2023年1月における日韓往来は、「日本を訪れた韓国人」が「韓国を訪れた日本人」の8倍にも達しました。ほんの数年前に発生した韓国の「ノージャパン運動」とはいったい何だったのか、と疑問に感じるのもさることながら、私たち日本人が意識しなければならないのは、インバウンド観光需要を特定国に依存しすぎることのリスクではないでしょうか。
日本政府が昨年10月に外国人観光客の受入を再開したことの影響でしょうか、訪日外国人数が順調に増えています。
日本政府観光局(JNTO)が先月公表した2023年1月における訪日外国人数(速報値)は150万人で、22年12月の137万人からさらに増加しました。コロナ禍前の水準(毎月200から300万人)には及ばないにせよ、まずは順調に回復しているとみて良いでしょう(図表1)。
図表1 訪日外国人データ(月次)
(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)
ただ、それと同時に、入国者が特定国出身者に極端に偏っていることもまた事実です。
図表2は、2023年1月に日本を訪れた外国人を国籍別に並べ替えたものです(※速報値であり、ランクや人数が今後変動する可能性はあります)。
図表2 訪日外国人(2023年1月)
国 | 人数 | 割合 |
1位:韓国 | 565,200 | 37.75% |
2位:台湾 | 259,300 | 17.32% |
3位:香港 | 151,900 | 10.14% |
4位:米国 | 88,100 | 5.88% |
5位:タイ | 63,400 | 4.23% |
6位:豪州 | 52,600 | 3.51% |
7位:ベトナム | 51,500 | 3.44% |
8位:中国 | 31,200 | 2.08% |
9位:フィリピン | 29,700 | 1.98% |
10位:マレーシア | 27,100 | 1.81% |
その他 | 177,300 | 11.84% |
総数 | 1,497,300 | 100.00% |
(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)
これで見ると、トップは韓国人で565,200人と全体の4割弱を占めており、これに対しコロナ前に訪日客の多数を占めていた中国出身者は3万人少々、入国外国人全体の2%にとどまっています。参考までに、コロナ直前の2020年1月のデータも確認しておきましょう(図表3)。
図表3 訪日外国人(2020年1月)
国 | 人数 | 割合 |
1位:中国 | 924,790 | 34.75% |
2位:台湾 | 461,239 | 17.33% |
3位:韓国 | 316,812 | 11.91% |
4位:香港 | 219,358 | 8.24% |
5位:米国 | 117,343 | 4.41% |
6位:タイ | 112,534 | 4.23% |
7位:豪州 | 85,314 | 3.21% |
8位:フィリピン | 53,588 | 2.01% |
9位:ベトナム | 50,424 | 1.89% |
10位:マレーシア | 44,829 | 1.68% |
その他 | 274,791 | 10.33% |
総数 | 2,661,022 | 100.00% |
(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)
2020年1月のデータで見ると、外国人入国者のうち中国人だけで100万人近くに達しており、全体の3分の1強を占めていました。これに対し韓国人入国者は30万人強で、むしろ現在より少なかったことがわかります。
さらに驚くのは、入国者全体に占める韓国人の「割合」です。
JNTOデータをもとに、韓国人入国者数(左軸)と、それを日本に入国した外国人の総数で割った比率(右軸)をグラフ化してみたものが、図表4です。
図表4 韓国人の入国に関する状況
(【出所】JNTOデータをもとに著者作成)
これで見ると、韓国人の入国者数は韓国における「ノージャパン」運動発生直前のピーク時には及ばないものの、すでに過去最高水準に近付いており、さらに入国者全体に占める韓国人の割合についてはデータが存在する2003年以降で見て過去3番目の高さでもあります。
このあたり、個人的にはなんだか非常に不思議な気がします。つい数年前まで「ノージャパン」だ、「克日」だ、などと叫んでいたはずの国の国民が、その「気概」をすっかり忘れ、こぞってその「克服すべき国」にやってきているのですから。
ただ、ここでもっと驚くことがあるとすれば、相互往来の「日韓逆転」現象でしょう。
図表5は、先ほどのJNTOの「訪日韓国人」データと、韓国観光公社のデータから取得した「訪韓日本人数」を1枚のグラフに表現したものです。
図表5 日韓の往来(月次)
(【出所】JNTOデータ、韓国観光公社データをもとに著者作成)
具体的な数値でいえば、2023年1月における訪日韓国人は565,200人、訪韓日本人は66,900人で、「日本を訪れた韓国人」の人数は、「韓国を訪れた日本人」の人数の、じつに8倍(!)を超えているのです。
もちろん、昨今の円安の影響もあり、日本人の出国需要(海外旅行需要など)がまだそれほど多くない、といった事情もあるのかもしれませんが、それにしても極端な差がついたものです。
そういえば、日韓の相互往来は2018年に1049万人と過去最大を記録しましたが、そのときも「日本を訪れた韓国人」が754万人に達したのに対し、「韓国を訪れた日本人」は295万人に留まっていたのが印象的です。
ただ、2018年のときも倍率でいえば約2.6倍でしたので、この倍率が8倍というのもなかなかに興味深い現象と言わざるを得ません。
こうしたなかで、韓国メディア『中央日報』(日本語版)には1日、こんなコラム記事が掲載されていました。
【コラム】「ノージャパン」という名の亡霊
―――2023.03.01 09:19付 中央日報日本語版より
このコラム記事自体も、なかなかに強烈ですが、ここで紹介したいのは末尾のこんな記述です。
「政治家が消耗戦を続けても民間交流の流れは防げない。だからこそ今、『ノージャパン』という名前の象を直視する時だ。そうでなければ『ノージャパン政治』の振り子は戻ってくるだろうし、韓国は再び反日という消耗的議論に屈して後退するだろう。ここまで成長した素晴らしい大韓民国にとって、隣国の日本はうまく利用すべき戦略的パートナーだ」。
「うまく利用すべき戦略的パートナー」という表現を日本語版のメディアで日本人に向けて発信することの意味もさることながら、「ノージャパン」が雲散霧消したことに関しての合理的な説明とも思えません。
ただ、私たち日本人にとっては、インバウンド観光産業を振興すること自体は有意義ではあるにせよ、あまり特定国にそれを依存しすぎるのはリスクを高めることにつながる、という点については、いまいちどしっかり認識しておく必要がある論点のひとつであることは間違いないと思う次第です。
View Comments (21)
たぶん、ですけれども
「韓国人は反日する。」のと
「韓国人は日本が大好き」は両立します。
「牛をたべる」のと
「牛が大好き」は両立しますからね。
理屈ではなくて長年の実績として、
「日本&日本人は、ケツを蹴ると金を出す奴らだ」
という勝利体験を、前の世代が積み重ねてしまいました。
理由はなんであれ日本が金を出す限りは、この流れは止まらんでしょうな。
金を出せば解決するとか、話し合えばわかるとかは、イジメられっ子の自己正当化かと。
もしかしたら政治家とか役人は、イジメられっ子なメンタルの人が多いのか。(笑)
団塊世代はほんと使えねえよな
そりゃ若者からリスペクトされないわ笑
団塊世代をまとめてディスってはいけませんよ。
貴方が若者かどうか知らないが、
匿名投稿はほんと使えねえよな
そりゃ読者から馬鹿にされるわ笑
皆さん、
不毛なレスバトルはお止めください、
矛先を間違えてますよ、
私
団塊ジュニア世代です、
よろしくお願いいたします
確か団塊ジュニア世代って、
昭和40年~48年生まれまでを示すはず?、
これで合ってますかね?、
曖昧ですみません。
>>矛先を間違えてますよ、
おっしゃる通りです。
おじいちゃんおばあちゃんが
劇場型振り込め詐欺に
騙されてしまった場合、
家族が二度と騙されないように
結束協力することが
大切なのと同じです。
責められるべきは
韓流と、その一味の朝日新聞等です。
>「うまく利用すべき戦略的パートナー」という表現を日本語版のメディアで日本人に向けて発信することの意味?
わかりやすい表現だと思います。
日本人の神経を逆なでして、日韓離反に多大な貢献をしていることに自覚が無いのか?あってもこのような表現で記事を書かないと都合が悪いのか?知りませんが、どちらにせよ韓国メディアは韓国という国は日本人には相容れない国であることをわかりやすく教えてくれるありがたい存在だと思います。中国の報道官の発言と韓国メディアの記事はこの両国がどのような国であるかを教えてくれる良き教科書のようですね。とても勉強になります。
観光客入国解禁の直後に待ちかねたようになだれ込んできた、訪日韓国人客のかなりの部分の動機と言ったら、アチラのマスコミが一時嬉嬉として書き立てた、急激な円安で日本は沈没寸前みたいな与太記事を真に受けて、「行くなら今だ」なんてところじゃないでしょうかね。
実際に日本旅行から帰国した人間の「日本、全然安くなんかないじゃん」て評判が拡がれば、もうそうそうは韓国人客が増えることはないように思えるんですが。
それでもまだまだ増えるようなら、嫌いな国でも自国よりはまだマシなんて、よっぽど自国での生活がイヤって人間で溢れかえっているということなんでしょう(笑)。
「いくら反日を煽っても、若者には最早届かない」なんて、何言ってんだか。
>『韓国で「反日映画」に閑古鳥が鳴いている・・・文在寅の「反日強要」への抵抗と、国民の「反日疲れ」の意外すぎる真実』
https://gendai.media/articles/-/106548?page=1&imp=0
なんで、反日なのに日本に来るの?
彼ら的には、反日の自覚がないのです。
彼らの思想は「歴史認識を正すための ”躾” は反日に非ず」ってスタンスだから、自らが頭を下げる行為以外には臆面なしなんですよね。きっと。
*自分たちは ”絶対神の生まれ変わり” だと信じて疑わないんでしょうね。
まぁいずれにしても、大方の日本人はもう既に韓国を見捨てているよ。
これだけ8倍もの差が出るということは日本旅行が韓国人の本能の何かにぶっ刺さっていて、韓国旅行には日本人に刺さるものがないと言わざるを得ないでしょうね。
NHKが大好きで好みの白い肌、異様に足の長い、整形した女性が片言で恋愛歌を歌う。韓流マーケティングの限界かと思います。この戦略でいく限り今後もジリ貧でしょう。本来、旅行は旅行者がその土地の魅力を再発見することに価値があるのだと思いますので。
この時期の職場でのみラジオを受動視聴しています。
その日選ばれたアーティストの曲を延々流す枠がありまして。今日は聞いたことのない大人気韓国グループがそれは流暢な日本語でダs…っとカッコイイラップ多めの歌を唄っておりました。直後のお便りでは新潟の「韓国大好き」さんという中年女性の応援メッセージを紹介。このご時世で韓国大好きとか、頭が…いやココロガトテモキレイな方なのでしょうか。こういった方が居る限りは一定の需要はなんだかんだあるようです。
が、ヨン様から始まり、数多の需要を掘り起こしては韓国旅行に誘い、一回こっきりでもういいやとなったのがこの8倍という結果でしょうか…韓国大好きさんはどれくらいもつかな。
母国語以外でラップって大したものですけどもね。ジャニーズ等の日本のアイドルに比べれば歌唱技術は恐ろしく高いですし。それでも結局、その背景が「芸術分野でも異常なエリート教育が施され、他の道を捨ててその道にオールインしたバクチの成功者」という韓国人歌手には、言ってみれば「小手先」以外の魅力を感じません。楽曲も良く言えば洗練されていますが、悪く言ってしまえば「アメリカ市場あたりで主流のヤツを手堅くまとめた感じ」。多くの視聴者が洗練されてませんから、ほどほど簡便な感じに落として。
宣伝予算を突っ込み続ければこの状況を続けられるでしょうが。ほっといても自然に評価を得られ、外国で確たる「韓国らしい」を確立するのは無理でしょうね。
予算が切れたら……
一つのジャンルとしてジャニーズみたいに確立された感が有りニッチ層を開拓した成功事例ではあると思います。
(個人的には短い足と太ったお腹に何か恨みでもあるのかといった音楽の世界ですが)
ただこれだけで韓国旅行を促進しようというのは牽引力に欠け起爆剤には弱いと思います。
外人同士の口コミで広がり自然発生的な魅力の再発見がより必要となるかと思います。
また、韓国人自身も自国の魅力の再定義が必要ですが結論としてそんな魅力なんて無いとい落ち着く可能性もゼロでないのが難しいところだと思います。
コロナ禍真っ只中は訪日韓国人ほぼゼロかぁ。コロナが収まる・慣れると彼らは増える、と。
ウィズコロナとウィズコリアってどっちがマシなんでしょうね。
ゼロコリア……
ゼロコリア……
ゼロコロナ……
どちらも歓迎です。
防疫上の観点から 入国制限のあった中国人旅行者の入国が3月から大幅緩和となりました。このため 韓国人旅行者の相対的割合は 大きく下がると思われます。
大事なことは 訪日人数ではなくその国の方がどれだけ多く お金を使ってくれるかなのです。
わずかしか使わない観光客たくさんより、 少なくてもたくさん使ってくれる客得る方針を徹底するべきです。
すでに 江ノ電、京都市バスでは 地元住人の利用にも大きな支障が出ています。客の賑わい、混雑だけでは 潤わないのです。
お金を使わない観光客は 統計によると韓国人らしいです。
韓国LCC、民泊、コンビニ飯で 観光地にあふれ出す。
もう観光地を安売りするような 訪日来客数を競う政策を改め 国中をニース、カンヌのように 適正来客数で高級化を目指すべきです。
お金持ちは 混雑を嫌がります。
安倍元首相の施策でもインバウンド偏重は失策に属する事だと思います。韓国人中国人をとにかく受け入れる事だけやって、国内観光で行く日本人観光客が蔑ろにされる風潮が出来てしまいました。
「世界」が韓国人中国人しか存在しないという、悪しき左派メディアの思い通りになってしまいましたが誰に吹き込まれたのか未だに疑念です。
当方、鎌倉で観光関連に携わっている者ですが、昨年10月に海外からの観光客受け入れが始まって、目立って外国人観光客が増えました。欧米からの観光客のほか、中国語を話している人が多いです。中国語話者は、台湾あるいは華僑の人たちで、大陸からの人はいません。しかし、朝鮮語を話す人は、私の肌感覚のとしては見かけません。朝鮮からの客が多いと報じられているところですが、鎌倉は例外みたいです。鎌倉という土地柄の影響なのでしょうか。