韓国の尹錫悦政権の発足を1ヵ月後に控えたタイミングで、さっそく「告げ口外交」が始まったようです。韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)の報道によると、尹錫悦氏が米国に派遣した代表団は現地時間の5日、ホワイトハウスを訪れ、「今の状況では韓日協力が実現できない」、「韓日関係の改善が大事だ」などと述べたのだそうです。
目次
日韓歴史問題の2つの特徴
昨日の『韓国人教授「強制徴用問題は基金案で先制的に解決を」』では、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に掲載された記事をもとに、韓国側で出て来る、「韓日関係改善論」の典型的なパターンや、自称元徴用工判決問題の解決提案の概要などについて眺めてみました。
どんな議論も前提条件が誤っていれば、どんなに正しい考察であっても、結論がおかしなものになります。ましてや考察過程に問題があれば、なおさらのことでしょう。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に本日、自称元徴用工判決問題を巡って「文喜相(ぶん・きそう)案をベースにした解決策をわが国が先制的に日本に提案しよう」とする主張が掲載されました。これなど、前提条件も考察も結論もすべて間違っているという典型例かもしれません。「前提条件+考察=結論」「議論」というものは、慣れてくれば大変に面白いものです。たい... 韓国人教授「強制徴用問題は基金案で先制的に解決を」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
これまでに何度となく指摘してきたとおり、自称元徴用工問題、自称元慰安婦問題を筆頭とする「歴史問題」には、韓国側による「法律違反」と「ウソ」という、2つの大きな問題点があります。
日韓歴史問題の2つの特徴
- 日韓間の請求権に関するあらゆる問題は、1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みであり、韓国が歴史問題を主張することは、この請求権協定に反する状態を創り出そうとするものである
- 韓国側が主張する「被害」の多くは、(おそらくは)韓国側によるウソ、捏造のたぐいのものであり、最終的には「ウソの罪をでっち上げて日本を貶めている」のと同じである
(【出所】著者作成)
自称元徴用工問題の解決は「判決の無効化」以外にあり得ない!
自称元徴用工問題の場合も、「戦時中に違法な強制徴用がなされた」とする虚構と、「すでに請求権協定で完全かつ最終的に解決しているはずの日韓間の請求権を蒸し返そうとしている」という法律論の2つの問題点があります。
これに加え、自称元徴用工問題には、「韓国政府による国際法違反」という問題もあります。
これは、2019年に日本政府が申し入れた請求権協定に基づく外交協議、国際仲裁手続などを韓国政府が完全に無視したというもので、誰がどう申し開きをしようにも、韓国政府による外交手続違反という事実については消すことはできません。
したがって、少なくとも自称元徴用工問題を国際法的に妥当なかたちで解決するためには、韓国の裁判所が下した請求権協定違反の判決を法的に無効化するとともに、日本企業にこれ以上不当な損害が生じないような措置を韓国が講じることが必要です。
それなのに、韓国側から出てきている「解決策」とやらは、「文喜相(ぶん・きそう)案」と称する、「まずは大法院判決を認めたうえで、韓日双方の企業や市民などの『自発的な』募金により基金を作り、強制徴用被害者らに賠償する」といったものが中心です。
当たり前ですが、こんなものは解決策でもなんでもありません。そもそも2018年の大法院判決を認めること自体、日本がみずから日韓請求権協定を無効化したのと同じであり、日本としてはとうてい受け入れられないものです。
このあたり、日本政府がくりかえし、韓国に対して自称元徴用工判決を「国際法違反だ」と伝え続けているにも関わらず、韓国側でいまだに「基金案」などの構想が出て来ているのを見ると、どうも日韓諸懸案については、日本が望む形での解決は不可能だという気持ちを新たにせざるを得ません。
諸懸案はほかにもたくさん!
また、万が一、自称元徴用工問題で日本が受け入れ可能な解決策が出てきたとしても、日韓間の諸懸案はこれだけではありません。
たとえば、自称元慰安婦問に関しては、2015年12月の日韓慰安婦合意を文在寅(ぶん・ざいいん)政権下の韓国が事実上破棄したこと、2021年1月には主権免除原則という国際法に違反する判決が出てきたことなどを思い起こしておく必要もあります。
さらには、島根県竹島を勝手に「独島(どくとう)」と称して不法占拠している問題、2018年12月に韓国が発生させた火器管制レーダー照射事件に関し、韓国がいまだに事実認定も謝罪にも応じていない問題など、諸懸案はほかにもいくらでもあります。
このように考えていくと、尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏が次期大統領に就任したとして、これらの諸懸案がいっせいに日本にとって受け入れ可能なかたちで解決が図られると期待する方が非現実的ではないかと考えるのが自然な発想でしょう。
また、万が一、これらの諸懸案について、日本に受入可能な解決策とやらが韓国側から出てきたと仮定しても、尹錫悦政権の次の政権が、再びこれらの問題を蒸し返さないという保証などありません。いや、これまでの韓国の行動を振り返るならば、むしろ「蒸し返さない」と考える方が無理です。
予想どおりの韓国の行動
こうしたなかで、尹錫悦氏は現在、「政策協議代表団」を米国に派遣していますが、これに関連して韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に本日、こんな記事が出ていました。
尹次期大統領のバイデン氏宛て親書 訪米の韓国政策協議団が伝達
―――2022.04.06 09:17付 聯合ニュース日本語版より
聯合ニュースによると、尹錫悦氏が所属する保守系最大野党「国民の力」の朴振(ぼく・しん)国会議員が団長を務める代表団は現地時間の5日、ホワイトハウスを訪れ、ジョー・バイデン米大統領に対する尹錫悦氏の親書をジェイク・サリバン大統領補佐官に手渡したのだそうです。
朴振氏はこの親書について、「韓米が北朝鮮核問題や新たな課題である経済安全保障などに共同で対応するため、同盟を包括的な戦略同盟へ一段階引き上げて対処していくことを呼び掛ける内容が盛り込まれている」などと指摘。
そのうえで、記事によると、朴振氏はサリバン氏との会談内容について、こんな趣旨のことを述べたのだそうです。
「中国を牽制する日米豪印4ヵ国の枠組み『Quad(クアッド)』との協力に関し、『ワーキンググループに韓国が参加<中略>することは、インド太平洋地域の平和と繁栄に寄与するもので、韓国の役割が重要という内容があった』と伝えた」。
このあたり、『鈴置論考で読み解く次期韓国大統領の「難しい舵取り」』でも取り上げた、韓国観察者の鈴置高史氏の『中国が早くも「尹錫悦叩き」、米国は「なんちゃって親米はやめろ」』という記事を読んで「予習」していると、尹錫悦政権の動きはまったく予想どおりという気がしてなりません。
またしても、待望の鈴置論考が出て来ました。「日韓関係改善論」を巡る、これ以上ないほどのわかりやすい解説です。というのも、韓国で尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏が次期大統領に選ばれて以来、韓国側で、あるいは日本の側でしつこく出て来る「日韓(韓日)関係改善論」を巡って、これを「いつもの二股外交」という側面から、見事に見抜いているからです。共同軍事訓練に関する補足なぜ韓国で「3ヵ国軍事訓練」報道が出てきたのか?最初に、少しだけ昨日の議論の補足をしておきたいと思います。昨日の『「日米が提案の3ヵ国軍事訓... 鈴置論考で読み解く次期韓国大統領の「難しい舵取り」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
米国に「このままだと韓米日協力はできない」と主張
ただ、それよりももっと興味深いのは、日米韓協力を巡る、朴振氏のこんな発言です。
「韓米日の協力は非常に重要で、韓日関係の改善が大事だ。韓日は共通の利益になる部分が多いものの、今の状況ではそれが実現できない。両国関係の改善により北東アジア、インド太平洋で韓国が寄与する役割が大きい」。
典型的な「告げ口外交」です。
そして、この「韓日協力は必要だが、いまの状況ではそれが実現できない」とする主張こそが、朴振氏の、あるいは韓国側の「ホンネ」なのでしょう。
この点、韓国側は関係悪化の原因がどちらにあるのかについて、なかば意図的に無視しているフシがありますが、『「韓国が」日韓関係を悪化させた』などでも議論したとおり、日韓関係における諸懸案を作り出したのは、一方的に韓国の側です。
「日韓関係が悪化」したのではない!「主語」は正しく使おう「日韓関係が悪化した」という表現を見かけますが、これは正しくありません。現在の日韓関係を「悪化」と定義するならば、「韓国が日韓関係を悪化させた」と表現すべきでしょう。もっとも、現在の日韓関係をもたらしたのは、少なくとも韓国側の行動だけでなく、我々日本人の側が、韓国を「正確に」理解するようになった、という側面もあります。このように考えると、現在の状態こそが「良好なもの」だ、とする意見もあるようです。日韓関係が「良好ではない」理由は明らか著... 「韓国が」日韓関係を悪化させた - 新宿会計士の政治経済評論 |
いずれにせよ、米国に対しても「日韓関係がギクシャクしている根本的な理由」について意図的に言及しないで、「このままだと韓日・韓米日協力はできない」、「だから韓日関係『改善』が必要だ」などと言い募るというのは、最初から予想できる論点のひとつでもあります。
そして、5月に尹錫悦政権が発足すれば、こうした動きはさらに激しくなっていくと考えてよさそうです。
View Comments (19)
>韓日は共通の利益になる部分が多いものの、今の状況ではそれが実現できない。
という部分だけど、「今の状況」を打破するためにも、
・韓国政府が約束を守ること
・それを韓国国民に納得させること
が、尹次期大統領には求められているんだと思うのです♪
そのためのなんの努力もしてない以上、「今の状況」は打破できないと思うのです♪
( 。•ᴗ• )੭⁾⁾バイバイ もうムリをせずにあっちに行けば良いんじゃないかな?
米「一緒に南シナ海で航行の自由作戦をやって、日本の後頭部を殴ってやろうぜ」
これで乗ってこないかな?
さて米国の反応見ないと
腰の重い奇知田が
前もって手を打ってるか分かりませんね
はて~注目ですね
南「このままだと韓日協力できない」
米「それは大変(棒)韓国は国際法に則った世界の常識当たり前の対応に改めなさい」
今の状況ではそれが実現できない。両国関係の改善により北東アジア、インド太平洋で韓国が寄与する役割が大きい
よくもここまで韓国を過大評価できるものだな。
中国の顔色見てるやつがインド太平洋で役割が大きい?御冗談。
日韓議員連盟の様な存在も非常に危険だと考えられます。
前会長は韓国側に日本の機密情報を渡していたことが発覚していますし、下記の記事の様に、既に危険極まりない雰囲気が感じられるのは私だけではないと思います。
「日韓関係改善に向けた大きな打開策を考えていきたい」だそうです。
冷え切った日韓関係改善に意欲 日韓議連
https://news.yahoo.co.jp/articles/e4fe18f35d75778590a393e8e2bae73b3910e4df
黒電話の暴挙に便乗してコソコソミサイル撃つようなならず者国家と協力なんぞできませんわな。
話す口も持たなければ聞く耳も持たない。
こればっかりはいくら岸田が無能であちらの言い分に日和ろうと、まともな日本国民が絶対に許さない。
戦時労働者問題は、判決を無効にする以外に解決策はない、という論には同意します。
が、卑しくも法治国を称し、3権分立などとウソぶいているのですから、法的にそのようなことが出来るのか疑問に思います。
憲法に国内法優先が書いてあるとも聞きます。まさか大統領令1本で無かった事に出来るともおもえないのです。
あるいは、神聖不可侵の慰安婦様のご託宣でもあれば出来てしまうんですか?。
仮に日本でこういう状況になったとして、裁判官を弾劾して罷免することは出来ても、最高裁判決を取り消すのは難しいでしょう。
裁判官の首を挿げ替えておいて、再審や不服申し立てを目いっぱい使って、力業で押し通すんでしょうか?。
勿論日本の裁判官は常識があり、政権への忖度も働かせますし、国際法優先主義ですから、こんなトンデモ判決が出ることは考えられないんですけど。
それでも、将来どんな左巻き裁判官が出ないとも限らないので、ちょっと怖い気もします。
よしんば、トンデモ判決が出たとしても、司法の暴走ということで立法行政で止めるのが、ホントの三権分立なんですけどねー。
K国の三権分立は、違いますからねー。
わが国でも行政手続きで塩漬けにしてしまうくらいは出来ても、判決その物を無効には出来ないと思うんです。
法律を作っても、彼の国と違って、遡及させることはできませんし、神聖慰安婦もいませんし・・・
>このままだと韓米日協力はできない
まずは、彼らの”協力”の定義から。
*利する事案にのみ連携関与し、義務を果たさずに権利だけを享受すること。
(それを踏まえて意訳すると)
韓米日の協力は(我が国にとって)非常に重要で、韓日関係の改善が(我が国にとって)大事だ。韓日は(我が国にとって)の利益になる部分が多いものの、今の状況ではそれが実現できない。両国関係の改善により北東アジア、インド太平洋で韓国が《寄生》する役割が大きい。
となります。
*連携にぶら下がり、甘い汁だけ吸うことを ”寄与” だなんて言わないのです。
分かりやすい解説ありがとうございます。
コリアン ハイレベル レッスン ですね。
カズさま
私も、似たようなことを考えました。
≫『ワーキンググループに韓国が参加<中略>することは、(中国による)インド太平洋地域の平和と繁栄に寄与するもので、(中国の為に)韓国の役割が重要という内容があった』
≫両国関係の改善により北東アジア、インド太平洋で韓国が(中国覇権に)寄与する役割が大きい
ということで、韓国が冊封の軛から解かれることはなく、クワッド会議に参加してはその内容をかの君主様に漏洩し、君主様の為に日米の間をセカセカ・コソコソ立ち回るのでしょう。
韓国次期政権の「告げ口外交」を笑っている場合では無いと思います。
バイデン政権の最大の長期的目標は中国の覇権膨張主義を阻止することですが、最大の短期的目標としては今年秋の中間選挙に勝利することがあります。
この2つの目標を達成するために必要な現時点の最大の課題は、「ロシアのウクライナに対する力による現状変更を阻止し、ロシアに二度と周辺国に侵攻できない程度のダメージを与えること」です。
ロシアのウクライナに対する力による現状変更を許してしまえば、中間選挙での勝利は不可能でしょうし、将来の中国の台湾侵攻を誘発することにもなりかねません。
その意味で、現在のバイデン政権の最優先事項は、「ロシアのウクライナに対する力による現状変更を阻止し、ロシアが二度と周辺国に侵攻できない程度のダメージを与えること」だと思います。
このバイデン政権の最優先事項が達成されることは、中国の膨張主義とその手始めとしての台湾侵攻を阻止することにもつながり、我が国の国益にも直結します。
このため、米国の同盟国である日本が外交で最優先すべきは、バイデン政権の現在の最優先事項に最大限協力することだと思います。
外交官の追放や石油・天然ガスの輸入禁止など、困難な課題を伴う制裁措置もありますが、欧米の自由主義諸国が実施する対露制裁措置は、我が国も基本的に実施する方向で最大限努力すべきだと思います。それが、将来の中国の暴発を阻止することにもつながりますから。
韓国次期政権の「告げ口外交」など放置すれば良いと思います。
ウクライナあたりがロシアをターゲットにして告げ口外交したら
ソッコーでロシアに侵攻されそうだね(笑)