X
    Categories: 外交

徴用工「資産売却命令」は本当に今週中に確定するのか

自称元徴用工問題と日韓関係「強制終了」

「強制徴用問題を巡る日本企業の資産売却命令が、早ければ今週中に確定してしまう!」、「大変だ!」、とでも言いたいのでしょうか。自称元徴用工問題を巡る資産売却命令に関する韓国メディアの記事が、なかなかに尻切れトンボです。ただ、韓国側に資産売却命令の決定ができるかどうかという論点もさることながら、そもそもこの問題自体、解決する必要があるものなのかどうかについても、考えておく必要はあるかもしれません。

「自称」元徴用工問題:自称元徴用工の5類型

当ウェブサイトでいうところの「自称元徴用工問題」とは、「戦時中、強制徴用された」などと「自称する」者たちやその関係者らが日本企業を訴えている問題のことです。

ここでポイントは、「(自分たちが強制徴用の被害者だと)自称している」、という部分にあります。なぜなら、彼らにはおそらく、次の5つの類型が存在しているからです。

自称元徴用工の構成
  • ①国民徴用令などに基づき合法的に徴用された労務者
  • ②日本企業の人材募集に自発的に応じた応募工
  • ③個別に職を求めて日本にやってきた者
  • ④実際に違法な強制徴用により強制労働させられた被害者
  • ⑤上記①~④のいずれにも該当しないにも関わらず、「強制労働させられた」と騙っている者

(【出所】著者作成)

上記のうち、韓国側が述べる「強制徴用」に最も近い類型は「①国民徴用令などに基づいて合法的に徴用された労務者」ですが、彼らはおそらくごく少数であり、後述のとおり、戦後日本に在留し続けていた60万人を超える朝鮮人のうち245人だった、などとする調査結果もあります。

また、著者自身の主観的な意見ですが、現実に日本で働いていた朝鮮人の多くは②か③であり、これも後述の資料に基づけば②が30万人、③がその家族を含めて70万人だそうであり、④に至っては、おそらくは間違いなく「ゼロ人」です。

これに加えて上記⑤、すなわち「日本で働いたという事実がないにも関わらず、『強制徴用された』とウソをついている者」が、かなりの数に達している可能性はあるでしょう。なにせ、韓国の裁判所は大した証拠がなくても自称元徴用工の「損害」を認定するからです。

高市早苗氏の説明

ちなみに上記のうち①~③の人数は、現在は経済安保担当大臣などを務める高市早苗氏が、自民党が下野していた2010年4月2日に公表したコラム記事『「在日朝鮮人の渡来および引揚げに関する経緯、とくに戦時中の徴用労務者について」という外務省資料』に掲載されていた、次の趣旨の記述を参考にしています。

  • 1939年末現在、日本内地に居住していた朝鮮人の総数は約100万人であつたが、1945年終戦直前にはその数は約200万人に達していた
  • この間に増加した約100万人のうち、約70万人は自から内地に職を求めてきた個別渡航と出生による自然増加によるのであり、残りの30万人の大部分は工鉱業、土木事業等による募集に応じて自由契約にもとづき内地に渡来したものである
  • 国民徴用令により導入されたいわゆる徴用労務者の数はごく少部分である(が)かれらに対しては当時所定の賃金等が支払われている

…。

もちろん、この記述をそのまま信頼して良いのかどうかという問題は残ります。ただ、これらの記述は、在日韓国・朝鮮人を中心とした、いわゆる「特別永住権者」などの人数を含めた関連統計データなどと比べても大きな乖離は生じておらず、それなりの信憑性はあると考えて良いでしょう。

いや、すくなくとも「朝鮮半島で戦時中、20万人の少女が強制的に拉致されて戦場に強制連行され性的奴隷として酷使された」などとする与太話と比べれば、よっぽど整合性と信頼性があります。

いずれにせよ、当ウェブサイトで「自称元徴用工問題」という用語を使用している理由は、いわゆる「強制徴用工」が、おそらくは単純に「自称」しているだけであり、現実には「強制徴用された」という事実は存在しないと考えられるからです。

自称元徴用工問題の「本当の解決」は「利息付き請求書」

したがって、「徴用工問題」などとする用語を使った時点で、韓国側の罠に嵌っているのと同じでしょう。

この点、政府が使用する「旧朝鮮半島出身者問題」、一部議員が使用する「応募工問題」などの用語は、自称元徴用工の実態について正確に定義づけたものではないという問題点はあるのですが、それと同時に韓国がいう「強制徴用問題」などの表現を使っていない点においては評価できるものです。

いずれにせよ、この問題を「自称元徴用工問題」と呼称することで、必ず浮かび上がってくるのが、「韓国がありもしない歴史問題を捏造し、日本を貶めている」という論点でしょう。

当ウェブサイトでこの4年間、ずっと提唱し続けてきたのが、まさにこの「ありもしない問題を捏造したこと」自体を問題視しなければならない、という論点です。

自称元徴用工問題を巡って、日本政府は「問題を作り出した側である韓国が解決策を考えなければならない」という姿勢をしっかりと維持しており、この点に関してはそれなりに評価することはできるのですが、それだけでは不十分です。

日本としては、「違法な強制労働」という「日本による戦争犯罪行為」を捏造したこと自体を問題視しなければならないのであって、むしろこの点について、韓国側に謝罪と賠償を要求しなければならず、また、日本国と日本人の名誉と尊厳を傷つけたことの対価(コスト)を利息付きで負担させなければならないのです。

これを便宜上、「利息付き請求書」論とでも言っておきましょう。

いずれにせよ、「日本企業の資産現金化を避けなければならない」というだけではまったくもって不十分であり、すでに日本は韓国に対する何らかの請求書(たとえば対韓制裁など)を講じなければならない局面にある、という言い方ができるでしょう。

売却スルスル詐欺

さて、こうしたなか、韓国側から繰り広げられる「芝居」のひとつが、日本企業の資産の「売却スルスル詐欺」でしょう。

自称元徴用工側いわく、「日本の戦犯企業が強制徴用被害者らへの賠償に応じない」から「やむを得ず資産の差し押さえに踏み切った」、ということだそうですが、そのわりに差し押さえられている資産は知的財産権(商標権や特許権)、非上場株式など、「売却が極めて困難」な資産ばかりです。

もちろん、「売却が不可能である」、とまでは断言しませんが、これらの資産は一般的に売却するまでに「デューデリジェンス」と呼ばれる価格の算定手続が求められるなど、大変な時間と費用もかかるため、「極めて困難である」という点については指摘しておいて良いでしょう。

もし裁判を通じて本気で損害賠償を実現したければ、通常であれば金銭債権(とくに売掛債権)などの「換金が容易な資産」を差し押さえるのが鉄則です(『個人的実体験に基づく「自称元徴用工訴訟の不自然さ」』等参照)。

(本コンテンツは再掲記事です。)著者自身、とある理由で民事執行法について調べてきたのですが、やはり知的財産権の強制執行というものは、かなり時間もコストもかかるため、現実的ではない、というのが暫定的な結論です。本稿では著者自身の実体験も踏まえつつ、民事執行法の規定などをもとに、不動産、金銭債権、動産、その他資産(とくに知的財産権)についての強制執行(売却命令)について概観しておきたいと思います。【お知らせ】本稿は今朝の『民事執行手続で確認する知的財産権換金の「非現実性」』とほぼ同じ内容のコンテ...
再)民事執行手続で確認する知的財産権換金の非現実性 - 新宿会計士の政治経済評論

中央日報はしかし、こうした事情には一切言及せず、先週金曜日に東京で行われた日韓局長協議で、「韓国政府は日本企業の謝罪問題など官民協議会の議論事項を日本側に詳しく説明」し、「日本側は『傾聴』する水準の態度を固守した」、などとしつつ、記事は尻切れトンボで終わってしまっています。

韓国メディアには、この手の「何が言いたいのかよくわからない記事」というものが非常に多いのは気になるところでしょう。

自称元徴用工問題を「解決」する必要はない

なお、お叱りを覚悟で申し上げるならば、自称元徴用工問題を巡っては、解決する必要はないというのが、最近の著者自身の見解です。自称元徴用工問題自体、もはや「日韓問題」ではなく、純粋な「韓国問題」だからです。

自称元徴用工問題の論点も、結局のところは「ウソをついて他国を貶めて良いのか」、「国民情緒のためには国際法や国際条約、国際合意などをないがしろにしてよいのか」、などの問題点と等しく、なにより、日本が韓国の要求に少しでも応じたら、日本自身が国際法をないがしろにすることに加担してしまうことになるからです。

ウソツキ外務省」が日韓問題を穏便に解決しようと画策しているフシはあるのですが、日本政府が全体として「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)のビジョンを掲げている状況を踏まえると、かつてのような「日本が大人の態度をとる」という日韓関係には戻ることはできませんし、戻ってはなりません。

「佐渡金山の世界遺産登録に動けば韓国や米国との関係が悪化する」。こういうウソを岸田首相に吹き込んでいたのは、やっぱり外務省だったようです。これは韓国観察者の鈴置高史氏が以前から指摘してきた問題点ですが、時事通信に今朝掲載された記事にも同じ趣旨の記載が含まれているのです。2022/07/29 17:46追記記事ジャンルが誤っていましたので修正しています。ウソつき外務省日本政府が佐渡金山の2023年におけるユネスコ世界文化遺産登録を断念したとする話題については、『佐渡金山世界遺産登録断念に「落胆」すべきでない理由』...
ウソつき外務省:「佐渡金山登録で米韓との関係悪化」 - 新宿会計士の政治経済評論

なにより、自称元徴用工問題を「解決」(?)したとしても、韓国が作り出した日韓諸懸案はほかにも山積しています。

とりあえず2018年12月のFCレーダー照射問題についての韓国側からの謝罪も行われていませんし、竹島不法占拠問題、日本海呼称問題に加え、いわゆる慰安婦合意破り、仏像窃盗問題、農作物知的財産権侵害、対日WTO提訴、GSOMIA問題など、数え上げていけばキリがありません。

正直、これらの問題を待つ末路は、「包括的解決」ではなく、日韓関係を「強制終了」ではないか、登記がしてならないのです(※ただし、その「強制終了」の具体的な中身については、まだ当ウェブサイトで申し上げるタイミングではありませんが…)。

新宿会計士:

View Comments (14)

  • そういえば、フッ化水素輸出管理の時、WTO議長に韓国人が立候補して米国の反対などで辞退に追い込まれた、というのがありました。
    連中の油断ならぬところは、こういう厚かましさと共に、敵失が出るまで諦めないしつこさ。
    手前勝手な起訴と同時に議長立候補みたいな厚かましい自己中心行動は、今後も色々の場面で起こると思っています。

    • あっ たしかに、往生際悪く辞退が遅く
      米国にも顰蹙買った韓流の
      兪明希おばはん いましたねえW

      元韓国外交部長官の康京和ヤマンバおばはんも、
      おそらくは自称徴用工詐欺成就狙って、
      国際労働機関事務局長選挙に立候補しましたが
      56票中たった2票の惨敗が、韓流メディアでは
      惜しくも落選(笑)報じられていました。

  • 日韓間に起こった問題のほとんどは韓国側が引き起こした問題である。よくもまあ次から次へと問題を起こせるものだと感心する。しかし、翻って考えれば、日韓間で問題を起こすことが韓国の利益にかなうからである。一方的に問題を起こした韓国側が話し合いの場で日本側に対し譲歩を求めるという構図が長年繰り返されてきた。(日本側の)一時の大人の対応で解決されるはずもなく、韓国側は問題をますますエスカレートさせ際限なく見返りを求めている状況である。自称徴用工や自称慰安婦問題がその典型である。韓国側が日韓関係を被害者と加害者の関係としかとらえていない以上、問題が解決するとは到底思えない。日本人は恩を心に刻み、恨みを水に流す民族である。しかし、彼の国の人たちは恨みを心に刻み、恩を水に流す民族らしい。恨みの底にあるのは強欲と無恥である。

  • > 韓国の裁判所は大した証拠がなくても自称元徴用工の「損害」を認定するからです。

    韓国では、証言(本人のでも)、漫画、映画、蝋人形、小説、彫刻、等々が、戦後に創作されたものであっても証拠と見做される様なので、韓国独自解釈では、「確固たる証拠」がある訳です。ただ、韓国以外の解釈と合わないだけ。

    給与天引きの年金に加入していた強制徴用被害者って、韓国ならではの解釈でしょう。

    自らの意思で不法入国したと言いたくない為に、強制徴用を自称しているのではなかろうか。

  • > 「資産売却命令」は本当に今週中に確定するのか
    しないしない(笑) まず確定しないでしょうね。

    可能性があるとすれば、現在の尹錫悦大統領がロウソクに焼かれて、李在明が大統領になった時だと思います。

  • まあ「確定しない」でしょうね。
    確定すれば売却手続きに移らざるを得ず、韓国が先にルビコン河を渡ったことになるでしょうから。米国からも怒られちゃいますよ。
    それよりも、海上自衛隊創設70年を記念する国際観艦式への参加ですけど、韓国世論は事前に想定したほど、激しい反発ではなさそうですね。この展開で、昔だったら日本が忖度して、韓国が参加しやすい形を作ってあげて目出度し目出度しで終わったのでしょうが、今はそんなこと誰も考えていませんもんね。韓国は、ウリナラ基準ではなく、国際基準に沿って、考えるべきです。旭日旗を戦犯旗とか言っているのは、世界で韓国だけですよ。徴用工問題を「国家間の合意を守る」ではなく、被害者中心主義で考えるとか言っても、国際世論の支持は全く得られません。

    • 念を入れて「旭日旗問題は存在しないことを事実上認めた」くらいの煽りは入れてほしいものです。

  • お疲れさまです。

    日本人からしたら、確たる証拠もない恐喝という名の犯罪だと受け止めております。

    仮に日本で恐喝に対する裁判をおこし泥試合になるより、黙って制裁を希望いたします。

  • まだ鑑定スルスル詐欺と競売カケルカケル詐欺があるので、実際の現金化まで5年くらいは引っ張れるでしょうね。

  •  韓国大法院が偽造しているのは、「強制徴用被害者」そのものではなく、「朝鮮半島からの労働力動員は、違法な植民地支配に基づき行われたものだから、文中の➀~⑤全ての類型の労働者は不法行為による『精神的苦痛』を強いられたため、慰謝料を支払え」という論法で『違法な植民地支配(大日本帝国による朝鮮併合は違法・無効)』と『精神的苦痛』を偽造しています。
     いずれにしても偽造であることに変わりはありませんが。

  •  韓国は日本に難癖付けて金を巻き上げるのが目的なんだから、日本政府は「もうそんな国とは金輪際お付き合いできません」と言葉でも態度でもはっきり示すべき。(示しているのかもしれないけどまだ足りない)
    こっちは関わりたくないだけなのに、「日本は衰退してきたから韓国に嫉妬してる」とかいう心底気持ち悪い理屈で勝手に日本人を解釈してくるのはマジで勘弁してほしい。

1 2