏「150議席下回ると代表辞任」

立憲民主党の泉健太代表が10日の両院議員懇談会で、次回衆院選で獲得議席が150を下回った場合に代表を辞任する考えを示したそうです。現在の97議席を死守するのも難しいと考えられる中で、えらく野心的な目標を掲げたものです。というよりも、背水の陣を装った、事実上の辞任宣言とみる方が正解でしょうか。

「泉健太・新代表に期待する!」=2021年時点

立憲民主党は2021年10月の衆議院議員総選挙で、109議席だった公示前勢力が96議席へと一気に13議席も減少。当時の枝野幸男代表がその責任を取るかたちで退き、泉健太氏が代表選を制し、立憲民主党の代表に就任しました。

泉氏はくしくも岸田文雄首相、日本共産党の志位和夫委員長らと同じ7月29日生まれですが、1957年生まれで今年66歳になる岸田氏、1954年生まれで今年69歳になる志位氏らと異なり、泉氏は今年49歳とまだまだ若いリーダーです。

その泉氏は就任時の会見で、こんな趣旨の内容を述べました(『さっそく難しい舵取り迫られる立憲民主・泉健太新代表』等参照)。

  • 立憲民主党としてさまざまな国会活動をおこなってくるなか、常に『自民党と戦っている政党』というイメージがあった(が)、やはり原点には、国民の皆さまに何をお届けするかということが大事である
  • ともすれば自民党の方ばかり見てしまい、対抗してしまって、国民の側に対する説明、発信、こういうものが弱くなっていたのではないか
  • やはり立憲民主党の政策、立憲民主党の考え方をできるだけ多くの国民の皆さまに理解をしていただいて、味方を増やしていく。共感して頂けいただける方を増やしていくことが重要ではないのか

立憲民主党の新代表に選ばれた47歳の泉健太氏は昨日、記者会見で「自民党との対決」だけでなく、国民にメッセージを届ける政党を目指す考えを示しました。ただ、肝心の日本共産党などとの選挙協力を巡っては、さっそく、難しい舵取りを迫られるでしょう。さらには、立憲民主党のこれまでの行動に照らし、泉氏が述べる方向に同党が変わることができるかどうかは微妙です。立憲民主党の新代表早いもので、今日からもう12月ですね。まだ1年を総括するには早いかもしれませんが、それでも1年を振り返るにはちょうど良いタイミングかもし...
さっそく難しい舵取り迫られる立憲民主・泉健太新代表 - 新宿会計士の政治経済評論

すぐに否定された「提案路線」

どれも、正論です。

このあたりは「自民党と戦っている」というよりも、「自民党の足を引っ張っている」、「自民党のあら捜しをしている」と評価した方が正確ではないかとも思えますが、それでも「立憲民主党として、どんな考え方を持ち、どんな政策を提案しているのか」を国民に理解してもらうための努力が、同党に不足していることは間違いないからです。

つまり、この泉氏の発言からは、従来型の「スキャンダル追及」からは距離を置き、国民の声を聴きながら、よりよい政治を目指していくという方向性が見えた格好であり、立憲民主党が泉氏の述べるとおりの方向に向かうのならば、それはそれで歓迎すべきでもありました。

ところが、非常に残念なことに、この「提案路線」はすぐに否定されてしまいます。

翌・2022年7月に行われた参院選で、公示前に45議席だった立憲民主党は、改選23議席が17議席に減少し、非改選22議席と合わせた勢力は39議席へと、じつに6議席も減らしてしまったからです。改選対象の4分の1以上が落選した、という言い方をしても良いでしょう。

これにより、立憲民主党の執行部は刷新され、新三役が幹事長に岡田克也氏、政調会長に長妻昭氏、国対委員長に安住淳氏がそれぞれ就任。一種の「先祖返り」状態となってしまいました(『立憲民主党の新執行部人事で明らかになる「人材払底」』等参照)。

果たしてオールドメディアは立憲民主党新執行部を「統一教会関係者が含まれている」などと批判するのでしょうか?立憲民主党は本日の両院議員総会で、新執行部の人事を了承したのだそうですが、その三役とは岡田克也幹事長(69)、長妻昭政調会長(62)、安住淳国対委員長(60)だそうです。いずれも民主党政権時代の閣僚経験者で、人材の払底ぶりは深刻でしょう。立憲民主党に突き刺さる統一教会ブーメラン先日の『今度は「統一教会ブーメラン」が立憲民主党に発動する』でも紹介したとおり、立憲民主党自身の発表によれば、立憲民主...
立憲民主党の新執行部人事で明らかになる「人材払底」 - 新宿会計士の政治経済評論

小西問題・うな丼問題…迷走する立憲民主党

その後の立憲民主党の迷走は、多くの方々も認識しているとおりです。

なかでも強烈だったのは、いわゆる「小西問題」――小西洋之・参議院議員が「総務省の内部文書」と称する怪文書を片手に高市早苗・経済安保担当相を追及し、さらには「サル・蛮族」などの暴言を吐いて社会の強い批判を浴びた問題への立憲民主党の対応でした。

本来ならば、立憲民主党は自党に所属する議員の不祥事に際し、直ちに社会に向けて謝罪するとともに、必要な処分を行うべきですが、こうした初動が遅れ、日本維新の会が共闘凍結を宣言し、4月の衆参補選では獲得議席がゼロになるなどの惨状となっています。まさに、組織マネジメントの失敗例でしょう。

日本維新の会の馬場伸幸代表は20日の会見でも改めて、立憲民主党との「政策協議」の凍結を継続すると述べたようです。「小西文書」問題、「サル・蛮族」暴言問題、小西氏の一般人や報道機関などに対する恫喝問題…。これらはつまるところ、立憲民主党という「組織」としてのマネジメントの失敗例です。というのも、同党は小西氏に対する処分も遅く、内容も不十分だったからです。小西文書問題は高市氏説明で「勝負あり」「小西問題」といえば、いまや立憲民主党そのものを象徴する事案のようなものです。この問題については、当ウェブサ...
「小西問題」は立憲民主党「組織マネジメント」の失敗 - 新宿会計士の政治経済評論

泉健太氏、「150議席未満なら辞任」

こうした泥船状態となった立憲民主党ですが、泉代表は10日の両院議員懇談会で、「次期衆院選で150議席未満なら代表を辞任する」と発言したとの報道が話題となっているようです。

衆院選150議席未満なら辞任 泉立民代表が表明

―――2023年05月11日10時59分付 時事通信より

立民・泉代表、次期衆院選で150議席下回れば代表辞任…1・5倍の議席獲得が必要

―――2023/05/11 12:11付 読売新聞オンラインより

少し意地悪な言い方をすれば、「なるほど、うまい逃げ方を思いついたものだ」、などと思ってしまいます。

150議席といえば、現在の97議席からさらに1.5倍以上に勢力を伸ばす必要があります。2021年の衆院選直前の109議席と比べても1.4倍です。

自然に考えて、それはかなり難しいといえます。

もっと意地悪な言い方をすれば、岸田文雄首相が解散総選挙を決断するであろうタイミング次第では、立憲民主党は150議席はおろか、現有の97議席すら大きく下回ってしまい、下手をすると日本維新の会に「最大野党」の地位を奪われかねません。

もちろん、『岸田首相と自民党にとっての「早期解散総選挙の得失」』でも論じたとおり、かりに岸田首相が「早期解散」を選べば、日本維新の会は候補者擁立が間に合わず、結果的に当選者数が立憲民主党のそれを下回るという可能性はあるでしょう。

岸田首相が衆院解散総選挙に踏み切るのかどうかはわかりませんが、合理的に考えて、その理由はありそうです。というのも、日本維新の会が統一地方選で躍進し、衆院選でも候補者を積極的に擁立する構えを見せているからです。いまこのタイミングで解散総選挙を実施すれば、自民党は(多少議席を減らすかもしれないにせよ)過半数は確保するでしょうし、なにより維新の伸びを抑制することができるからです。ここで参考になるのが、ニューズサイト『SAKISIRU』編集長の新田哲史氏のツイートでしょう。首相の発言が微妙に変わった…!?産経...
岸田首相と自民党にとっての「早期解散総選挙の得失」 - 新宿会計士の政治経済評論

しかし、このネット全盛時代において、「小西問題」「うな丼問題」を含めた立憲民主党のスキャンダル追及特化型政治に辟易している有権者の数は、増えることはあっても減ることはあり得ません。

むかしからよく「選挙は水物」だといわれますが、それでも著者自身の予測だと、自民党と立憲民主党がどちらも勢力を10~20議席ほど減らし、その分を日本維新の会がかっさらうことで、立憲民主党と日本維新の会の勢力が拮抗する、という可能性があると考えています。

立憲民主党自体が選挙後ももつのかどうかという問題も

このように考えていくと、うがった見方ですが、やはり泉氏の「150議席勝敗ライン宣言」は、「背水の陣」の可能性だけでなく、形を変えた「逃亡宣言」という可能性もありそうです。

正直、例の入管法問題(『野党利権は終焉へ?末期状態の「活動家政党」が迷走中』等参照)もそうですが、現在の立憲民主党を「変える」ことは難しそうにも見えます。

そうであるならば、もしも泉氏自身が「政治」をやりたいならば、立憲民主党を「変える」ことはあきらめ、党代表から下りたうえで、もう少し現実的な政党に移籍する方が選択肢としては合理的でしょう(玉木雄一郎代表に頭を下げ、古巣の国民民主党に戻る、など)。

もっとも、次回総選挙のタイミングと結果次第では、立憲民主党そのものが極左政党とその他有象無象に空中分解するという可能性もありますので、その場合はわざわざ辞任しなくても良い、という考えもあるかもしれませんが…。

新宿会計士:

View Comments (23)

  • 議席減らしたとしても実質的には150議席に等しいとか言い出すんじゃないすかね

    •  立憲民主党も「精神的勝利」が十八番ですから十分ありうるでしょうね(冷笑)。

  • 泉健太48歳。
    理想に燃えて党首になったのに、ホロ苦い青春でしたね。
    大卒後から直で福山哲郎秘書、そこから政界入りだそうですが、行き先間違えなきゃ違った未来もあったかもですね。
    販社まがいの活動家集団を制御するなんてキレイな人じゃ無理じゃないかなぁ。しらんけど。

    • 純粋な人のようですから、行き先間違え無ければ。ただ、純粋な人は、行き先間違えるというパラドックスもあります。
      かくして、歴史の不純さは続く、ですか?
      もう一つ、純粋故に、現実を見ず、現実的計算が出来ないのかも。
      固定支援層のみに支えられて、ようやく90議席、あとどうやったら、60も積み増し出来るの?
      これは、今から、辞任します宣言のつもりですね。

      •  >販社まがいの活動家集団

         安愚楽牧場の事でしょうか。まああそこも「反社集団」みたいなものですが。

  • いいカッコしいとしか映らん
    目標数字に現実味がなさすぎて、降ろされたのでなく有言実行、責任を全うしたという言葉が退く際に欲しいというのが透けて見える
    玉木氏は本気で政権を取りに行くつもりならば立民からの移籍、特に選挙が見えてからの移籍は断じて認めるべきではないと自分は思うけども

  •  「次の衆院選、150小選挙区で与党と互角に戦える選挙区をつくる。そうすればその次は政権を狙える」と岡田幹事長が言い続けている(=立憲民主党の方針)ので、それを踏襲したものでしょう。実現可能性はまた別の問題ですが。

  • 責任の無い立場で好き放題言えるかつての状態に、一刻も早く戻りたいだけなんでしょ。
    まぁ今とあんまり変わらない気もしますが…w

  • 2023年3月30日現在:衆議院議員97名参議院議員38名計135名
    両院数と間違えている?

  • 立民が分裂する可能性はあるのか。
    あるとしたら受け皿になるのは維新・国民・共産ということになるのか。
    面白そうだけど。

  • 夢物語の立憲民主党政権の実現。
    それに捧げられた、いわば虚無への供物が若く無名の泉健太氏。
    立憲民主党のジリ貧の党勢に対して責任を追求されるだけの哀れな子羊です。
    やっとこ自分がどういう状況なのか悟ったのでしょう。
    衆院選後に供犠が行われることを受け入れたようですね。

  • 立件がどうなろうと知ったこっちゃないが、泥舟から逃げ出す議員を他党は受け入れちゃいけないと思う。個人的には松原さんくらいしか大丈夫そうな人はいないのでは、と思う。

    昔の民主党はまだまともに政策を論じることが出来る政党だったけど、社会党崩れに庇を貸して母屋を乗っ取られてからは糞政党に成り下がった。
    この、母屋を乗っ取った連中がどっかの党に移れば、またそこで同じことを繰り返すだろう。

    目立つのは蓮舫や小西、原口やどっかのアナウンサー崩れ辺りだが、小物でも同じ穴のムジナが居る可能性大。目立たないだけにスクリーニングは難しいかも。
    多少なりともまともな議員が居たらその人には申し訳ないが、一旦全議員消えてもらった方が良いように思う。

    • 立憲解体後の注目はやはり、「事務局」の行き先ですね。
      こいつらが幹細胞じゃないかと。

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