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「地方選勝利で尹錫悦政権は日韓関係改善へ」…本当?

果たして、そうかなぁ…。「韓国与党が統一地方選で圧勝:尹錫悦大統領は韓日関係の改善に積極的に取り組むだろう」とする見方に、正直、疑念を抱いてしまいます。というのも、日韓諸懸案の多くは「韓国の日本に対する二重の不法行為」という側面があるのに加え、尹錫悦政権下でも新たな「二重の不法行為」が発生しているからです。

統一地方選で韓国の与党が圧勝

韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に本日掲載された次の記事などによると、昨日、韓国で行われた統一地方選挙で、尹錫悦(いん・しゃくえつ)大統領の支持母体である保守系の政党「国民の力」が「圧勝」したのだそうです。

統一地方選で与党圧勝 尹大統領の政権運営に弾み=韓国

―――2022.06.02 11:21付 聯合ニュース日本語版より

聯合ニュースによると「保守系」の「国民の力」は17の広域自治体首長の選挙で、京畿道などの5カ所を除く12カ所を制したのだそうです。

ちなみに前回・2018年の統一地方選では、逆に「革新系」の「ともに民主党」が14ヵ所を抑える圧勝を納めていたため、聯合ニュースは「わずか4年で地方の政治権力の構造が一変した」と指摘。あわせて「就任したばかりの尹大統領の政権運営に弾みがつきそうだ」と評しています。

(※このあたり、具体的な選挙結果の詳しい内容やそれらに対する聯合ニュースとしての見解について知りたい方は、是非、リンク先記事を読んでください。本稿では割愛します。)

中央日報「尹錫悦政権は韓日関係改善に積極取り組みへ」

こうしたなか、同じく韓国メディアの『中央日報』(日本語版)に掲載された次の記事では、わが国のメディアの論調を引用するかたちで、この韓国地方選の結果を受けて尹錫悦大統領の政権運営に弾みがつき、「韓日関係の改善にも積極的に出るだろう」としています。

日本メディア「地方選挙の勝利で尹政府が韓日関係の改善に積極的に取り組むだろう」

―――2022.06.02 10:39付 中央日報日本語版より

中央日報の記事では共同通信、毎日新聞、読売新聞、朝日新聞の4つのメディアの報道を引用しているのですが、日本のメディアの報道を引用しているとはいえ、なんとなく中央日報の社としての期待のようなものが見え隠れしているように思えるのは気のせいでしょうか。

ただ、大変申し訳ないのですが、今回の地方選を受け、尹錫悦政権下での日韓関係「改善」(?)に弾みがつく、などと軽々しく考えるのは、大変に浅い分析です。

【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任』でも暫定的に取りまとめたとおり、そもそも論として、韓国の日本に対する「二重の不法行為」は、べつに前任の文在寅(ぶん・ざいいん)政権で初めて行われたものではないからです。

世間では少し勘違いしている人が多いようですが、日韓諸懸案とは韓国の日本に対する「二重の不法行為」の問題です。解決する全責任は、韓国側にあります。そして、日本が議論しなければならないことは、「どうやって韓国に譲歩して折り合いをつけるか」、ではありません。「約束を守らない韓国を、どうやって罰するか」、です。本稿では「総論」として、これまでに当ウェブサイトで触れてきた「韓国の対日不法行為」の数々を、大ざっぱに振り返っておきます。韓国の対日不法行為、尹錫悦政権発足後に「風化」していないか?2022年5月1...
【総論】韓国の日本に対する「二重の不法行為」と責任 - 新宿会計士の政治経済評論

そもそも日韓諸懸案は、韓国による竹島の不法占拠問題、自称元慰安婦問題、自称元徴用工問題の「3本柱」を筆頭に、たいていの場合は、「①韓国側による主張がウソ、捏造に基づくものである」、「②韓国が法的な根拠なく日本に何らかの要求をしている」、という特徴を持っています。

このうち竹島問題自体、韓国の建国直後、サンフランシスコ講和条約が発効する直前の1952年1月に、当時の韓国大統領だった李承晩(り・しょうばん)が違法かつ一方的に宣言した「李承晩ライン」の韓国側に竹島が含まれたことに端を発しています。

もちろん、文在寅政権時代に日韓間の諸懸案が増えたことは事実ですが、竹島問題の全責任を文在寅政権に押し付けるのは、さすがに行き過ぎです(もっとも、竹島問題を解決する責任を果たさなかったという意味では、文在寅政権を含めた韓国の歴代政権にも重過失がありますが…)。

日韓関係「改善」があり得ない証拠

そのうえ『竹島不法調査受け、日本政府は韓国外相来日を拒否せよ』でも触れたとおり、尹錫悦政権発足直前から、韓国の国営企業の船舶が日本の排他的経済水域(EEZ)を含めた竹島近海で、日本側の許可なく勝手な調査を行うという事件も発生しています。

抗議では済まされません。韓国が日本の排他的経済水域(EEZ)で日本の許可なく勝手に調査を行っていたとして、日本政府が韓国政府に抗議したそうです。しかし、韓国が新政権になってもこの手の不法行為を日本に仕掛けてきたという事実は、日本が求める「国と国との約束を守る」かたちでの日韓関係正常化があり得ないことを意味します。とりあえず、日本政府は韓国国民に対するビザ免除措置再開を見送るとともに、韓国外相の訪日受入を拒否すべきです。韓国の二重の不法行為とゼロ対100理論日韓諸懸案といえば、基本的には韓国の日本...
竹島不法調査受け、日本政府は韓国外相来日を拒否せよ - 新宿会計士の政治経済評論

もしも日本側の一部の論者が言うとおり、尹錫悦氏に日韓関係「改善」の意思があるのなら、こうした違法な海洋調査を実施するわけがありません。なぜなら、これも①韓国側がウソ・捏造に基づき、②法的根拠なしに日本に領有権を主張している、という意味において、明らかに「二重の不法行為」だからです。

この点、個人的には韓国によるこの行動自体、「瀬戸際戦略」、あるいは「マウンティング」の一種だと考えています。要するに、「岸田文雄政権はどこまでやって大丈夫なのか」を見極めるため、わざと日本を刺激している可能性がある、というわけです(※余談ですが、この行動パターンは中国や北朝鮮、ロシアにも見られます)。

いずれにせよ、日本政府が望む「日韓関係改善」とは、「韓国が国際法や国と国との約束を尊重する」というかたちで日韓関係が正常化することだと思うのですが、そのような「正常化」があり得ないことなど、こうした韓国の行動からも明らかです。

【参考】尹錫悦大統領を表敬する林芳正外相

(【出所】外務省)

6月に入っても朴振氏の訪日はまだ発表されず

ちなみに韓国の朴振(ぼく・しん)外交部長官(※外相に相当)の訪日という話題を巡っては、中央日報に今日、こんな記事も出ていました。

韓国外交部「朴振長官の訪日推進に関連し韓日間で疎通中」

―――2022.06.02 12:02付 中央日報日本語版より

もっとも、この記事自体は、当ウェブサイトでは『竹島不法調査受け、日本政府は韓国外相来日を拒否せよ』でも触れた、「朴振氏が6月中旬に訪日を計画している」とする韓国メディアの報道と比べ、あまり新しい情報はありません。

韓国外交部の崔泳杉(さい・えいさん)報道官が先月31日の定例会見で、朴振氏の訪日、日韓のビザ免除措置の復活、羽田-金浦便の再開などを含めて「現在韓日間で疎通が進行中」などと述べた、とするものです。

ただし、朴振氏の訪日という話題が先月、韓国メディアから出てきていたにも関わらず、この手の記事が6月に入ってからも出て来るということは、6月に入っても日本政府側から公式発表されていないということであり、興味深い事実です。

もしかすると「竹島測量問題」を受けて、日本側が韓国との往来正常化に後ろ向きな姿勢を示している、という可能性はないでしょうか。

日本政府の対応にあまり期待し過ぎるのは適切ではないのかもしれませんが、それでも日本政府・外務省がきちんと国益を重視しているならば、少なくとも朴振氏の訪日については謝絶するくらいでちょうど良いのではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (14)

  • 韓国(と日本のマスコミ)のいうところの「関係改善」は、単に「日本の譲歩=韓国は何もしない」であって、「韓国が約束を守る=行動する」という事ではないですね。

    そうであれば、ネットが発達して、マスコミの洗脳が効かなくなってきている現在、いわゆる関係改善はあり得ないと思われます。

    それどころか、「過去最悪の日韓関係」がさらに更新されていくと思われます。

    • 他サイトの紹介になりますが
      [日韓問題(初心者向け)「韓国の事情を汲んではいけない理由」]
      https://oogchib.hateblo.jp/
      こちらでは なぜ韓国人がウソや理解しがたい行動を取るのか
      非常にわかりやすく理論的に詳しく分析されており、非常にお勧めします
      詰まるところ 韓国は常識や認識が全く異なる為
      韓国に対して 日本が手を差し伸べる行為が どれだけ害になるのか
      詳しく説明されています

  • 引っ掛かったオタク@コノゴニオヨンデ「諸問題棚上げして急ぎTOP会談すべし」デスッテ… says:

    昨夜の元外務官僚ズの発信が"害務省"の断末魔であった、ということになることを願って止みませんです、ハイ

  • 「日韓関係を改善しましょう」といわれて「うるせぇーな、そんなもんどーでもいい」と言えないのが政治家のつらいところじゃないかな。
    にっこり「その通り、まったなしだ」と返さなければならない。

  • ヤフコメのどっかにあったコメントなんですけど、普通一国の外相が訪日するのは当然大歓迎であとは日程調整だけ。なのに韓国の外相の訪日はあれだけ韓国が乗り気なのにいまだに調整中。ああなるほどなと思いました。

    まあこれって日本が難色を示してる。少なくとも他国外相のようには歓迎していないって証拠かも知れませんね。

    本気で竹島海洋調査がきっかけで外相訪日は潰れそうな予感。多分韓国としては予定している調査をやめるわけにもいかず・・・

    地方選に勝とうが日本のスタンスは変わりようないですからね

    • > 普通一国の外相が訪日するのは当然大歓迎であとは日程調整だけ。なのに韓国の外相の訪日はあれだけ韓国が乗り気なのにいまだに調整中。ああなるほどなと思いました。

      そうなんでしょうか?

      「韓国の外相の訪日はあれだけ韓国が乗り気」とは、「韓国の外相の訪日はあれだけ韓国が日本から譲歩を引き出す事に乗り気」という意味ではないかと思ってます。
      日本が全く譲歩しないと判ったなら、「じゃあ、訪日してあげない。」というのが韓国外相の本音でしょう。

      だから、

      > まあこれって日本が難色を示してる。少なくとも他国外相のようには歓迎していないって証拠かも知れませんね。

      ではなく、「日本は1ミリも譲歩しませんが、韓国外相の訪日は御好きにどうぞ。」というのが日本側で、難色を示しているのは韓国側なのでは?

  • 他サイトの紹介になりますが
    [日韓問題(初心者向け)「韓国の事情を汲んではいけない理由」]
    https://oogchib.hateblo.jp/
    こちらでは なぜ韓国人がウソや理解しがたい行動を取るのか
    非常にわかりやすく理論的に詳しく分析されており、非常にお勧めします
    詰まるところ 韓国は常識や認識が全く異なる為
    韓国に対して 日本が手を差し伸べる行為が どれだけ害になるのか
    詳しく説明されています

  • >もしかすると「竹島測量問題」を受けて、日本側が韓国との往来正常化に後ろ向きな姿勢を示している

    滞在ビザ免除の停止は、韓国の”力強い対抗措置”の発動をもって、防疫上の措置から”外交の相互主義”のステージへと移りました。

    率先しては閉じにくい”相互主義の扉”が彼らの手で閉じられた(リセットされた)いま、
    対抗措置を公言した彼らには”率先しての免除再開”の名分はなく、相互主義が建前となった日本にも”率先しての免除再開”の義理はなくなった。

    ・・はずなんですけどね。

  • 韓国は最近の日本の対応にやや戸惑っているように見える。

    当初は革新政権で資産差し押さえで脅せばたやすく日本は屈服すると考えていたフシがある。
    それで一気に慰安婦と徴用工で大幅な譲歩を引き出そうとしていた。

    だが安部、菅の両首相は韓国への譲歩を拒否し国民から大きな支持を得る。
    結局、革新政権は差し押さえ資産の売却するする詐欺しかできなかった。
    だから文も「日本国民の右傾化」によって(彼のいう)関係改善ができなかったと述べた。

    現在、韓国の賢人会メンバーは落としどころを慎重に探っている。
    次回の革新政権での破棄を前提にして、どこまで名目的、実質的な譲歩を引き出せるか?
    彼らなりに真剣に考えている様子がうかがえる。

    もちろん日本は韓国など相手にする必要はない。
    向こうが何を言ってきても岸田「検討する」といって放置すればよい。

    これぞ「検討使」岸田の真骨頂であり、初めて国民から支持される検討となる。

  • 韓国は黙ってたら、擦り寄る民族です。
    遠回しの当てこすりも彼等には通用しません。
    この際はっきりと、竹島慰安婦徴用工と 日本が納得出来る答えを持ってくるまでは会いませんと言って欲しいです。

    どうせ、韓国がなくなっても日本が困る事はほぼほぼないのだから。

    日本人はケンカを買うのが下手すぎる。
    竹島の調査船など、ケンカを売ってきてるのだから、買って痛い目を見ないと 舐められぱなしです。
    大人の対応は、それが理解できる文明人に対してでないと意味がないです。

  • なんかもう
    『その手は桑名の焼きはまぐり』的な
    韓流ゴリ押し主張は飽きました(笑)

    町の鼻つまみもの
    ヤクザの事務所さんから
    『組長がカタギ(?)に替わったので
     まずは友好ニダ』との申し出受けても、
    前組長の不法行為そのままで取り消さずでは
    どどあつかましくて相手にできない
    というのと同じです。

    ところが韓流メディアは
    主犯格なのでわかりますが
    日本のメディアなのに
    当たり前に主張スべき
    『日韓友好唱えるなら
     まずは前政権の国際法違反など
     モロモロを 解消してから出直しこい』
    ということを書かないところに
    日本のメディアの韓流汚染の深刻さが
    垣間見えます。

    文政権の倒日も、伊政権の用日も
    どちらも同じ反日韓流にすぎない
    と見透かされています。

    新宿歌舞伎町に例えると
    路上でカツアゲする倒日と
    甘い言葉のポン引きが
    ぼったくりバーに連れ込む用日との
    単なる手法の違いでしかないものです。

  • この結果で、与党側に勢いがあることは示せたかもしれないけど、
    まだ、国会は抑えきれていないので、尹政権が動き辛いことには変わりがない。

    尹政権は気付いているはずだが、"関係改善"の解釈にも齟齬があるし、
    まだまだ、遠いことにも、変わりはないなぁ。

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