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共産党委員長「内部留保は脂肪」

日本共産党の志位和夫委員長は昨日、「大企業にとっての内部留保は脂肪のようなもの」、「積み上がりすぎた大企業の内部留保を、政治が適切なところまで絞ってあげるべき」などとツイートしたそうです。まさに、とんでもない話です。志位委員長が述べる「内部留保」が何を指すかは定かではありませんが、ここでいう「脂肪」とは、20年以上も委員長の座に居座る志位氏自身ではないでしょうか。

企業が内部留保≒利益剰余金を溜め込む動機

よく「内部留保」という表現を目にします。

これは俗に、企業が溜め込んでいる「過去に稼いだ利益」などのことを指すと思われますが(※というよりも、「内部留保」という表現を使う人によって定義が微妙に違っていることもあります)、一般には純資産の部の利益剰余金などのことを指すと考えて良いでしょう。

ではなぜ、企業が「内部留保」(≒利益剰余金、でしょうか?)を溜め込むのか。

ここには、さまざまな要因が考えられますが、その最たるものは、将来の経営の不透明さに対する備えでしょう。

1990年代後半から2000年代前半の、金融機関による「貸し渋り」を体験した人たちであればわかりますが、銀行がある日いきなり融資(とくに運転資金)を回収する、などと言い出せば、たとえ黒字企業であったとしても、たいていの企業は経営に行き詰まってしまいます。

というよりも、「現金預金」と「利益剰余金」はまったく異なる概念ですので、利益剰余金がたくさんある企業であるにもかかわらず、現金預金がなくなったことによって、倒産せざるを得ないケースもあります(これがいわゆる「黒字倒産」です)。

また、中小企業の場合だと、企業経営者自身が個人の所得税負担を逃れるため、利益剰余金については配当金に回さず、とりあえず将来にわたって会社に留保する、というケースもあります(ちなみに法人税法上は、一定要件を満たす法人に対する「留保金課税」の制度もあります)。

適正な内部留保の水準は企業経営者が自らの判断において決定する

ただし、上場会社の場合だと、株主資本に対する利益率などの経営指標を改善するうえでは、過剰な内部留保を配当金、自社株買いなどの手段を通じて積極的に吐き出すことが、株価対策としても重要である、などと指摘されることがあります。

また、一般に「おカネを借りる側」から見れば、株主資本(Equity)よりも借入金(Debt)の方が調達コストは低く、このため、同じ総資産で経営をするならば、株主資本を減らして借入金を増やす方が資本効率は良い、という考え方があります(いわゆるレバレッジ論)。

たとえば、株主資本の調達コストをc、借入金の調達コストをr、株主資本をE、借入金をD、法人税の実効税率をtと定義し、この企業の総資産AがEとDのみから構成されると仮定すれば、その企業にとっての総調達コストは次のように定義されます。

総調達コスト=cE-r(1-t)D

一方で、企業は銀行からカネを借りる際、あるいは格付業者から格付を取得する際、DとEの割合(デット・エクイティ・レシオ)が一定水準を割り込まないこと、という財務制限条項(コベナンツ)の適用を受けていることがあります。

したがって、企業財務論の立場からは、もしc、r、tが所与であれば、企業はコベナンツが許すデット・エクイティ・レシオの範囲内で総調達コストを最小化するよう、財務調達構造を決定する、という行動に出ることが一般的です(※そうでない企業もあるようですが)。

ただし、ここでいうc、r、tなどのパラメーターはさまざまな要因で動きますので、こうした不確実性に備えるという意味でも、企業経営者が借入や投資を決定する際、最終的には自身の判断においてそれを行う必要がある、というわけです(その意味では経営者が数字に強くなければならないのは当然です)。

いずれにせよ、企業が「内部留保」を溜め込む動機にはさまざまなものがありますし、「内部留保」自体の適正な水準がいくらなのかについては、その企業が置かれている経営環境の不確実性の高さ、経営のバッファーを確保する必要性などにより、まったく異なります。当たり前ですが、国家が口をはさむべき問題ではありません。

(※その意味で、個人的には「SDGs」や金融庁が進めている「コーポレートガバナンスコード」など、企業経営に無用な口をはさむような動きに対しても、強く警戒しているのですが、この点については本稿では割愛します。)

志位和夫氏「内部留保は脂肪みたいなもの」

ただ、こうした企業財務論のごく初歩の議論を無視したツイートを発信なさる方がいらっしゃったようです。

「ケンポーキュージョー教」の総本山でもある日本共産党で、まともな選挙手続もなしに20年以上、委員長として居座っていらっしゃる人物が昨日、こんなことをつぶやいていました。

志位和夫

大企業にとって内部留保は、人間に例えると「脂肪」みたいなもの。なくなると不健康ですが、つきすぎても不健康です。積み上がりすぎた大企業の内部留保を、政治が適切なところまで絞ってあげる。そうすれば企業も、経済も、暮らしも健康になり、好循環が始まります。
―――2022/05/30 21:50付 ツイッターより

「人間に例えると『脂肪』みたいなもの」、というのは、自己紹介でしょうか?

ここでいう「脂肪」とは、支持層の若返りに失敗し、ごく一部のコア層にのみ受ける主張を繰り返す日本共産党、あるいは党内選挙もなしに20年以上、党委員長を務めるとともに、比例1位で自動的に衆議院議員の座を獲得されてきた志位和夫氏の存在そのものだからです。

ちなみに日本共産党は昨年秋の衆院選で議席を減らしていますが、志位氏は絶対に責任を取らないどころかむしろ「与党を追い詰めた」などとの認識を示しています(『日本共産党委員長「衆院選で自公を追い詰めた」と総括』等参照)。

日本共産党の志位和夫委員長が衆院選で「自公を追い詰めた」と自画自賛――。追い詰めたのは自公ではなく、むしろ枝野幸男・立憲民主党前代表であり、立憲民主党そのものではないかと思うのですが、いかがでしょうか。そして、日本共産党は支持基盤の高齢化も止まらないと聞きます。意外と遠くない将来、日本共産党の議席がさらに激減するのを目撃できるかもしれません。最大の敗者は立憲共産党とオールドメディアちょうど1ヵ月前の衆院選では、新聞・テレビなどの事前予測では、「立憲民主党が公示前と比べ30議席ほど勢力を増やす」は...
日本共産党委員長「衆院選で自公を追い詰めた」と総括 - 新宿会計士の政治経済評論

まさにさまざまな意味で、現在の日本共産党を象徴する人物であることも間違いないでしょう。

貸借対照表の借方と貸方を混同しないでほしいのだが…

それに、この内部留保を「政治が適切なところまで絞ってあげる」などとする志位氏のツイートを拝見すると、志位氏が「企業経営は自己責任」とする会社法の鉄則を完全に無視している点もさることながら、やはり非常に不安になってきます。

まさかとは思うのですが、内部留保を「現金」かなにかだと勘違いされているのではないでしょうか?

当たり前の話ですが、現金預金などの資産は貸借対照表の借方(左側)の議論であり、利益剰余金は右側(貸方)の議論です。

日本共産党という「国政政党」の党首でありながら、商業簿記入門レベルの企業会計の知識を持っていないのだとしたら、本当に恐ろしい話ですし、そのような政党に1議席でも与えること自体、日本国民の有権者の見識が問われる事態ではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (26)

  • 日共いいんちょサンは"シ肪"というよりは"宿ベン"ではありませんか?

  • >なくなると不健康ですが、つきすぎても不健康です。積み上がりすぎた大企業の内部留保を、政治が適切なところまで絞ってあげる。

    あたしも簿記は良くわかってないけど・・・
    不健康にな企業なら、遅かれ早かれ倒産するんじゃないのかな?

    政治の役割は、ひとつひとつの企業の健康管理じゃなくて、健康な企業が存続できる環境作りとか、企業が倒産したときの従業員をはじめとする自然人の生活の確保なんかじゃないかと思うのです♪

    それに、志位氏のツィートに吉井氏が
    >二重課税じゃありませんし
    とツィートをつけてるけど、内部留保に税金をかけると、↓みたいになって、やっぱりニ重課税じゃないのかな?って思うのです♪

    ある年 
    ・内部留保100万円
    ・内部留保課税10万円(10%)
    ・税引き後内部留保90万円

    翌年
    ・所得税他を引いた利益20万円
    ・内部留保110万円(90+20)
    ・内部留保課税11万円(10%)
    ・税引き後内部留保99万円

    内部留保の増分に税金をかけるなら、単純に所得税とかの税率を上げればいいだろうし・・・やり方も良くわかんないのです♪

  • 会社更生法を受任した弁護士が会社に乗り込んできて、「おたくの資本金は5億円ですね?」「はい、貸借対照表記載の通りです」弁護士曰く「資本金の5億円はどこにあるんですか?、金庫の中ですか、それとも銀行に預けてあるんですか?」会社側「?????」

    この話を聞いて笑える人、何がおかしいかわからない人がいるが、これが内部留保云々の議論をバカバカしいものにしていると思う。

    • おもしろ~い (^^)/

      まあ、弁護士さんといっても
      そのレベルと善悪帰属はさまざまで、
      略しすぎて人権派(?)と呼ばれている
      『人権ビジネスでおまんま派』
      の弁護士さんなら言いそうです。

  • >「人間に例えると『脂肪』みたいなもの」、というのは、自己紹介でしょうか?
    >ここでいう「脂肪」とは、支持層の若返りに失敗し、ごく一部のコア層にのみ受ける主張を繰り返す日本共産党、あるいは党内選挙もなしに20年以上、党委員長を務めるとともに、比例1位で自動的に衆議院議員の座を獲得されてきた志位和夫氏の存在そのものだからです。

    他の国の共産党はいざ知らず,日本という国にとっての共産党は脂肪ではありません.人間にとって脂肪は寒冷に耐えるための断熱材の役割がありまたいざという時のエネルギー備蓄の役目も果たしており,人間にとっては一定量の脂肪は不可欠ですから.

    日本共産党はこの国にとっては速やかに排泄せねば命にかかわる老廃物です.排泄せずに放置すれば透析が必須になるような有害老廃物,それが日本にとっての日本共産党という存在です.

    実際,共産党や立憲民主党のような反日左翼のお蔭で,日本は戦後75年を過ぎても憲法も改正できず従って自衛隊も国内法上では国際法上で国軍(正規軍)としての地位を与えることが出来ず(故に共産チャイナとの軍事衝突で自衛隊が出動し自衛官が捕虜になった場合,ジュネーブ条約が定める捕虜の扱いを受けられる保証がない),今かりに日中や日ロの軍事衝突が発生すれば(日韓は米韓同盟が破棄されない限り現実には発生し得ないでしょう),日本の領土が大きく奪われる可能性さえあるという意味では,共産党に代表される反日左翼のために,有事に関して言えば日本は既に瀕死の状態に陥っていると言っても過言ではありません.

    共産党など反日左翼は日本にとって適量ならば有用どころか生存に不可欠な脂肪などでは決してありません.即座に排泄しなければ日本が死んでしまう有害な老廃物そのものです.

  • >日本共産党という「国政政党」の党首でありながら、商業簿記入門レベルの企業会計の知識を持っていないのだとしたら、本当に恐ろしい話ですし、

     共産党にも、民商に属するお抱えの税理士(当然、財務諸表論は理解している)はいるはずですし、教えてもらわないんですかねぇ。
     共産党の情報力は侮ってはならないし、ツッコミも鋭いことがありますが、どうもそこからのアウトプットはボケまくり、いやお笑い芸人のレベルになっているような気がします。

  • 志位と共産の主張はブレていない。

    リーマンショック後に派遣切りと年越派遣村が社会問題となった。
    ここで志位は「内部留保で派遣社員(非正規社員)を雇え」と声高に主張。
    以降も繰り返し赤旗で内部留保を批判し、2月にも「内部留保に課税」と書いていた。

    志位のアタマの中では内部留保は大企業を攻撃するための「政治用語」と化している。
    志位と共産党の大企業敵視は一貫して変わることがない。

    さて、ここで着目すべきは立憲である。

    去年の衆院選で共産と協定を結ぶ。
    政権交代を念頭に「閣外からの限定協力」とやってしまった。

    これは連合、特に民間労働組合は絶対に受け入れられない。
    トヨタ、ホンダの労組が立憲から離れ自主投票を選択したのは当然のこと。
    自動車、電機、電力の労組は立憲を見限って自民へ行ってしまった。

    極左出身の枝野は共産と組むことによるハレーションが想像、理解できなかった。

    立憲凋落の主因は共産と組んだことに起因している。

  • まあ、共産党さんの
    『主張』?なるものから
    正義騙りと意味をなさない誹謗と
    今回ご指摘のような
    明らかな間違いを取り除くと
    なんのことはない、
    ただの
    『もっとクレクレ』主張でしかない
    ものだと広く知られています。(笑)

    さらには、浪費や博打でスッタ
    サラ金借金を革命なら
    ちゃらになるかも期待層まで
    含めると、
    この程度の主張?ぐらいでも
    十分なのででしょう。

  • 先ずは日本共産党のメタボな党員に対し、志位トラー和夫氏が指導して脱メタボさせるのが良いのでは?

    身体が健全化すれば、不健全な思想である共産主義から足を洗えるでしょう。

    あと、北朝鮮の最高権威である金のデブートンを健康的な身体にしてやって欲しいですね。

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