日本にとっての重要な貿易相手国を5つ列挙すると、中国、米国、豪州、台湾、韓国、といったところでしょう。資源高の影響で、豪州やサウジ、UAEといった諸国との貿易額が膨らんでいるからです。ただ、中国は日本にとって、豪州に続く貿易赤字相手国でもあります。中国が日本にとっての「お得意様」になっているというよりも、実態はむしろ日本が中国にとっての「お得意様」になっている格好だ、と言っても良いかもしれません。
目次
輸出トップは米国:1年前と大きな違い
財務省税関は昨日、『普通貿易統計』の2023年3月分までのデータを公表しています。
本稿ではこれについて、1月から3月までの3ヵ月分のデータについて、相手国別にまとめておきます。
まずは輸出です(図表1)。
図表1 輸出(2023年1~3月)
相手国 | 金額 | 割合 |
1位:米国 | 4兆3646億円 | 18.95% |
2位:中国 | 3兆8359億円 | 16.66% |
3位:韓国 | 1兆6650億円 | 7.23% |
4位:台湾 | 1兆5142億円 | 6.58% |
5位:タイ | 1兆0267億円 | 4.46% |
6位:香港 | 9921億円 | 4.31% |
7位:シンガポール | 6757億円 | 2.93% |
8位:ドイツ | 6039億円 | 2.62% |
9位:豪州 | 5587億円 | 2.43% |
10位:インド | 5485億円 | 2.38% |
その他 | 7兆2436億円 | 31.45% |
合計 | 23兆0289億円 | 100.00% |
今年1月から3月までの輸出高は、トップが米国で4兆3646億円、2位が中国で3兆8359億円でした。ちなみに2022年1-3月に関しては、トップが中国で4兆3256億円、2位が米国で3兆9166億円でしたので、ちょうど1年で輸出相手国のトップが入れ替わった格好です。
2022年1-3月と23年1-3月の比較(輸出)
- 1位:中国(4兆3256億円)→米国(4兆3646億円)
- 2位:米国(3兆9166億円)→中国(3兆8359億円)
- 3位:韓国(1兆6907億円)→韓国(1兆6650億円)
- 4位:台湾(1兆5470億円)→台湾(1兆5142億円)
- 5位:香港(9939億円)→タイ(1兆0267億円)
- 6位:タイ(9567億円)→香港(9921億円)
- 7位:シンガポール(6172億円)→シンガポール(6757億円)
- 8位:ドイツ(5862億円)→ドイツ(6039億円)
- 9位:ベトナム(5211億円)→豪州(5587億円)
- 10位:豪州(4941億円)→インド(5485億円)
金額だけで見れば、この1年間で日本社会の対中輸出依存度が低下した、という言い方をしても良いでしょう。
最大の輸入相手国は中国:輸入額は米国の2倍以上
次に、輸入です(図表2)。
図表2 輸入(2023年1~3月)
相手国 | 金額 | 割合 |
1位:中国 | 6兆0348億円 | 21.39% |
2位:米国 | 2兆9136億円 | 10.33% |
3位:豪州 | 2兆7618億円 | 9.79% |
4位:UAE | 1兆2624億円 | 4.47% |
5位:サウジアラビア | 1兆2528億円 | 4.44% |
6位:台湾 | 1兆1850億円 | 4.20% |
7位:韓国 | 1兆0094億円 | 3.58% |
8位:インドネシア | 1兆0043億円 | 3.56% |
9位:タイ | 8805億円 | 3.12% |
10位:マレーシア | 8560億円 | 3.03% |
その他 | 9兆0498億円 | 32.08% |
合計 | 28兆2103億円 | 100.00% |
輸入に関しては、トップが中国であり、2位の米国の倍以上という鉄もない金額であって、日本の輸入額の約2割を超えていることがわかります。また、2位から5位までは、資源国などである米国、豪州、UAE、サウジアラビアなどが並び、台湾と韓国の「逆転」も常態化していることがわかります。
参考までに、輸入についても昨年と比較しておきましょう。
2022年1-3月と23年1-3月の比較(輸入)
- 1位:中国(5兆5492億円)→中国(6兆0348億円)
- 2位:米国(2兆5975億円)→米国(2兆9136億円)
- 3位:豪州(2兆1199億円)→豪州(2兆7618億円)
- 4位:サウジアラビア(1兆0587億円)→UAE(1兆2624億円)
- 5位:台湾(1兆0430億円)→サウジアラビア(1兆2528億円)
- 6位:UAE(1兆0187億円)→台湾(1兆1850億円)
- 7位:韓国(9940億円)→韓国(1兆0094億円)
- 8位:タイ(8128億円)→インドネシア(1兆0043億円)
- 9位:インドネシア(7463億円)→タイ(8805億円)
- 10位:ベトナム(7285億円)→マレーシア(8560億円)
台湾が輸入相手国として5位から6位に転落していますが、日本にとって台湾はUAEやサウジアラビアなどと並ぶ重要な輸入相手国であることがわかります。
貿易高では中国、米国、豪州、台湾などが上位に
続いて確認するのは、貿易高、つまり「輸出+輸入」です(図表3)。
図表3 貿易高(2023年1~3月)
相手国 | 金額 | 割合 |
1位:中国 | 9兆8707億円 | 19.29% |
2位:米国 | 7兆2782億円 | 14.22% |
3位:豪州 | 3兆3205億円 | 6.49% |
4位:台湾 | 2兆6992億円 | 5.28% |
5位:韓国 | 2兆6744億円 | 5.23% |
6位:タイ | 1兆9072億円 | 3.73% |
7位:UAE | 1兆5878億円 | 3.10% |
8位:インドネシア | 1兆4968億円 | 2.93% |
9位:サウジアラビア | 1兆4754億円 | 2.88% |
10位:ベトナム | 1兆3775億円 | 2.69% |
その他 | 17兆4802億円 | 34.16% |
合計 | 51兆1679億円 | 100.00% |
これは、大変にわかりやすい図式です。
グロスアップすると、中国が依然として日本にとっての最大の貿易相手国ではあるにせよ、これに米国が続き、また、輸入額の大きさから豪州が3位に浮上。4位が台湾、5位が韓国という状況で、日本にとって最も重要な相手国のひとつである台湾が4位に転落してしまっている格好です。
貿易高で比較してみると、昨年は3位だった韓国が一気に5位に転落する一方、4位だった豪州が3位に、5位だった台湾が4位に、それぞれ上昇していることがわかります。
2022年1-3月と23年1-3月の比較(貿易高)
- 1位:中国(9兆8748億円)→中国(9兆8707億円)
- 2位:米国(6兆5141億円)→米国(7兆2782億円)
- 3位:韓国(2兆6847億円)→豪州(3兆3205億円)
- 4位:豪州(2兆6140億円)→台湾(2兆6992億円)
- 5位:台湾(2兆5900億円)→韓国(2兆6744億円)
- 6位:タイ(1兆7695億円)→タイ(1兆9072億円)
- 7位:ドイツ(1兆2738億円)→UAE(1兆5878億円)
- 8位:UAE(1兆2553億円)→インドネシア(1兆4968億円)
- 9位:ベトナム(1兆2496億円)→サウジアラビア(1兆4754億円)
- 10位:サウジアラビア(1兆2023億円)→ベトナム(1兆3775億円)
貿易黒字国トップは米国、続いて香港・韓国
これらのデータに続き、今度は日本にとっての貿易黒字国、貿易赤字国の一覧を確認してみましょう。
まずは、貿易黒字国です(図表4)。
図表4 貿易黒字国(2023年1~3月)
相手国 | 金額 | 割合 |
1位:米国 | +1兆4510億円 | 27.74% |
2位:香港 | +9261億円 | 17.71% |
3位:韓国 | +6556億円 | 12.53% |
4位:シンガポール | +3559億円 | 6.81% |
5位:インド | +3446億円 | 6.59% |
6位:台湾 | +3292億円 | 6.29% |
7位:オランダ | +3179億円 | 6.08% |
8位:メキシコ | +2384億円 | 4.56% |
9位:英国 | +1639億円 | 3.13% |
10位:タイ | +1463億円 | 2.80% |
その他 | ▲10兆1592億円 | 194.24% |
合計 | ▲5兆2303億円 | 100.00% |
日本は2023年1-3月の3ヵ月間で5兆円を超える貿易赤字を計上しているのですが、米国、香港、韓国、台湾などとの間ではそれぞれ貿易黒字であることがわかります。
また、貿易黒字相手国について変化を取ってみても、特に上位3ヵ国(米国、香港、韓国)についてはほとんど状況は変わっていません。目立つ変化といえば、台湾が6位に転落する一方、シンガポールが4位に浮上するなどの状況でしょう。
2022年1-3月と23年1-3月の比較(黒字額)
- 1位:米国(+1兆3192億円)→米国(+1兆4510億円)
- 2位:香港(+9564億円)→香港(+9261億円)
- 3位:韓国(+6967億円)→韓国(+6556億円)
- 4位:台湾(+5040億円)→シンガポール(+3559億円)
- 5位:シンガポール(+3190億円)→インド(+3446億円)
- 6位:オランダ(+2484億円)→台湾(+3292億円)
- 7位:英国(+1527億円)→オランダ(+3179億円)
- 8位:タイ(+1439億円)→メキシコ(+2384億円)
- 9位:インド(+1386億円)→英国(+1639億円)
- 10位:メキシコ(+1152億円)→タイ(+1463億円)
貿易赤字国1~4位は中国を除くとすべて資源国
最後に、日本にとっての貿易赤字国一覧です(図表5)。
図表5 貿易赤字国(2023年1~3月)
相手国 | 金額 | 割合 |
1位:豪州 | ▲2兆2031億円 | 42.12% |
2位:中国 | ▲2兆1989億円 | 42.04% |
3位:サウジアラビア | ▲1兆0302億円 | 19.70% |
4位:UAE | ▲9370億円 | 17.91% |
5位:インドネシア | ▲5118億円 | 9.78% |
6位:マレーシア | ▲3762億円 | 7.19% |
7位:カタール | ▲3397億円 | 6.49% |
8位:ベトナム | ▲3141億円 | 6.01% |
9位:クウェート | ▲2851億円 | 5.45% |
10位:ブラジル | ▲2594億円 | 4.96% |
その他 | +3兆2252億円 | 61.66% |
合計 | ▲5兆2303億円 | 100.00% |
一方の赤字国ランキングについては、大きな変化が生じています。これを見る前に、あわせて昨年と今年の変化についても確認しておきましょう。
2022年1-3月と23年1-3月の比較(赤字額)
- 1位:豪州(▲1兆6258億円)→豪州(▲2兆2031億円)
- 2位:中国(▲1兆2235億円)→中国(▲2兆1989億円)
- 3位:サウジアラビア(▲9150億円)→サウジアラビア(▲1兆0302億円)
- 4位:UAE(▲7821億円)→UAE(▲9370億円)
- 5位:ロシア(▲3746億円)→インドネシア(▲5118億円)
- 6位:カタール(▲3366億円)→マレーシア(▲3762億円)
- 7位:インドネシア(▲3103億円)→カタール(▲3397億円)
- 8位:南アフリカ共和国(▲2324億円)→ベトナム(▲3141億円)
- 9位:マレーシア(▲2321億円)→クウェート(▲2851億円)
- 10位:クウェート(▲2111億円)→ブラジル(▲2594億円)
1位から4位までの順序は変わっていないものの、赤字額自体が大きく増えているのです。
とくに資源価格上昇の影響でしょうか、豪州が日本にとっての最大の貿易赤字国となっていますが注目点はそこだけではありません。「資源国」ではないはずの中国に対する貿易赤字額が、昨年と比べて1兆円近く増えているというのも興味深いところです。
中国の通貨・人民元は事実上のドルペッグに近い通貨でもあるためでしょうか、円安の影響で中国からの輸入品価格が増えている、という可能性には留意が必要でしょう。
日本国内では過去に、「中国は日本にとってのお得意様だ」、「中国市場は将来有望だ」、といった意見を目にすることが多かったのですが、現実の貿易構造は、そうはなっていません。むしろ日本こそ、中国にとっての重要な「お得意様」、というわけです。
そして、今後の米中の「半導体戦争」次第では、日中貿易高のうち、特に日本から中国への輸出が減る可能性がありますので、そうなると対中貿易赤字がますます拡大する、という可能性もありそうです。
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対中収支(赤字拡大)については、輸出額の変動割合が為替レートの変動割合と大きく乖離していることから、「輸出規模の縮小によるところなのかな?」と、思いました。
中国側が買わなくなったのか?、日本側が売らなくなったのか?。
どうなのでしょうね・・。
中国との貿易額と言っても、これは、日本企業が中国を工場としているから。
日本企業が中国の現地法人企業との企業内取引している分。日本で必要なものを中国に工場を作って製造し日本に輸入している。
日本企業が日本で企画したものを中国内で製造している分。
ニトリ、アイリスオーヤマ、ダイソー、イオン、今や低価格品は殆ど、日本で企画、中国で製造している。
要は、中国との取引と言っても、中国企業の意思ではなく、日本企業が中国という国土で製造している。
中国との貿易とは、日本企業の輸出入の自家取引分が大きい。
日本企業が勝手に中国にお金を落としているだけです。本来、日本にお金が落ちる分を中国に落としている。
その割合を示さないと、中国との貿易実態は掴めないはず。
先進国の製造業は環境コストが無い中国で安価に作って国内で儲けている。おそらく中国は物凄い規模で公害病が発生していると思う。その見えない負担を中国がしていると思えば、これくらいの貿易赤字は許容すべきかと思います。
とは言ったものの、やはりこの赤字は大きすぎますね。莫大な貿易黒字がかの国の傲慢さを生んでいるのですから。隣国は窮乏している方が安心。