本稿では雑誌の部数増減について、もう少し詳しく紹介してみます。元データは「一般社団法人日本雑誌協会」が公表する『印刷証明付部数』の検索サイトから取得したもので、2008年と2022年の雑誌発行部数を比較してみたいと思います。
雑誌協会のデータ
昨日の『数字で見る「雑誌業界」・概況編』では、「一般社団法人日本雑誌協会」が公表する『印刷証明付部数』の検索サイトから取得したデータを使い、いくつかの雑誌についての増減を概観しました。
雑誌の休刊が増えてきたのでしょうか。産経ニュースによると、KADOKAWAは『週刊テレビジョン』の刊行を3月1日発売号で休止すると発表したそうですが、これについて日本雑誌協会の15年分のデータで調べてみると、部数変化について比較可能な217誌のうち、部数が増加しているのは12誌にとどまり、全体の94%に相当する205誌の部数が落ち込んでいます。もっとも、部数の落ち込みの速度はさまざまです。紙媒体苦境の時代:昭和57年刊行の週刊ザテレビジョンが休止へ紙媒体の苦境の時代でしょうか。スマートフォンの急速な普及と... 数字で見る「雑誌業界」・概況編 - 新宿会計士の政治経済評論 |
ただ、その後この雑誌協会のデータを色々と確認してみたのですが、どうもデータ自体がうまく連続していないようです。雑誌自体の刊行は続いているにも関わらず、途中でデータがなくなってしまうというケースがいくつか散見されるからです。
まず、データ自体は2008年4月から2019年3月までの区分(便宜上、「旧データ」とでも称します)と、2018年10月から2022年9月までの区分(便宜上、「新データ」とでも称します)に別れて公表されているようです。
そして、この「旧データ」に含まれているいくつかの雑誌の発行部数データが、「新データ」には引き継がれておらず、データが途中で分断されてしまっているようなのです。これらの雑誌の発行会社が雑誌協会から脱退したという話でもなさそうであり、どうも理由がよくわかりません。
もっとも、比較可能なデータだけで比較するしか方法がないため、本稿ではとりあえず、2008年と2022年の14年間における部数の変動を比較することが可能な217誌に限って、その部数の変動、増減率などを算出し、減少率が大きい順番に並べ替えてみました。
なお、最も古いデータは2008年4~6月期のものですが、本稿ではその4~6月期のものではなく、同年7~9月期のものを使用し、これを2022年7~9月期のものと比較してみることにします。
減少率1位~50位
まずは、減少率1位から50位までを並べてみましょう(図表1)。
図表1 減少率1~50位
これで見ると、減少率トップ50誌のうち、半分を超える27誌は漫画雑誌です。また、女性向け7誌、テレビ情報誌6誌、文芸・歴史誌3誌などが含まれており、ほかにも健康誌、総合月刊誌、写真週刊誌に加え、総合月刊誌『潮』、さらに先日休刊を決めた『週刊朝日』などが含まれています。
雑誌『週刊朝日』が6月9日号をもって「休刊」になるのだそうです。同誌の発行部数は2006年3月期には33.1万部でしたが、2022年3月期には8.6万部と、17年間で約4分の1に減少してしまったのです。ただ、同誌の休刊は、新聞業界全体の動向を予言しているように思えてなりません。早ければ数年後にも、紙媒体の新聞の休刊ラッシュが生じる可能性は十分にあるからです。2023/01/19 14:15追記図表1が誤っていましたので差し替えています。朝日新聞の部数推移(朝刊、夕刊)『過去17年分の朝日新聞部数推移とその落ち込みの分析』では、... 週刊朝日が5月末で「休刊」へ:新聞業界の今後を示唆 - 新宿会計士の政治経済評論 |
減少率51位~100位
次に、51位から100位までを眺めておきましょう(図表2)。
図表2 減少率51~100位
これについてもやはり漫画雑誌が17誌含まれているのですが、ここで注目しておきたいのは、週刊朝日以外の週刊誌も多数含まれている、という点でしょう。
54位の『サンデー毎日』(毎日新聞出版、一般週刊誌)、55位の『AERA(アエラ)』(朝日新聞出版、一般週刊誌)、56位の『ニューズウィーク日本版』(CCCメディアハウス、一般週刊誌)、69位の『SPA!』(扶桑社、一般週刊誌)などがその典型例です。
減少率101位~150位
続いて、101位から150位です(図表3)。
図表3 減少率101位~150位
漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』(120位)、『りぼん』(114位)などのように、かつては漫画雑誌の雄とされていた雑誌も、このあたりに入って来るようです。
減少率151位~217位
最後に、減少率151位から217位です(図表4)。
図表4 減少率151位~217位
これで見ると、206位以降の12誌は、部数がむしろ増えている雑誌です。クロスワードパズルのものが6誌も含まれているほか、男性誌、女性誌、ファッション誌などがみられます。このあたりは、単純に「紙媒体はすべて減少している」という話ではない、という証拠でしょう。
そして、ここまでスマートフォンが普及したなかで、部数を伸ばしている雑誌が存在するという事実は、「紙だから売れない」というだけの単純なものではないことを意味しているのでしょう。
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面白い表です。
「存続限界」というものがあって、それは対象読者層(あるいは読者層「相)で絶対数は違ってくるのでしょうけれど、減少率を軸にソートされているこのデータをより大きな次元数で分類すると示唆に富む洞察が展開しそうですね。議論しているのはデモグラフィック(人口統計と人口動態)であってそれはマーケティングの基本ですやんね。
「日経ビジネス」や「選択」のような店頭販売がない雑誌は、どうなんでしょうか?
「大法輪」のように、編集者が高齢になり、後継者がいなくなって、休刊というケースは、稀なんでしょうか?
「ミドルエイジ」って何だろうと思ったら定義が明確でした。協会のHPから。
>年齢は、男女とも、ティーンズ:19歳以下、ヤング:20~24歳、ヤングアダルト:25~39歳、ミドルエイジ:40~59歳、シニア:60歳以上を目安とします。
クロスワードも謎ですが、増えてる方はミドルエイジ向けのファッションとかアクセとか、視覚に訴えるものも多い感じですね。
スマホより雑誌は閲覧時の視野角の占有率が高いでしょうし、解像度も高くて鮮明だし、「見た目」を訴える分野のものは、雑誌があってるのかもしれないですね。
また新しいのを「見たくなる」ような常習性をかき立てる効果が高いとか。ミドルエイジと言えば若い頃は雑誌を読む習慣もあったでしょうし。(私はそっち方面は全然でしたけど)
3誌の表紙が、ダンディーや美女がファッションをキメた美しい写真だったり、美術品の美しい写真だったりで、なんとなくそう思いました。
雑誌ならではの生きる道もあるんでしょう。道は狭いでしょうけど。
少し前に目にした、漫画家 小栗かずまた氏がツイートした話題で。'97年の週刊少年ジャンプ読者の平均年齢は14.7歳、'21年では28歳だったそうです。24年間で平均年齢が+13歳ほどとなると、継続読者が多いものの新規読者の子供を獲得できていないということなのか。昔に比べて、あきらかな子供向けの作品は減って、大人向けな作品が増えた傾向は感じます(とはいえ購読していませんが)。日本の年齢構造の変化や電子媒体への移行、コロナ禍による生活・購買傾向の変化なども大きいでしょうが、やはり各誌の戦略が主要素ではあるのでしょう。
漫画は特に嵩張るのでスマホで済ませたいし、大判の写真が美しく保管しておきたいなどのテーマの雑誌ならば印刷物を買いたいであろうなどは想像がつきやすいですし。
それより「ムー」の分類が「教養」なのが一番印象的でしたとさ。
確かにムーはオカルト、インチキ、子供だまし、
妄想、が正しいジャンルのはず?(笑)、
こんな一覧があったんですね、
ありがたくスクショさせていただきます
女性向け雑誌類が意外に持ちこたえてますね、
それに比べて
昔の男性向け雑誌、
スコラ、大人の特選街、FOCUS、スクランブル、
なとはことごとく休刊の憂き目になりました、
経済が元気な頃は
風俗も元気で、
これらの雑誌も勢いがありましたけど、
草食系男子の流行、
御上の規制の波、
自称フェミの嫌がらせ、
などで
コンビニの本棚から姿を消すことに…、
寒い時代だと思わんか?、
では
ムー→オカルトつながりで
最後に一言、
ガタッ‼️
話は聞かせてもらった‼️人類は滅亡する‼️。
ΩΩΩ < なんだってー!
いじっといてなんですが、ムーは陰謀論でワクチン接種妨害まで働いた団体が出た際はきっちり否定・注意喚起していたので、「与太話を面白おかしく紹介するビジネスオカルト」とでもいうようなあたりをわきまえているようで。雑学的な"教養"で良いのかもしれませんね。
「反ワクはムー以下か……」というインパクトは大きかった。
言葉足らずですみません、
私もムーは長年愛読しています、大好きな雑誌です
あれは確信犯的に構成編集していますね、
私が死ぬ前に、なんとか
竹内文書の謎を解明して欲しいものです(笑)。
書店の状況が如何ほどなのかは存じませんが、3年ほど前から物流コストの高騰を受け、場末の小売店での”雑誌コーナー”への納品掛率が90%(粗利10%)になりました。
さらに返本送料が店舗持ち。それ自体では全く儲けにならず、ついで買い(客寄せ効果)があるからこそ取扱いを維持してる状況です。
売場へのコスト転嫁は、もう限界。スーパーから雑誌が消える日は遠くないのかもですね。
「新宿会計士」様のサイトから、大手漫画誌の減少について、絞ってみました。減数の多い順です。
①週刊少年ジャンプ 150万部
②週刊少年マガジン 127万部
③月刊少年マガジン 73.7万部
④ヤングマガジン 71.0万部
⑤ちゃお 70.3万部
⑥週刊少年サンデー 63.5万部
⑦月刊コロコロコミック58.0万部
大変な減りようです。これに女児漫画誌を加えると、800万部を越えます。
皆、漫画を読まなくなったのか。2008年との子供を取り巻く環境の違いと言えば、スマホでしょうね。携帯は2000年には持っていたでしょうが、スマホの普及により、子供達や青年、女子中学生らはそちらに流れました。漫画を本で買うより、ネットやSNS利用で、スマホ代に消えて行く。小遣いの使い道が変わってしまった。またネットでも漫画は読める。かさばるモノは要らないのでしょうね。私の同級生も長い間、女子コミックの売れっ子作家でしたが、もう引退しました。本媒体って希少価値モノになりました(笑)。
漫画雑誌に関していえば、連載漫画の読まれ方が昔とは大きく変わったのも、漫画雑誌が売れなくなった理由だと思います。昔は、連載漫画は雑誌で読むのが一般的でした。今は、自分の好きな作品だけをコミックで読むのが一般的です。
「買いそろえるお金がない」 「家に何冊も漫画を置いておけない」 という人も、今はマンガ喫茶 (ネットカフェ) が全国にあるし、紙とネットの両方で刊行・配信されている作品も多いです。
特にネット配信では、大手出版社が人気作品を期間限定で無料公開することも多いので、お金のない学生も、そういうタイミングを狙って読んでいるんじゃないかと思います。
部数減トップ10の半分以上が少女マンガ雑誌というのは時代を感じますね。今、政治ブログを好んで読んでいる年代の人が子供だった頃は 「少年漫画は男子が読むもの、少女漫画は女子が読むもの」 とハッキリ分かれていて、男子が少女漫画を読んでいると笑われたと思います。
それが、西暦2000年くらいから大きく変わります。少年漫画にも、少女漫画のような線の細い美形キャラが登場する作風のものが増え、内容も、ロマンスの要素が入った少女漫画のような作品が多くなります。それで少年誌は女子にも読まれるようになるのですが、その煽りを食らって、少女漫画の売り上げが激減しました。
これはテレビゲームの影響や、出版社のマーケティング戦略でそうなったわけですが、一方で 「十代の子たちが置かれている環境が変化したからだ」 という社会学者だったか、サブカル評論家だったかの考察を読んだことがあります。その環境の変化とは 「男子校、女子校の共学化が進んだから」。
昔の少年漫画に登場する女子は、大体が 「男子が考える理想的な女子」 で、現実世界にはほとんどいない。同じように、昔の少女漫画に登場する男子は、大体が 「女子が考える理想的な男子」 で、これも現実世界にはほとんどいない。
それでも、高校の多くが男子校と女子校に分かれていた頃は、「現実の男子」 「現実の女子」 を知らない子たちが漫画を読んで、妄想を膨らませていたけど、共学化が進んで、漫画にそういうものを求める十代がいなくなった。特に少女漫画には恋愛モノが多かったから、どんどん需要がなくなっていった・・・と、そんな事が書いてありましたね。
私は高校まで、
少女漫画雑誌、
花とゆめ、
読んでました
パタリロ!、スケバン刑事、赤い牙ブルーソネット、
じゅうぶんに少年の読むに耐える作品が掲載されていましたね、
しかし最近の少女漫画、
成人女性顔負けの乱れた内容だと聴いてます、
、
少年漫画ばかりに規制を掛けて、
少女漫画、または
BL漫画などは野放し、
これが不思議で仕方ありません
BL漫画などは、普通の本屋にもコーナーがあるくらい
店によっては一つのフロアを丸々BLコーナーにしたりと、
売れない本の起爆剤にしたい本屋側の意図はわからないでもありませんけど
とても流行っているとは思えない
まるで極一部のテレビやネットからのかたよった情報、
日本では韓流が流行っている?、
などを真に受け
メニューに韓流を採り入れる
某飲食チェーン店やコンビニみたいです
、
元々漫画の表現規制が本格的になったのは、
故平沢勝栄さんの講演会の女性が、
息子がこんな本を読んでいる、
何とかして欲しいと、
男性向け成人漫画、しかも内容がかなりマニアなものを持っていき
平沢さんが国会で採り挙げたことが発端だと聴いてます、
これを機に、日本全国で
悪書追放運動が本格化、男性向け成人雑誌の自販機の撤廃、白い回収ボックスの設置
と
成人男子には肩身の狭いことばかりが続き
、
現在でもフェミ団体による
落武者狩りで日本アニメ漫画の豊かな表現が
ますます狭まっている状態です、
歯がゆい思いでこの情勢を見ていますけど、
私のような長年アナログで育ったロートルオタクには
上手い手が思い付きません、
悔しいけどこれも時代の流れか…。
元書店人としては興味深いデータでした。
私が従事していたころはあれだけ不動の人気を誇っていたものが見る影もなくなっていたり、当時奮ってなかったものがこのご時世に微増していたりと、面白かった。
全国区の書店流通に乗らないタウン誌とか、ローカル情報メインの釣り雑誌なども当然扱っていますが、地元では45年続いた釣り情報誌2誌が昨年初頭に休刊しました。
ネットの普及のためであろうことは明らかですが、寂しい話ではありますね。
訂正。
✕ 初頭
〇 初冬