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韓国が先制的に日本をホワイト国に復帰:甘すぎる認識

韓国メディアの報道によると、韓国が日本を輸出管理上の「ホワイト国」に復帰させるのだそうです。いわく、「我々が先に制度を改善すれば日本も当然これに応じざるを得ない」、とのことです。甘いと言わざるを得ません。日本が韓国を「(旧)ホワイト国」に戻すかどうかに関しては、今月17日の西村康稔経産相の記者会見が参考になるでしょう。

対韓輸出管理適正化措置の本質

以前の『韓国をホワイト国に戻してはならない輸出管理上の理由』でも触れたとおり、輸出管理とは、軍事転用されるおそれがある品目の輸出をコントロールすることで、わが国と世界の平和と安全を守ろうとする仕組みのことです。

韓国政府が日本政府に対し、輸出「規制」の撤回と「ホワイト国リスト」への韓国の編入を強く要求しているようであることは、ここ数日の韓国メディアの報道でも明らかです。しかし、そもそも日本政府が対韓輸出管理適正化措置を発動した原因――日韓の信頼が損なわれた状況で、韓国が輸出管理を巡って不適切な事例を発生させたうえ、WTO提訴をしたことなど――が除去されていない以上、日本政府は韓国側の要求に応じることはできませんし、応じてはなりません。無名の専門家がウェブ評論をする時代社会のインターネット化に伴い、興味深...
韓国をホワイト国に戻してはならない輸出管理上の理由 - 新宿会計士の政治経済評論

日本政府は2019年に韓国を輸出管理上の「ホワイト国」(※現在の名称でいう「グループA」)から除外するとともに、フッ化水素など3品目の韓国向けの輸出を、それまでの「一般包括許可」の対象から外し、個別許可(つまり輸出の都度許可を求める方式)に変更したのです。

その理由について経産省は、次のような内容を明らかにしています。

  • 輸出管理は国際的な信頼関係を土台として構築されている
  • 関係省庁で検討を行った結果、日韓間の信頼関係が著しく損なわれたと言わざるを得ない状況である
  • 韓国との信頼関係の下に輸出管理に取り組むことが困難になっていることに加え、大韓民国に関連する輸出管理をめぐり不適切な事案が発生した
  • よって、輸出管理を適切に実施する観点から、厳格な制度の運用を行うこととした

輸出「規制」ではありません

この措置については韓国側が勝手に自称元徴用工判決問題に対する制裁と位置付けたうえで、「輸出規制」などと誤った用語で呼んできたことは、いまさら指摘するまでもありません。

ただ、もしもこの措置が韓国に対する制裁措置であるならば、日本政府がこの措置を2019年7月1日に発表したこととの整合性がつきません。この7月1日の時点では、自称元徴用工判決を巡る日韓請求権協定に基づく第三国仲裁手続が、まだ進行中だったからです。

それに、統計データ(HS2811.11-000の対韓輸出データなど)で一部品目の対韓輸出が水膨れしていた事実からも、韓国における輸出管理において、何らかの不正が存在していた可能性が示唆されます(たとえば「日本が輸出した戦略物資の一部が第三国に横流しされていた」、など)。

いずれにせよ、対韓輸出管理適正化措置と自称元徴用工問題はまったく無関係です。

もっとも、韓国の側では自称元徴用工問題を巡る「尹錫悦(いん・しゃくえつ)ディール」、あるいは「岸田ディール」をもとに、この「輸出規制」についても解除されるとの期待感が強いようです。

韓国向け輸出管理緩和発表も「ホワイト国除外」は維持』でも指摘したとおり、日本政府は対韓輸出管理適正化措置を部分的に解除。3品目の個別許可を「特別一般包括許可」に切り替えたのですが、「(旧)ホワイト国」からの除外措置については継続されています。

日本の経産省は韓国に対する輸出管理を緩和すると発表しました。具体的にはフッ化水素など3品目の輸出許可を個別許可だけでなく、「特別一般包括許可」も適用できるようにしたのです。ただし、いわゆる「(旧)ホワイト国」から除外した扱いについては維持されます。2023/03/16 17:05追記記事末尾の誤植などを修正しています。本日の「速報」です。経産省は16日、日韓輸出管理に関する政策対話が実施され、フッ化水素、フッ化ポリイミド、レジストの3品目の輸出管理を緩和し、「特別一般包括許可」を再び適用することにしたと発表し...
韓国向け輸出管理緩和発表も「ホワイト国除外」は維持 - 新宿会計士の政治経済評論

西村大臣の発言にすべてが尽くされている

これについて西村康稔経産相は17日の記者会見で、次のように述べています。

  • まず、今回の措置は「なにか輸出管理措置を解除した」というわけではなく、2019年7月以前のグループA、いわゆるホワイト国として取り扱うことを決めたわけでもない
  • 3品目について、これまでその運用管理体制に懸念があったが、これは3月6日、韓国がWTO紛争処理手続の中断を表明したことを受けて対話を行い、かなり時間を掛けて韓国側の輸出管理当局の体制、運用、その状況、あるいは制度の措置状況などについて入念に検証を行った
  • これら3品目はこれまで個別許可を行っており、その個別許可のたびに使い道、行き先などを確認しながら進めてきているため、その実績の積み上げがあったことも踏まえながら、韓国側の体制、運用について入念に検証を行った
  • その結果、その取組、実効性の改善が認められたということ、さらに韓国側がわが国の輸出管理に関するWTOへの申立てを取り下げる旨を発表したということを確認したことを踏まえて、3品目について輸出管理の運用見直しを行うことにしたもの
  • ホワイト国の取扱いについては現段階で何か決まっているわけではない。日本としてこれまで韓国側に対して課題となっている点を明示してきており、今後のこの国のカテゴリーの取扱いについては韓国側のさらなる取組状況次第
  • 今後の政策対話を通じて通常兵器キャッチオールの運用状況など、3品目以外の幅広い品目における韓国側の輸出管理の制度、運用状況について更にその実効性をしっかり確認していくということと同時に、韓国側の今後の姿勢を慎重に見極めていきたい

正直、西村大臣のこの発言で説明は尽くされていると思います。

2019年7月以来の3年半における個別許可の運用のなかで、フッ化水素など3品目の「使い道」、「行き先」に問題がないことを確認したということです(裏読みすれば、2019年7月以前に関しては、3品目の「使い道」、「行き先」に問題があった、ということでもあります)。

したがって、輸出管理上の韓国の扱いを「(旧)ホワイト国」に戻すためには、まずは輸出管理が「両国の信頼をもとに運営されている」という前提条件を踏まえ、韓国が日本にとって、輸出管理上「信頼できる国」なのかどうかをしっかり見極める、ということに尽きます。

「日本を先制的にホワイト国復帰させる」=韓国

もっとも、韓国側ではこんな報道もありました。

韓国産業通商資源部長官「日本に先立ちホワイトリスト先制復帰」

―――2023.03.23 09:59付 中央日報日本語版より

韓国メディア『中央日報』(日本語版)によると、李昌洋(り・しょうよう)韓国産業通商資源部長官は22日、庁舎での非公式会見に応じ、韓国政府が週内に日本を「ホワイトリスト」に復帰させる意向を示したのだそうです。

その狙いについて李昌洋氏は「日本と早期復帰に合意した以上、どちらが先に排除し、復帰したかを云々するのは枝葉的」としつつも、こう述べたそうです。

我々が先に制度を改善すれば日本も当然これに応じざるを得ないという名分があり、韓国企業は輸出許可手続などが簡素化されるという実利もある」。

これがおそらく狙いでしょう。

甘いと言わざるを得ません。

そもそも韓国が日本を「ホワイトリスト」から除外した理由は、日本が韓国を「(旧)ホワイト国」から排除したことへの対抗措置です。「韓国が先に日本をホワイト国に復帰させたから、日本も韓国をホワイト国に復帰させなければならない」という「圧力」など、生じようがありません。

だいいち、日本が韓国から戦略物資を大量に輸入しているという事情もありませんので、正直、日本が韓国の輸出管理上のホワイトリストに戻ったとして、日本に何らかのメリットがあると言う者でもないでしょう。

この点、韓国が日本の輸出管理上の「(旧)ホワイト国」の地位回復を狙う理由については、『米中半導体戦争で韓国に利用された岸田首相=鈴置論考』などでも触れた、韓国観察者の鈴置高史氏の論考なども参考になるでしょう。「日米台半導体連合」に、何とかして加わろうとしているからです。

大変うれしいことに、昨日はウェブ評論サイト『デイリー新潮』に、韓国観察者である鈴置高史氏の最新論考が掲載されていました。今回のテーマは「米中半導体戦争のなかで有利な立ち位置を探る韓国が日本を利用する」、といったところであり、この見え透いた韓国の罠に見事に嵌った岸田文雄首相、という構図が見えて来ます。オールドメディアの「首脳会談成功」という外務省のプロパガンダ報道をおちょくるかのような鈴置論考、今回も説得力は抜群です。親韓?嫌韓?議論のスタートは日韓関係世の中の韓国論は、「親韓論」であれ、「嫌...
米中半導体戦争で韓国に利用された岸田首相=鈴置論考 - 新宿会計士の政治経済評論

ただ、岸田文雄首相自身は「宏池会」出身ですが、西村経産相は「宏池会」関係者ではありません。安倍派の政治家です。

このあたり、安倍派が睨みを利かせる経産省において、「宏池会政権」や「ウソツキ外務省」の意向がどこまで貫徹するのかは見物、という言い方もできるかもしれません。

新宿会計士:

View Comments (21)

  • また騙すための布石ですね。
    TV朝日やTBSあたりが、嬉々として報道するのでしょう。
    西村大臣の発言はほとんど触れないか、悪者扱いするか・・・

    岸田あたりは自分の手柄だと思ってそうです。ヤレヤレ

  • アメリカさんがデスク天板を指で弾いたんでは?

  • 韓国、虎の子の半導体が死に体で必死すぎ。
    韓国は日本をホワイト復帰したニダ!日本も応じないと韓国が死ぬニダ!と言われてもな。

  • 戻すにしても、経済産業省で最近の状況を精査した上で判断し、当然ながらパブリックコメントも募集するべきですね。

  • いやぁ、キシダ(及び松川などの親韓派)はホワイト国復帰をを「やろうとする」と思いますね。キシダはもう秘孔を突かれて「「お前はもう騙されている」状態で「3、2、1・・・」までカウントは進んでいます。パブリックコメントで叩き潰さなければなりませんよ。

  • 元々、不具合事例を発生させていない日本を対象に、相互主義を理由に発効した「ホワイト国」扱いを止めただけです。日本に何の暇疵もありません。
    自国の不具合事例発生を認め、暫定対策、歯止めとして恒久対策を実施し、その実績を日本に認められてはじめてホワイト国復帰を請うことができます。
    と、真面目に書きましたが、要は「寝言は寝てから言え」です。
    用日K国人に呼応する連中が騒ぐのが煩わしい。

    • 誤:相互主義を理由に発効した「ホワイト国」扱いを止めた
      正:相互主義を理由に発効した「ホワイト国外し」扱いを止めた

  • 韓国人らしい発想ですね。「相手を利用するなら、わが国が先に動いてテコの原理で、それ以上の成果を得る」です。嘘つき国の正体が見破られて久しいのに、ナニを言ってんのか(笑)。

    韓国が日本から見てグループA、いわゆるホワイト国に戻れるはずがない。また日本からの輸出も減少傾向だし、もちろん韓国からモノ買いません!(爆笑)

  • 韓国は単なる対抗措置で日本を格下げしたので、その解除も上からの指示だけで出来る。

    日本の場合韓国の不備があって必要に迫られて格下げしたわけだから、その必要となった懸念が解消されたことを慎重に確認する必要がある。例えトップダウンで指示があろうと必要な検討を飛ばすことは出来ない。

    韓国が日本の措置も対抗措置だと思うのは、自らの不備を認識していない証拠で、これだけをもってみてもホワイト国復帰は不可能という結論になると思う。

  • 韓国のグループA復帰ならずで,
    後頭部を殴られたと騒ぐ様子が
    目に浮かびます。

    自分勝手な願望を抱いていて,
    相手が期待通りに行動しなかったら
    非難する。中学生みたいですね。

    韓国には,徹底的に原則通りに対応することです。
    ペースに引き込まれたら,
    岸田首相にはKの法則がさく裂することでしょう。

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