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    Categories: 外交

「ウクライナ亡命政府」を米国メディアが相次いで報道

この一両日で、米メディアを中心に、「ウクライナ亡命政府」という報道が出て来ました。これは、ウクライナ大統領の身柄をキーウから脱出させ、同国政府のリビウ、あるいは安全な国外で亡命政府を作る、といった構想だそうです。ウクライナ当局はこの構想に否定的との報道もあるのですが、いずれにせよ、続報が気になるところです。

米メディアを中心に、ここ一両日の間に「ウクライナ亡命政府」という話題が出て来ました。

U.S. debates how to aid possible Zelenskyy government in exile

―――2022/03/05 09:49 JST付 NBCより

US and allies discussing potential for Ukraine government in exile: report

―――2022/03/06 18:12 EST付 THE HILLより

US and Europe weigh plans for Ukrainian government in exile

―――2022/03/06 22:32 GMT付 CNNより

上記以外にも、ワシントンポストやニューヨークタイムズにも似たような話題が出ていますが、要約すると、「ゼレンスキー大統領の身柄をキーウから脱出させ、ウクライナ西部のリビウあたりに避難させたうえで、場合によってはウクライナ国外に亡命政府を作る」などとする構想が、西側諸国で議論されている、というものです。

また、亡命政府を樹立するとした場合の具体的な場所について、CNNの記事では「ポーランド」という名前が挙げられています。

今回のウクライナ戦争、ウクライナ軍の強固な抵抗により、ロシア側の短期決戦という意図は挫かれたフシがあるのですが、それでも報道から判断する限り、すでにウクライナ南部の都市・ヘルソンが陥落し、ザポリージャ原発などもロシア軍に占領され、キーウなどの包囲も続いているようです。

このように考えていくと、戦況は決してウクライナにとって芳しいものではなさそうですが、それと同時に、ロシアにとっても「局地戦に勝ち、全体で負ける」という可能性が出てきたのかもしれません。

なぜなら、仮に「亡命政府」構想が実現した場合、ロシアがウクライナ側の「司令塔」を排除することができなくなるからです。

もちろん、ロシア側の意図としては、キーウを陥落させた際、ただちに傀儡政権を作るつもりかもしれません。

しかし、ウクライナ国外からゼレンスキー政権がレジスタンスを呼びかける可能性がありますし、そうなった場合には、「占領軍」であるロシア軍によるウクライナ統治は困難を極めることになるかもしれません。

もっとも、これらのメディアの報道によると、現時点においてウクライナ政府側は「亡命政府」構想には否定的であり、また、「亡命政府」構想を口外すること自体がロシアの勝利を認めることにもつながりかねない、といった懸念もあるようです。

いずれにせよ、ウクライナ戦争を巡っては、先週、国連総会で141ヵ国という賛同でロシアの撤退を求める決議が採択されていること(『国連総会、ロシアにウクライナからの無条件撤退を要求』等参照)などを踏まえると、世界はウクライナに対し、さまざまな支援を続けることが想定されます。

南アフリカメディア「アジアでは日本とニュージーランドが議論をリードした」国連総会でロシアのウクライナからの無条件撤退を求める決議が採択され、2014年3月のクリミア半島を巡る決議のときと比べ、賛同国が100ヵ国から141ヵ国に増える一方、反対国は11ヵ国から5ヵ国へ、棄権国も58ヵ国から35ヵ国へ、それぞれ減少しました。国連総会、ウクライナからの無条件撤退などを要求国連総会は現地時間2日、ロシアに対しウクライナからの無条件撤退などを求める決議を、賛成多数で採択しました。General Assembly resolution demands end...
国連総会、ロシアにウクライナからの無条件撤退を要求 - 新宿会計士の政治経済評論

また、国際的なクレジットカードブランドがロシアでの事業を停止し、欧米各国がロシア向けのPCソフトウェアなどの製品販売を取りやめるなどの動き(『2つのクレジットブランドがロシアでの事業停止を発表』等参照)は、ロシア経済を世界から孤立させるのにつながるものでもあります。

制裁逃れの抜け穴塞ぐ「ジャパングループ」の創設を急げ新たなロシア制裁として、クレジットカードの2つの国際ブランドがロシアでの事業停止を発表しました。ただ、すでに発動されている経済・金融制裁を含め、現在の国際社会の制裁はそれなりにパワフルなものではありますが、中国が制裁に参加していないなどの事情もあり、楽観視はできません。やはり、最先端テクノロジーの輸出を管理するための新たなレジーム「ジャパングループ」の創設が急がれるのではないでしょうか。ロシアの危機は日本にとってのチャンス当ウェブサイトでは2...
2つのクレジットブランドがロシアでの事業停止を発表 - 新宿会計士の政治経済評論

こうした観点からも、この「亡命政府」構想については続報が待たれるところでしょう。

新宿会計士:

View Comments (21)

  • 現職のロシアFSBの分析官がロシアの現状を分析したものを、英訳したもののツイートがあります。
    肝心のFSB分析官の元ネタが確認できないのと、英訳者が何者かわからないのですが、迫力がありとても示唆に富むもので、ちょっと捨て置くには勿体ないと思いましたので、こちらに。
    情報の信憑性についてはそれぞれでご判断ください。

    英訳ツイート
    https://twitter.com/igorsushko/status/1500301348780199937?s=20&t=1M6LHNTjZeGbA1hd_kCFVQ
    それを日本語訳したツイート
    https://twitter.com/Vorspiel2/status/1500677825044819971?s=20&t=2Irs07Dvx2zJUdzs66fGTA

    一部抜粋します。
    ・我が国の指導者層に本作戦(ウクライナ侵攻)を決断させたのが何かは分からないが、彼等は揃って我々(FSB)の責任だとしている。我々の分析は非難され、もっと沢山報告を出すよう、ますます圧力を掛けられている。こういう政治コンサルタント、政治家、権力者ども全員が混乱の元凶だ。何より重要なのは、誰もこんな戦争が起きるとは知らなかったということだ—あらゆることが誰からも秘匿されていた。
    ・我々の電撃戦は完全に失敗した。そもそもが完遂できないタスクだ: ゼレンスキーと部下を開戦3日で確保し、主要な建物をすべて選挙し、城下の盟を読ませたとしたら、ウクライナの抵抗は最小限に抑えられただろう。理屈上は。だがそれがどうした? こんな「理想的な」展開であってさえ、解決不能な問題が残っている: 我々は誰と交渉する気だ?
    ・見渡してみれば、ロシアにはアウト[ポーカーにおいて「これを引けば勝てる」というカード。「勝ちの目」]が無い。勝ち筋などなく、どうやっても負けるしかない—ということだ。
    ・我々はウクライナに全責任をおっ被せるシナリオをせっせと種まきしている。ナルイシキン(ロシア対外情報庁官)と配下のSVRは、ウクライナが密かに核兵器を製造していた、という証明をせっせとこさえている。クソったれ。連中は、我々がとっくに分析し放棄した論を押し通そうとしている
    ・更に皮肉なことを言えば、私はプーチンが核の赤ボタンを押して世界を終わらせるとは思えない。
    まず、それを決められるのは1人ではない。誰かが反対するだろう。このプロセスには多数の人間が関与している。「赤」ボタンを1個押すだけ、というものではない。2つ目、そもそも[核兵器が]正常動作するかも疑念がある。3つ目、これが最も唾棄すべきで悲しいことだが、私個人の信念として、側近すら近づかせないようになったプーチンが、自分自身を犠牲にするなどとは思えない。

  • アメリカメディアを通じてゼレンスキー政権に脱出をそそのかしているようですね。

    開戦直前にアメリカは偵察により把握しているロシア軍の実情を微に入り細に入り公開しましたが、あれはウクライナへの支援でなく、先に白旗を揚げろという「遠まわしでない」教唆と自分はそう解釈していました。

  • 【トランプ氏、米国は「ジェット機に中国国旗をつけ、ロシアを爆撃せよ」と発言】
    遊説中のトランプさんの発言、らしいです。
    いろいろな感想があるとは思いますが、プーチンさんやキンペーさんに互するには、やはりこれくらいのアクの強さがあったほうが?というか。
    毒を以て毒を制す、なのになぁ、と。
    でも米国民は、毒にも薬にもならない人物を選んで、しまった。
    なんとなくですが、米国の民主党政権というのは、それぞれの利権絡みの、権益優先の利益誘導政策が多いのでは?という印象ですね。
    気候変動やらCO2削減やらキレイゴトをうたって、その陰で何を画策しているのやら。
    それにやっぱりバイデン政権では、本当は誰が「決定権者」なのか?
    今もって、不明というか。
    バイデン政権って、ウクライナという国をどう考えているのかも、不明ですね。

    • 他国の国旗をつけての攻撃は明らかに国際法違反だからね
      侵略戦争が悪とされていない過去の時代ですら、国際法違反だった

  • 亡命政権樹立という事態になった場合、「後始末」は長期化し、それはロシアの体力をじわじわと消耗させることになるでしょう。ただ、この話がウクライナ現政府からではなく、アメリカから出てきたという点に、少々引っ掛かりを覚えます。「ひょっとしたら、アメリカは最初からこのようになるシナリオを描いていたのではないか?」という疑念です。

    以下は、穿ち過ぎであることを承知の上での陰謀論的仮想シナリオです。
    [前提]
    ロシアの主張は一貫して「ウクライナのNATO加盟は絶対に容認しない」というものだが、アメリカ(&NATO)は「NATOをこれ以上東方拡大しない」という言質を与えようとはしなかった。

    [展開されたシナリオ]
    ・アメリカ(&NATO)は水面下でゼレンスキー大統領を煽り、NATO加盟を推進させた。
    ・想定通りロシア軍による軍事侵攻が開始されたが、短期決戦というロシアの思惑を潰し、事態を長期化させるために、アメリカ(&NATO)は軍需物資の支援は行うものの、実戦部隊を投入しないと声明。
      → アメリカ(&NATO)は自らの手を汚すつもりは最初からない。
    ・事態が長期化する間に、経済制裁などロシアに対する制裁を国際的に実施する。
      → 経済制裁でロシア軍を止められないのは最初から織り込み済み
    ・亡命政府を樹立させ、事態のさらなる長期化を図る。亡命政府が元気であり、亡命政府vs傀儡政府の争いが継続中は、ロシアに対する制裁措置継続を正当化できる。
    ・ロシアが体力を消耗し、アメリカ(&NATO)に対する脅威ではなくなる(予定)

    以上が最初から計画されていたものであり、ウクライナおよびその国民に多大な犠牲を強いるのも、最初から計算ずくだったというものです。要するに、ウクライナだけに被害を背負わせ、ロシアの脅威を減らそうというもので、ウクライナこそいい面の皮ということになりますし、プーチン氏はまんまと乗せられたということになります。

    上記シナリオの難点は、現在のアメリカにそのような大陰謀を企て、実行するだけの能力があるのかという点と、なぜこのタイミングだったのか不明という点です。なので、あくまでも「穿ち過ぎの陰謀論」としておきますが、そのシナリオに沿ったかたちで現状は推移しているように見えます。真相が明らかになることはおそらくないでしょうが、なんとなくもやもやは残るでしょう。

    • この現状で、ポーランドを引きずり込んでいることに嫌悪感を感じますね。 

      ポーランドとしては、EU圏内の発言権UPで危険な「タイトロープ」を渡っている最中でしょうか? ヤメロ!

      ウクライナの場合、絶対的悪「プーチン大統領」!の出現と、ゼレンスキー大統領が(予想を外れ)めずらしく国内に残って最前線で戦っている姿を見せることで、国内がまとまりましたね。

      軍事的には、対空でそれなりにガンバッテいた(いる~~~)みたいですね。 
      低空飛行のロシア戦闘機映像がソレだとか・・・。

      • ブリンケン国務長官「ポーランドを介してウクライナに戦闘機供与を検討中」
        ポーランド外務省「そんな話は聞いてないし、検討もしていない」

        なんだか、汚れ役だけを押し付けようとしているように見えるのは気のせい?

    • 私も整理つかないので仮説なんですが、米国というか民主党の中間選挙逆転シナリオにされたんじゃないかと。長期化すればすればするほどバイデンの支持率が上がると。ロシアでファイクニュースなんちゃら法でCNNやらABCやNBCやらがロシアから撤退するみたいですがこいつらも日本のマスゴミに劣らず大概ですがですから。
      ゼレンスキーはちょうどいいお神輿にされてもう引き返すことができなくなったんんじゃないですかね。もしかしたらプーチンは長期戦見据えていたのかもしれませんね。軍隊の一軍は未だロシア内にいるとの分析もありますし。
      まあ、アメリカもロシアから石油の輸入続けてますし、ドイツも天然ガス・石油を輸入してる時点でなんだかなあと思います。

      • 「SWIFTから排除!」と華々しく打ち出しておきながら、「でも、天然ガスや石油の輸入代金決済ができないと困るから、ズベルバンクとガスプロムバンクは例外ね」などというご都合主義を隠そうともしていないのです。ズベルバンクに対して送金できるのであれば、実質的にロシアへの送金ルートは生きているということですから。
        また、アメリカはロシア産原油禁輸措置を検討中とのことですが、天然ガスを含めようとはしていません。結局のところ、物々しく「制裁!」と叫んでいる割には、自分たちが本当に困るような措置は取っていないとも言えます。やはり、もやもやは消せそうもありません。

        > ゼレンスキーはちょうどいいお神輿にされてもう引き返すことができなくなった

        ゼレンスキー大統領が、おそらく事前には誰も想像していなかったほど頑張っているのは間違いないでしょう。梯子を外される可能性を想定していなかったとしても、彼を責めることはできません。

  • ゼレンスキー大統領を亡命させるという話は、開戦直後にもありましたね。無論、米政府の公式見解ではなくメディア出自ですが。

    最初から、アメリカにとって既定路線だったんでしょうかね。ロシアがウクライナに攻め込み、現政権が追われることは。

    一向に援軍を出さないのも、それなら納得。米政府は、アフガン撤退のときには「自らを守る意志のない国とはともに戦えない」とか言ってましたが、守る意志を持つ国でも平気で見捨てるんですね。同盟を組んでないとはいえ、NATO加盟を希望している民主国家だというのに。

    オバマ大統領は、世界の警察官や~めた発言で世界を驚かせましたが、あれが今のアメリカ(民主党政権?)の本音なんでしょうね。政治ドクトリンを大衆扇動の道具としてしか見なさず、既得利益をむさぼるだけ、まさに新宿会計士さんが言うところの「利権」に溺れるしか能のない国に成り下がってしまった。

    こんな国に片務的に安全保障を依存する体制を、我が国は本気で考え直したほうがいいのでは。
    無論今すぐではないにせよ、まずはできることから。自衛力の強化、国民の国防意識醸成、あたりっすな。

    • 亡命という言葉が出てくるようになりましたか、、
      私がウクライナの指導者なら、ここらで一発、いや10発くらい、ポーランド領内へ向けてミサイルをぶっ放し、ポーランドに戦線布告します。

      そうすりゃNATOが全力でウクライナを占領してくれる。

  • つくづく「ロシア人のこころの卑しさ」に唾棄したい気持ちになっています。
    人類文明に対する破壊行為以外のなにものでもありません。

  • アメリカとしては、現状ロシア優勢でアメリカの対策も手詰まりのようです。
    「撃ち方やめ!」で別のステージでの対応を目論んでいるのかと思います。
    プーチン大統領にすれば、ウクライナ降伏と同じですので、新たな傀儡政権の樹立に動き出すと思います。
    私にはアメリカとNATOの敗北宣言に見えますが。
    どうでしょうかね。

  • コメディアン亡命させてどうするつもりだか。そのまま殉死してもらったほうがウクライナ国民にとっては象徴性が高まると思いますけどね。

  • アメリカは「国連」の解体無効化を宣言してロシア(そしてドサクサに中共も)を安保理常任理事国から追い出さなくてはなりません。それが決断出来る肚があるのかどうか?もっかのバイデン政権にはそんな決断は出来ない気がします。
    やはり「国連」は言葉の正しい意味での国際連合では無いのです。第二次世界大戦時の「連合国」の意味合いを強く残した前世紀の遺物なのだと思います。そしてそれは韓国などが反日を主張する根拠を与える反日連合の性格も持っている。またソ連ならぬロシア、中華民国ならぬ中共に不動の安保理常任理事国の特権を与える事により、核保有国クラブと言う意味合いも付与された「強国」「大国」を固定化するだけの仕掛けになっている。非核保有国は核保有に強い規制を強制される割に、安保理常任理事国でもある核保有国は核兵器廃絶の義務は無く期限の無い「努力義務」の格好になって居る。いま正にその核保有国でもあり安保理常任理事国でもあるロシアが核兵器使用もチラつかせながら一つの国を武力によって押し潰そうとして居る。戦後秩序の力による変更を集団的自衛権によって阻止する、と言う時の「戦後秩序」には残念ながらウクライナの存立する権利は含まれて居ない。NATOの防衛する同盟関係にもウクライナは防衛範囲に入って居ない。これは誰も口にしないけれど第三次世界大戦が始まりつつあるのでは無いか?そんな気もして居ます。

    • 第三次世界大戦の心配はしている人多くないか?
      世界大戦を奇跡的に生き残った国では、数百年後、実現不可能なことを「ホワイトスワンを探すようなもの」と呼ぶ表現が定着するかも

  • スパルタのレオニダスと化したゼレンスキー大統領が国民を見捨てて国外に逃亡しますかね。
    少なくとも女性と子どもが国外に避難する時間は稼ごうとするはずです。
    オバマの無関心とバイデンの失言は、ほんとうに罪深いですね。