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この期に及び徴用工・慰安婦で日本の譲歩促す韓国外相

鄭義溶(てい・ぎよう)韓国外相の記者会見は、じつに強烈でした。自称元徴用工問題などで日本の譲歩を促したからです。端的に申し上げて、「お話にならない」というのはこういうことだと思います。こうしたなか、意外な話ですが、年末年始は日韓関係が動くこともあります。果たして今年はどうなのでしょうか。いずれにせよ、誰が次期大統領に就任することになっても、日韓関係は前途多難なのかもしれません。

年末年始は日韓関係が動く(こともある)

年末年始に向けて、世間は休日に突入しつつあります。

ただ、『今年は年末年始のタイミングで「大きな動き」はあるか』などでも述べたとおり、年末・年始に長い休日に入る国は、東アジアでは日本くらいしか存在しないというのもまた事実です。

日本ではそろそろ年末年始ムードですが、例年、外国では何か大きな動きが生じるのもこの時期だったりします。こうしたなか、任期を4ヵ月あまり残した文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領が、朝鮮戦争終戦宣言を推進しようにもうまく行かず、手っ取り早く外交レガシーを遺すための突拍子もない行動に出たりしないかどうかが心配で心配でならない今日この頃です。本日で「仕事納め」その理由は法律の規定にありクリスマスも終わり、世の中はそろそろ「年末ムード」一色です。官公庁の場合だと12月29日(つまり明日)から1月3日までが...
今年は年末年始のタイミングで「大きな動き」はあるか - 新宿会計士の政治経済評論

実際、年末年始の時期には、なにかしらの「事件」が生じることもあります(しかも、たいていの場合、その「事件」は隣国に関わるものです)。

たとえば、2015年12月28日には、日韓外相がいわゆる「日韓慰安婦合意」を取り交わしました。

また、翌・2016年12月30日には、釜山の日本総領事館前の公道上に、ソウルの日本大使館前に設置されているのと同様のタイプの慰安婦像が設置されるという「事件」もありました。

さらに、2017年12月26日には、「慰安婦合意検証タスクフォース(TF)」が、日本政府の了解なく、外交機密文書を勝手に公表するという珍事が発生しています。

ほかにも2018年12月28日には、同20日に発生したとされる韓国海軍駆逐艦による火器管制レーダー照射事件に関連し、日本の防衛省がレーダー照射事件当日のP1哨戒機からの映像を動画サイト『YouTube』にて公開する、という出来事もありました。

このように、年末年始といえば、日本では休日でありながらも、諸外国(たとえば基本的価値を共有していない隣国)との関係では、何かと話題となるような出来事が発生しがちですので、油断も隙もありません。

驚く?予想どおり?韓国外相の記者会見

さて、今年はどんな「珍事」が発生するのかと戦々恐々としていたのですが、日韓関係を巡っては、あまり大した話は出てきていません。

せいぜい、昨日はこんな話題があったくらいでしょうか。

日本が前向き姿勢を 元徴用工問題などで韓国外相

―――2021年12月29日15時40分付 時事通信より

時事通信によると、鄭義溶(てい・ぎよう)韓国外交部長官は29日の記者会見で、自称元徴用工問題などの日韓間の諸懸案を巡ってこんなことを述べたのだそうです。

日本がもう少し前向き、合理的な対応をしてくれることを期待する/歴史に関連した懸案はそんなに簡単に解決できる問題ではない/韓国政府は、被害者らとの対話を続けながら、現実的な案を日本側に提示し続けている」。

この発言を読んで、日韓関係に詳しくない人からすれば「驚いた」と思うかもしれませんし、韓国ウォッチャーの面々からすれば、「あぁ、予想どおりだなぁ…」、と思うかもしれません。

はたまた、「どうせ文在寅(ぶん・ざいいん)政権もあと4ヵ月で退陣するので、そんな政権の外交部長官の発言にさほどの重みはない」、などとスルーする人もいるかもしれません。

日韓の法的基盤が覆りそうになっている

ただ、いちおうマジメに突っ込みを入れておきますが、日韓諸懸案を巡って日本政府が「受入可能な解決策をまず韓国側が示すべきだ」とする姿勢で一貫しているのも、考えてみれば、当然の話です。

2018年に韓国大法院(※最高裁に相当)が下した一連の自称元徴用工判決は、1965年の日韓請求権協定を根底から覆すような状態をもたらしかねない危険性をはらんだものであり、このような判決を認めれば、日韓関係が法的基盤ごと破壊されかねません。

また、事態を重く見た日本政府は、日韓請求権協定に基づき、2019年1月には外交協議を、5月には国際仲裁手続を韓国政府に申し入れましたが、いずれも完全に無視されてしまいました。その意味で、「日韓請求権協定違反」は、韓国の裁判所と政府がともに作り上げてしまっているのです。

その意味では、韓国が国際法や条約、約束など国際社会の常識を守る方向に舵を切ってくれないことには、日本政府としては動きの取りようがありませんし、鄭義溶氏のこの日の発言自体も、日本政府の立場からすれば、とうてい受け入れられないものでしょう。

ちなみに、日韓間の諸懸案は、自称元徴用工問題だけではありませんし、最近だと「佐渡金山は韓国人の強制徴用が行われた現場だ」といった捏造に基づく言いがかりも展開されているようです(※この点については、可能ならば別稿にて取り上げたいと思います)。

もっとも、どうせ文在寅(ぶん・ざいいん)政権もあと4ヵ月で退陣しますので、そんな政権の外交部長官の発言にさほどの重みがあるとも思えません。

自称元慰安婦問題で「原罪は日本にある」

そして、自称元徴用工問題だけでなく、自称元慰安婦問題も、歴史問題としては深刻です。

こうしたなか、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)も、先ほどの時事通信と同様、鄭義溶氏の会見についての話題を取り上げているのですが、こちらの記事は自称元徴用工問題ではなく、自称元慰安婦問題のほうに焦点を当てているようです。

慰安婦問題 「柔軟な立場で日本を説得」=韓国外相

―――2021.12.29 14:48付 聯合ニュース日本語版より

聯合ニュースによると、韓国が日韓慰安婦合意を履行していない点を「原罪」だとした韓国野党議員の指摘に対し、鄭義溶氏は自称元慰安婦問題を巡って、次のように述べたのだそうです。

原罪がどこにあるかは皆さんがよく知っているのではないか/慰安婦問題は史上例のない戦時の女性の人権蹂躙であり、女性の基本的な人権を侵害した事例だ」。

要するに、自称元慰安婦問題の「原罪」は日本にある、というのがこの人物の認識、というわけです。

ここにはツッコミどころはいくつもあります。

そもそも「原罪」という意味では、韓国が国を挙げて自称元慰安婦問題自体を捏造したことそのものですが、それだけではありません。

「韓国が国を挙げて自称元慰安婦問題を捏造した」という点を除外したとしても、韓国が2015年の慰安婦合意を履行せず、約束を破ってしまったことに関しても、否定できない事実です。

これに関し、鄭義溶氏は「現実的に柔軟な立場を持って日本を説得し続けている」、などとしたうえで、慰安婦財団の残余金の扱いなどに関しても次のように述べたのだそうです。

日本は合意をそのまま守るべきだという立場をかたくなに維持しており、まったく進展していない/日本がより前向きに、合理的に対応することを期待している/多くの被害者が心から望んでいることは日本の真摯な謝罪であり、お金を求めているわけではない」。

端的に言って、お話にならない、というレベルでしょう。

誰がなっても前途多難

いずれにせよ、文在寅政権は、日韓関係を壊すだけ壊し、後始末をせずに去っていくであろうことは間違いないのですが、その一方で、後任の政権が日韓関係をどううまくマネージするか(あるいはマネージできないか)についても、個人的には興味津々、というものでもあります。

もっとも、正直に申し上げて、文在寅氏の後釜を誰が務めたとしても、日韓関係は前途多難です。

日韓諸懸案を巡っては、竹島不法占拠問題にせよ、自称元徴用工判決問題にせよ、自称元慰安婦問題にせよ、結局のところ、究極的には次の3つしか落としどころはありません。

日韓諸懸案を巡る「3つの落としどころ」
  • ①韓国が国際法や国際約束を守る方向に舵を切ることによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することによって、日韓関係の破綻を回避する
  • ③韓国が国際法や国際約束を守らず、日本も韓国に譲歩しない結果、日韓関係が破綻する

(【出所】著者作成)

いちおう、日本政府が求めているのは上記①ですが、これまでの韓国の行動に照らし、韓国が国際法や国際約束などを誠実に守るということが期待できるのかどうかは、読者の皆さまもご高承のとおりでしょう。

残る2つの選択肢のうち②については、最近だと自称「保守論客」界隈でも支持する意見が出てきているようですが、これなど当ウェブサイトにいわせれば「木を見て森を見ず」、だと思います。

いずれにせよ、来年は3月に大統領選が行われますので、日韓関係がどうなるのかを含め、注意深く見極めるべき局面が到来しつつある、という言い方をしても良いと思います。

ただ、さしあたっては、年末年始で日韓関係に何らかの動きがあるかどうか、年越し倍ビッグハンバーガー・ポテトフライ大盛りセットでも食べながら。見守るのも良いかもしれません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

なお、今年は全国的にジャガイモ不足が指摘されているようですが、日本のごく一部において、新たな風物詩となりつつある年越しポテトフライに救世主が出現した、という話題もあります。

フライドポテト不足に救世主、米物流会社がジャンボ3機で緊急空輸

―――2021年12月29日 14:30 JST付 Bloombergより

このあたりも同行が大変にきになるところであると思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (70)

  • >「日本がもう少し前向き、合理的な対応をしてくれることを期待する/歴史に関連した懸案はそんなに簡単に解決できる問題ではない/韓国政府は、被害者らとの対話を続けながら、現実的な案を日本側に提示し続けている」。

    「韓国政府が、無能だから国内問題を解決する事が出来ません」と言ってるだけでしょう。
    選挙を控えて長官の妄想発言より、次期大統領候補の発言の方が、深刻になるんじゃないかなぁ。

    >このあたりも同行が大変にきになるところであると思う次第です。

    自分では食べませんが、行列が解消されるかどうか、動向が気になりますね。訂正するニダ。

    • だんな様

      この外相の言ってる文言の単語一つ一つ全てが全く理解できないままのくるくるさんの発言だとしか思えません。

      単なる語彙の羅列ですよね?

  • 問題の根源は、韓国民が①事実を確かめようとせず、信じたい”こと”(嘘でも良い)を信じ、事実と主張すること②合意・約束といった客観的な事柄よりも、善悪といった主観的なことを上位に置くこと③じゃんけんですら負けてはいけないという対抗意識、にあります。従って、反日左派政権になろうと、用日右派政権になろうと、日韓関係は当面改善することはありません。今回の韓国外相発言も、国内向けとすれば、そんなものでしょう。我が国としては、一貫した立場に基づき、粛々とテーパリング(段階的縮小)を進めましょう。

    • 同意ですね。
      韓国世論がこういった価値観で外交を左右させているんですから、尹大統領が誕生したとしても条約遵守の行動を取れるとは思えません。むしろ朴槿恵や末期の李明博のように支持率のためにアホな真似をする可能性が高いです。ハードルは上がりに上がりまくってるんですから。
      まあ米韓同盟の修復をしたり対中包囲網に爪先だけでも突っ込んだら米国から韓国に日韓問題介入というご褒美が出るかもしれないのでその辺は先手を打っておく必要があるでしょう。
      李在明が当選したら文外交の焼き直し、season2になるでしょうね。こちらは既定路線、韓国をどの"運命"に突っ込ませるかを覚悟する必要があります。

  • 日々の韓国ネタにサプライズは無いものの、国内用日派の心配もあるし、腹が立たないわけではないのでウォッチはしてしまうんですよね。
    ただ、コメント力の低い私は毎回同じようなコメントになっちゃうので、書きづらいのはありますが。

  • 慰安婦問題の現在は、当時、稼ぎのために慰安婦になった彼女たち自身、または娘をそうした親たちにあるでしょう。

    「原罪」などという宗教語まで持ち出さないと、日本への反論ができない彼ら(韓国)の異常性を強く感じところです。

  • >日本は合意をそのまま守るべきだという立場をかたくなに維持しており、まったく進展していない

    何のことはない、彼らが「真実でないのなら『何故に謝罪し認めたのだ(河野談話ほか)』」と宣うのと同じことです。

    *彼らにしても「納得してないのなら『何故に合意(請求権協定・慰安婦合意)に至ったのだ』」ってだけのことです。

  • >韓国軍が非公開で竹島の防衛訓練 韓国メディア報道、日本は抗議
    昨日の報道ですがあんまり取り上げられてないですね。
    まぁいいかげん、遺憾砲の空砲じゃ誰も驚きませんね。

  • 結局のところ、韓国政府の言う『慰安婦問題は史上例のない戦時の女性の人権蹂躙であり、女性の基本的な人権を侵害した事例』という日本軍慰安婦問題とは何か?となった時、「日本軍が朝鮮半島で朝鮮系日本臣民の女性を徴用し、慰安所へ連行し、売春を強制した」って内容なら『慰安婦問題は史上例のない戦時の女性の人権蹂躙であり、女性の基本的な人権を侵害した事例』と言えるでしょうが、其れが嘘なのは歴史的事実から明らかな訳です。

    理性的な国家であれば既に訴えを取り下げているのでしょうけど、引くに引けなくなった韓国政府は嘘を主張し続けていて、ホント「頭が悪過ぎる」なぁと。

    『ウソってのは、そういうものなんだよ。ウソをつくだろ。それがばれそうになって、誤摩化すためにまたウソをつく。ウソがどんどんふくらんで、手におえなくなるんだ。』ってスネ夫の台詞、韓国政府や韓国民達に贈る言葉ですね。

  • もう、この問題にまともにコメントする気にもなりませんが、
    「犬・猫」の躾けには、褒美と鞭が必要なのですが、今までの自民党及び外務省は「一切、鞭を使っていない」のが、この問題を繰り返させる原因。

    と言っても、あからさまな「鞭」は下手に使うと在韓日本企業に悪影響が及ぶので
    政府及び外務省がすべきは「条約・約束を守らない・嘘つく国」韓国の明確な外交上の格下げ。

    韓国関連に関し、首相・官房長官・外相は一切コメントせず、大統領発言には局長、外交部長官には担当課長が口頭で抗議・コメントするのが第一歩。

    別のスレッドにも書きましたが、
    国際機関からの韓国関係者の徹底的な排除(条約を守らない・約束を守らない・嘘つきなので信用できない。相応しくない等の理由で)。

    ”日本は敵国”発言などに関しては、正式な謝罪&訂正がある迄、李大統領候補の入国拒否。

    次は、ビザ免除国除外継続、竹島上陸者へのビザ発行拒否。
    更に、韓国芸能人へのビザ発給拒否。(自民党の腐臭漂う議員が邪魔するかも)

    これが、非韓三原則(教えない・助けない・関わらない)+テーパリングへの道と思う。

    • 農家の三男坊様

      全く同意です。

      世界は今コロナ禍との対決や復興・大国同士のパワーバランスの激変・韓国の言う低レベル過去の似非人権問題どころじゃない民族浄化レベルの人権問題・気候変動にも関連する気象異常・地震火山活動活発化による自然災害の多発・経済の大転換期等々で劇的に変化し大混乱中。

      韓国だけ異星の生物のようです。

      ばかばかしくて相手するだけ無駄だと思います。

      彼らの言う言葉をそのまま返し、滅びろと本気で思っています。

      人類はそれどころじゃない大転換点なんだ!

  • 韓国外相の発言になど一銭の価値もないというのは、別に今に始まったことではありません。相手国から同趣旨の発言がない限り、全部聞き流しても何も問題はありません。
    まあ、4年半の間、何一つとして肯定的な成果が上げられず、むしろ失点ばかり重ねた文在寅政権としては、「ボ、ボクたちはこんなに頑張ってるんだもん。成果が出ないのは相手が悪いんだもん」と言いたいだけでしょう。あるいは、「自分たちはこれほど正しいのに、受け入れられないのは、相手が間違っている or ロビー活動に屈している」くらいかも。

  • 要約すると「韓国は、韓国が約束を守らない合理的な提案をしているのに、日本が約束を守れと言っているから解決しない。」ですかね。

    •  韓国の宗教家の言葉ですが、『日本人はルールを一つ守れない韓国人をバカにする』と。これ、言い換えれば、韓国人は日本人がなんと言おうと、ルールなんかに縛られないニダ!、ルールってそんなに美味しいのか?と。
       もう、国家の交流なんてあり得ません。

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