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【FOIP】日米豪印「クアッド」で食品分野協力進む

カレーはどちらだ!?

FOIPに強くコミットする4ヵ国――日米豪印――で構成する「クアッド」の海軍関係者が一堂に会し、寿司、ハンバーガー、ビリヤニ、ミートパイの食の協力を打ち出した模様です。うまいものに国境はないと言われますが、食事の世界でもこの4か国が協力し合えるのは素晴らしい話です。ただし、カレーを巡ってはこの場に挙げられていないのは少し気になるところです。

FOIPは安倍総理の偉大なる遺産

安倍晋三総理大臣が残した偉大なる遺産のひとつといえば、「自由で開かれたインド太平洋」です。

英語の “a Free and Open Indo-Pacific” を略して「FOIP」などと呼ばれることもあるのですが、わかりやすくいえば、「自由、民主主義、法の支配、人権」といった基本的価値を同じくする国同士で連携し、インド洋と太平洋にまたがる連携を実現しようとするものです。

このあたり、インド太平洋のすべての国がこれらの基本的価値を共有しているわけではないものの、やはり中核となる国々がこれらの基本的価値に従って自由と繁栄を享受する文明圏を作り上げていけば、おのずからこの構想に同意する国が出現することが期待されます。

FOIPは3総理の合作で日本外交の基軸

ところで、このFOIPは安倍総理だけの成果というものではありません。

もともとは麻生太郎総理が提唱した「自由と繁栄の弧」構想などを下敷きしたもので、これを安倍総理がアレンジし、実際に日本の外交に落とし込んでいく作業は菅義偉総理が担当したのです(『近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた』等参照)。

日本時間の土曜日早朝、菅義偉総理は訪問先の米国で史上初の対面での日米豪印首脳会談に臨みました(厳密には、今年3月のテレビ会議を含めれば、首脳会談としては2回目ですが…)。少しインドのトーンが弱いというのは気になるところではありますが、ただ、今後は「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)が日本外交における基軸となることは間違いありません。まさに菅政権の最後の仕上げ、というわけです。クアッドではなくFOIPが重要先日の『日本外交は「クアッド+台湾」>「中露朝韓」の時代へ』では、「最後の最後まで仕...
近隣国重視から価値重視へ:菅総理が日本外交を変えた - 新宿会計士の政治経済評論

その意味では、FOIPは麻生、安倍、菅の3総理の「合作」でもあります。

さらに、このFOIPは、すでに米国、カナダ、豪州、英国、フランス、インドなど幅広い国々の賛同を得ています(図表)。

図表 FOIP

(【出所】防衛白書)

いまやFOIPは日本外交の基軸に据えられた格好であり、もう滅多なことで覆すことはできないといえるでしょう。

日米豪印クアッド

さらに、FOIPにもうひとつの大きな意義があったとすれば、この構想にとくに強くコミットしている4ヵ国で「クアッド」と呼ばれる連合体が成立したことにあります。この「クアッド」は、日本、米国、豪州、そしてインドから構成されているのです。

こうしたなか、海上自衛隊によると、11月5日には日米豪印4ヵ国の合同訓練(マラバール)から30周年を記念し、酒井良・海上自衛隊幕僚長が米豪印の海軍トップと懇談したのだそうです。

食事協力の衝撃:カレーはどちらだ!?

防衛省のツイッターによると、参加したのは、酒井海上幕僚長のほかにマーク・ハモンド豪海軍本部長、マイク・ギルデイ米海軍作戦本部長、クマール印海軍参謀長で、寿司、ハンバーガー、ビリヤニ、ミートパイの4種類を挙げ「みんな仲がいい」、などとつぶやいている、というものです。

まさに、FOIP実現は食事から、というわけでしょう。

ただし、ツイートの末尾に「#カレーじゃない」というハッシュタグが付けられているのは意味深です。なぜならカレーといえばインドが有名ですが、事実上、日本にとっても「国民食」のようになってしまっている実態があるからです。

このあたり、インドカレーと日本カレーにはどちらも捨てがたいものがある点は事実ですが、著者自身は「ハンバーガー評論家」の端くれとして、「うまいものに国境はない」という事実については強調しておく価値があると考える次第です。

ついでにいえば、「オーストラリアン・ミートパイ」は豪州における国民食だそうであり、『世界の地方料理』というウェブサイトの情報によれば、2003年にニューサウスウェールズ州のボブ・カー首相によって国民食として位置づけられ、国民1人当たりの年間平均消費量は12個に達するのだそうです。

あるいは寿司も日本食なのかと言われれば、微妙でしょう。米国や豪州などでも寿司は一般に食されているからです。いずれにせよ、相互理解と友好は食事から始まると言っても過言ではなく、その意味ではクアッド食事連合はFOIPを裏から支える重要な柱となり得るのです。

新宿会計士:

View Comments (6)

  • 基本的価値観を共有し、発展していく。
    本当に大事だと思います。
    中華料理店があるから台湾は中国とか、
    ウリが起源とか、アイヌがいるから北海道はロシアとか、全くもって共感共有出来ませんもの。

    英国も加わって欲しいところですが、
    今回の観艦式はドタキャンだったんですよね~
    気になります。

  • 個人的には、「#”かれい”じゃない!?」です。

    ビリヤニがカレーじゃないのは事実。
    同志の集まりが佳麗であるのも事実。

  •  フィッシュアンドチップスが参加しづらくなってしまうからやめたげて……ワインやらパスタやらも参加してほしいところですが、ソーセージはどうも出ないかな?で窓の外からやたら入ってくるキムチ臭は遮断で。

    • >農民さん
      ココイチのソーセージカレーは大好きですが、独はイマイチなんだかなぁというお国に感じます。
      カレーには福神漬けで充分です、キムチはいりません^^

  • イギリスが参加できてれば、インドーイギリスー日本のカレーリレーができたかも