本稿は少し「総論」的なことを申し上げておきたいと思います。韓国が述べる「韓日関係の改善」は、間違いなく、「日本が韓国に対し、一方的に譲歩すること」を意味しています。これについてどう考えればよいのか、そして日韓関係の先行きがどうなるのか、我々がどうすれば良いのかについての当ウェブサイトなりの考え方を簡単に振り返っておきたいと思います。
2022/05/23 14:30 追記
誤植を修正しております。
二重の不法行為
「日韓関係に横たわる諸懸案の責任については、いずれもほとんど韓国側にある」――。
この点については、昨年の拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』でも詳しく議論したとおり、もはや疑う余地はないと考えて良いでしょう。
ただ、拙著の刊行から少し時間が経過したこともあり、総論的にもう一度深く議論しておきたいのが、韓国の「二重の不法行為」という論点です。
韓国が好む「歴史問題」にせよ、それ以外の分野の問題にせよ、日韓間の諸懸案について考察をしていくと、結局のところ「韓国の日本に対する二重の不法行為」――①事実無根の内容をでっち上げて日本を貶め、そのうえ②法的な根拠を欠く行為をしている、という問題に辿り着かざるを得ないからです。
日韓諸懸案巡る韓国の「二重の不法行為」
- 韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
- 韓国側が日本に対して要求している「謝罪」「賠償」などには、多くの場合、法的根拠がなく、何らかの国際法違反・条約違反・約束違反を伴っている
(【出所】著者作成)
この「二重の不法行為」の構造で解釈すると、本当にさまざまな点で韓国の行為がスッキリと解釈できます。
たとえば、朝鮮半島で戦時中、強制徴用されたと自称する者たちが日本企業を相次いで訴えているなどの問題(いわゆる自称元徴用工問題)の本質は、韓国側が①事実無根の問題を捏造し、②日韓請求権協定で法的決着がついた問題を蒸し返していることにあります。
こうした自称元徴用工問題の「ウソ・捏造に基づいて法的根拠がまったくない行為を仕掛けて来る」という構図については、、自称元慰安婦問題、竹島不法占拠問題などにもまったく同じことが当てはまります。本当に、構図はそっくりです。
レーダー照射&輸出「規制」
この点、懸案によっては、これら2つの論点が混在しているケースや、片方が生じた結果としてもう片方が生じた、といったケースなどもあります。
たとえば、2018年12月に発生した、韓国海軍駆逐艦による日本の自衛隊機に対する火器管制レーダー照射事件の場合、当初はレーダー照射という違法行為が行われたものでしたが、これに後日、韓国側から「むしろ日本が低空威嚇飛行を仕掛けてきた」というウソがでっち上げられました。
火器管制レーダー照射事件に関しては、少なくとも日本が「被害者」、韓国が「加害者」の立場にありますが、韓国側はこれを勝手に「低空威嚇飛行問題」に置き換え、むしろ日本に対して「低空威嚇飛行について説明せよ」、と要求しているのです。
また、少し変わった事例でいえば、日本政府が2019年7月に発表した、対韓輸出管理適正化(厳格化)措置があります。
これは、表面に見えている事象だけに注目してみると、日本が仕掛けた問題であるかにも見えます。なぜなら、韓国を輸出管理上の「(旧)ホワイト国」から外すとともに、半導体製造などに使用される、フッ化水素などの原材料を個別許可に切り替える措置を講じたからです。
しかし、この対韓輸出管理適正化措置自体も、おそらくは韓国が何らかの不正貿易(たとえば輸出管理対象品目を第三国に横流しする、などでしょうか?)に関わっていたために発動されたものと考えるのが自然でしょう。その意味で、韓国が原因を作ったのも同然です。
しかも、日本政府が講じた輸出管理適正化措置を巡り、韓国側はしつこく、これを「輸出『規制』」だ、「強制徴用判決(※自称元徴用工判決のこと)を受けた対韓貿易報復だ」、などとするウソをつき、「日本は輸出規制を撤回せよ」などと無理な要求を続けています。
その意味では、やはり上記の「二重の不法行為」のパターンに合致している、というわけです。
約束を守ることは韓国自身のためになる
さて、このところの韓国メディアの論調を見ていると、彼らの言う「韓日関係の改善」とは、「日本が韓国に譲歩すること」を意味しているように思えてなりません。というのも、これら諸懸案について、「韓国側の責任を認めるべきだ」とする主張が、ほとんど見当たらないからです。
このあたり、当ウェブサイトでは常々、日韓関係については基本的に、3つしか落としどころはないと考えています。
日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
- ①韓国が国際法や国際約束を誠実かつ完全に履行することで、日韓関係の破綻を回避する
- ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
- ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する
(【出所】著者作成)
最初の落としどころは、韓国が国際法や国際約束を誠実かつ完全に履行することで、日韓関係の破綻を回避する、というシナリオです。日韓間の諸懸案は数えきれないほど積み上がっていますが、これらの諸懸案のひとつひとつについて、韓国側が丁寧に国際法違反の状態の解消を目指す、というものです。
この「落としどころ①」は、通常の法治国家であれば、あまりにも当然のものです。ある国が国際法や国際約束を平気で踏みにじっていれば、国際秩序は壊れてしまうからです。
これに、韓国が上記①の選択をすることは、韓国自身のためでもあります。
もちろん、世界にはロシアのように国際法を完全に無視して違法に外国に対する事実上の戦争を始めてしまう無法国家も存在しますが、もしも韓国が現在のように、国際法や日韓間の約束、条約などを無視する状態が続けば、韓国も「ロシアと同類の無法国家」、ということになってしまうでしょう。
なぜ日本が譲歩してはならないのか
一方で、「落としどころ②」を主張する者は、日本国内にも多数存在します。
いわく、「尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏は少数与党で政治的には日本に譲歩し辛い」。
いわく、「多少韓国に譲歩することになっても、日韓関係を良好に保つことの方が、日本の国益になる」。
いわく、「米国との関係上、日本はいずれ韓国に譲歩せざるを得ない」。
すべて、ナンセンスな主張と言わざるを得ません。
「落としどころ②」は結局のところ、「日本が韓国に対し、自国の国益を犠牲にして譲歩する」ということを意味しています。本来、外交は国益を最大化するための手段に過ぎず、外交のために国益を犠牲にするというのは、まさに本末転倒した発想でしょう。
問題は、それだけではありません。
日本が国際法の原理原則を自ら捨て、韓国に対して「しなくても良い譲歩」をしてしまえば、そのことが韓国を増長させるだけでなく、日本自身が国際法をないがしろにしているのと同じことになります。その結果、日韓以外の第三国に、大きな迷惑をかけることにもつながりかねません。
日韓関係のために韓国を「ホワイト国」に指定した結果、日本からの輸出品を巡って「不適切な事案」を発生させたことなど、その典型的な事例でしょう。
このままだと日韓関係の破綻は免れない?
さて、仮に韓国が国際法を守らず、日本も韓国に対して譲歩をしなければ、最終的にはいったいどうなってしまうのかが気になるところです。
たとえば、自称元徴用工判決問題に関しても、日本企業の資産差押と現金化に向けた法的手続が進行していますが、裁判所が最終的に売却を認め、資産売却がなされてしまえば、日本政府としては何らかの対抗措置を取らざるを得なくなります。
(※といっても、差し押さえられている資産は、非上場の合弁会社株式であったり、商標権や特許権といった知的財産権であったりするため、経済合理性に照らすならば、売却しようにも応札する人が出て来ない可能性が濃厚ですが…。)
自称元徴用工問題で、日本政府が韓国政府・韓国銀行に対する資産凍結措置、韓国国民に対する入国ビザ免除制度の恒久的廃止措置などに踏み切れば、韓国側も同様の措置を講じる可能性があり、そうなれば制裁の応酬が生じるかもしれません。
たとえば、日本はロシアに対する制裁措置として、ロシアが日銀に預けていた外貨準備を凍結する措置を講じましたが、もしも同様の措置を韓国に対しても発動したとすれば、日韓関係は破綻に向かいかねません(※法的にロシアに対するものと同様の措置を韓国に対し講じることは難しいかもしれませんが…)。
このように考えていくならば、引き金になるのが自称元徴用工問題なのか、自称元慰安婦問題なのか、それとも竹島問題なのかは知りませんが、いずれにせよ現在の状況が放置されているならば、日韓関係が正常なものとして何年も続くとも思えないのです。
もちろん、外交の世界では、日本の国益が100%実現できるというものではありません。相手がいる以上は、どうしても相手に対して、大なり小なり譲歩することは必要ですが、このあたりは程度の問題でもあります。
少なくとも相手国が国際法に違反する行動をとっているにも関わらず、それを「不問」とすることは、外交上、許容される「譲歩」のレベルを超えてしまっているのです。
三段論法
なお、「日韓関係改善論」の詭弁についても、少しだけ繰り返しておきましょう。
「日韓関係改善論」は、「①韓国は日本にとって重要な国だ」、「②しかし日韓諸懸案について、韓国に任せていたとしても、国際法に従った解決は期待できない」、といった流れから、「③だからこそ日本が韓国に譲歩すべきだ」、という結論に持って行くのが典型的なパターンです。
「日韓関係改善論」の典型的な思考パターン
- ①日本にとって現在の韓国は、経済・産業上も、外交・安全保障上も、大変に重要な国である。
- ②しかし、韓国が日本との間でさまざまなもめ事を起こしており、これらについて国際法や国際社会の常識に従った解決も期待できない。
- ③だからこそ、日本が国際法に拘泥するのではなく、多少とも韓国に譲歩し、日韓関係の破綻を防ぐべきだ。
(【出所】著者作成)
ただ、①と②についてはある程度正しい事実認識ですが、③については②から必然的に導き出される結論ではありません。というよりも、②から③には論理的につながっていません。この③の部分、次の④のように書き換えた方が、自然につながるのではないでしょうか。
- ④もしも韓国が国際法を守らないならば、日本は経済、産業、外交、安全保障などにおける韓国の重要性を下げるよう努力すべきだ。
③の結論が正しいのか、それとも④の結論が正しいのか。
これに関し、じつは、時間はさほど残されていません。
コロナ禍で導入されていた入国規制も緩和されれば、「ノージャパン」もどこへやら、なし崩し的に日韓の人的交流が復活するでしょうし、一部の企業の経営者は「日韓関係が改善される!」といった甘い見通しで、対韓ビジネスをさらに拡大しようとするかもしれません。
しかし、長い目で見ると、③と④のどちらが日本にとって正しい選択なのかに関し、そのコンセンサスが日本社会で出来上がることは間違いないと、個人的には信じている次第です。
View Comments (8)
現在の日韓関係を韓国の側から見てみると、
もし、韓国が嘘をやめて 条約をまもり そして 日本の言うことをスベテきいたとしましょう。
これは、韓国からみると 自分は日本より下になる となり 下のものは上のものに何をされても仕方がない文化のもとでは スワップも輸出管理も韓国の希望通りにならない事が目に見えてます。
しかし、これを韓国文化でなく 普通に考えてみると これらスベテの事を韓国がしたとして、日本人は韓国を許して信じてスワップ等をするか?というと 無理だと思います。
何故なら、ここまで調子にのった韓国に対して、新たに約束をしても 次に約束を守るかどうか信じられないからです。
もちろん日本の有権者も信じないし許さないでしょう。
そう考えると、韓国のうつ手というのが、 もう ほぼゼロの可能性しかない日本を騙すしかなく そこに全賭けするしかないのです。
その為に米国も使うし、何でもします。
もう詰んでるんですね。
最後の一手は、もうグレートリセット。
北と一緒になり将軍様の元、李氏朝鮮時代の生活水準になるしかないのかも。
すみません、いろいろ想像したのですが判りませんでした。
「日本車秋」
って何の誤変換でしょう?
kai → aki
じゃないでしょうか
なるほどっ!
私の地域に「つかの」という地名がありますが、タイプミスでプリントした書類に「つかんぽ」と印字されてたことを思い出しました。
左右の手が分かれるキーの順番が入れ替わることが、最近増えました。加えて小指が絡むとミスが増えます。
歳のせいか・・・
🐈じゃん 様
いつもコメントありがとうございます。
また、誤植のご指摘ありがとうございました。さっそく修正しております。
引き続きのご愛読とお気軽なコメントを何卒よろしくお願い申し上げます。
尹錫悦は対中関係に苦慮し日本への圧迫はできない。
今回のバイデンとの会談の成果が
・軍事演習の規模と範囲の拡大、戦略的な米軍資産の協調的な配備
・先端半導体、バッテリーなどの両国官民協力
これは中国の「デリケートな問題」を直撃するものだ。
尹錫悦が米国への傾斜を進める。
ならば中国は限韓令をさらに引き上げる。
・中国国内での韓国企業の活動制限と韓流文化、スマホ、自動車の排除
・韓国への各種原材料の供給制限や中止
この状況下で尹錫悦は日本を圧迫できない。
何もできずに時間が経過していくだけだろう。
日本も韓国と関係改善をする必要などない。
何を取り決めても次回の革新政権で反故にされるのだから。
全体的に韓国が追い詰められていく状況がうかがえる。