日本にとって、中国は相変わらず「最大の貿易相手国」ではありますが、輸出面で見ると、米国が中国に代わって最大の輸出相手国に浮上することも増えてきました。また、意外と知られていない事実があるとすれば、中国は日本にとって、巨額の貿易赤字を計上している相手国である、という点でしょう。某経済新聞が積極的に宣伝した「14億人の市場」を巡っては、少なくとも貿易統計上は、日本企業に売上や利益をもたらしているようには見えません。貿易赤字を垂れ流しているからです。
貿易高トップ10
財務省税関は本日、2023年2月における普通貿易統計の速報を公表しています。
これによれば日本の貿易高は16兆2067億円(うち輸出が7兆6543億円、輸入が8兆5524億円)で、貿易収支は8981億円の赤字でした。本稿では「速報」的に、貿易相手国の状況をまとめておきます(図表1)。
図表1 日本の貿易高(2023年2月)
貿易相手国 | 金額 | 構成比 |
合計 | 16兆2067億円 | 100.00% |
1位:中国 | 2兆8429億円 | 17.54% |
2位:米国 | 2兆3816億円 | 14.70% |
3位:豪州 | 1兆0820億円 | 6.68% |
4位:台湾 | 8834億円 | 5.45% |
5位:韓国 | 8528億円 | 5.26% |
6位:タイ | 6318億円 | 3.90% |
7位:サウジ | 4869億円 | 3.00% |
8位:インドネシア | 4799億円 | 2.96% |
9位:UAE | 4761億円 | 2.94% |
10位:ドイツ | 4608億円 | 2.84% |
まず、貿易高については、中国が相変わらずトップを占めていますが、米国が2位に迫ってきており、その差は5000億円以内に縮まっています。
その一方、国際的な資源高の影響か、豪州、サウジ、UAEなどの資源国が相変わらず貿易相手国上位に顔を出しており、これに加えて特筆すべきは、台湾が韓国を抑え、豪州に続く第4位の貿易相手国に浮上していることでしょう。
輸出相手国は米国がトップで中国、韓国と続く
これを輸出、輸入に分解してみましょう。まずは輸出の側です(図表2)。
図表2 日本の輸出高(2023年2月)
輸出相手国 | 金額 | 構成比 |
合計 | 7兆6543億円 | 100.00% |
1位:米国 | 1兆4560億円 | 19.02% |
2位:中国 | 1兆3165億円 | 17.20% |
3位:韓国 | 5317億円 | 6.95% |
4位:台湾 | 5223億円 | 6.82% |
5位:香港 | 3632億円 | 4.75% |
6位:タイ | 3442億円 | 4.50% |
7位:シンガポール | 2027億円 | 2.65% |
8位:ドイツ | 1984億円 | 2.59% |
9位:インド | 1852億円 | 2.42% |
10位:豪州 | 1824億円 | 2.38% |
輸出では米国が中国を抑えてトップに立ちました。また、韓国に対する輸出高は3位ですが、台湾との差が再び縮まっており、「台韓再逆転」も視野に入っています。それ以外の輸出相手国としては香港、タイ、シンガポールなど、アジア諸国が上位に来ています。
輸入面では相変わらず中国がトップだが…
続いて輸入高についても確認しておきましょう(図表3)。
図表3 日本の輸入高(2023年2月)
輸入相手国 | 金額 | 構成比 |
合計 | 8兆5524億円 | 100.00% |
1位:中国 | 1兆5264億円 | 17.85% |
2位:米国 | 9257億円 | 10.82% |
3位:豪州 | 8997億円 | 10.52% |
4位:サウジ | 4174億円 | 4.88% |
5位:UAE | 3642億円 | 4.26% |
6位:台湾 | 3611億円 | 4.22% |
7位:韓国 | 3211億円 | 3.75% |
8位:インドネシア | 3200億円 | 3.74% |
9位:タイ | 2876億円 | 3.36% |
10位:マレーシア | 2850億円 | 3.33% |
輸入に関しては中国が最大の相手国ですが、昨今の資源高の影響もあってか、2位以降は米国、豪州、サウジ、UAEと、日本にとっての資源輸入相手国がずらずら並びます。また、近年、サプライチェーン面での結びつきを強めている台湾が韓国を抑えて6位に立っています。
貿易黒字相手国トップは米国:続いて香港、韓国
さて、図表1~3については貿易額や輸出入などに焦点を当てたランキングですが、少し視点を変え、日本が貿易黒字を計上している相手国、貿易赤字を計上している相手国についてもランキングを取ってみました。このうち貿易黒字国側のデータが、図表4です。
図表4 日本の貿易黒字相手国(2023年2月)
黒字相手国 | 金額 | 構成比 |
合計 | ▲8981億円 | 100.00% |
1位:米国 | 5303億円 | -59.05% |
2位:香港 | 3442億円 | -38.32% |
3位:韓国 | 2106億円 | -23.45% |
4位:台湾 | 1613億円 | -17.95% |
5位:インド | 1253億円 | -13.96% |
6位:オランダ | 1073億円 | -11.95% |
7位:シンガポール | 909億円 | -10.12% |
8位:メキシコ | 767億円 | -8.53% |
9位:タイ | 566億円 | -6.30% |
10位:英国 | 519億円 | -5.78% |
これによると、日本にとって最も多くの貿易黒字を計上している相手国は米国で、続いて香港、韓国、台湾が続きます。
米国に対しては、日本からは自動車などの最終製品の輸出が多いという特徴があり、また、香港に関しては日本からは輸出する金額が圧倒的に多いため、結果的に貿易黒字相手国としても上位に入ってくるのですが、その一方で台湾と韓国は、日本にとっては「モノを作るためのモノ」の輸出で儲けているという相手国です。
貿易構造的に台湾と韓国は非常によく似ているのですが、近年、台湾の日本にとっての貿易上の重要性が高まっていることもあり、貿易高、輸出入額、貿易収支でも非常に似通った数値が出ているというのは興味深い点でしょう。
中国は日本にとって貿易赤字相手国
最後に、日本が貿易赤字を計上しているおもな相手国をまとめたものが、図表5です。
図表5 日本の貿易赤字相手国(2023年2月)
赤字相手国 | 金額 | 構成比 |
合計 | 8981億円 | 100.00% |
1位:豪州 | 7173億円 | 79.87% |
2位:サウジ | 3479億円 | 38.74% |
3位:UAE | 2522億円 | 28.09% |
4位:中国 | 2099億円 | 23.37% |
5位:インドネシア | 1601億円 | 17.82% |
6位:カタール | 1258億円 | 14.01% |
7位:マレーシア | 1219億円 | 13.57% |
8位:チリ | 770億円 | 8.57% |
9位:ブラジル | 713億円 | 7.94% |
10位:南アフリカ共和国 | 712億円 | 7.92% |
トップには資源国である豪州が来ます。鉱物性燃料だけでなく、さまざまな資源類を日本に輸つしているためです。また、2位と3位には産油国であるサウジアラビアとUAEが来ますが、4位には中国がやってきます。
じつは、中国は日本にとって、恒常的に貿易赤字を計上している相手国でもあります。
日本から中国への輸出品は、高付加価値な資本財・中間素材が中心ですが、中国から日本への輸出品は、PCやスマートフォンといったIT機器を別とすれば、軽工業品(衣類、雑貨類)が中心であり、「世界の工場」たる中国に日本が「工場用の資材」を輸出しているという構図が浮かび上がります。
このあたり、某経済新聞がしきりに煽った「日本企業が中国に進出すべき理由」は、「中国という14億人の市場がある」、というものだったはずですが、現実に中国が日本企業にとって「14億人の市場」として日本企業に売上と利益をもたらしている兆候は、貿易統計からは見えてきません。貿易赤字を垂れ流しているからです。
いずれにせよ、日本も経済安保の観点から、基本的価値を共有しない国が最大の貿易相手国である、という状況を改善することができるかどうかについては今後の注目点のひとつであることは間違いありません。
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香港との貿易が中国本土との貿易の中継を担っている点を考慮すべき。
あの少ない人口と小さな土地で貿易額のすべてをまかなえるわけないので。
日本⇔香港⇔?
お隣は大工業地区である深圳。香港はいわゆる大湾区経済の玄関の一つ。
このからくりがどうなっているかは日本側の対香港輸出入統計の品目を精査するとだいたい予測できるかもしれない。
消費市場としての中国は多くの日本企業は現地で生産してますから、それらは貿易統計に反映されない。
今でも現地でビジネスをしてるのはメリットがあるからです。
もっとわかりやすく書いたほうがよかったかな。
3442-2099=1343
対香港黒字額3442のうちのどれだけが中国本土へ再輸出されているかはデータがないがゼロではない可能性を排除することはできない。そうであるなら日中貿易は全体として日本側の黒字の可能性も否定できない(2099を超えていれば日本の黒字)。以上はあくまで仮説の域である。
中国14億人市場を餌に外資を取り込んで、技術を取得したら国内企業を優先して外資には市場を与えない。挙句、撤退しようとしたら資金やら設備やら接収する。これが中国のやり方です。
現在の日中貿易は中国が「世界の工場」の立場あっての関係です。既に人件費の高まりで東南アジア等へのシフトが始まっていることから、今後徐々に縮小していくと予想されます。結局「14億人の市場」は投資と技術を呼び込むための甘言に過ぎず、中国の強国化に体よく利用されただけだったのでしょう。
田中角栄という人物が中国に大盤振る舞いした事が今も評価されていますが、単純に自分のいる地域の損得勘定しか出来なかったようにしか思えません。
支那に輸出をする企業にしてみれば自分の会社が赤字にならなければドウと言うことはなく、自分の会社が儲かれば国全体としてドウであろうと知ったことではないと言う論理で輸出しているのではないでしょうか。お上も(何処の役所の担当か分からないのでこの言葉を使いますが)国としての赤字を計上したくなければ例え輸出企業が儲かろうと、本来なら国としての赤字分を輸出企業の輸出額に対応して負担させる必要があるように思います。
しかし、ここまでやると製造業者も輸出する気力も無くなり、問題でしょうね。だからといって国として赤字を垂れ流していて良いというものでもないのですが。ではどうしたらよいかと言うことはお役所が考えることでしょうが。
にほんきぎょうは、中国リスクに備えて撤退ではなく、中国で売る物は中国で作るという方針の会社が多いようです。この為、日本から輸出していた部品などの輸出は減少するものと思われます。
中国から輸入している物は供給不安が付き纏いますが、価格差を克服するのは容易では無いと思いますので、当面輸入が減る事は考えにくいと思います。
この為、日本の貿易赤字は増加傾向では無いかと思います。
原発の再稼働が当面の解決策では無いでしょうか?
タイトルの日中が逆のような気がします。