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「受け皿」としての日本維新の会と来夏の参院選の動向

衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ、というのが、当ウェブサイトの以前からの仮説です。こうしたなか、少し気が早いのですが、財務省べったりの岸田文雄首相が率いる自民党政権に来夏の参院選で有権者がどんな審判を下すのか、個人的には、そろそろ気になり始めています。

衆院選の敗者

10月31日に行われた衆院選で、自民党は公示前勢力から15議席減らしたとはいえ、依然として261議席という、「絶対安定多数」にほぼ等しい議席を獲得しました。連立を組む相手である公明党が29議席から32議席へと小幅ながらも躍進したため、結果的には両党あわせて293議席に達しました。

これに対し、最大野党である立憲民主党は、公示前勢力を13議席減らし、96議席と「100議席の大台」を割り込みました。日本共産党が地味に12議席から10議席へと勢力を後退させたため、両党合わせて議席数は15議席減った計算です。

これがまさに、『衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ』でも申し上げた、「最大の敗者」という議論でしょう。

今回の総選挙、最大の勝者は、おそらくは議席を4倍近くに伸ばした日本維新の会であり、また、事前に惨敗を予想する意見も見られた自民党も、議席数は15議席減で済んだという意味では、「勝者」といえるかもしれません。一方の敗者はいったい誰なのか。「立憲共産党」と揶揄された野党共闘にも関わらず13議席減らした立憲民主党もさることながら、やはり最大の敗者は、新聞、テレビを中心とするオールドメディアではないかと思うのです。2021/11/01 10:15追記図表に注記を追加しています。オールドメディアさん、予測はどうでしたか?...
衆院選での敗者は「立憲共産党」とオールドメディアだ - 新宿会計士の政治経済評論

日本維新の会の躍進と時事通信記事

ところで、自民党、立憲民主党、日本共産党の3党が合計で30議席を減らしたのですが、今回の選挙で11議席から41議席へと、ちょうど30議席分、勢力を増やしたのが、日本維新の会です。

もちろん、自民党と立憲民主党と日本共産党から日本維新の会に議席が渡った、という意味ではなく、前3党が減らした議席数と日本維新の会が増やした議席数がたまたま一致したというだけの話ですが、それにしても象徴的な現象でしょう。

事前のメディアの報道だと、立憲民主党は勢力を30議席程度は増やす、などとする予測がまことしやかに報じられていましたが、実際に30議席増やしたのは日本維新の会だったのであり、新聞、テレビなどのオールドメディアの調査がいかにあてにならないか、という証拠であるように思えてなりません。

こうしたなか、なぜ日本維新の会が躍進したのかに関し、関西学院大の教授が執筆した論考が、時事通信に昨日掲載されていました。

日本維新の会が議席を増やした本当の理由

―――2021年11月23日付 時事通信より

詳しくは読んでいただければと思うのですが、ごく大雑把にいえば、「コロナ禍が招いた自民党への拒否意識に対する受け皿」、というものであり、それについて世論調査の結果などの分析なども踏まえつつ、「全国的にも、そして関西でも、維新支持は決して盤石ではない」としています。

この点、正直にいえば、論考の根幹部分でメディアの世論調査などを使っている部分もあるため、いまひとつ、論考としての信頼性に欠ける部分があることは否めません。

(※ただし、「なぜメディアの世論調査を全面的に信頼すべきでないのか」については、当ウェブサイトでは『立憲・共産党の年代別支持層は70歳以上が最多=産経』などでも繰り返し述べてきたとおりですので、ここでは割愛します。)

衆院選で「立憲共産党」が敗北したことは、社会のインターネット化とも密接な関係がある、というのが当ウェブサイトの以前からの仮説です。こうした仮説を裏付けるかのように、産経ニュースには昨日、立憲民主党の支持層が高年齢層に偏っているとの調査結果が掲載されていました。新聞、テレビなどのオールドメディアの社会的影響力が衰退するのも時間の問題です。世論調査でも日本維新の会が大躍進!昨日の『政党支持率で立憲民主党と日本維新の会の「逆転」も?』でも取り上げたとおり、当ウェブサイトでは6つの世論調査(読売新聞...
立憲・共産党の年代別支持層は70歳以上が最多=産経 - 新宿会計士の政治経済評論

維新の強さの理由は「受け皿需要」

ただ、結論的に言えば、「自民でもない、立憲民主でもない」という意味での、有権者にとっての「受け皿」として維新が選好されているのではないか、という仮説の部分に関しては、当ウェブサイトとしても賛同する部分でもあります。

当ウェブサイトなりの仮説ですが、立憲民主党がメディア予測に反し、議席を減らした理由は、「もりかけ」「桜」などのスキャンダル追及を専門とする立憲民主党に少なくない数の有権者が違和感を抱き、また、コロナ禍の恐怖を過剰に煽るメディアに対する不信感もあいまったものではないかと考えています。

ただ、立憲民主党は、依然として最大野党としての地位を保持してはいますが、その理由は、日本共産党などとの野党共闘により、選挙区における候補者調整に成功したことで、堅調に選挙区での議席を獲得したことなども寄与したのではないでしょうか。

実際、選挙区と比例区における獲得議席数は次のとおりでした(図表)。

図表 各政党の獲得議席
政党 選挙区 比例区
自民党 189 72
公明党 9 23
立憲民主党 57 39
日本維新の会 16 25
国民民主党 6 5
日本共産党 1 9
れいわ新選組 0 3
社会民主党 1 0
無所属 10 0
合計 289 176

(【出所】総務省『選挙関連資料より著者作成』)

立憲民主党は比例区で日本維新の会を上回り、1.6倍の議席を獲得しているのですが、選挙区では4倍近い議席を獲得しています。このこと自体、立憲民主党の選挙協力戦略がうまく行ったことの間接的な証拠といえるかもしれません。

来年の参院選は?

いずれにせよ、今回の選挙は「有権者の自民党に対する不満」自体がオールドメディアにより作られた虚像だったのではないか、というのが個人的な感覚なのですが、それと同時に、「スキャンダル追及型ではない政党」が躍進したこと自体は、大変に良いことだったと思います。

いや、日本維新の会が「スキャンダル追及専門政党ではない」という保証はありませんし、これについては今後、私たち有権者がしっかりと見つめなければならない注意点であることは間違いありませんが、それと同時に、国会論戦を停滞させている政党が議席を後退させるのは悪いことではありません。

つまり、日本維新の会の躍進は、メディアが作り出した「自民党のコロナ失策」という虚像に騙された有権者が少なからずいたにも関わらず、それ以上に、メディアに騙されず、立憲民主党のことをちゃんと「スキャンダル専門政党」だと評価している有権者が多かったことでもたらされたものではないでしょうか。

現在の自民党政権は、前任者である菅義偉総理大臣と異なり、岸田文雄・現首相があまりにも財務省にべったりであるように見受けられること、近視眼的にさまざまな政策を誤る可能性があることなどを個人的には強く懸念している次第ではあります。

ただ、来年夏の参院選で自民党が「敗北」するにしても、少なくとも立憲民主党が躍進するようなことはないのではないか、というのが著者自身の現時点における希望的観測なのです。

新宿会計士:

View Comments (22)

  • 足立議員が橋下コメンテーターに噛み付いているのが本当なのか、プロレスなのか。
    あと、最近のタマキンは至極真っ当に見えるので場合によっては国民民主も有り。

  • 維新、まともに選挙戦を展開できる足腰有るのはいまだ阪神間と泉州くらいまででしょう
    国民民主、代表からよくブレる印象もあり、この先どうだか

    早速林外相が中国に呼びつけられている様ですが、さてどうなりますやら???

    • 引っ掛かったオタク 様
      外相訪中には髭の隊長が早速釘を刺したようですが、林氏は行く気満々のように見えます。
      どうも岸田政権は媚中の疑いが消えません。

  • 保守中道~右派の受け皿政党があってもよさそうなんですが、
    ここらあたりの力が弱くて、銭の問題?
    左~右迄丸ごと抱え込む自民党が強すぎて、誰も作りはしない。
    維新や国民民主党が中道左派になれれば、無党派層のよい受け皿になるのですが
    維新は差別団体だし(うまく隠している)、国民民主党は赤に近いピンクだし、
    他はね~。 真っ赤と宗教団体だし、ところで宗教団体が政党(政治団体)を持つ事って
    禁止じゃなかったんですかね~。 持つ事が許されるなら、何故他の宗教団体が
    政党(政治団体)を設立しないのかが解りません。(あそことか、あおそことか、
    オームじゃなくてアーレフじゃないですよ)

    • ちょろんぼ 様
      形の上では学会とは別と言う事なんでしょう。
      宗教団体たる創価学会が、政党である公明党を応援してるだけで、公明党は創価学会政治部じゃないんですよ。知らんけど。
      他の宗教団体も各々政党を支援してますから、別人格なら良いんじゃありませんか。
      唯一宗教と政治が合体してるのは、開祖丸楠を信奉する共産教の共産党だと思います。

  • 岸田は、近視というより、永田町周りしか見てない感じ
    総理大臣になることが目的で、国家観もやりたいこともない

    もう、総理の椅子には2月も座ったんだから、十分だろう
    さっさと辞めてくれと思っている

    • 総理大臣に、あまり独自の国家観持たれても困ること多いけどね
      別ベクトルの共産主義者やみたいなものだから
      野党とか党内非主流派なら、共産主義者やその類似が多少いても良いけど

  • 来年の参議院選挙においては維新は左右どちらにも組せず、反東京一極集中を展開させれば関西圏のみならず首都圏以外のかなりの浮動票を獲得できるかもしれません。加えて関西圏の支持者には「関西の逆襲」を押し出すと票が取れます。
    今まであまりにも永田町や霞が関の官僚達がそれぞれムラを作って国全体を牛耳っていことの弊害と不満がコロナ禍を機に一気に噴出したことの裏返しでしょう。
    また、
    立民だけでなく岸田総理も党内改革を政治目標に掲げていますが、少しおかしくありませんか。党内改革って、それアンタの都合であって国民には関係ありません。自分らの内部事情があたかも日本全体の政治目標であるかのように勘違いしているとしか思えません。

    • 匿名29号 様

      >立民だけでなく岸田総理も党内改革を政治目標に掲げています

      総裁としての仕事と、総理の仕事の区別が付いてないからですが、自民の場合は政権与党ですから、国民生活に間接的には影響があるんでしょう。まだ判らなくもありません。
      立民の場合は野党ですから、党内がどうなろうと国民生活に影響なんてありませんわね。
      しかし、党代表選で他党の悪口を言うのが所信表明、という程度の党ですから、言ってもダメでしょうね。

  • 大阪で大阪維新が強いのは、既得権益と戦いボロボロの財政を立て直して、自らの給与やボーナスを下げて、財政赤字なのに日本でも高級取りの大阪の公務員の給与を下げたこと、それまでは市や府の職員が市長や知事と組んで応援して通れば給与や待遇をよくするということが続いていたのを断ち切ったこと、天下りなども大阪はできにくい仕組みを作ったこと
    高齢者に優遇するところを少し削って中学校の給食の実施や私学の高校の無償化などを行っていたことを知ってるからです
    橋下さんはあっさり政治家を辞めましたが、年収が5~10分1以下になり、命を狙われるほど既得権益者から恨まれていますから、それは辞めてしまいます、本来、政治家がそんなにおいしい仕事であったり代々続けるような仕事ではなく名誉職だと思いますので、政治家であることで大きな家を建てたり資産をためたりするのはおかしいのだと思います。
    松井市長も本当は、はやく辞めたいのだろけど中々辞めさせてもらえない感じですね、長くいても退職金もないのですから
    同じような感じで日本中で人が集まれば日本維新もいいのかもしれませんが、中々いい人が集まらず、議員になると不祥事を起こす人が多くでてイメージが悪いですね、とりあえず、ここは立憲民主が党首交代でグダグダになったら、その地域ではすごく強い議員を一本釣りで維新に取り込んでいくのがいいのではないかと、早く第2党になって参議員でも多くを取ってほしいです
    ただ政権を取るところまではまだ全然考えないので、自民党のできないところ等をどんどん突っ込んで是々非々で政策を進めて、大阪のようにまず議員が給与面や人数などで身を切って公務員の優遇面や天下りなど、既得権益にもメスを入れていければいいと思っています、完璧は無理と思いますが、少しでも進めてほしいです、維新が言っていた5%の消費税減税も進めてほしいです、今のままでは、貧困補助と倒産を遅らせるのに資金を使うだけで、ろくな経済対策もないまま、そのうちに増税されてい日本はボロボロになります

    • 賛成です。
      かつて、自民と民主の2大政党時代を期待しましたが、あまりに民主の政治能力が低いのと、下野した後の揚げ足取りの立件ぶりに失望しました。
      かくなる上は自民東京に対して大阪維新の2大政党時代を築くべく頑張ってほしいです。

    • のぶくん 様
      維新が大阪で強いのは、市会議員や市長を取って「実際に」政治をやってるからだと思います。国民(府民?)はそれを視て評価してると思います。
      選挙の際にはそれらの議員や市長が実働部隊となりますから、当然足腰も強くなってると言う事です。
      なので、国政レベル議員の一本釣りみたいな、昔ながらの手法ではなく、大阪以外でも市会議員・市長を抑えて、地道に勢力を広げるべきでは無いでしょうか?
      自民が強いのも、地方で議会や首長を抑えているからで、口先だけの立民とはそこが違うのだと思います。

  • 維新の改革は自分の骨を切らせて相手の肉を断つ〜。
    仕事やってる感を出すのがお上手ですが何もしない立憲民主よりは幾分マシですね。

    維新さんは都構想の頓挫で府と市の二重行政の解消に失敗したので今度は国と地方の二重行政を目指しているのかな。

    お酒ばかり飲み全く働かない大阪の公務員を敵に見立てて支持を集めた政党ですので、ラウンド2段目は中央官庁を仮想敵に設定して支持を集めるつもりでしょうか。
    働かない議員集団の立憲民主にターゲットを絞っても支持を集めれそうですね。

  • 参議院議員選挙はまだまだ先で、鬼が笑う話だと思います。
    まずは、岸田自民党を良く観察して、立憲共産党がどうなるかだと思います。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、素人が舞い上がってしまうので)
    (維新だけではありませんが)来夏の参院選での一つの争点は、対中関係の基本方針をどうするか、そこから波及した対米関係、それから対韓国関係の基本方針を問われることになるのではないでしょうか。ここでの問題は、相手が外国政府なので、日本国内の事情や(憲法も含めた)国内法に、相手が縛られないことです。そのため、各政党の能力が問われます。
    蛇足ですが、次の選挙で維新がどうなるかは、野党第一党の立憲の新党首が誰になるのか、そして、どんな選挙戦略で臨むのかが、大きな要素になるのではないでしょうか。
    駄文にて失礼しました。

    • すみません。追加です。
      日本に、高齢者の票を捨てても、若者の票を確実にとりにいく政党が出てきても、よいような気がします。

  • まだまだ武漢肺炎がこの先どう展開するかわかりませんし、今のところ岸田総理も安全運転に徹しているようなので、現時点で来年の参院選を展望するのは難しいですね。先の衆院選でも、自民党が大勝したというほどのこともなく、立憲共産党の自滅だったので、「バランスを取るべきだ」などと賢しげに言う連中も発生しなさそうな感じがします。
    まあ、この先春ごろまでの間に政治判断を求められる局面がいくつかありそうなので、それを見てから考え始めても良さそうじゃないかなと思います。

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