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「日韓外相会談に向け調整中」の韓国報道をどう読むか

韓国メディアが昨日、ハワイで対面での日韓外相に向けた調整がなされている、と報じました。情報源が情報源だけに、盲信するのは慎重であるべきかもしれませんが、ただ、日韓首脳会談と異なり、日韓外相会談自体は、最近も何度か行われています。それに、韓国が日本に対してしでかした不法行為の数が多すぎるがために、正直、日韓外相会談を1回や2回開いたくらいで、日韓諸懸案が解決に向けて動き出す、というものでもないでしょう。

数え挙げればキリがない、韓国の日本に対する不法行為

当ウェブサイトではこれまで、韓国の日本に対する不法行為の数々について、もう数えきれないほど取り上げてきました。

現時点における日韓諸懸案のなかでも、とりわけ大きな「3本柱」といえば、韓国による竹島不法占拠問題、自称元慰安婦問題、自称元徴用工問題だと思いますが、それだけではありません。細かいものを含めれば、本当に数えきれないほどたくさん存在しています。

とりあえず、李承晩(り・しょうばん)が発生させた竹島問題を除外し、近年、李明博(り・めいはく)、朴槿恵(ぼく・きんけい)、文在寅(ぶん・ざいいん)の各政権期に発生したうちの主要項目を列挙しても、次のとおり、いくらでもあります。

自称元徴用工問題
  • ①韓国大法院による2018年10月と11月の日本企業敗訴判決
  • ②日本政府が日韓請求権協定に従い求めた解決手続を韓国政府が無視(2019年7月)
  • ③自称元徴用工らの側による日本企業の資産差押と売却手続(売却スルスル詐欺)
  • ④長崎県端島(いわゆる「軍艦島」)などでの「朝鮮人強制連行・強制労働」という歴史捏造
自称元慰安婦問題
  • ⑤日韓両国が2015年12月に取り交わした「日韓慰安婦合意」を韓国政府が反故にしたこと
  • ⑥自称元慰安婦が日本政府を訴え、主権免除原則に反する判決が下されたこと
  • ⑦韓国政府が実質的に支援する慰安婦関連団体が世界中で慰安婦像を建てまくっていること
  • ⑧日本大使館・領事館前の公道上に設置された慰安婦像を韓国政府が撤去しないこと
外交儀礼違反
  • ⑨「慰安婦合意」に関する外交機密文書一方的に公表(2017年12月)
  • ⑩いわゆる旭日旗騒動(2018年9~10月)
  • ⑪当時の韓国国会議長が天皇陛下を侮辱(2019年2月)
  • ⑫日本政府のアグレマンなしに次期駐日大使人事を一方的に発表(2020年11月)
安全保障・通商問題
  • ⑬火器管制レーダー照射事件(2018年12月)と「日本が低空威嚇飛行」などのウソを全世界に喧伝
  • ⑭日本が要求した輸出管理に関する政策対話に2016年6月以来3年間応じなかったこと
  • ⑮日本政府の輸出管理適正化措置に対するWTO提訴(2020年6月)
  • ⑯日韓GSOMIA破棄通告(2020年8月)とその撤回(2020年11月)
文在寅政権以前からの諸懸案(のごく一部)
  • ⑰対馬仏像窃盗問題(2012年10月~)
  • ⑱李明博大統領(当時)による竹島不法上陸・天皇陛下侮辱(2012年8月)
  • ⑲朴槿恵大統領(当時)への名誉棄損容疑での産経記者起訴(2014年8月~)
  • ⑳明治期の産業革命関連施設の世界遺産登録妨害(2015年6月~)

(【出所】著者作成)

…。

日韓関係「修復」なら日本が韓国に譲歩するしかない?

これに、最近だと佐渡金山の世界遺産登録妨害などの話題も加わり、日韓関係はいったいどこに漂流しようとしているのか、本当にわからなくなってしまいます。

ただ、ひとつだけ間違いないことがあるとしたら、日韓関係を「修復」しようと思えば、「韓国が日本に対し、これらの不法行為を全面的に撤回し、謝罪し、原状回復する」か、「日本が何らかの形で韓国に譲歩する」か、そのどちらかしかあり得ない、ということです。

もちろん、韓国が望んでいるのは、「日本が韓国に対し譲歩すること」でしょう。

また、非常に残念な話ですが、現状、韓国が自らの過ちを認める可能性は非常に低く、これらの諸懸案で韓国が日本に損害が生じたことを謝罪することも、損害を回復する措置を講じることも、基本的には期待ができません。

したがって、もしも韓国が国際法をないがしろにする行動を続けたとして、日本がそうした韓国の行動を容認するならば、日韓関係を修復するためには、日本が韓国に対して折れるしかないのです。

もっとも、俗世間で誤解されているのは、日本にとって韓国がそこまで必要な国かどうか、という論点です。

著者自身は、経済・金融的に見て、日本にとって韓国は「絶対に必要な国」ではないと考えており、また、軍事的・外交的に見るならば、韓国との関係が良好であるに越したことはないにせよ、「あらゆるコストを払ってまで」韓国と「友好国」(?)の関係を維持しなければならない、というものでもないと考えています。

「3番目の選択肢」を過度に恐れる必要はない

このように考えていくならば、いつも申し上げている「3つの落としどころ」のうち、3番目の選択肢を、わが国は過度に恐れる必要もないのかもしれません。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する

(【出所】著者作成)

もちろん、日韓関係が「今すぐ」破綻するようなことがあると、何かと困ります。

しかし、産業、金融、外交、安全保障などの面で、相応の準備をしておく価値はあるでしょう。

そして、日本の外交は、基本的には「Xデー」が到来するまでの間は、「日韓関係が破綻しても良いように少しずつ準備を進めること」に加え、韓国に対しては「日韓関係を健全な姿に戻すためには韓国が約束を守ってほしい」という原理・原則論を繰り返すのが良いと思います。

もちろん、日本側は「壊れたレコード」のように、原理・原則論を繰り返すしかありませんし、それを繰り返したところで、韓国が国際法、国際約束、条約などを守る方向に舵を切ってくれるというものでもありません。

しかし、それをする目的は、「関係破綻を先送りにすることで時間を稼ぎ、その間に準備をすること」にあるのです。

そして、あくまでも著者自身の印象ですが、現在の岸田文雄首相は見ていて「危なっかしい」と思う面も多々あるものの、それと同時に、岸田首相に日本の外交方針を変える力はありません。

先日の『鈴置論考に見る文在寅政権の5年と「日韓関係の未来」』でも紹介した、わが国を代表する優れた韓国観察者である鈴置高史氏の『韓国は猿芝居外交のあげく四面楚歌に… 「文在寅」退任でも日韓関係は修復せず』という記事に含まれた、次の記述を思い出す必要があります。

一方、日本の保守の間には『岸田文雄政権は中国と韓国に弱腰』との警戒感が強まっていますから、妥協を引き出すのは安倍晋三政権や菅義偉政権の時より却って難しいかもしれません」。

優れた韓国観察者の鈴置高史氏、「文在寅後も日韓関係は修復せず」――。文在寅政権の5年を総括する鈴置氏の最新論考が昨日、ウェブ評論サイト『デイリー新潮』に掲載されました。これだけでも大変読みごたえがある記事ですが、それだけではありません。文在寅政権後に「保守政権」が誕生したとしても、日韓関係が修復に向かうことはない、という点について、鈴置氏は2つの視点から明らかにしています。直接に韓国を知る時代ウェブ評論が時代を変える?著者自身が「新宿会計士」の名義を使い、ウェブ評論を開始したのは、ちょうど日本...
鈴置論考に見る文在寅政権の5年と「日韓関係の未来」 - 新宿会計士の政治経済評論

まさに、慧眼そのものです。

すなわち、岸田首相ら政権幹部がこうした日本政府の以前からの見解に背くような内容を発言してしまえば、その瞬間、自民党側からの「突き上げ」を喰らうことは間違いありませんので、逆に現在の日本政府としても、韓国には下手に譲歩できないという状況にあると見て良いと思います。

韓国メディア「日韓外相会談を調整中」

こうしたなか、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)には昨日、こんな記事が掲載されていました。

韓日外相の対面会談 「調整中」=韓国外交部

―――2022.02.07 17:51付 聯合ニュース日本語版より

聯合ニュースによると、今月12日にハワイ・ホノルルで開かれる日米韓3ヵ国外相会談で、韓国外交部当局者は、林芳正外相と鄭義溶(てい・ぎよう)韓国外交部長官の初の対面会談に向けて、「日程を調整している」と述べたのだそうです。

情報源が韓国政府である、という点に加え、この聯合ニュースの記事自体に誤りが多数含まれている点などを踏まえるならば、やや情報としての信頼度は落ちます。実際、聯合ニュースのこの記事では、次のような記述も出てくるからです。

両国は強制徴用問題や旧日本軍の慰安婦問題に福島第1原子力発電所の処理済み汚染水の海洋放出問題などが加わり、関係が悪化して政府高官の交流が活発に行われていない先月28日には日本が朝鮮半島出身者の強制労働が行われた『佐渡島の金山』を国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界文化遺産に推薦することを決め、新たな対立材料が生じた」。

「強制徴用問題」は自称元徴用工問題の、「処理済み汚染水の海洋放出問題」は処理水の海洋放出の、それぞれ間違いですし、佐渡金山で違法な強制労働が行われた事実もありませんが、こうした基本的な用語、基本的事実関係を報道機関が堂々と誤って報じるあたり、読んでいて本当に驚いてしまいます。

日韓外相会談自体は行われてきた

ただ、それと同時に、「日韓外相会談」という話題を、「どうせ韓国メディアの飛ばしに違いない」、などと決めつけるべきではありません。

意外と忘れられていますが、2019年12月を最後に開かれていない日韓首脳会談とは異なり、日韓外相会談自体は、ときどき開かれています。

最近だと、昨年5月のゴールデンウィーク中に開かれた英国のG7外相会合のサイドラインで、ゲスト国の外相として参加した鄭義溶氏が、当時の茂木敏充外相と対面で会談した、という実例もあります。したがって、日韓外相会談が行われること自体は、べつに報道としては不自然なものではないのです。

もっとも、会談が調整されている背景として、聯合ニュースはこんな「分析」を示しています。

ただ、日本は韓国との対話に過去よりは積極的な態度を見せている。今月3日に行われた鄭氏と林氏の初の電話会談も日本側が要請したもようだ。/世界遺産登録の推薦前、潜在的な対立を回避するため、関連国との『建設的な対話』をするよう推奨した世界遺産条約の作業指針などを踏まえ、日本が韓国との対話を必要としているとの見方が出ている」。

…。

この手の「~との見方が出ている」という表現が出てくるときには、たいていの場合、その記事を執筆した記者の主観的な意見です。

先日の『やるなら徹底的に:佐渡金山登録を巡る3つのポイント』でも触れたおとり、「①ファクトをベースに」、「②国際社会に対して」、「③徹底的に」日本の立場を説明すること――を守っていれば、基本的には勝つ可能性が高いと考えて良いでしょう。

政府は昨日、佐渡金山の世界遺産登録推薦を閣議了解しました。やるなら徹底的にやるべきです。その際のポイントは、①ファクト(事実関係)をベースに、②全世界に対して説明し、③ウソを徹底的に粉砕する、というものです。そして、外務省などは穏便にことを済ませようとしているのかもしれませんが、残念ながらそれは不可能です。なぜなら相手も歴史プロパガンダで世界を騙そうとする気マンマンだからです。佐渡金山の世界遺産推薦を閣議了解日本政府が佐渡金山の世界遺産登録を推薦する方針を巡っては、週末の『佐渡金山世界遺産登録は...
やるなら徹底的に:佐渡金山登録を巡る3つのポイント - 新宿会計士の政治経済評論

その意味で、日本はべつに、本件を巡って韓国と「協議」する必要などないのです(※もっとも、林外相を見ていると、この問題で韓国と「協議」しようとしているフシもあるなど、不安は払拭し切れませんが…)。

方向性を変えることは至難の業

これに加えて、日韓外相会談が行われたくらいで、韓国による竹島不法占拠問題に加え、先ほどざっと20個ほど列挙した日韓諸懸案のすべてをうまく解決することができるとも思えません。というよりも、林外相に、「日本が原理原則を曲げて韓国に譲歩することを決断する」、といった権限もありません。

というよりも、文在寅(ぶん・ざいいん)政権自身が、3ヵ月後には退任しているわけですから、政権末期の外相と何か話をして実務的に話が進むということもほとんどないでしょう。

もしも日韓外相会談が実現するとしても、それはあくまでも「文在寅政権に対し、最後の最後まで、韓国が約束を守るように日本政府として要求した」という実績作りのため、と考えるのが自然ではないでしょうか。

いずれにせよ、日本にとっての韓国とは、安倍晋三、菅義偉両総理の時代を通じ、「歴史的な特殊性」によって特別に対応する相手ではなく、「国際的なスタンダードでごく普通の外国として話をする相手」に切り替わったのです。

こうした流れについては、岸田首相、あるいは韓国の次期大統領がどう頑張ろうが、元に戻すべきではありませんし、また、元に戻ることもないのではないか、と思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (17)

  • おはようございます。
    米国と密室で話をつけて協調しつつ、韓国下げと台湾上げを同時に進めることこそ日本の道かと思います。
    祝:「台湾、福島など5県産食品に対する輸入禁止措置撤回を決定、明日正式発表」(サンケイおよびフォーカス台湾の本日のTopニュース)。次のシーズンも台湾パイン買います。

    • "台湾パイナップル 2022"など検索しても今年の情報がいまいち見当たらず、よもや米国産ポテトと並ぶ戦略物資の輸出制限ではないかと危惧しています。
      さんざん物理的に甘い汁に浸らせてから輸出を渋るのは不当な経済制裁である上、人道上も許されないのは明らかです。
      日本政府には早急な対応と、万難を排し早急かつ円滑な輸入の実現を期待します。

  • 「(日本は)問題の存在を認めたからこそ会談に応じたのだ」なんて言われないようにしないとね。

    *会談が非公開だと後悔することになりそうです・・。

    • おっしゃる通り、韓国(および中国、ロシア、北朝鮮などの悪の枢軸国)相手に非公開はあってはならないですね。

  • >韓国が約束を守るように日本政府として要求した」という実績作り
    散々、媚中だ親韓だって言われちゃってるから余命数か月の相手だし
    ここは強く出ておこう・・・ってな感じで結構強めな抗議をするんじゃないでしょうか。んで保守の評価上げといて冷めないうちに媚中に走る・・・

  • 非公式な通貨スワップのお願いかもしれませんね。
    どちらにしても、韓国との外交は、他国も同席しているか場か、メディアに公開された場でやって欲しいですが。

  •  日米韓外相会談があって、アメリカ側も日韓融和を要請するなか、残念ながら日韓外相会談だけを避ける選択肢はないでしょうね。しかも今回は佐渡金山というマイナスカードがあります。
     第三者が日本の誇りとか、媚中媚韓反対とか叫んでも現実は変わりません。仮に安倍政権であっても韓国と外相会談せざるを得ないでしょう。
     外相会談の実現は不可避なので問題はその中身になります。

  • 任期も残りわずかな文在寅政権が今さら大幅な「修正」をしてくるはずがないので、会談が行われたとしても、「対北朝鮮に向けて一致して協力する」などという空疎な合意か、単に平行線をたどるかだけでしょう。どうせ韓国で次期政権が発足したら全部チャラですから。
    韓国側としては、要するに、木口小平よろしく「死んでも反日の旗は降ろしませんでした」という国内向けアピールができればOKなんでしょう。日本側としては、韓国との外交的チャンネルを依然として保持しているということを確認する以上の意味はありませんので、実施されようがされまいが、どうでもいいことですね。

  •  林外相は紹介されているような多くの不祥事をどんどんけしかけてくる南朝鮮と会談して時間をつぶさなければならないほど時間が余りすぎているのでしょうかね。そんなに暇なら外相なんて誰か兼務すれば済むことで、専属の議員を就任させる必要ないことでしょうにと思うのですが。

     南朝鮮が懸案を解決するまで無視するか、貴国が懸案をすべて解決したら会談に応じますと意思表示すればよいでしょうに。下手に会談に応じると47のみならず、南朝鮮との癒着を疑われかねませんぞ。そのように疑われても必死で個人的に守らなければならない何かがあるのですか?

  • 「調整中です」「交渉中です」「検討中です」「明確な回答は無かったものの確かな手応えは得ました」「試作に成功しました」「○○年に実施の予定です」
    と言ってその後音沙汰がないのが韓国のいつものパターンですね。

  • 現外相なら(k国のお望み通りに)やりかねない、と思えてしまうとっても悲しい現実。

  • 日米韓の外相会談は北朝鮮問題を協議することがメインでしょうから協力して対処することを確認するのが目的でしょう。韓国を完全にレッドチームに自らわざわざ追いやる必要もないですから使えるものは使うということだと思います。韓国が頼りになるか、いないよりマシかは別の問題ですが。
    先日の日韓電話会談について、韓国に佐渡金山の価値がユユネスコに評価されるよう韓国側に誠実に説明していくとと林外相が発言してますので日韓の会談はもしかしたらあるかもですね。日本側の説明を韓国が受け入れる可能性はゼロでしょうけど。おそらく韓国にちゃんと誠実に説明しましたという国際社会向けのアリバイ作りの一環でしょう。

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