韓国の「段階的なクアッド参加」という話題が出て来ました。韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)は昨晩、「独自情報」として、尹錫悦(いん・しゃくえつ)次期大統領の外交・安全保障ブレーンたちが、日米豪印という「クアッド」への「段階的参加」を検討している、と報じたのです。これについて、いったいどのように考えれば良いのでしょうか。
クアッド参加を拒絶した文在寅政権
尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏が韓国の次期大統領に選ばれたことを巡って、優れた韓国観察者である鈴置高史氏は、最初の試金石が「クアッド」に参加するかどうかにある、と指摘したことは、『李朝末期と類似?鈴置論考「親米大統領でも離米従中」』でも取り上げたとおりです。
韓国観察者の鈴置高史氏が今朝、尹錫悦氏が韓国大統領選を制したことに関連し、注目すべき論考を出しています。「親米大統領」が誕生したとしても、韓国の「離米従中」は止まらず、ウクライナ戦争で米国の「相場観」も変わったなかで、韓国が「現状維持」を選ぶことは、米国の目には「離米従中の度合いを深めた」と映るだろう――。そんな鈴置氏の指摘を、我々は非常に重く受け止める必要があります。尹錫悦氏は「紙一重の勝利」昨日実施された韓国の大統領選では、尹錫悦(いん・しゃくえつ)氏が李在明(り・ざいめい)氏を僅差で制し... 李朝末期と類似?鈴置論考「親米大統領でも離米従中」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
この「クアッド」は、日米豪印4ヵ国の協議体です。
実際、米国のジョー・バイデン政権は執拗に、このクアッドの枠組みに韓国を加えようと画策してきましたが、文在寅(ぶん・ざいいん)現政権はこの要求を事実上拒否してきたのも事実でしょう。
(※「クアッド」はもともと「4ヵ国」という意味の単語が由来ですので、「クアッドに韓国が加わる」というのも違和感がありますが…。)
このあたり、「5年ぶりの保守政権(※)」に対し、米国内では「日米韓3ヵ国連携」、「東アジアのリンチピンとしての米韓同盟」の復活に対する期待がかなり強いらしく、おそらくは政権交代とともに、米国からそのような要求が最初に出て来ることは容易に予想できるところです。
(※ついでに、尹錫悦氏が「保守派の政治家」なのかどうかに関しても、大変微妙な気がしますが、ここではその点について、とりあえず脇に置きます。)
「クアッド段階的参加」論
おりしも先日の『米シンクタンク部長「韓国はクアッドに参加すべきだ」』では、米戦略国際問題研究所(CSIS)の韓国部長であるビクター・チャ氏が韓国メディア『朝鮮日報』に対し、暗に尹錫悦氏に対し「クアッド」参加を要求する論考を寄稿した、とする話題を取り上げました。
クアッドが「価値同盟」であるという事実を理解していないCSIS部長またしても、米国から「韓国はクアッドに入れ」とする論説が出てきたようです。米戦略国際問題研究所(CSIS)の韓国部長であるビクター・チャ氏が執筆した「クアッド入りを拒否したのは文在寅政権だ」とする論考が、韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に掲載されていました。言外に、尹錫悦氏に対し「クアッド入りをコミットせよ」と迫っている主張でもあります。FOIPとは?FOIPは安倍・菅両総理の置き土産昨年の『外交青書:基本的価値の共有相手... 米シンクタンク部長「韓国はクアッドに参加すべきだ」 - 新宿会計士の政治経済評論 |
その「続報」でしょうか、同じく朝鮮日報に昨晩、こんな記事が掲載されました。
【独自】尹錫悦次期大統領「クアッドへの段階的参加を推進…『外交通商部』の復活も検討」
―――2022/03/15 20:24付 朝鮮日報日本語版より
(※朝鮮日報の場合、記事が公表されてから数日経過すると読めなくなってしまうようですので、原文を読む場合は早めにお願いします。)
朝鮮日報は「独自記事」として、尹錫悦氏とその外交・安全保障のブレーンたちが、「クアッドへの段階的参加を検討している」ことが15日までにわかった、と報じました。
具体的には、クアッドの下で立ち上げられたワクチン、気候変動、先端技術の各分野におけるワーキンググループに参加し、関連各国との接触範囲を広げたうえで、「適切な時期に」正式参加の手続を取る、という構想なのだそうです。
ビクター・チャ氏あたりが聞くと小躍りして喜びそうな話題ですね。
「段階的」という表現の「罠」
もっとも、こうした「段階的」という言葉を聞くと、個人的には別の「段階的」という考え方を思い出します。
言うまでもなく、それは北朝鮮の「段階的非核化」です。
北朝鮮は国際社会からの経済制裁が科せられると、決まって「段階的非核化」を持ち出し、核実験施設などを派手に爆破するなどのパフォーマンスを駆使する手法でこれまでに何度も国際社会を騙し、核・ミサイル開発を継続してきました。
すなわち、この朝鮮日報の報道記事を眺めていると、韓国はクアッドの「実利」だけを取り、クアッドとして求められる「義務」を果たさないという、またしても「フリーライド」をするのではないか、といった予感がプンプンと漂ってくるのです。
この点、朝鮮日報の記事には、こんな続きがあります。
「尹次期大統領側の関係者はこの日、本紙の電話取材に対し『韓国がクアッドにフリーライド(便乗)のような形でいきなり参加することはないだろう』としながらも『インド・太平洋地域の安定と繁栄に対する寄与の範囲を広げ、地域のキープレーヤーとして実質的な役割を果たすことに優先的に取り組むだろう』と述べた」。
正直、今まで韓国の外交がフリーライドの連続だったことを自覚しているからこそ、このような発言が出てくるのかもしれません。
また、中国がクアッドを「対中包囲網」として強く意識しているという点を踏まえるならば、韓国が「クアッドに全面的に参加する」などと言い出せば、2017年の「限韓令」と「三不の誓い」のときのように、またしても中国を怒らせることが予想されます。
その意味でも、この「段階的参加」という表現が、「中国から怒られない範囲でクアッドの実利を取る」という意味であれば、むしろ韓国の「クアッドの段階的参加」論は、危険ですらあります。
岸田首相、林外相は「約束を守れ」と言えるか
この点、安倍晋三総理、あるいは菅義偉総理であれば、韓国のクアッド入りがすんなり実現するとも思えません。なぜなら、日本政府が韓国に対し、「クアッドに参加する前に、まずは日本との約束を守れ、国際法違反の状態を是正しろ」と要求するはずだからです。
しかし、現在の岸田文雄首相、あるいは林芳正外相に、それを述べるだけの機転が働くものなのでしょうか。
いずれにせよ、現在のところは状況を注視する以外に方法はなさそうです。
View Comments (15)
米韓がうまくいくなら日米韓もそれなりに機能するんで、後は韓国がQUADに参加するからなんかクレクレしたときに、日米韓がうまく言ってるんだから満足しろと言って米国が余計なことをしないように牽制するだけですね。どうせ韓国がQUADに来ても東南アジア守護という機能を果たせるわけじゃないですし。
義務を果たすつもりも原資も無く、ただ自国の儲け(損は考えないので損得勘定ですらなく)と自尊心満足だけのために世界に出て来ないで下さい。
CPTPPもQUADもお断りします。
韓国と中華人民共和国がWTOにいることさえ不思議です。
なにやらロシア艦隊が日本海域航行して次は日本だザマミロみたいな書き込みが韓国で増えてますが、徴兵制で兵役行っても軍事理解出来ないんですか?
露中がてを組んだ以上、北を従えて南侵する可能性も方がはるかに高いんですが?
だからKOSPIもウォンも売られまくってるでしょ?
なんで自分たち自身を客観的に見ることが出来ないんだろう?
無理です。
露中に行って下さい。
アメリカによる「クアッドに参加するよな?」つまりは「お前こっちの陣営だよな? 態度はっきりしろ」という踏み絵に韓国が「段階的参加」という「コウモリが以降続けます」という回答してきたようにしか見えん。
そんな信用ならない連中をわざわざ本気で加えようとも思えないんだが。
韓国が態度をはっきりしろと言われ続けて、物別れに終わると思う。
段階的参加は文大統領の方針とまったく同じですね。
重要なのは、「対中包囲網」にいつ参加するかです。
それこそ、キモである対中包囲網を避け続けてオマケの特典部分だけ摘まみ食いする段階的参加は現参加国から非難されるでしょう。
「韓国は中国から制裁を受ける」が、鈴置説です。
日本でも「検討する」は、「何もしない」と変わりません。韓国は「約束する」も反故にしますので、気にしないで良いでしょう。
1.韓国のクアッド加入には反対です。「同盟とは鎖のようなもので、弱い環を加えても強くはならない(An alliance is like a chain. It is not made stronger by adding weak links to it.)」からです。TPP加入も認める必要はありません。それ以外の形で、対中国包囲網に韓国が加わることには賛成です。まずは三不政策の放棄・非継承を宣言させるべきです。
2.対韓外交については、日米韓(安保)と日韓(安保以外)を分けましょう。日韓は、韓国民が「国家間の条約・合意は、主観的な正義に優先する」という国際常識に、目覚めない限り進展がないと思われますので、当面棚上げです。単独での日韓首脳会談は見合わせるべきでしょう。日米韓は、①「先に非核化、後で南北関係改善」という新政府の対北方針は、日米とも合致すること②中国の覇権国化へのリスク認識は共通と考えられること、から推進していきましょう。
「日米韓はしっかりとするから、日韓には口出ししないで」のスタンスのままでいいと思います。
正直言って、韓国が絡まない方が国際連携自体はうまく機能すると思います。米国の意図は”明確な邪魔をさせないため(コントロール下に置くため)”の陣営入りなのだとしてもマネジメントを日本におっかぶせるのは無責任なんですよね。
*フリーライド(タダ乗り)ばかりされた日には、経済的にも外交的にもフリーズドライ(凍結乾燥)で対峙(退治)したくなる気持ちでいっぱいです・・。
いやもう、この際K国のことはもうどうでもいいです。どうなろうと知ったこっちゃないですよ。
ただそのK国に下手に手を差し伸べかねない、我が国のK田政権の方が遙かに心配です。
やらねばならないことにはとことん腰が重いか骨抜きにする一方、やらんでいいこと、言わんでいいことだけは即断即決と言う印象が非常に強いので。
ユン次期大統領との会談ではぎりぎり不利益になるようなことは言わなかったようですが、そもそも会談をしたこと自体誤ったサインでしょうし、あくまで赤点ぎりぎりの印象しかないので、今後も余計なことをやらかさないか、非常に心配です・・・
韓国と会談するのは大チョンボ
岸田政権崩壊どころか日本崩壊にも繋がりかねない危険なことをホイホイやるという外交的センスが問われる
ぶっちゃけ岸田派は全員逮捕して排除すべき事案
よくこのサイトでも紹介されている鈴置氏曰く・・・
尹錫悦氏は選挙中からワーキング・グループに加わりつつ、追ってクアッドに正式な加盟を模索すると発言していたが「参加する」とは絶対に言っておらず、その程度の覚悟なので大統領に就任してもクアッド参加に動く可能性は低いと指摘してますね。
しかも今回のウクライナの件で経済制裁の相場観が変わったので、中国を怒らせれば韓国に課す
裁は極めて厳しいものとなり、韓国は悲惨な目にあうとも言っています。
クアッドはそもそも反中国の同盟なんですから、曖昧な態度で参加できる訳が無いので段階的とか言ってるうちは米国も日本も韓国に肩入れをせず様子見ですかね。
「クアッド」に参加するではなく、「FOIPに参加する」では無いでしょうか?
いずれにしても、いいとこ取りを狙っているコウモリ野郎の参加はお断りでお願いします。