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長谷川幸洋氏「自分の基準で相手を判断するな」と警告

東京新聞の元論説副主幹でもある長谷川幸洋氏が、「こちらの基準で相手を判断すれば、かえって平和が危うくなる」と警告しました。現代ビジネスに5日付で掲載された論考によれば、ペロシ氏の訪台で見えてきたのは日本の論壇における「平和ボケ」だというのです。これについて、どう読むべきでしょうか。

長谷川幸洋氏「こちらの基準で相手を判断するな」

ナンシー・ペロシ米下院議長が2日、台湾を訪問した話題を巡っては、東京新聞の元論説副主幹でもある長谷川幸洋氏がウェブ評論サイト『現代ビジネス』に5日、こんな記事を寄稿しています。

「平和ボケ」した日本のメディアの「致命的な勘違い」が、ペロシ訪台で見えてきた

―――2022.08.05付 現代ビジネスより

ウェブページ換算で6ページという分量ですが、1ページ当たりの文字数は1000文字前後になるように分割されているようですので、さほど労力なく読むことができると思います(※というよりも、ページ分割が多すぎるのは現代ビジネスの致命的欠陥ですが、だからといって長谷川氏の論考の価値が下がるものではありません)。

首相官邸に岸田文雄首相を訪れたナンシー・ペロシ米下院議長

(【出所】首相官邸HP)

ただ、それ以上に興味深いのは、長谷川氏の主張の一貫性、そして調査能力の高さです。

長谷川氏は冒頭、ペロシ氏の訪台を「安定を損なう」「対立を激化させた」などと批判する言説を、こう斬って捨てます。

だが、そんな言説こそが『平和ボケ・日本』の勘違いではないか。こちらの基準で相手を判断すれば、かえって平和が危うくなる」。

「どんな激しい言葉で脅しても中国は最後に折れる」

そして、この6ページ分の論説、この「こちらの基準で相手を判断するな」という論旨で一貫しています。

長谷川氏はこの記事以外にも、かねてよりペロシ氏の訪台を巡り、中国政府(外交部や国防部など)が強く牽制しているという事例を紹介してきたのですが(詳しい内容については記事をご参照ください)、こうした中国政府関係者の厳しいレトリックにも関わらず、ペロシ氏はあっさりと台湾・松山空港に着陸しました。

これについて長谷川氏はこう喝破します。

ところが、蓋を開けてみれば、異常接近どころか、何事も起きず、ペロシ議長の搭乗機は8月2日夜、すんなりと台湾の松山空港に着陸した。まったくの拍子抜けである」。

これで恥をかいたのは、中国だ。さまざまなけん制発言は『結局、空脅し』とバレてしまった。逆に、米国は大きな教訓を得た。どんなに激しい言葉で脅していても『中国は最後に折れる』という実例になったからだ。この教訓は、今後に活かされるだろう」。

…。

長谷川さん、容赦ないですね(笑)。

当たり前ですが、米中対立局面はまだまだ続きますので、今回のペロシ氏の訪台による教訓を正しく把握しておくことは必要です。ただ、この「恥をかいたのは中国の側だ」、「中国は最後には折れる」といった教訓を正しく評価できている人は、日本には意外と少ないようです。

長谷川氏が説く「話せばわかる」論の間違い

長谷川氏は、朝日新聞や東京新聞などの「左翼新聞」に加え、「(ペロシ氏の)訪台にデメリットはあったがメリットはない」などと主張する「ある日本の学者」などの解説を紹介したうえで、これらに対し、そもそも「中国自身が安定を損なっているという点を忘れている」と批判します。

『静かに話せ論』が勘違いしているのは、そうした主張が『静かに話せば、相手も分かるはず』という仮定を前提にしている点である。中国は『静かに話せば分かる国』なのか。そうでないのは、そう主張している本人たちも、実は内心、承知しているはずだ」。

まったくの正論でしょう。

そのうえで、長谷川氏は、日本で「話せばわかる」論が蔓延る理由を日本の文化やメディアの構造などから解説しているのですが(※このあたりのくだりは賛否両論あると思うので省略します)、その直後に、「自分の基準で相手を判断するな」という長谷川氏の警告が展開されます。

残念ながら、中国やロシア、北朝鮮のような独裁・専制主義国家は『話せば分かる国』ではない。だからこそ、ときにはムチや大胆な行動が必要になる。『オレたちは、脅せば屈する国ではないぞ』と、相手に分からせなければならないのだ」。

この記述、全面的に賛同せざるを得ません。

「そんな記事を読んでいても真実は見えてこない」

しかも、長谷川氏に言わせれば、日本国内でウクライナ戦争直前に、「ロシアがウクライナ侵攻するはずがない」などと主張していた学者や専門家らは、ロシアのウラジミル・プーチンの大統領の発想や論理を、西側社会の常識で理解しようとしたというのですが、これについては次のように手厳しく指摘します。

国際関係について、根本的な理解の仕方が間違っているのである。にもかかわらず、日本のメディアは、そんな間違った専門家や学者の意見を相変わらず、重宝している。西側社会の常識を前提に語ってくれたほうが、読者や視聴者の耳になじみやすいからだ」。

長谷川氏は「そんな記事を読んでいても真実は見えてこない」と述べるのですが、このあたり、「相手をこちらの基準で判断してしまう」という議論の仕方、何となく日韓関係の議論にも当てはまるような気がしてなりません。

いずれにせよ、外国の行動(とくに国際法をないがしろにする中国、ロシア、北朝鮮、韓国の4ヵ国)について議論する際に、「きちんと話せば相手もわかるはずだ」といった日本国内でしか通用しない妙な常識にしがみつくのは百害あって一利なし、といったところでしょう。

新宿会計士:

View Comments (25)

  • 話せばわかる
    五・一五事件が思い起こされますね。問答無用で撃たれちゃいましたが。

    東アジア首脳会議の外相会議で、林外相の発言時に中国とロシアの外相が退席したとか。
    話すら聞かない…
    まあ、そういうことですね。

  • 長谷川幸洋氏といい、峯村健司氏といい、ATMと呼ばれる新聞社にも、一風変わった人はいるようですね。

  • 「話せばわかる、ただし実力を背景にしている場合に限られる」

    これが分かっていないから「頭お花畑」な記事・主張が出てくるのだと考えています。
    実力とは、場合によって変わりますが武力や経済力や権力などなどですね。

  • 話せばわかる、は日本人に特に多いですよね。事なかれ主義が多いことも要因だと思いますが。
    アメリカだとすぐ裁判に持ち込みますよ。話してもわからないからトラブルが起きるのであって解決しようと思うと第三者を交えて解決を図る。

    • 一寸お話が飛躍し過ぎるかも知れませんが、日本は「減点主義」で米国は「得点主義」である事も大きく影響していると思います。
      日本では「減点される可能性の大きい行動」を避けるのに対して、米国では「得点出来る可能性のある行動(ダメ元)」に対するハードルが低いのかも。

      韓国の「反日行動」のハードルが低い理由でもあります。

  • 「話せば判る」は、左翼の好きな幻想だというのは、言いえて妙ですね。とはいえ何でも実力=軍事力というのも、ちょっと頂けない。その間に適切なバランスがあるのでしょうけれど、日本人の思考(嗜好?)が、「話せば判る」に偏っているというご指摘には、同意します。
    同様に、新宿会計士さんの「日韓関係の議論にも当てはまる」というご指摘(感想?)にも、同意します。国際常識とかけはなれた”ウリナラ”常識に凝り固まる人たちとは、「話しても判り合えない」ことを前提に、交渉すべきでしょう。
    韓国が、国際常識である「国家間の合意は守る」に寄り添えば、隣国として最低限の付き合いはするし、ごちゃごちゃ言うようなら、首脳会談はしない、外相会議で話だけは聞いてやるが妥協はしない、で良いと思います。

    •  >「話せば判る」は、左翼の好きな幻想

       でも実際奴らは話がかみ合わないとすぐ相手を敵認定して「実力行使」に出ますよね(冷笑)。九条ナイフ事件のように。

  • 「話せばわかる」 ww

    養老孟司氏の著書「バカの壁」の帯紙には「『話せば分かる』なんて大ウソ!」
    「バカの壁」とは「人は知りたくないことに耳を貸さず情報を遮断すること」

    つまり 都合の悪い事は「耳に入らない」し「理解しない」ということです 

  • 話せばわかる論者は、自分は交通ルールを守っているから事故に遭わないと勘違いしている人と同じ過ちを犯している。事故に巻き込まれるまで、そのことに理解が及ぶことはないのだろう。
    憲法9条頭お花畑論者も、同じ穴の狢である。
    目を開けたまま夢を見られる方々が羨ましい。

  • 「対話と、対話以外の手段、両方を駆使していけば良いじゃないか」

    対話を神聖視する人達には、この対話の限界を認める思想は受け付けないんでしょうね。
    でも往々にして、そういう人達こそ自分の気に入らない相手とは対話しないので……

  • >まるで、日本が自由・民主主義陣営に属していないかのようだ。ちなみに、橋渡し論は親中派、林芳正外相の路線でもある。

    引用先にこういう一文がありました。
    なにか決定的な発言とかありましたっけ?

    ググってみましたが、林外相は個人としての情報発信はほとんどしていないんですね。
    何考えてるかわからないイメージがそのまま検索結果として表れました。(笑)
    インタビュー記事もフワフワしたことしか言ってませんし。

    長谷川幸洋氏、最近はYoutube発信が多いんですが、そのために動画を全部みるというのもね・・・

    • 発言に関しては把握しておりませんが、林芳正氏が日中友好議員連盟の会長時代に何か言っていた可能性があるのでは?

    • 動画を全部みるというのもね・・・全くもって同感です。TVのない少年期を過ごし自己流速読術を会得した自分にとって動画は苦痛です。

  • どんな激しい言葉で脅しても中国は最後に折れるというのは、中国の過去の行いをみると「パフォーマンス上」ではエスカレーションラダーを登りきることがなかったというだけの話です

    粛々と行動を起こして実績を積み重ねているのは中国側ですよ?

    そして、それは対韓国も同じです

    たとえば「現金化」というラインを日本側が勝手にラインを引いて「妥協してはならない」と、パフォーマンス上では"カッコよく"キメている自民党の政治家がいらっしゃるようです。

    そして、オールド右翼たちは、「エスカレーションラダーを登りきらずにあたふたしている韓国」という表現をもって精神勝利していますが、すでに妥協し、譲歩し、大損をこいているのは日本であり、それを矮小化して精神勝利しているのはほかでもない日本であるわけです。

    • 現金化云々というからには自称徴用工に対する韓国大法院判決のことなんでしょうけど、その件でいつどんな妥協を日本がして大損こいたのでしょうか?
      そんな現実が無い以上はそれこそ有りもしない妄想で日本相手に勝った気になっている精神勝利そのもでしょう。
      精神勝利は韓国人が自虐的に、また日本人が韓国に対してよく使う言葉ですが、あなたはその言葉がどのような意味があってどう使うかわかってらっしゃらないようです。
      阿Q正伝をもう一度読み返してみたほうがよろしいのでは?

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