朝日新聞によると参院選で自公が改選70議席台をうかがう勢いなのだそうです。自民党の改選議席数は55議席ですが、これが事実なら、自民党が大躍進です。そもそもメディアの選挙情勢分析自体が信頼に値するのかどうか、こうした調査が選挙の攻勢をゆがめないのか、といった論点は気になるところですが、さて、実際はどうなのでしょうか?
2022/07/06 17:30追記
誤植を修正したうえ、タイトルを「自民が」から「自公が」に修正しております。
日曜日には参院選の投開票
日曜日には、参議院議員通常選挙の投開票が行われます(※ただし、不在者投票はすでに始まっています)。前提条件として参議院ウェブサイトに公表されている「議員一覧」をもとに会派別・任期別の所属議員数を作成しておくと、次の図表のとおりです。
図表 参議院の会派別所議席一覧
会派 | 合計 | 改選 | 非改選 |
---|---|---|---|
自民 | 110 | 55 | 55 |
立憲 | 45 | 23 | 22 |
公明 | 28 | 14 | 14 |
民主 | 16 | 10 | 6 |
維新 | 15 | 6 | 9 |
共産 | 13 | 6 | 7 |
沖縄 | 2 | 1 | 1 |
れ新 | 2 | 0 | 2 |
碧水 | 2 | 0 | 2 |
みん | 2 | 1 | 1 |
無所属 | 8 | 4 | 4 |
欠員 | 2 | 1 | 1 |
合計 | 245 | 121 | 124 |
(【出所】参議院ウェブサイト『議員一覧(50音順)』をもとに著者作成。ただし会派の略称は参議院ウェブサイト『参議院会派名一覧』のとおり。また、自民は山東明子議長を、立憲は小川敏夫副議長をそれぞれ含めない議席数である)
選挙情勢分析は公選法違反ではないのか
こうしたなか、先日の『参院選「与党が過半数の勢い、維新も順調、立憲苦戦」』では、今回の参院選では与党が順調に議席を伸ばす勢いである一方、野党、とくに最大野党である立憲民主党が苦戦しているらしい、とする話題を取り上げました。
いくつかのメディアが本日までに参院選の中盤選挙情勢を報じました。自公両党が堅調に議席を伸ばす一方、日本維新の会が比例で野党第1党をうかがう勢いであるのに対し、立憲民主党などが伸びやなんでいる、などというのです。こうした世論調査自体が公選法違反ではないか、といった疑問点はとりあえず脇に置くとして、「政権選択選挙」とはいえない参院選と私たち日本国民がどう向き合うべきか、あらためて考えておきましょう。今回の参院選をどう考えるか「政権選択選挙」ではありませんが…参院選というものは、一般に「政権選択のた... 参院選「与党が過半数の勢い、維新も順調、立憲苦戦」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
この点、公選法ではの第138条の3には「選挙に関し公職に就くべき者を予想する人気投票の経過や結果」については「公表してはならない」と明記されています。
公職選挙法第138条の3
何人も、選挙に関し、公職に就くべき者(衆議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数、参議院比例代表選出議員の選挙にあつては政党その他の政治団体に係る公職に就くべき者又はその数若しくは公職に就くべき順位)を予想する人気投票の経過又は結果を公表してはならない。
報道各社は選挙の公示日以降も、「序盤の情勢」、「中盤の情勢」、「終盤の情勢」といった具合に、「選挙情勢分析」に関する世論調査を実施してその結果を公表しているのですが、このこと自体、この公選法の規定に抵触はしないのでしょうか?
どうも理解に苦しむ点ではあります。
また、これに関連し、これらの選挙情勢分析をそのまま鵜呑みに信じて良いものかどうか、という論点もあります。なぜなら、ときどきメディアはわざと特定政党に有利な結果を流すことで、選挙結果を大きく歪めようとするフシもあるからです。
「自民党が有利」などと報じていれば、自民党支持者のなかには「わざわざ自分が投票しなくても良い」と勘違いして棄権する人もいるかもしれませんし、「バランスを取るために今回は野党に投票しよう」、などと判断する人もいるかもしれません(※著者自身の知り合いにもそのような投票行動をする方が複数名います)。
朝日新聞「自民党が70議席台の勢い」
こうしたなかで、個人的に目についたのが、朝日新聞デジタル(日本語版)に昨日掲載された、こんな記事です。
自公、改選70議席台の勢い 改憲4党で3分の2超も 朝日終盤情勢
―――2022年7月5日 22時30分付 朝日新聞デジタル日本語版より
これは朝日新聞社が4日から5日にかけて、全国の有権者を対象に電話とインターネットで情勢調査を実施したとする趣旨の有料会員限定記事ですが、無料公開されている部分の一部を紹介すると、こんな具合です。
- 自公両党は改選過半数(63議席)を確保し、70議席台に乗る勢いで、非改選70議席を含めて定数の過半数(125議席)を上回りそうだ
- 立憲民主党は改選23議席を下回る見通し。維新は改選6議席倍増の勢いを維持し、比例区では立憲を上回る可能性も出てきた
…。
また、32の1人区のうち、「自民党有利」の選挙区が28区に達している、などとする関連記事も表示されています。
1人区、自民有利は28選挙区、野党系優勢は2選挙区 朝日終盤情勢
―――2022年7月5日 22時30分付 朝日新聞デジタル日本語版より
このあたり、「自民党が有利だ」、「立憲民主党が苦戦している」という情報を、ここまで具体的な数字まで出して説明しているという時点で、この記事自体、「自民党の獲得議席数を落とそうとする目的がある記事ではないか」、という疑念を抱いてしまいがちです。
ただ、それと同時に記事にもあるとおり、朝日新聞社の調査では最近、電話だけでなくインターネットも併用して行われているそうであり、前回・昨年10月の衆院選でも主要メディアのなかでは比較的正確な予測ができていたという実例もあり、なかなか侮れません。
この点、朝日新聞によると「調査時点で投票態度を明らかにしていない人が選挙区、比例区とも4割前後おり」、「情勢は変わりうる」などとしているのですが、さて、実際はどうなのでしょうか。
View Comments (12)
独断や偏見かもしれないと、お断りしてコメントします。
(なにしろ、素人考えなので)
当たり前の話ですが、一人の有権者が、ある政党の考えに100%賛同することはあり得ません。つまり、この問題では、この政党の考えに賛成だが、あの問題では、あの政党の考えに賛成である、ということです。(もちろん、この問題も、あの問題も矛盾なく解決してくれるのなら、それにこしたことはありません)
ということは、(あの問題が、これ以上、悪化しないという前提付きですが)この問題だけは、確実に解決してもらうために、当選しそうな(この政党の)候補に票が集まるのではないでしょうか。なにしろ、当選しないことには始まりませんので。
蛇足ですが、社民党は、憲法9条は安全保障の手段であり、目的ではないことを忘れているのでしょう。つまり、憲法9条改正反対が目的になり、そのためには安全保障を無視しているのです。(もっとも、手段が目的になってしまうのは、よくあることです)
駄文にて失礼しました。
朝日新聞がこんなこと書くのは、反立憲共産党の有権者を欺く為。
反立憲共産党の有権者の方々、ゆめゆめ油断なさるな、投票所へ参ろう。
NHK 報道局政治部は去る衆議院選挙において誤った報道を流したと自己批判記事を載せました。
今度こそ名誉挽回できるでしょうか。それともなんとかの上塗りに終わるでしょうか。クオリティー報道の正体を有権者全員による実時間監視で解明するよい機会です。
前回は名誉返上で、今回は汚名挽回になりそう
朝日新聞は去年の衆院選で主要メディアで一番正確な予想をした。
(ならば同時期の週刊朝日、アエラの立憲共産大勝記事は何だったのか?は置いておくw)
今回もほぼその通りになると思われる。
今回参院選の焦点は、改憲勢力が2/3獲得できるかであり野党一党が維新か立憲かである。
いずれにせよ立憲が野党をまとめ自民と対峙する復元力、推進力は失われている。
つまりこの参院選で自民1強による「ガリバー型寡占体制」が完成する。
そしてそれは自民の分裂でもない限り永続する。
日本の最大の不幸は自民に対峙する現実野党が存在しないこと。
これからは国民による政治家の厳しい監視が求められる。
与野党問わず優れている政治家は褒め劣っている政治家は貶す。
こうやって国民の力で政治をよくしていく必要がある。
自民は維新や国民と現実の政策について是々非々で個別に向き合うことになる。
やはり国民による監視の中で行われるのが理想だろう。
ガリバーさんは、リリパット編では、小人達にしょうーもない拘束をされるんですが、引きちぎったりしないんですよねえ。
エヴァ並みに拘束具を引きちぎって大暴れしたって良かっただろうにと子供心に思いました。
リリパットの科学力を甘く見すぎ
巨人と言えど普通の生物には物理的に引きちぎれないから、ガリバーも大人しくしていたに決まっているだろ
自公で70議席だったはず。公明党が現状維持の14議席を確保するでしょうから、自民党は56議席以上です。改選議席を多少上回るというだけです。そんな大げさな予測ではありません。
私は立憲民主や共産党の主張の多くに賛成できませんし、かと言って維新の会もガバナンスの低さを感じ魅力を感じないんですよね。ただ岸田政権の実行力の低さや自公の枠組みのいかがわしさより今回は既に投票はしましたが、自民党への投票はパスしました。
世襲にも現れていますが国会議員が特権階級化してしまっていますよね。そして選挙で選ばれる政治家が選挙を経ない官僚に負けている現状を感じます。国民に政治を取り戻すには今の枠組みでは難しいと感じたので、そのような投票行動をしました。もちろん投票した人、政党の主張全てに賛同したわけではありません。
新聞記者やジャーナリストはこの世のことは自分たちがもっともよく知っているつもりです。
ですが事実はそうではありません。思い出してください。トランプ大統領当選に至ったあの経緯を。そして4年後の再選選挙過程で起きたことを。新聞記者やジャーナリズムには適当なことを言って連中を混乱させておけ、社会の本心など彼らは決して理解できない、裸の王様とは報道界のことだ。巷間に広まる言葉に出されない暗黙の了解とはこういうものかも知れません。
確か韓国の大統領選挙では、途中から選挙のリサーチはダメやったんですが。
日本のマスコミの方がレベルが低いのでは
選挙公約を実現できる党というのは、政権与党です。
国民や維新は是々非々ですから、与党と話を着けられれば、実現させることも可能です。
立民や共産・社民は、与党のすることなす事全て反対で、週刊誌ネタを取り上げて口汚く罵るだけですから、彼らの好きな「お話合い」でどうにかなるものではありません。
つまり、「・・・を実現します」と言った所で出来る訳はありません。
尤も、実現する見込みが無いからこそ、あれもやるこれもやる、と荒唐無稽な公約を並べられるのでしょう。要するに、やるやる詐欺にしかすぎません。
N党の公約は、NHKをぶっこわーーすで、そのため不払い者の支援を目的にしてます。候補者乱立も比例の得票稼ぎのためで、得票数が2%を超えると政党助成金が得られるからだそうです。当選する気も無いのに立候補するのは有権者を愚弄するようにも見えますが、政党助成金を不払い者支援、裁判費用に充てるのだそうで、これはこれで見識でしょう。
私はN党支持ではありませんが、弱小政党の戦略としては実に正解だと思いました。
目標・手段・戦術が明解です。スタートアップ企業の経営者ならこうあるべきなんでしょう。
出来もしないのに「9条守って世界平和を」なんていう会社は倒産すれば良いのです。