もはや回らなくなっても、それは「回転ずし」と言えるのか――。こうした哲学的な問題を含め、疑問は尽きないところですが、やはり時代の流れといえるのかもしれません。人手不足対策、食品ロス対策に加え、「10年ごとに出現するバカッター」への対応という観点から、「回らない回転ずし」というものが出現しつつあるのです。
「一般に『回転ずし』とは、『回転する寿司屋』を意味する」――。
何を当たり前のことを、と思う方もいらっしゃるかもしれません。
席に座ると目の前のベルトコンベアにさまざまな皿が流れて来て、客は好きな皿を好きなだけ取って食べ、食べた分だけ精算する、という方式です。
そのお手軽さに加えて目の前をさまざまな寿司ネタが流れて来る楽しさ、「回らない寿司」と比べてお手軽な値段設定、さらには一部のチェーン店ではすし皿を投入するとおもちゃが出て来る(かもしれない)という仕組みなど、エンターテインメント性も抜群です。
小さいお子様がいらっしゃるならば、たまには回転ずしを食べに行くのも良いかもしれません(実際、回転ずしはファミリー・レストランなどと比べると、ひとつひとつの小皿の値段が安いため、「注文したけれど子供が食べてくれない」というリスクを軽減することもできます)。
このあたり、以前の『令和の最重要論点:なぜハンバーガーは回転しないのか』でも議論したとおり、「金融・エクセル・ハンバーガー評論家」である著者自身としては、「回転する店」はほかの業態にも広まってほしいという希望を持っています。
最大のカギは「急行レーンの有効活用」下は2歳児から上は32歳児まで、みんなが大好きなものといえば、回転寿司です。うどんだ、ポテトだといった商品が急行レーンを爆走する今日この頃ですが、ここで「ハンバーガー評論家」のひとりとして、ふと立ち止まって考えてみたいのが、「なぜハンバーガーは回らないのか」という、世の中でも最も緊急度の高い論点です。おそらくそのカギは、「急行レーン」です。「令和生まれの若者」問題以前の『最低限の社会常識もわきまえない「令和生まれ」の衝撃』では、当ウェブサイトの持論である、「... 令和の最重要論点:なぜハンバーガーは回転しないのか - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、冷静に考えると、やはり「回転に適するもの」とそうではないものというのものありそうです。
ハンバーガーやポテト、ラーメンなどの場合は作り立て・揚げたてで提供した方が良いという観点から、「あらかじめ製造されたハンバーガーやポテトをレーンに流す」というのは、「冷めるリスク」「伸びるリスク」が極めて高いという意味において、あまり回転には適していないのかもしれません。
(※もっとも、大手回転ずしチェーン店では、ラーメンやうどん、唐揚げやポテトを注文すれば、自席まで専用レーンなどで届けてくれるという仕組みもあります。)
いずれにせよ、この回転ずしという文化は大切にすべきである、というのが著者自身の持論ではあるのですが、大変困ったことに、この「家族連れの味方」でもある回転ずし業界が現在、大きく揺らいでいます。『バカッターは10年周期?外食迷惑行為に毅然と対応を』でも取り上げた、「10年周期で発生するバカッター」のせいです。
非常識な行動・反社会的な行動を行い、それをツイッターなどのSNSにアップロードするという者は、10年周期で出てくるものなのかもしれません。回転ずしチェーン店で不衛生な行為を撮影し、それを投稿した者が話題になっているようです。今から10年前の「バカッター行為」を思い出してしまいます。ただ、問題は単なる回転ずし業界への風評被害にとどまりません。社会全体に対する挑戦でもあるのです。社会のインターネット化のメリット当ウェブサイトではしばしば、「社会のインターネット化」を議論しています。インターネット化が... バカッターは10年周期?外食迷惑行為に毅然と対応を - 新宿会計士の政治経済評論 |
これを受けて何やら気になるプレス・リリースを発見しました。回転ずしチェーン店の「すし銚子丸」が3日、全店でタッチパネルを使用した「フルオーダーシステム」に変更
全店舗へのフルオーダーシステム導入のお知らせ
平素は格別のご愛顧を賜り誠にありがとうございます。この度、回転レールを使用することにより発生するフードロス対策や、昨今の飲食業界に大きなダメージを与えている迷惑行為への対策として、2023年4月26日(水)までに、回転レールを使用した商品のご提供を順次終了し、全店で全品タッチパネルを使用したご注文方法「フルオーダーシステム」に変更させていただくことといたしました。<<…続きを読む>>
―――2023/03/03付 『すし 銚子丸』報道発表より
これは、なかなかに衝撃的な発表ですが、やはりこれも時代の趨勢なのでしょうか。
すし銚子丸によると、今回のフルオーダー化に伴い、これまでの価格別の色皿を使用した商品の提供も順次廃止することとなる、などとしていますが、いずれにせよタッチパネルを使って注文しなければならなくなるようです。
ただ、この「タッチパネルでいちいち注文しなければならない」という仕組みは、すでにいくつかの回転ずしチェーン店でも採用されつつあり、実際、著者自身も頻繁に利用する某チェーン店の場合、この「バカッター問題」が生じる以前から、すでに寿司レーンに寿司はあまり流れて来ていませんでした。
コロナ禍の影響もあったのかもしれませんが、「回転ずし評論家」としては、「回転しない回転ずし屋」が増加することに関しては、少々気分は複雑です。
なお、タッチパネル注文にも良い点はあります。それは、寿司が長らくレーンを回り続け、カピカピになる、という問題を回避することができるようになることです。これにより食品ロスの可能性が減ることは、決して悪い話ではないでしょう。
ただ、「回転ずし」と名乗っていながら「回転しない」寿司屋の存在は、哲学的にはどう考えれば良いかという問題は残りそうです。
さらには、回転ずし業態の考え方を敷衍していくならば、たとえば牛丼屋やハンバーガー屋などで、「タッチパネル注文」、「自動配膳」、「キャッシュレス決済」などを組み合わせ、極端な話、客としては入店から食事、退店まで店員さんに一切会わないという仕組みもできるのかもしれません。
いずれにせよ、「回転問題」については引き続き、注目の価値がある論点のひとつであることは間違いないといえるでしょう。
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私の地元の寿司屋ですと、注文した寿司はベルトコンベアで流れてきます。
通常、レーンには仕切りがないのですが、地元の寿司屋では仕切りがあり寿司が到着すると仕切りが開いて取り出せる仕組みになっています。
しかも、最近開業した新幹線かもめがお皿を載せて走っています。
回転寿司は、店員が寿司を持って行く手間を省くためのものとなりそうです。
すこしピンと外れかも知れませんが、
「田舎の無人販売所」
が、マナーの悪化でなくなるようなものでしょうかね。
売り手と買い手でウィンウィンのよい関係が成立しているのに、バカがぶち壊した結果、
「流通コスト」
が余計に発生してしまう訳です。
バカにはバカ!とその場で指摘してペナルティを課する仕組みが必要ですね。
どうすればよいのかノーアイデアですが。
寿司が回らないのなら職人が回りながら握ればいいのだ。
あぁ、なるほど〜そりゃそうだ…ってなるか〜wwwww
返信失礼します。
美味しんぼで床を回転させて、料理する様を見せつける料理人が居たっけ。
やまいぬ様
平衡感覚のブレに弱い人は、寿司職人になれない時代が来そう?
米田まゆさん、諏訪理さんなど、宇宙飛行士が体力的にキツくなったら、
サードキャリアーとして、寿司職人もアリかも知れないですね(笑)。
レスがいっぱいついてるので(サイトマスター氏が楽しそうでなにより)
調子に乗ってもう少し書こうかな。
皆さん性善説を前提にした商売が成立しなくなってるのを嘆いておられますが
「性善説を前提にする」のって「9条があれば日本は守れる」と同じだと思うんですよ。
外出する際に施錠するのは当然。駅に改札があるのも当然。
町にお巡りさんがいるのも当然。国家が防衛軍を持つのも当然。
勿論バカッターとか迷惑チューバーとかの頭がアレなひとたちに対する「抑止力」も必要。
そういうことですよね。
ストレートレーンと言われるタイプで各テーブルの前までに個別に提供する寿司店が増えてるようですね。
あとは、回転するベルトコンベアに乗せられてはいるけれど、周回せずに各テーブルへとバーで押し出されて提供されるとか。
珍しいのでは、寿司レーンの方で各テーブルに分別・配送するタイプなんかも。
寿司に限らず焼肉などでもレーンで提供するお店があり、その内ファミレスなんかでも導入されるかもですね。
>さらには、回転ずし業態の考え方を敷衍していくならば、たとえば牛丼屋やハンバーガー屋などで、「タッチパネル注文」、「自動配膳」、「キャッシュレス決済」などを組み合わせ、極端な話、客としては入店から食事、退店まで店員さんに一切会わないという仕組みもできるのかもしれません。
新宿会計士さんは参入されないのでしょうか?
最近は回転寿司業界に参入する別業界の企業がちらほら居るとの事です。
p.s.
外食テロに関しては、テレビがそれを報じる事による風評被害の拡大化を述べる意見もあります。
芸能人が自殺した時に、追っ掛け自殺をする人が出ないように配慮するようなものですね。
外食店で注文を取るためには日本語を聞き取れなくてはならない。タッチパネル式なら注文品を指定されたテーブルに運ぶだけ。日本語を解しない外国人でもできる。
実際これをやっている居酒屋に遭遇したことがある。
一部KFCでもタッチパネル式で、勝手がわからず最初は難儀しました。
>日本語を解しない外国人でもできる。
日本の接客文化も、チェーン店などはタッチパネル化
高級店は日本人が注文応対に分かれるかもですね。
庶民的なお店に、過剰サービスを求める時代は廃れていくのでしょうか?
https://news.yahoo.co.jp/articles/f9e99c213dc639d6e1d4d82fb29d474b1dba86dd
>過剰サービスを求める時代は廃れていくのでしょうか
ある百貨店でエスカレーターの前でニコニコしながら頭を下げている案内嬢がいた。
たまたま友人に百貨店勤務の人がいて「あれは何のためにやってるのか」と質問したところ「ああいうことに価値を感じている客も多い」という返事。
ああいうことやってるから百貨店はつぶれるんだろうね。
sqsqさん
懐かしいですね。
昭和の時代、静岡にいましたが
百貨店のエレベータの中に案内嬢?いましたね。
世の中、常に変化しているんですね。
消費者は増えていく、労働者は減少していくなかで
今ある、価値観・文化は変わらざるをえないことは寂しくもありますが。
時代に合わせて変わっていくのでしょうね・・・。
フードロスに関しては各企業の状況も様々で判断、対処にズレや違いがあるのは当然と思いますが、悪質な悪戯、犯罪行為はの対処に関しては企業でなく業界として対処方針を明確にした方が良いと常々思っています
フードサービス協会やら外食産業協会ありますが、被害に遭った企業の声ばかりで業界としてどうするかという声が一切聞こえてこないのはなんだかなと
マスコミもその辺り話しを聞きに行けば良いのに
レーンを回る公転が駄目なら、お皿だけが回る自転で良いかも知れません。w
角速度一定の法則は守らない方が無難だと思います。
ときには法則より大事なものがあります。
皿だけ廻っても意味あらへん。
新宿会計士様、コメントありとうございます。
ちゃいます、えらい嬉しいわぁw
皿だけが回りはるんとちゃいますねん。
寿司ごとやさかいに。
そやから、あんまり早う回るんは、寿司が飛んで行くかもせえへんと思いますねん。w
回転軸について考えてみるとまだまだ可能性はないでもない…
これまでの回転寿司は単に平行移動でした。
ほぼ長方形の寿司の長辺・短辺または対角線を軸に回転させてみてはいかがでしょうか?
お皿AIの判断でイタズラする客にはシャリつぶてやサビ噴霧等の自衛手段の搭載もありえます。
悲しいかな、もはや寿司屋は戦場です。
命懸けで食ってこそ寿司。
常日頃から皿とりの素振りは必須です。
地球には重力というものがあってだな…
「迷惑行為」今、人として生きる価値基準の相当低い人間が世界中で増え続けているのでは無いでしょうか。
一つ前の記事、せっかく安倍菅路線が順調に回転しているのに回転を止め更に逆回転させようとする輩、迷惑行為そのものです。
主さんの仰る最後の砦「国民の精神力」今が分かれ目かもしれませんね。
コメント失礼します。
回転する、しない寿司屋、両方共行った事が有りませんが、工場の社会科見学気分を味わいながら食事する感じなのでしょうか?
最近の衛生テロはバイトではなく客がやってる事例が多い様子。消毒液ぶっかけをかました輩も居た様で、もっと強力な毒物混入される日も近そうで不安です。昔もグリコとかでやられたそうで。
私も外食はよく利用するから、衛生テロ減らして欲しいです。監視カメラ設置の補助金や、厳罰化を求めます。