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岸田首相「北方領土いつでも取り返す」と発言、本当?

岸田文雄首相が「いつでも北方領土を取り戻す準備はできている」、「ウクライナと呼応し東西挟み撃ちも辞さず」と述べた――。本当なら、特ダネです。しかし、結論からいえば、これは悪質な捏造です。インターネット上の匿名掲示板で、毎日新聞の記事を勝手に曲解したものに過ぎません。そして、これを無批判に転載した「まとめサイト」も問題でしょう。

大手メディアのポンコツぶり

当ウェブサイトでは普段から、大手の新聞、テレビなどのマスメディアが垂れ流す報道に対しては、批判的ですが、その理由は簡単です。大手メディアの報道内容は、どうも不正確であったり、扇動的であったり、はたまた情報が遅かったりするからです。

とっくに『ウクライナ戦争が示した日本のメディアのポンコツぶり』などでも指摘したとおり、ウクライナ戦争を巡っては、間違いなく、そうした傾向が認められます。

ウクライナ戦争は日本の大手オールドメディアの「ポンコツ」ぶりを示す良い機会であり、それと同時に各人がインターネットを通じて主体的に情報を得なければならない時代が到来しつつあることを私たちに示しているように思えてなりません。実際、日本の新聞、テレビの情報を眺めるよりも、日本政府や外国政府の報道発表などの一次ソース、外国メディアの報道などを眺めていた方が、はるかに有益だったりもします。長谷川氏「日本語情報は役立たずで有害」ジャーナリストの長谷川幸洋氏が、「価値ある情報の99%は英語」、「日本語情報...
ウクライナ戦争が示した日本のメディアのポンコツぶり - 新宿会計士の政治経済評論

岸田首相「いつでも北方領土を取り返す準備はできている」

ただ、不適切な情報を流すのは、なにも大手メディアに限られません。

こうしたなか、複数の「まとめサイト」では、今朝までに、こんな記事が掲載されていました。

岸田総理『いつでも北方領土を取り返す準備は出来ている』ウクライナと呼応し東西挟み撃ちも辞さず

―――2022/03/19付 政経チャンネルより

岸田総理『いつでも北方領土を取り返す準備は出来ている』ウクライナと呼応し東西挟み撃ちも辞さず

―――2022/03/18付 ツイッ速!より

岸田文雄首相が「いつでも北方領土を取り返す準備はできている」、「ウクライナと呼応し東西挟み撃ちも辞さず」と述べた、というのです。

これはなかなかのスクープです。

もしこんなことを本当に岸田首相が述べたというのならば、個人的に、ちょっとだけ岸田首相のことを見直したいと思った次第です。

ただ、気になってこれらの記事を読んでみると、冒頭で、毎日新聞の一昨日付のこんな記事が引用されています。

岸田首相、露は北方領土「不法占拠」 ウクライナ侵攻で姿勢修正

―――2022/3/17 17:52付 毎日新聞デジタル日本語版より

内容は、岸田文雄首相が17日の参院予算委員会で、ロシアによる北方領土の実効支配を「「法的根拠がなく、不法占拠されているという立場だ」と明言した、とするもので、あわせてロシアとの平和条約についても、「この状況に鑑みれば、平和条約交渉の展望について申し上げる状況にはない」と述べた、とするものです。

これ自体、べつに何の変哲もない記事です。

フェイクは毎日新聞ではなく…

記事のどこを読んでも、岸田文雄首相が「いつでも北方領土を取り返す準備はできている」、「ウクライナと呼応し東西挟み撃ちも辞さず」と述べた、という記述は見当たりません。

「毎日新聞がついにフェイク・ニューズを堂々と垂れ流す時代になったのか!」

結論からいえば、それは違います。

正体を明かしておくと、この記事タイトル自体、インターネット上の匿名掲示板『5ちゃんねる』に投稿されたスレッドのタイトルをそのまま剽窃したものです。そして、記事のタイトルはおそらくは匿名の投稿主が毎日新聞の記事と無関係に捏造したものです。

正直、ここまでくるとデタラメも良いところであり、捏造であり、フェイクニューズそのものです。普段、当ウェブサイトは毎日新聞に対し批判的であると自認していますが、さすがにこれは毎日新聞が被害者でしょう。

また、先ほど示した『政経ちゃんねる』、『ツイッ速!』という「まとめサイト」は、『5ちゃんねる』の情報を無批判にそのままコピペしただけだと思いますが、それにしてもクオリティの低さには驚きます。

いずれにせよ、大手メディアの報道のなかに、信頼に値しないものが目立つことは事実ですが、インターネット上も、この手の捏造タイトルなどの記事が溢れているのは困りものです。

なかには「まとめサイト」が捏造している場合も!

ただし、「まとめサイト」は、『5ちゃんねる』の内容をそのままコピペしているだけとは限りません。

『NEWSまとめもりー』という「まとめサイト」に掲載された、こんな事例を紹介しておきましょう。

【緊迫】非友好国のロシアさん、日本の領海を有効活用・・・

―――2022/03/19付 NEWSまとめもりーより

「非友好国のロシアさん」という表現もなんだか微妙ですが、「日本の領海を有効活用」とは、ただならぬ気配を感じます。

しかし、これも正体を明かすと、『FNNプライムオンライン』の次の記事を引用したものです。

【速報】ロシア海軍の戦車揚陸艦が津軽海峡を通過

―――2022年3月16日 21:00付 FNNプライムオンラインより

これは、ロシア海軍の戦車揚陸艦が津軽海峡を通過したというもので、まとめサイトの「日本の領海」云々というタイトルも、おそらくはこのまとめサイトの管理人が「津軽海峡は日本領だ」と勘違いして、よく調べもせずにこのようなタイトルを付したに過ぎないのでしょう。

というのも、『5ちゃんねる』の元スレッドのタイトルは『【速報】ロシア海軍の戦車揚陸艦が津軽海峡を通過』だからです。引用するなら、せめて事実関係を調べてからにしたらよいのに、と思ってしまいますね。

情報は盲信するな

そういえば、過去に当ウェブサイトでも紹介したとおり、「まとめサイト」のなかには、「河野太郎外相(当時)が日韓断交を決断した」だの、「小野寺五典防衛相(当時)が『旭日旗自粛するわけねーだろバーカ』と述べた」だのといった悪質な捏造ブログが多数ありました。

このように考えると、インターネット時代、我々一般人としても、記事を盲信するのではなく、最低限、常識的な判断力を伴いながら情報を受け取らねばならないことは間違いないでしょう。

新宿会計士:

View Comments (18)

  • キッシーネタかと思いきや、ネットリテラシーの話でしたか。

    そう言えば以前は、キッシーネタが出るたびに例外なく「もうここには来ない」というコメンターさんが現れてましたが、最近は見かけなくなりましたね。
    もうみんな立ち去って定住先を見つけたのかな?

    自分の意見と違うものは受け入れられないって人でも、渡り鳥をやってるうちにどこかに居場所を見つけられるのが、ネット時代というものかもしれません。
    心の平安は得られないでしょうけど。

    • 元ジェネラリスト様
      >最近は見かけなくなりましたね

      ギク(笑)。
      下に出没する愚か者が一人いました(笑)。

      • いやいや、「来ない」は「読まない」の意味でしたが、少なくともパーヨクの工作員さんのことではないですよ。(汗

        まあ、もう読まないとか言いながら、しょっちゅう名を変えて出没してるかもしれませんけどね。

        • ↑こういった発言にお約束としてボケルのはマクド人の性と思っていただければ(笑)。

  • ここの住人はご存知と思いますが、
    管理人様の記事を少し補足すると津軽海峡等は国際海峡として日本の領海範囲を「ワザと」短めに設定して海峡部分に公海部分を設けています。

    こうする事で仮想敵も平時は公海部分に航路を取るので互いに色々利益が有るのです。日本側は主に音紋等の情報収集で。

    当然今回も領海侵犯は行なっていないので、たしかにフェイクニュースかと思います。

  • 毎度、バカバカしいお話を。
    日本の防衛省とアメリカのCIAが共同して、ロシアけん制のために、岸田総理の北方領土奪還宣言という怪情報を流したんだって。
    さて、どうなりますやら。

    • 関東軍特種演習の情報戦版か?

      祖父も一兵卒として関東軍特種演習に参加しました。
      祖父方直接聞いたのですが、
      戦闘ではなくでこの演習で亡くなる兵隊が何人もいたそうです。
      当時も既に打った薬莢の殻を拾っていたそうです。

      • すいません。入力誤りです。

        祖父方直接→祖父から直接
        戦闘ではなくでこの演習で→戦闘ではなくてこの演習で

  • >【速報】ロシア海軍の戦車揚陸艦が津軽海峡を通過

    津軽海峡が公海だったとしても、これは明らかなロシアの挑発行為ですね。
    ロシア東岸から太平洋に出るのに津軽海峡を通る必要はありません。
    千島列島のどこかを通ってもいいし、なんなら日本海→南シナ海を通ってもいい。
    そもそも増援を海路で送る必要があるのでしょうか?
    陸路のほうが速くないですか?
    さらに言うと交戦中の国が自国の軍艦の航路を他国に知られるのは基本的にはアホです。
    あえて知られるようにしたのは挑発・示威行為としか思えません。

    • しきしま様

      わたしも初めこのニュースを目にしたとき、てっきり対馬海峡を西から東に抜けたんだと思ったのですが、どうもその後のニュースでみるかぎり、方向は逆。カムチャツカ半島に展開している部隊の戦車をウラジオまで船で輸送し、そこからシベリア鉄道で、多分ウクライナに輸送するのが目的だったようです。

      冬ですからね、流氷で邪魔されない航路を選んだんじゃないでしょうか。それにしても、

      >交戦中の国が自国の軍艦の航路を他国に知られるのは基本的にはアホです。

      は、その通り。よほど急いでたんじゃないですか。

  • ディープフェイクで岸田首相が演説しているような動画を作らないだけ、ロシア国製フェイクニュースよりはマシと違いますか。

  • プーチン氏のプロパガンダを盲信するロシア国民は多いでしょう。
    先日国営放送で、NO WARを訴えた勇気ある女性が居ました。
    高い視聴料を国民から取って、国益を損なうような放送をしている放送局とどちらが問題かは、疑問です。

  • ヤフーニュースも本文とタイトルが一致しないことあるね

  • >情報は盲信するな
    賛成です。
    大手メディアの報道に限らず、客観的に情報を整理し伝えようとするのではなく、己の思想に誘導しようとするところってどうにも書き方が扇情的なんですよねえ。
    扇情的な書き方をしていないから安心というものでもないですけど。

    そういえば自分も、新聞だったか雑誌だったかまとめサイトだったか、どこで見掛けたのか忘れましたが。
    〇〇の発想は資本主義の否定そのものとか、〇〇のポンコツぶりは酷い(結果に対する執筆者の推測だけが書かれ、真相を確認出来る情報源は無し)とか、〇〇と●●と◎◎による魔のトライアングルとか、そんな感じでなかなかに強烈な書き方をして、読者を煽っているなと感じたところを見掛けた覚えがあります。

    こういうところもあるので、我々はどこが発信元だろうと決して情報を盲信することなく。どこまでが確かな情報で、どこからが発信者による主観的意見や推測なのかを整理して、各人が総合的に情報を判断しなくてはいけないと思います。
    まあ、中立性を守る必要がない媒体なら、執筆者がどんな思想を書くのも自由だし、そんなものを期待して読むものでもないと思いますが。
    所詮、人間はそれまでの経験から物事を判断するという性質を持つ生き物です。そんな生き物が情報を発信する以上、そこに思想や価値観が入らないという方が不自然ですしね。

    • あれ?去年めちゃくちゃ論破されて逃げて行った岸田信者の方に文面が似てるなぁ…不思議だなぁ(棒)

  • 新聞やテレビ同様、まとめサイトもピンキリですからねえ。
    ちゃんとスレタイ詐欺を避けるサイトもあれば、
    「俺はただまとめてるだけだよーんwww騙される奴が悪いwww俺様無罪www」な
    サイトも沢山ある。そして困った事に、訪問者側も
    「何マジになってんのpgr!馬鹿になるのを楽しむ場所だろJK!空気嫁!」
    と言うスタンスを取ればOK、と言うメンタルを作りかねない。

    ワイドショーやタブロイドの類が世の中からなくならない様に、
    こういう無責任なまとめサイトも後を絶たない。
    「真面目に難しい事を考えるなんて絶対嫌だ!俺は年がら年中無責任にフザけたいんだ!」
    「俺は他人を馬鹿にしたいんだよ!他人も俺を馬鹿にしていいんだからフェアだろうが!」
    と言う需要がある程度は存在するんでしょうね。

    問題は、ワイドショーはタブロイドがわざわざ自分達から
    「この番組は頭を悪くする為の物です。真面目で信頼できると勘違いしたら恥かくよ!」
    と宣言しない様に、こう言った不真面目なまとめサイトも
    「俺達信じちゃダメだよ!ここはわざと馬鹿で極端な事を言い合って楽しむ場所だから!」と
    宣言したりしないから、勘違いしたり抜け出せなくなったりする人が生まれる事で……