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言論NPO調査:日本人の9割超が中国に否定的な印象

以前からしばしば当ウェブサイトで話題に取り上げるのが、特定非営利活動法人言論NPOが実施する世論調査です。言論NPOは昨日、日中共同世論調査を発表しました。これによると、日本側で中国にネガティブな印象を持っているとする回答が9割を超えたようです。また、これに関連し、杉山晋輔・前駐米大使は、「抑止だけでなく対話も必要」と述べたのだそうですが、言い換えれば、「対話だけでなく抑止も必要」、ということではないでしょうか。

言論NPOが世論調査を公表

以前の『言論NPO調査から見えるのは「日本の対韓無関心」?』などを含め、当ウェブサイトではときどき、「特定非営利活動法人言論NPO」(以下「言論NPO」)が実施する調査を紹介することがあります。

俗に、「好きの反対は無関心」、といわれます。特定非営利活動法人言論NPOが昨日公表した、韓国のシンクタンク「東アジア研究院」と共同で実施した世論調査を眺めてみると、日韓世論の「すれちがい」もさることながら、日本側の韓国に対する「無関心」という実情が透けて見えるのです。言論NPOの世論調査「特定非営利活動法人言論NPO」(以下、本稿では「言論NPO」)は韓国のシンクタンク「東アジア研究院」と共同で、日韓両国民を対象とした世論調査を毎年実施しているそうで、当ウェブサイトでも2年前の『好きの反対は...
言論NPO調査から見えるのは「日本の対韓無関心」? - 新宿会計士の政治経済評論

言論NPOという組織自体、特定の思想傾向を持っているのではないか、といった指摘もあるのですが、ただ、同団体が発表している調査は調査として、興味深いところがあれば紹介すれば良い、などと思っている次第です。

こうしたなか、言論NPOは昨日、もうひとつ、興味深い調査結果を発表しました。日中共同世論調査です。

中国国民の日本に対する意識が、この一年間で急激に悪化したことが明らか

―――2021年10月20日付 言論NPOより

調査に協力したのは日本側が輿論科学協会、中国側が零点研究コンサルティンググループだそうです。

リンク先の記事を読むためには、ログインが必要です。本稿ではリンク先記事が会員限定であるという点を尊重し、全文を引用するのではなく、気になった部分をいくつか紹介するという形を取ります(全体を確認してみたいという方は、各自、言論NPOへの会員登録をお願いします)。

なお、内容自体は「有料会員」ではなく、「無料会員」でも読めるようであり、メールアドレスと自身の姓名、職業などを入力すれば会員登録が可能であるようです(登録方法の詳細については言論NPOウェブサイトでご確認ください)。

日中、意識はお互いに低調

さて、今回の調査で個人的に興味深いと思ったのは、「相手国に対する印象」、「現在の日中関係は良好かどうか」、「現在の日中関係が重要かどうか」、「相手国に行きたいか」、という4点の質問です。その結果が、図表1のとおりでした。

図表1 日中世論調査(抄、カッコ内は2020年調査からの変化)
選択肢 日本 中国
相手国に良い印象を持っている/どちらかといえば良い印象を持っている 9.0%(▲1.0) 32%(▲13.2)
相手国に良くない印象を持っている/どちらかといえば良くない印象を持っている 90.9%(+1.2) 66.1%(+13.2)
現在の日中関係は良い/どちらかといえば良い 2.6%(▲0.6) 10.6%(▲12.0)
現在の日中関係は悪い/どちらかとえいば悪い 54.6%(+0.5) 42.6%(+20.0)
日中関係は現在重要である/どちらかといえば重要である 66.4%(+2.2) 70.9%(▲3.8)
日中関係は現在重要ではない/どちらかといえば重要ではない 4.5%(+0.4) 24.4%(+15.1)
相手国へ行きたい 24.2%(+1.9) 37.7%(▲8.2)
相手国に行きたくない 75.5%(▲2.0) 61.7%(+8.8)

(【出所】言論NPO公表物より著者作成)

これらの調査結果から浮かび上がるのは、日中双方で「相手国は重要だ」と考えているものの、両国関係は良好とは言えないと考えており、かつ、相手国に対しても良くない印象を持っている、という点においては、日中で認識が共通しているという状況です。

相手によくない印象を持つ人が圧倒的多数

とりわけ面白いのは、相手国に対して「良い印象を持っていない」と答えた人の割合が、中国では66%と、約3分の2程度であるのに対し、日本では9割を超えている、という点でしょう。

俗に「中韓両国では反日感情が強い」、などといわれることもありますが、少なくとも日中間に関していえば、日本の方が、相手国に対する悪印象が上回っているようなのです。このあたりは、個人的には意外な気もします。

もっとも、この調査結果自体、今年2月に内閣府が公表した『外交に関する世論調査』の内容とも整合します(図表2)。

図表2 中国に対する親近感

(【出所】『外交に関する世論調査』より著者作成。ただし、2020年度に関しては調査実施方式が異なるとして、原文では前年との比較はなされていない)

対話だけでなく、抑止も必要

一方、言論NPOはこんな記事も掲載しています。

「なぜ今、中国との対話が必要なのか」識者3氏が語ります

―――2021年10月07日付 言論NPOより

なぜかサブタイトルに『第9回日韓共同世論調査の読み方』とありますが、記事には韓国の話はほとんど出て来ません。

「識者3氏」のうちの1人は、前駐米大使の杉山晋輔氏です。インタビューの途中には、こんな要約もあります。

抑止だけでなく、対話によっていろいろなものを積み上げていく努力が重要」。

この点は、まさに正論でしょう。どんな相手国であっても、「抑止だけではなく、対話の努力は必要」です。

ただし、勘違いしてはならないのは、中国との間では、対話だけで緊張を緩和することは難しい、ということを、おそらく杉山氏が否定したわけではない、という点でしょう。言い換えれば、「対話だけでなく、抑止も必要」、という意味でもあるのだと思う次第です。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

個人的には、この手の調査を読んでいつも抱くのが、基本的な価値を共有している相手国でもない中国との、経済、産業上の重要性をここまで高めてしまったことを失敗だと感じないのか、という点への違和感です。

相手国が日本にとって信頼できない相手なのであれば、相手国と対話を積み重ねて信頼を増すという努力もたしかに必要ですが、もっと基本的には、相手国そのものの経済、産業上の重要性を落とす努力も必要ではないでしょうか。

新宿会計士:

View Comments (11)

  • 『抑止ではなく対話を』と述べていないので、抑止が必要なのは認めているって事ですね。

    中共や習近平皇帝が『言えば分かる』なら戦狼外交なんてしなかったでしょうし、やはり『暴力を背景にした話し合い』をする段階なのでしょうね。

  •  中国政府(中国共産党)と中国人民は分けて考えるべき(例えば、ポンペオ前米国国務長官が主張)というのは、中共を攻撃する大義のための方便に過ぎない。中国人民が今の政府を生み出したことを考えれば、中共は悪で中国人民は善というのは構図を単純化し過ぎている。もし中共が倒れたとしても、歴史を鑑みれば、次の政府が我々日本人の価値観から見て善良になるとは考えにくい。
     これを前提に考えると、日本人は中国に対して、前世紀のようなお人好しの隣人であリ続けるという間違いを犯してはならない。なので、心情的な距離を置いた今のタイミングで相手を良く分析して、適切な距離を置いた付き合い方が出来るようになれば、と思う。
     これは韓国も同じ。両国とも価値観が異なり、我々日本人には理解不能であることを体感したことが、この百年の教訓ではないだろうか。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、素人が舞い上がってしまうので)
     識者の「中国との対話も必要」は、「対話をするために、中国への譲歩が必要」という意味ではないでしょうか。(そもそも、日本の(自称)識者は、往々にして、「手段が目的になり、本来の目的が失われる」ことをしでかすものです)
     蛇足ですが、日本の(自称)識者は、「愚民に、自分の権威を疑われること」を、何よりも許せないものではないでしょうか。
     駄文にて失礼しました。

    • すみません。追加です。
      (井沢元彦(著)の「逆説の日本史」の世界ですが)日本の(自称)識者は、話し合い万能信仰者なので、話し合いで解決できない問題があることを認められないのではないでしょうか。
      駄文にて失礼しました。

  • 中共の日本への好感度が低いのは当然の事であり、特に問題にするような
    事ではありません。 何とか半島諸国のように、幼・保~ず~っと日本が
    悪い国。我が国に対しひどい事をしたあくどい国だと教育しているのですから。
    逆に問題となるのは、日本が中共・何とか半島諸国に悪い印象を持つ事です。
    日本は中共・何とか半島諸国のように、中共・何とか半島諸国は悪い国だと
    教育しません。 逆に中共・何とか半島諸国は良い国だとか、隣の国
    なのだから、仲良くしないといけないと教育されているのです。
    ましてや、TVを始めとするマスコミが中共・何とか半島諸国はスバラシイと
    毎日報道等を行っているのです。(イラナイのに)
    その日本で中共・何とか半島諸国に対し悪い印象を持つ事は、何故そうなったのかを
    考える必要があります。

    • 個人でも、自分を嫌っている人を嫌いになるのは当たり前

  • 大陸中国本土や台湾・香港・東南アジアから南米やアフリカや中東にも在日の各国の方にも友達は沢山いるしいい仲間。

    だけど歪んだ教育(日本にもある)や論理的思考や宗教の影響下にある方々とは意志疎通不可能に近い。
    人生限られた時間の中で彼らを説得しながら話し合うのは無駄だとさえ思う。
    そんな無駄時間あったら新たな友人と知り合う時間にあてるべき。

    建設的な時間を私は過ごしたい。

  • 正直、中国に関しては、人口が多いのと、色々な格差が激しいので、
    標本数 1600 くらいでは、中てにならないですね。

    もう、一桁くらいは欲しいです。

  •  中国に対して良い印象を持っている人が9%しかいないにもかかわらず、24%の人が中国に行きたいと答えているのは一体何なんですかね?
    私だったら良い印象を持っていない国には行きたいとも思わないのですが、怖いもの見たさってやつでしょうか。