中国人エリート層が資産を持ち、中国から日本に逃げ出しているという情報があります。ルポライターの安田峰俊氏によると、中国社会の中枢にいたはずのエリート層が、習近平(しゅう・きんぺい)体制に見切りをつけ、ちょっとした資産を手に、こぞって日本にやってきている、というのです。そして、そうした人たちのなかには、日本で中国に向けて「不都合な真実」の発信をする人も出てきたようです。
中国エリート層に広まる「潤」(run)
ウェブ評論サイト『文春オンライン』を眺めていると、今月上旬、なにやら興味深い記事が掲載されていました。
資産100億円を持ち込み…自国の未来を見限った中国上流層が続々と日本に逃げる怪
―――2022/10/06付 文春オンラインより
執筆したのはルポライターの安田峰俊氏です。
記事タイトルでもわかるとおり、中国の「上流層」が続々と日本にやってきている、とういものですが、これがなかなかに興味深いのです。
「近年、これまで中国社会の中枢にいたはずのエリート層が、習近平体制に見切りをつけて続々と母国を離れる現象が加速しているのだ」。
安田氏によると、中国を脱出する行為は、英語の “run” が転じ、拼音(中国語の発音を表すアルファベット表記)で「rùn」となる「潤」と呼ばれているそうで、中国の「上流層」が毎月数十世帯ほど日本に移住しているようだ、というのです。
「『潤』の中心となっているのは修士号・博士号持ちや留学帰りといった高学歴者で、年齢層は40~50代が最多。家庭の資産についても、最低でも数億円は持っている人たち(もちろんもっと大金持ちはたくさんいる)だという。名実ともに中国国家のエリート層だ」。
中国社会に見切りをつける
ではなぜ、この「潤」が流行しているというのでしょうか。
安田氏によると、「政権の機嫌ひとつで財産が消し飛ぶ懸念」を深めたお金持ちなどを筆頭に、中国社会に嫌気がさした人たち、言論の自由が狭まり仕事が難しくなったメディア関係者などが、こぞって日本にやってきているというのです。
そして、中国富裕層にとって日本が人気となっている理由は、「小さな会社を経営できる程度のお金さえあれば在留資格『経営管理』を取得可能で、しかも物価が安くて治安がいい」「狭義の『勉強』以外の教育も重視する日本の公立小学校の環境」、「医療水準の高さ」などにあるのだとか。
さらには首都圏や関西圏には中華料理店も多く、また、日本人と中国人は外見が似ているため、欧米圏と異なり露骨な差別をぶつけられることも少ないという事情もある、というのが安田氏の指摘です。
では、こうした「潤」組の中国人は、どういう行動を取るのでしょうか。
「華人系不動産業者の話では、数億円の豪邸やショッピングビルをポンと買い『1家族だけで100億円くらい資産を持ちこむ』ような富豪が、何家族も日本に移住しているようなのだ。近年なかなか聞かれない、景気のいい話である」。
「仮に中国国内で会うとすれば、よほどの人脈を持っていないと知り合うこともできず、たとえ会っても機微に触れる話題はほとんど喋ってくれない立場の人たちが、いまや日本国内で大勢ぶらぶらしているのだ」。
「彼らは中国に帰るつもりがほとんどないため、中国国内のしがらみからは既に自由だ。しかも、移住した異国での日々は『けっこうヒマ』である。当然、話をすればいろんなことを教えてもらえる」。
…。
大変興味深い指摘ですね。
いずれにせよ、「中国人を受け入れることが日本社会にとってどういう効果をもたらすのか」という点についてはとりあえず脇に置くとして、安田氏の説を信頼するならば、(一般庶民ではなく)「富裕層や知識層」の日本への脱出という動きが加速していることは間違いなさそうです。
なかには中国に「不都合な真実」発信する人も!
こうしたなかで、時事通信には日曜日、こんな記事も掲載されていました。
日本から「不都合な真実」発信 中国脱出の元国営テレビ記者
―――2022年10月30日07時10分付 時事通信より
時事通信によると、中国国営中央テレビで20年近く記者や解説員を務めた王志安(おう・しあん)氏が現在、YouTubeを使って日本から「不都合な真実」を発信しているのだそうです。
これによれば王志安氏が中国を離れることになったきっかけは、天安門事件から30年を迎える直前の2019年6月3日、自身のSNSのアカウントが唐突に凍結されたことにあります。「当局に目をつけられた」と知り、「身の危険を感じた」王志安氏は、資産を整理し、家族とともに日本に移住したのだとか。
そのうえで、今年5月にYouTubeで時事問題を開設する動画配信を開始したところ、中国本土からも「規制を回避する仮想プライベートネットワーク(VPN)を使って多くの視聴者がアクセスしている」、などとしています。
幸いなことに、日本は言論が自由な国ですし、いったんビザを取得した場合、言論活動を理由に身柄を拘束されて国外追放される、という心配も、あまりありません(もちろん、不法滞在であれば話は別ですが)。
行きつく果ては「中国の体制変革」?
このあたり、中国人のエリートが大量に日本に移住するという動きを見ていて思い出すのは、かつてナチスドイツを嫌気して優秀なユダヤ人らが米国に移住した動きです。こうした動き続けば、何が発生するのかに関しては、興味深いところです。
個人的には日本があまり深く中国大陸と関わるべきではない、などと感じているクチですが、ただ、このインターネット時代において、情報は簡単に国境を越えます。王志安氏のような人物が増えてくれば、もしかしたら日本が中国の体制を揺るがす拠点となる可能性もあります。
また、それとはまったく別問題として、増長する中国の軍事的圧力に対抗するために、日本も自力の国防力を高めていかねばなりませんし、巧妙化しているであろう中国政府による情報ハッキング活動への警戒も怠ってはなりません。
ただ、優秀な人物が逃げるような国に未来はないというのは、人類史上の鉄則のようなものでもあります。
おりしも先週の『FT「米半導体規制は中国の政権交代を辞さないもの」』でも取り上げた、米国の「半導体規制」などの動きも、結局は米国に暮らす個々の中国人に対し、「米国と中国、どちらに忠誠を誓うか」と迫るようなものでもあります。
英FTに、米国の半導体輸出規制自体が「中国による台湾侵攻のリスクを高める」だけでなく、これ自体が米国による中国の「政権交代」をも視野に入れた動きではないか、とする説が掲載されています。日本語訳して転載したのはFTの親会社である日経新聞です。これについてどう考えればよいのでしょうか。FTと日経新聞英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)といえば、2015年11月に日本経済新聞社の子会社となったメディアですが、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などと並んで、金融・マーケットの世界では多くの人が... FT「米半導体規制は中国の政権交代を辞さないもの」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
行きつく果ては、中国の体制変革なのでしょうか。
習近平体制が第3期目に突入するなか、こうした「ヒトの流れ」で見た中国社会の変動は、重要なテーマのひとつであることは間違いなさそうです。
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どなたか詳しい方がいれば教えてください。
どうして中国エリート富裕層が、(他の国ではなく)日本を避難先に選んでいるのでしょうか。(最悪の場合、中国共産党に日本を売って、身の安全を図るため、というのは陰謀論すぎるのでしょうか。もっとも、エリート富裕層より先に、朝日新聞や社民党が売りそうですが)
毎度、ばかばかしいお話しを。
日本に逃れた中国エリート富裕層:「最悪の場合は、中国共産党に「我々が、この国の大新聞や政党に働きかけて、この国を中国に売らせた」と言えばよい。実際に働きかけたかは別にして、これが信憑性があるのは日本だけだ」
これって、笑い話ですよね。
中国からそんな大金、持ち出せるのでしょうか?
何の準備も無く、思い立って数日以内に脱出では無理でしょう。
日本からでも無理でしょう。(日本の場合は海外から日本の財産を使うことはできるけど)
ただ、日本の土地を買う等海外に既に資産を移しており、数次ビザをすでに取得していれば当座の小遣い程度の現金をもって脱出は可能と思います。
なので、単なる一般人ではなくお金が働いてくれる富裕層という事でしょう。
中国からの資産流出はかなり以前から問題とされていたようです。
でも、人民元のままでは持ち出せませんし、持ち出しても意味がありません。また、巨額の人民元を外貨に換えるなんて真似したら、当然当局に目を付けられます。そこで、あくまでも噂の範囲ですが、マカオルートが結構利用されていたそうです。
マカオのカジノのVIPルームは、10,000HKD以上のチップが飛び交う世界らしいのですが(当然入ったことなんぞありません)、そこで人民元をHKDのチップに換え、合法的にHKDを入手するというわけです。HKDはそこそこ信用力のある通貨ですので、HKDをUSDなりEURなりに換えるのは、それほど困難というわけではありません。こうして、何らかの「手段」で人民元を溜め込んだ幹部は、人民元をこっそり外貨に換えて持ち出すという算段です。
ただし、数年前まではこのような手段が可能だったのですが、マカオも厳しく入境制限をしている現在、果たして今でも可能かどうかはわかりません。
しばらく以前に乗った郊外電車に「中国人向け医学部進学予備校」の広告がありました。これをどう見るべきでしょうか。少子高齢化により高度人材の分野において社会蚕食が進んでいるようです。日本はおいしい桑畑に見えているに違いありません。
もうずいぶん前から
「中国の金持ち(共産党の偉い人含め)は資産を米国に移しているから 中国は米国と戦争はできない」
みたいな噂はあったよね。
政権よりも人民元に対する不信感が理由とされていたけど。
自国に嫌気がさした富裕層でも民主主義や言論の自由等を尊重するかどうか分からないので、注意が必要ですね。
鄧小平氏の改革開放経済を制限し、修正共産主義とでも呼ぶべき「共同富裕」に政治路線を切り替えた習近平氏が3期目続投を決めたことで、中国富裕層は身ぐるみを剥がれる危機を感じているのだと思います。
持てる者は中国を脱出し、一方の持たざる者は失うものがないので、ますます中国の「共同富裕」というイデオロギーは先鋭化してゆくと予想しています。習近平氏が台湾にこだわるのは、自身の偉業達成もさることながら、常に国民の目を国外に向けさせて国内の不満が貧富の差に集中するのを避けるためでもあるでしょう。目を向けられた台湾はじめ、周辺諸国はいい迷惑です。
ところで、日本に避難してきた中国人は移住といっても日本国籍の取得はすぐには難しいので中国国民のままである筈です。中国には海外にいても国民は共産党政府に協力する義務を課せられている筈です。拒否するには祖国へは戻れなくなるか、暗闇で拉致される覚悟が必要と思いますが。
もうずいぶん以前から、共産党幹部が海外に資産を持ち出しているという話はありました。その総額は年間100億ドル単位という噂もありましたので、噂半分にしても相当な額です。現在の中国でそのような巨額の富を築くには、(地方を含む)共産党幹部、または党とズブズブの関係にある人しか不可能ですので、おそらくは脛が傷だらけの人であろうと推測されます。そして、習近平氏は総書記就任後、100万人単位で汚職官僚を摘発してきたことになってますので、何かしら後ろ暗いことがある人が、習近平3選で「これはいよいよダメだ」と考えて逃げ出したというのもありそうな話です。だとすると、逃げ出した人たちは、うかつに帰国などしたらどんな目にあわされるかわかりませんので、まず帰ろうとはしないでしょうし、政府に協力することもないでしょう(ただし、許してやるからスパイになれと言われ、なってしまう人もいると思われます)。
中国から逃げ出した人たちがどこへ向かうかというと、アメリカやカナダが定番ではありますが、その次に考えられるのはシンガポールでしょう。シンガポールは基本的に中国人の街ですので、言葉もある程度通じます。何かと政府の管理が厳しい国ですが、「リー・シェンロンのバカヤロー」と街中で叫んだくらいで逮捕されることはありません(多分)。ただし、街中に中国の工作員がうようよしている可能性は否定できません。
日本は選択肢としてはシンガポールの次くらいだろうと思います。現状、日本は外国人による土地取得にあまり制限がありませんし、生活上の不便もあまりありません。また、基本的には安全です。逃亡先としては悪くないでしょう。
というわけで、中国から資産が流出している、あるいは人が逃げ出しているという話だけであるならば、それほど目新しい話ではありませんし、日本に来る人もいるというのも今に始まった話でもないでしょう。習近平氏3選決定後に、どの程度流出額や流出人数が増えたのか、そして日本に来る人がどの程度増えたのか、問題はそこにあります。
とは言え、党大会終了後まだ間もないので、その結果が反映するにはちょっと早すぎるような気もします。習近平氏3選の噂はかなり早くから流れてましたので、それを見越してという人もいるかもしれませんが。
>許してやるからスパイになれと言われ、なってしまう
ありそうな話です。
本国を離れようが中国政府への忠誠を振り切ることへ決して許されないとされている仄聞しています。日本にもついにチャイナポリス(中華交番)が秘密裏に設置されて裏切者の追跡・恐喝・拉致・強制送還を目的に活動することになるやも知れません。
>「現在の中国でそのような巨額の富を築くには、(地方を含む)共産党幹部、または党とズブズブの関係にある人しか不可能ですので、おそらくは脛が傷だらけの人であろうと推測されます。」
「日本に移住する中国人のほとんどが脛に傷をもつ(犯罪者に近い)
人」との記載は裏付ける資料なりをお持ちですか。
中国国内十指に入る大企業ならともかく、数億~数十億程度の個人資産は市場規模の大きい中国では才能と努力と信頼できる友人に恵まれれば、必ずしも政治的な癒着がなくとも、築くことはできます。
ところで、ニュース記事その他の切り貼り文以外で、貴兄のオリジナルの意見は「脛に傷を持つ云々」と「目新しい話ではない。問題はその数」の他に何かありますか。
場所を間違えました。はにわファクトリー様への返信ではなく龍様への質問です。
日本に移住する中国人がみな脛に傷を抱えているなどと書いた覚えはありませんが?
> 数億~数十億程度の個人資産は市場規模の大きい中国では才能と努力と信頼できる友人に恵まれれば、必ずしも政治的な癒着がなくとも、築くことはできます。
こちらを主張される根拠は何でしょうか?
現在の中国で、党と全く無関係で財を築けるなどと本気で思っているのですか?
もちろん、例外があり得ることまでは否定しませんが、それを一般化するだけの根拠は?
何清漣教授の地方幹部による錬金術に関する報告書くらいは読んでますよね?
なんか、むやみやたらと私に突っかかりたがっておられるようですが、もう少し建設的な方面に頭を使われては?
付記:
二度とあなたを構うような真似はしませんのでご安心なさい。
質問に対して質問で返すなよ。答えになっていない。
別に突っかかっているわけではないが、他ソース切り貼りの前置きの長さに対して自身の意見があまりに薄いので、他に言いたいことがあったのか聞いただけです。
「日本に移住する中国人がみな脛に傷を抱えている」件は統計的なエビデンスが示されず、データのない議論は水掛け論になるので終了します。
>総額は年間100億ドル単位という噂もありましたので
中国の国際収支統計で誤差脱漏が大きいのはこれが原因ではと言われています。
私が中国人だったら、とりあえず日本にいてその後カナダかオーストラリアに永住を考えますが。
sqsqさま
一度、日本に入って、中国国籍を消して(?)から、カナダかオーストラリアに永住する、ということですか。
蛇足ですが、中国共産党としても、日本の機密情報なら、朝日新聞や一部の国会議員が、(頼めば)違法に調べてでも、公開してくれるので、中国スパイ予備軍は、第三国に置いた方が効果的ですよね。
習近平が3選され実質的に終身国家主席が約束された。
鄧小平の改革開放・先富論から毛沢東の共同富裕へ。
社会主義市場経済から国家社会主義へ。
特に習のそれは「21世紀マルクス主義」「習近平新時代の特色ある社会主義」と形容される。
それにしても皮肉な結果としか言いようがない。
鄧小平は自身の後継者に江沢民、胡錦涛を指名する。
もちろん誰の反対もなく江、胡は主席となり改革開放路線を継続。
胡は自身の後継者に同じ共青団の李克強を指名も江は強硬に反対。
結局、胡と江の妥協の産物としてどちらの派閥にも属さない習近平が国家主席となる。
だがその習は父が国家元勲であり中共の正統たる「紅い遺伝子」を持つ。
さらに父を2度失脚させた鄧への復讐に燃えていた。
習は10年かけて江沢民派と共青団を排除し権力を独占。
そして改革開放路線の放棄によって鄧小平への復讐を果たした。
アリババの創業者であるジャック・マーの末路。
これで中国人富裕層は自分たちの末路を理解した。
今後も富裕層、起業家の大脱出が続く。
毛沢東の晩年は文化大革命として内乱に終始したため世界に被害はなかった。
習近平の晩年も同様の内乱が発生してくれれば世界に大きな害はない。
だがそのエネルギーが外部に暴発した場合は世界の災厄となる。
もはや世界にとって最大のイシューは中国の動向と言っても過言ではない。
数年前、中国の名門大のOBクラブのメンバーを会社で接待した事があります。それぞれ会社を経営され、資産は何十億だとか、プライベートジェットを持ってるとか、奥さんは有名な女優さんだとか、いろんな武勇伝を聞かされました。しかしながら、総じて、全員品が無かった。まさに成金。
渋沢栄一は商売に論語を持ってきてたけど、本場の中国では生々しい商売をしてる。マスクが不足すれば買い占めて法外な値段で売る。太陽光発電をすれば山を勝手に切り開く。中国の富裕層が日本に来ても、百害あって一利無し。日本人と倫理観が違うので、トラブルの基になる気がします。韓国人はただ日本の悪口を言いふらすだけだけど、中国人は日本の財産を狙っている。それも巧妙に。
真に警戒すべきは中国人です。アメリカはというと、ユダヤ人に乗っ取られているのではないでしょうか。要人にユダヤ系は多い。現に中東政策は全てイスラエル寄り。中国人の日本での活動に規制を掛けてから、受け入れすべきと思います。