とある名付けサイトによれば、2022年9月における男の子のトップは「柊李」、女の子のトップは「結凪」――。これらをすんなり読めるという人がどの程度いらっしゃるのかという論点もさることながら、こうした名付けが本当に一般的なのか、個人的にはやや疑問でもあります。難読ネーム問題については、もう少し調査が必要かもしれません。
難読ネームの傾向
以前の『「輝星(べが)君の改名問題」について考える』などを含め、当ウェブサイトにおいてしばしば取り上げている話題のひとつが、「難読ネーム」です。
「輝星」と書いて「べが」君。「美音」と書いて「りずむ」ちゃん。この手の名前を見ていると、個人的には違和感を禁じ得ません。社会通念、常識から大きく逸脱した名前を「キラキラネーム」、あるいは「DQNネーム」などと呼ぶそうですが、どうせ書くのであれば、いっそのこと「金星」と書いて「まあず」と読ませるくらいの破壊力があっても良いのかもしれませんね。【参考】「金星(まあず)」君弁護士ドットコムが面白い!自宅で喫煙の60歳教頭、15日の停職に!?『弁護士ドットコム』というウェブサイトがあります。当ウェブサイ... 「輝星(べが)君の改名問題」について考える - 新宿会計士の政治経済評論 |
タイトルにもあるとおり、これにはたとえば「輝星」と書いて「べが」と読ませる、といったものがその事例のひとつです(ちなみに「輝星」と書くと、通常は「きせい」などと読みます)。
そして、この手の「難読ネーム」自体は、どうやらいつかのパターンに分けることができるようです。
①同じ読みの漢字を繰り返す、読まない漢字を入れる
例:「昊空」で「そら」、「萌咲」で「もえ」
②漢字の読みを途中でぶった切る
例:「心愛」で「ここあ」、「望月」で「のーら」、「萌咲」で「さき」
③名前を無理やり漢字に当てはめたもの
例:「巌惰夢」で「がんだむ」、「光宙」で「ぴかちゅう」
④無理やり漢字の意味を当てはめる
例:「七音」で「どれみ」、「男」で「あだむ」、「虹」で「らるく」
⑤漢字の意味を当てはめようとしたものの知識不足で誤った読みを当ててしまったもの
例:「金星」で「まあず」、「皇帝」で「ぷりんす」
⑥上記の複合形
例:「緑夢」で「ぐりむ」、「新一」で「こなん」、「癒」で「ほいみ」
…。
それにしても「萌咲」で「さき」、というのも印象的な事例だと個人的には感じます。普通に読むと「もえさき」ですし、敢えて「ぶった切り」原則を当てはめても「もさ」ですが、これをどうやれば「さき」と読めるのか、片方の文字はどこに行ってしまったのか、謎と言わざるを得ません。
直近ランキング、男の子のトップは「柊李」
こうしたなか、やはり定期的に出てくるのが、こんな話題でしょう。
「いま人気の赤ちゃんの名前」ランキング! 男の子の1位は「柊李」【2022年9月版/無料 赤ちゃん名づけ】
―――2022/10/14 8:00付 Yahoo!ニュースより【ねとらぼ配信】
これはとある名付けのウェブサイトで集計された「2022年9月時点での人気ランキング」を取りあげたものです。
ちなみに男の子の1位は「柊李」で「しゅうり」または「しゅり」、だそうです。また、2位は「斗碧」と書いて「とあ」、3位は「依綺」と書いて「いぶき」なのだとか。「柊李」はパターンの①~⑥にはあまり入っていませんが、「斗碧」は「碧」の訓読みの「あお」の「お」を無視し、「あ」のみを採用したもの、ということでしょうか。
ちなみに一般に「依」は「い」と読み、「綺」は「き」と読むことはありますが、「依綺」で「いぶき」は難しいです。これを「いぶき」と読むためには、「依」を「いぶ」と読むか、「綺」を「ぶき」と読むか、そのいずれか、といったところでしょうか。
ちなみにこの『ねとらぼ』の記事は、赤ちゃんの名づけに関するサイトから引用したようなのですが、ためしに同サイトを眺めてみると、たしかにこの手の名前が大量に出てきます(該当するサイトへのリンクについては、敢えて張りません)。
たとえば女の子の名前のトップは「結凪」で読み方は「けつなぎ」ではなく「ゆな」、「ゆいな」、「けいな」なのだそうです(「凪」の訓読みの「なぎ」の「ぎ」を無視し、「な」だけを採用した、ということでしょうか)。また、「心桜」は「しんおう」ではなく「こころ」、「さくら」、「しおり」、などと読むのだそうです。
さらには、女の子の名づけには「紫陽花」というものがランクインしているのだそうですが、読み方は「あじさい」ではなく「しおか」、「しょうか」、「はるか」などとあります。「あじさい」のどこをどうよめば「はるか」になるのか、という点については、とりあえず突っ込まないことにしたいと思います。
難読ネーム、そんなに多いのでしょうか?
もちろん、人の名前というものは、時代に応じて変化していくものですし、流行り廃りもあります。最近だと、明治時代から大正時代に流行っていたような名前を子供につけるという事例もあるようですが、格調高く感じられるためでしょうか、こうした名前も意外と流行しているようです。
なお、小さいお子さんをお持ちのとある知り合いに尋ねてみたのですが、子供を預けている保育園の場合だと、上記「人気赤ちゃん名前ランキング」に出てきそうな名前は意外と少なく、多くの子供は常識的で読みやすい名前が付けられているのだそうです。
このあたり、もう少し実態調査が必要なのかもしれません。
PCで変換してみた
余談です。
ランキングトップから順に、記載されている読み方を、Microsoft IMEによって変換してみたところ、最初に出てきた変換結果は、こんな具合でした(図表)。
図表 Microsoft IMEによる変換結果
漢字 | 読み方の例 | 変換結果 |
---|---|---|
柊李 | しゅうり | 修理 |
結凪 | けいな | 恵奈 |
斗碧 | とあ | 都あ |
依綺 | いぶき | 伊吹 |
心桜 | こはる | 小春 |
耀 | よう | 用 |
朔久 | さく | 策 |
紫陽花 | しおか | 塩か |
しょうか | 消化 | |
はるか | 遥か | |
颯 | はやて | 颯 |
翠 | あきら | 昭 |
(【出所】著者作成)
上記10漢字・12件の読みについて、書かれているとおりに入力し、変換をしたところ、「颯」君に関しては無事一発変換できました。それ以外の人名(…なのか?とくに1~5位あたり…)については、残念ながら、一発変換は不可能だった模様です。
現場からの報告は以上です。
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当方の名前も難読で、学生時代の新年度は必ず読みの説明を追加していました。
社会人では名刺にルビを入れたので、読みの説明は省略出来ましたけど、よく話題に挙げられました。
最近、新生児の名前の読みランキングの上位になっているのは知ってましたが、若い御夫婦に突然に名前を呼ばれて、驚いて振り返ると、御夫婦の子供さんの名前でした。
同名とはこういう事なのか、と初めて体験しました。
そんな体験から、子供には漢字3文字、誰でも読める、ごく普通の名前にしました。
うーん、読めない名前が沢山。。。
その内『暴君』と書いて『ネロ」とか出て来そうですね。
子供の名前が難読って、誰得なんでしょうかね。
子供同士も高学年になると気遣ってますよ。失礼だから相手に聞けないと。
どうするのか聞いたら、他の子が話しかけるのを聞いて情報収集しているそう。自分達の頃にはなかった悩みにびっくりでした。
名付けられた方のお子さんも自分の名前が好きではないと、泣かれたこともあるそう。
そういう子供の親にありがちなのが 子供の名前をわずかにでも間違えて呼ばれると かなり怒り出すということです。
想像力全開で応対しないと。
若い人の間で、自分の名前を法的に変える方法が一時拡散されていたような覚えが有ります。
難読なのは親の欲が大きいのかなあと……。
いずれにしても漢字の扱いがあんまりです。
この頃の平仮名報道の反動かもしれませんが。
古来、「真名」は呼ばれてはいけない、と難読にしたり、変な名前を付けたとか。
「そりゃ本人が勝手に名前変えられる時代だ!」ってツッコミはなしで。
因みに、やはり我が子の名付けの際には、可愛らしい名前、独自性のある名前を付けようと悩みました。
そこで「名前の後に『(40)』って付けてみてください」と言われ、結果違和感があまり無い名前に落ち着きました。
戸籍謄本や住民基本台帳に ”読み方”の記載がないことが 問題を大きくしているようおもいます。
法的根拠がないので 氏名の読み方は 極論すれば その日の気分でかえてもOKなのでしょう。
”独裁者” とかいて 昭和時代は”ヒトラー”とよみ、令和になると”プーチン”と 読まれる。
時代に合わせて読み方が変わる 斬新な名前も現れてくると思います。
紫陽花は初夏だと認識していますが。紫:無視 陽:はれの連想でハル 花:カ →ハルカ、てところでしょうか。
名だけでも一生訂正と説明が続く人生になるのが厄介そうなのに、「栗落花 紫陽花:つゆり はるか」とか「八月朔日 朔久:ほずみ さく」とか難読名字や意味まで重なってしまったら大変。
記事で指摘されるまで気付きませんでしたが、今だと「変換が面倒」もありますね。自分の端末であれば辞書登録はできますが。上記ツユリ、ホズミは実在し興味のある人は知っているという名字ですが、IMEによっては変換できませんし。ま自分の名前を入力する機会というのもそう無いか。
子どもたちが「月って書いてライトって読ませるんです。変わってるでしょ?ハハ」のように明るく名前と付き合っていってくれることを願います。
>「金星」で「まあず」
これはどう見てもお馬鹿さんだけれど
>「輝星」と書いて「べが」
こっちもなんか気になった。
ヴェガは琴座のアルファ星で日本では七夕伝説のおりひめ星として知られている天体。
しかるに漢字を当てるなら「織女星」ではないのかなと。
「輝星」→代表的な一等星「べが」なのでしょうね
ならば「輝星」で「シリウス」「スピカ」もありかと思います
"星座図鑑・1等星一覧" https://seiza.imagestyle.biz/roots/1tousei.shtml
シリウスはおおいぬ座のアルファ星で中国での呼称は「天狼」
やまいぬの親戚です
お説の通りですね。「輝く星」であるなら全天一の「輝く星」はおおいぬ座のシリウスです。ベガはシリウスより遙かに暗く「輝く星」ではありませんから。「しりうす」とするならまだ分かりますが、それにしても漢字そのものの読みと離れた名前を付けられたら子供が迷惑することでしょう。こう言う議論を持ちかけられたら親の勝手な行動が原因でも返答に困ることでしょう。また、ベガは日本語では織女星と呼ばれており、女性なら「しょくじょ」と呼ばれても問題ないでしょうが、男性ならどういうことになるのでしょうかね。親はこのような実態も知らずに自分勝手に名前を付けたのでしょうが、このような事態にどう責任を取るつもりでしょう。もっとも嘗て支那に「林則女(林則徐と記載していることもあるようですが林則女の方が圧倒的に多いようです)」という英傑(勿論男性ですが)がいたことが有名ですが、男でも女という文字があっても文句なかろうと抗弁するのでしょうかね。それにしても迷惑なことでしょう。
嘗て朝鮮開化党に「金玉均」という英雄がいたそうです、文在寅など日本語読みにしても違和感はないですが、「金玉均」を日本語読みにするといささか問題で、女性などは気楽に呼びかけると、周囲の人はびっくりすることでしょう。必要に応じて「きん・ぎょく・きん」さんとでも呼びかけるのでしょうかね。
もっとも国旗などを掲げるとき先端に金色のギボシが付いていますがあれを正式にはなんと呼ぶのかと思って旗屋に聞いてみたらそのものズバリの名前で呼ぶのが正式な呼び方だと言うことでした。女性でもその世界で平気で呼んでいるようです。
「金玉均」氏は朝鮮人だから問題ないでしょうが、日本人ではそのような名前を付けられると迷惑この上ないことでしょう。生まれた頃の有名人にあやかって「英機」という名前を付けられ、小さい頃ずいぶんといじめられたという話も聞きます。つい最近も「悪魔」という名前を付けられて不受理扱いされた事件がありましたが。これも「小悪魔」程度ならかえって親しみが湧き、問題なかったのかも知れませんが。
私の名前も「広く優れた」という意味を含めて父親が付けてくれたようですが、自分に能力が無いため実態は名前負けしていて困ります。長じてからはマルチリンガルと言うほどのものではないですが、世界を遊び回りたい言う希望があり、英、独、仏、伊、葡をほっつき歩いているうちにそれらのうちならどの国でも多少意思疎通できるようになり、その国内の移動くらいなら聞きながらどこへでも行けるようになってくると、その国のおねーちゃんをナンパするくらいのこともできるようになり、このような遊び方をすることができただけでもできない人より多少マシであり、英語ができないからと言う理由で頑なに外国に行くのを拒絶する人に比べれば名も体を表しているかも知れないのかなと理解し、「ま、いいか」と妥協していますが。
金正日の秘書アンド愛人だった「キム・オク(金 玉)」という人がいました。漢字表記だとアレなので、日本のマスコミは「金 オク」と書いてました。弟は「キム・ギュン(金均)」だそうです。偶然ですね。
日本人にも「日独伊」と書いて「かつくに」という男性が実在します。今は高齢者ですが、若い頃はからかわれていたのでしょうか?
キムオクネタです。
当時読○新聞読んでましたが、確か金オクと書いていました。忖度せずにそのまま書けと呆れたものです。
私の名前はちっとも「難読」ではないのですが、かなり「難発音」な様です。
その人の頭の中では正しく読めている様に思いますが、発音すると、仮名1文字・長音1文字・仮名1文字、という「それやったら外国人やで、漢字でどない書くねん。」という名前にしてしまう人が非常に多い。
閑話休題
ちょっと珍しい難読苗字
https://youtu.be/gzh7MyrrdVI
昔から「小鳥遊」たかなしのように難読の姓があったので、禁止するわけにいかないのかも知れませんが、漢字の読みを勝手に増やすのはやめにして欲しいですね。
いわゆるキラキラネームと呼ばれているようなものは、きっとテンパッてしまった親御さんが、我が子に宇宙一素晴らしく、誰にも真似できないような名前を付けるべく、なぜか明後日の方向に突っ走ったという感じなのではないかと思ってますが、あまりに奇想天外なお名前となると、付けられてしまった子供さんは、何かと面倒が多いだろうなぁとは思います。
とは言え、日本では特に人名や地名だと、通常では使わない読み方をするものが多々あります。いわゆる難読地名と呼ばれるような地名の多くは「どーしたらそんな読みになるんだ!?」と叫びたくなるようなものですし、人名の場合にしか使われない読み方も存在します。
例えば、ヤクルトスワローズの青木宣親(あおきのりちか)選手の場合、「青木」はともかく、「宣(のり)」も「親(ちか)」も、通常の読みではなく、ほぼ人名の場合に限って使われる読みだと思います。奇異に思われないのは、単に昔からそう読ませる人物が結構いたからです。
また、読み仮名の一部を略するとか、一部の字を発音しないという例にも事欠きません。例えば、政宗公でおなじみの「伊達(だて)」姓ですが、たまたまほとんどの人がそう読むと知っているから「だて」と読んでいますが、字面だけからでは「だて」という読みはまず出てこないでしょう(古くは「いたて」または「いだて」と呼んでいたそうですが)。
このように考えると、キラキラネームの手法の多くは、手法自体としては特に新規発明というわけでもないと思うのですが、結局はバランスの問題というか、センスの問題に帰着しちゃうような気もします。
例えば、大熊和奏さんという新人女性声優さんがいますが、「おおくまわかな」と読ませます。「奏」という字を「かな」と読ませているわけです。多くの場合、「奏」という字は一字では「かなで・ソウ」と読みますが、和奏さんの場合は、送り仮名の脱落、もしくは一音省略のいずれかということになります。でも、あくまでも個人的な印象ですが、とても素敵なお名前だと思います。「わかな」という女性名自体は珍しいというほどではありませんが、字の当て方にセンスを感じます。