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インドネシア高速鉄道建設コストが「順調に膨張中」?

日本が人口減少するなかでありながらも、一定の経済力を保ち続けている理由は何なのか。日本経済が復活するために必要なことは、何なのか。こうしたことを考えるキッカケとなり得るのが、外国における信義則違反という事例でしょう。当ウェブサイトではこれまで不定期に取り上げて来た「信義則違反」の典型例が、インドネシアにおける高速鉄道輸出案件に関する同国の不義理です。こうしたなか、同国の高速鉄道の建設費が膨張しているという話題も出て来たようです。

アジア諸国の経済力

インドネシアといえば、昨日の『インドネシアと更新「スワップ外交」に死角はないのか』を含め、当ウェブサイトではしばしばご登場いただいている国のひとつです。

事実上の「三角スワップ」になっていませんか?本稿は、ショートメモです。日本の財務省は本日、インドネシアとの通貨スワップ協定を延長したと発表しました。引出上限金額・引出可能通貨といった条件は従来とまったく変わらず、日本は引き続き、アジア6ヵ国との通貨スワップ協定をそのまま維持しています。一方、中国との為替スワップについては今月25日に失効します。日尼通貨スワップの更新財務省は本日、日本とインドネシアが従来の通貨スワップを延長したと発表しました。日=インドネシア間の二国間通貨スワップ取極を改正しま...
インドネシアと更新「スワップ外交」に死角はないのか - 新宿会計士の政治経済評論

ただし、ご登場いただくといっても、「良い意味で」、とは限りません。

インドネシアといえば、東南アジア最大の人口を誇る大国であり、また、石油などの天然資源にも恵まれてはいるものの、非常に残念ながら、人口当たりGDPではフィリピンやベトナムなどと並んで低いというのが実情という国ではあります(図表)。

図表 人口(A)とGDP(B)、人口当たりGDP(B÷A)
人口(A) GDP(B) B÷A
インドネシア 2億7000万人(2020年) 1兆1191億ドル(2019年) 4145ドル
マレーシア 3270万人(2020年) 3408億ドル(2020年) 10421ドル
ベトナム 9762万人(2020年) 3406億ドル(2020年) 3489ドル
シンガポール 569万人(2020年) 3479億ドル(2020年) 61141ドル
フィリピン 1億0098万人(2015年) 3568億ドル(2019年) 3533ドル
タイ 6641万人(2018年) 5436億ドル(2019年) 8186ドル

(【出所】外務省ウェブサイト等を参考に著者作成)

もちろん、「1人当たりGDPの水準が低い」ということは、言い換えれば、「経済成長の余地がある」ということでもあります。

しかし、個人的な見解に基づけば、ある国が経済成長をするために一番重要なことは、その社会の「基礎体力」に加え、その国の基本的な生活態度(とくに「その国が、ちゃんと国際的な信義や約束などを守ることができるか」、など)による部分も大きいのではないかと思っています。

経済学の世界では、経済成長率は人口成長率(あるいは人口増加率)、資本成長率、技術成長率の合計値である、と、「事後的に」定義されます。

経済成長率=人口増加率+資本成長率+技術成長率

このため、人口増加率が高く、労働力人口で溢れているインドネシアに巨額の投資(=資本投下)を行えば、この経済成長率の公式に従い、莫大な経済成長が見込めるのではないか、とする意見を聞くことがあります。

しかし、残念ながら、経済はそれほど単純ではありません。経済成長率の第3項にある「技術成長率」が、実質的な経済成長を決めるという側面があるからです(※著者私見)。

少しだけ余談を述べておくと、日本の場合、「経済成長の3要素」のうちの1つである人口が減少に転じていることは事実ですが、人口が減っていても経済成長をしている国などいくらでもあります。

なにより、日本には諸外国がうらやむ資本と技術があり、そして社会全体で法の支配が貫徹しているという国でもあります。日本が人口減少をはねのけ、経済成長を維持することが可能な国だというのは当ウェブサイトで以前から述べて来た論点ですが、これについてはどこかで議論したいと思う次第です。

基本的な商慣習

商道徳、あるいは信義則

さて、とても当たり前の話ですが、日本社会では「ウソをつかないこと」、「他人を騙さないこと」などが、当たり前の価値観として受け入れられています。なぜ日本でこうした考えが受け入れられるかといえば、日本は「商道徳」を大切にする国だからではないでしょうか。

日本は江戸時代を通じて「潔さ」を重んじる「武士の国」であるとともに、商人も商道徳を培ってきました。近江商人の「三方良し」(今の言葉でいえば、自社、顧客、社会の全てを大切にする考え方)などは、その典型例でしょう。

日本が明治維新以降、産業革命を達成して飛躍的に発展した最大の理由は、すでに江戸時代から「商道徳」を大切にして来たからだと思います(※このあたり、異論は受け容れます)。

その一方、西洋の近代法の概念では「信義則」(英語で “the principles of good faith” )が重んじられます。これは、簡単にいえば、「悪いことをして儲けてはいけません」という考え方であり、日本の民法にも第1条も、次のような規定が設けられています。

民法第1条

私権は、公共の福祉に適合しなければならない。

2 権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。

3 権利の濫用は、これを許さない。

(※細かい話ですが、日本の法律では、第1項の冒頭に「1」という数値は付されません。数値が付されるのは第2項以降です。)

この民法第1条第2項にある「信義に従い誠実に」とする規定が「信義則」と呼ばれるもので、法学上は「西洋の考え方を取り入れたものだ」、などといわれることもありますが、ただ、この「信義誠実」と呼ばれる条項は、じつは江戸時代の商道徳の考え方そのものではないでしょうか。

信義則が軽んぜられる社会

ところが、世界各国を眺めていると、こうした「商道徳」「信義則」が通用しない場合があります。

べつにどこの国だとはいいませんが、たとえば「ウソをついても金を稼いだ者が勝ちだ」、「勉強・努力をしなくてもどこかから奪って来れば良い」、「ルールを守るのは社会の下層のやることだ」、といった社会も、大変残念なことに、たしかに存在するのです。

もっとも、これも私見で恐縮ですが、かりにこうしたインチキで急速な経済成長を果たした国があったとしても、「ウソをウソで塗り固めたような社会」だと、豊かな社会を維持していくことはできません。

だからこそ、日本は日本で、そうした「ウソをついても金儲け」という主義とは距離を置き、自由主義、民主主義、法の支配、人権といった基本的価値、「ウソをつかない」、「ルールを守る」、「努力する」、「困っている人を助ける」といった基本的態度を大切にしてけば良いだけの話でしょう。

さて、こうしたなか、いまから約4年前に、こんな記事がありました。

【インドネシア】残骸放置リスク拡大・ 中国高速鉄道に疑問の声! ジャカルタ―バンドン

―――2017年9月7日 15時30分付 GLOBAL NEWS ASIAより

リンクを示したGLOBAL NEWS ASIAの記事は、4行程度の短いもので、冒頭にこんな記述があります。

2017年9月7日、インドネシアメディアによると、中国に発注した高速鉄道計画(ジャカルタ―バンドン間・約140Km、2019年開業予定)について、計画自体を白紙に戻すべきだとの声が再び強まっている」。

インドネシア高速鉄道の遅延

この「中国に発注した高速鉄道計画」とは、『インドネシア高速鉄道案件とAIIBの現状』や『自業自得のインドネシアを見透かす日本外交』などでも取り上げた、例の「インドネシア高速鉄道」という話題です。

GLOBAL ASIA NEWSによれば、「計画自体を白紙に戻すべきだ」とする意見が出る背景には、「土地の収用が大幅に遅れている」、などの事情がある、としているのですが、そもそも中国がこのインドネシア高速鉄道案件を落札した時点で、計画自体にかなり無理があるという点は明白でした。

そもそも論ですが、中国が短期間で国土を張り巡らす高速鉄道網を作り上げたことは事実でしょう。

しかし、中国の高速鉄道は日本や欧州などの技術を移入して短期間で建造されたものであり、2011年には温州で高速鉄道の衝突・脱線・落下事故が発生するなど、運行面での安全性には、かねてから疑問符が付いています。

この点、リンク先記事では、こんな声も指摘も紹介されています。

中国は当初から、日本の新幹線をインドネシアが採用しないように妨害するのが目的で、きちんと高速鉄道プロジェクトを完成する気はなかったとの声も出ており、次回大統領選までに高速鉄道が完成する見込みはゼロ」。

高速鉄道、これからどうなる?

【参考】新幹線

(【出所】政府広報オンライン『新幹線の経済効果』)

インドネシア高速鉄道の資金不足

いまから4年前の時点で、すでにこういう声が挙がっていたというのは、なかなか興味深いところです。

こうしたなか、昨日はこんな記事も配信されていたようです。

高速鉄道、開通当初はワリニ駅を運用せず

―――2021/10/14付 NNA ASIAより

リンク先は『アジア経済ニュース(NNA ASIA)』というサイトで、今月6日付で公布された大統領令で、例のジャカルタ・バンドン間の高速鉄道の事業費の問題を解決するために「国費投入を認めた」、とするものです。

国鉄クレタ・アピ・インドネシア(KAI)によると、政府は同社に対し、4兆3000億ルピア(約340億円)の資金注入を決めた。国営企業によるKCICへの出資金に充てる」(※「KCIC」とは「インドネシア中国高速鉄道社」のこと)。

ちなみに同記事によると、このKCICには、インドネシアの国営企業4社からなるコンソーシアム「PSBI」が60%、中国の「北京雅万高速鉄路」が40%を出資しているそうですが、そもそもの高速鉄道の総事業費自体が当初の86兆ルピアから113兆ルピアに膨張するなか、4社に資金不足が生じているのだそうです。

インドネシアとの協力は是々非々で

さて、俗にインドネシアは「親日国だ」といわれることがあり、過去には経済界だけでなく、保守派の論客でも、「中国に『騙された』インドネシアに、何とか手を差し伸べてはどうか?」といった意見が散見されたことは事実でしょう。

ただ、本件に関しては、正直、あまりインドネシアには同情できません。

日本側が同国側に提案した「高速鉄道バンドンルート」のルート選定図、縦断線形図などを同国政府が中国側に漏洩し、結果として受注を巡り日中が争う形となり、最終的には中国側が「インドネシア政府の予算や債務保証なし」という破格の(というか国際常識から大きく逸脱する)条件で落札したからです。

しかも、今回の高速鉄道の建設予定地はそもそもが人口密集地帯であることに加え、地形的にも難工事が予想される箇所も多く、山岳地帯の工事ノウハウなどを豊富に持つ日本側と、そうでない中国側で、工事の進捗が大きく異なるのも当然といえるでしょう。

まずは「考え方」から変える必要があります

じつは、新幹線を含めた高速鉄道は、その全体がシステムです。線路を敷いて車体を相手に引き渡せばお終い、というものではないのです。

たとえば「台湾高鐵」の場合、鉄道システムは日本から移入したものの、分岐器、列車無線などを欧州から購入するなど、日欧混合システムとなっています。また、鉄道の予約システムが深刻なシステム障害を起こすなど、何かと不具合が生じています。

その一方で、国際協力機構(JICA)の説明によると、インドネシアの首都・ジャカルタでは、通勤鉄道は「環状線と4方向への放射線状」が運行されており、線路の総延長は150km程度です。

しかし、最近でこそ改善されたものの、かつては屋根の上に大量の人が乗り、人口密集地帯の鉄道でありながら、ホーム間の移動は地下道や跨線橋ではなく、直接、線路を歩いて横断させるというパターンが多いようです。

これに対し、日本の京成成田スカイアクセス線、JR西日本・新快速などの事例は、過密ダイヤでありながらも高速運転を実現しているという事例であり、そもそも安全で正確な運行の前提にあるのは、「社会全体でルールを決めてきっちりと守る」という態度です。

インドネシアは国際的な信義則を平気で破って中国と日本を競わせるような国ですから、「在来線の高速化は日本」「高速鉄道は中国」といった具合に、運行基準もてんでバラバラな各国のシステムを取り入れたところで、うまく行くはずがありません。

いずれにせよ、本件について日本は「様子見」で良いと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (53)

  • 免許取り立てかつメンテナンスできない経済力の人に、フェラーリやレクサスをあげてもしょうがない。「新幹線」以前に「新快速(130km/h)」を運用できるレベルにならなければ…

  • インドネシアとの関係ではオーストラリアも無視できないと思っています。

    オーストラリアから見るとインドネシアは隣国で、そこに日本の影響が浸透するのを地政学上の脅威と捉えていた可能性があります。

    隔世の感がありますが、今回の記事の出来事当時、オーストラリアと中国は貿易などで蜜月関係にあり、またオーストラリアの政治性向は大戦後一貫して反日です。

    ですので、インドネシアの信義則違反(国家関係にそんな概念を持ち込むのはナイーブかも知れませんが)は中国-インドネシア-オーストラリアの合作だった可能性を考えています。

    しかし、クライブ・ハミルトン氏の著した「目に見えぬ侵略」などの効果もあって、オーストラリアの政策はドラスティックに変化しました。脅威は日本ではなく中国だと認識されるようになりました。

    したがって、現在日本は、対中国にかこつけてオーストラリアと関係強化することが出来る立場にいます。オーストラリアをがっちり味方に引き込んだ上で、再度インドネシアに新幹線計画を持ち込めば良いと思います。

    心情ではインドネシアふざけんな、ですが、日本の最終的な国益が環太平洋国家群を含んだ拡張大東亜共栄圏構築にあるなら、インドネシアに対する影響力工作を継続する必要があると思います。

    • >Yohさま
       「反日」のオーストラリア・・・白い韓国人ですね。

       Web上の日本の話題・記事に、オーストラリア人を見かける割合が高いですね。たいてい「捕鯨反対」どうのこうのと叫んでますが。

       「目に見えぬ侵略」という書籍が考え方を変えたそうですが、普通に考えて中国のほうが脅威だとわからないのでしょうか。なぜなら中国から移民がたくさん来て、治安の悪化を肌で感じているはずですから。

       オージーの反日コメント、今でもしょっちゅう見ますから、人って簡単には変わらないものだと思います。

  • 日本に武士道があり、西洋に騎士道があり。
    洋の東西を問わず民主主義国家で発展する最低条件は、「商道徳」あるいは「信義則」なのかもしれませんね。
    インドネシアもこの価値観を共有できれば安定して発展できると思います。
    しかし、このような倫理観の無さが自国のレベルを引き下げ、小銭を惜しんでインフラをダメにしているので自業自得でしょう。
    そして、インドネシアが誠意を見せぬ限り日本は冷たい対応で良いのです。
    「商道徳」あるいは「信義則」を裏切る者には、それ相応の報いを受けるのもこれらの規範なのですから。
    規範に背いたら、相手国だけでなく周りの国からも信用失う、こういう縛りこそが価値観同盟であるべきでしょう。
    実例で言うならば、
    クアッドに韓国?約束破りの嘘つき国家は、どのような枠組みにも入れる余地はありません。
    TPPに中国?そもそも生きてる世界が違うってw
    ってことです。

    この話に関連して、フランスとAUKUSのイザコザも気になります。
    10月末の20カ国・地域首脳会議(G20サミットでどのような形になるのか。
    価値観の近しい国同士に相応しい結果となることを望みたいです。

    「フランス、対米関係修復で月内の成果求める」
    ロイター 10/7付
    https://www.google.co.jp/amp/s/jp.mobile.reuters.com/article/amp/idJPKBN2GX0AE

    • 私はフランス、スペイン、イタリアなどカトリックの国においては、「商道徳」あるいは「信義則」の意識は希薄では無いかと思っています。
      カトリック系の国は、私の印象では、「ご都合主義」です。
      「商道徳」あるいは「信義則」の意識は、プロテスタント系の価値観では無いかと思います。

      • 頓珍頑様 はるちゃん様

        私はアメリカ・イスラエル・フランス・中国は「商人」の国見だと思ってます。
        言い換えれば「拝金主義」の国かと。

        • がみ 様
          明治維新後、大阪が首都になってれば商人国家になってたと思います。東京が首都(そんなこと おへんえ)だから武士道を濃厚に受け継いだのでしょう。
          商人国家と言っても必ずしも「拝金主義」ではなく、信義則はあるのですけど、武士国家とは違う形になってたでしょうね。

        • ちなみに イスラム圏に武士道、騎士道相当のものはあるのでしょうか。あまり商人のイメージはなく 単なる宗教国家なのでしょうか。

          • 「亡国の民」というイメージで考えると、身に着けて逃げられるお金は大事で、しかも保護してくれる国家と言う後ろ盾が無いのですから、「書いたものがモノ言う」という大阪商人に近いイメージですかね。
            契約には煩いだろうなあというのは、「ベニスの商人」でも何となく判ります。
            自分に不利でも、書いた物には勝てないという諦めなどは、潔いとすら思います。

          • イスラムにはカトリックの教会のような組織は無く「教義」が主体となるので「教義」をどう理解するかが重要になるという話を聞いたことがあります。
            このため、イスラム教の規律が緩いインドネシア、厳しいイランやタリバンなど多様化しやすいようです。
            ただプロテスタントと同じく組織化されていませんので教義の解釈が多様で原理主義化しやすいのだと思います。

          • 書いたものにうるさいというのは なんとなくわかります。キリスト教もイスラム教も書いたもの(新約、旧約聖書 すなわち契約書)にうるさいのでしょうが 結局解釈によって ものすごいばらつきが生じてしまっているのが 現状の世界情勢ということでしょうかね。国際法も守らなくてよいというのが 儒教社会(中国、韓国)ですかね。 

  • インドネシアも今では経済は華僑に握られていますよね。そういう意味では独立戦争を戦った昔とは違うと思います。オーストラリアと手を組んで挟み撃ちにした方がいいと思います。そういう意味では戦略的放置がベストでしょう。

  • (※細かい話ですが、日本の法律では、第1項の冒頭に「1」という数値は付されません。数値が付されるのは第2項以降です。)・・・初めて知りましたが何故なのかがわかりません。ご教授いただけるとありがたいです。

    • ど素人の妄想ですが、最初に抽象的に基本的な事をドーンと書いておき、事例をたくさん吸い上げてそれを抽象化して必要ならば例外分岐みたいな形で付け加えるからとか。
      法治国家で法律作るとか改正するのは国の根幹を成す重大な行為なので慎重にならざるを得ない訳で、時代に合わせて項目の追加削除ならばまだ影響度合いは抑えられそうという運用面からの理由かなぁ。
      妄想なので話1/100ぐらいでお願いします。

    • 赤ずきんさんへ

       私も明確なお答えはできないとお断りした上で、知っている範囲のことを申します。ご了承ください。
       元々、日本の法律の条文には第1項に「1」の数字が付されていないどころか、第2項以降についても「2」とか「3」とかの付番はされていませんでした。
       「第2項」や「第3項」というのは、一つの条文の中での「第2段落」「第3段落」という形式で、段落ごとに改行して一文字下げて記載する(明治の頃には改行のみで一文字下げもなかったようです)だけでした。
       しかし、それでは何かと不便なので、「項」ごとに「2」とか「3」とかの付番をするようになっていったということと記憶しています。どのような法律の条文にも必ずこの「付番」をするようになったのか始めたのは甚だ曖昧で自信がないのですが、昭和50年代以降のことだと思います。
       それ以前に制定された憲法や刑事訴訟法には、項の付番はありません(ないはずです)。ちなみに憲法については下記をご参照ください(7枚目辺りからが参考になります)。

      https://www.digital.archives.go.jp/DAS/pickup/view/viewer/viewerArchives/0000000003

       ただし、お手元の六法やウェブサイト等では「項番号」がついていると思いますが、これは編集者等の配慮によるもので、例えば私の手元にある有斐閣の『判例六法』の凡例には「18 項番号  二つ以上の項を持つ条文については、各項の冒頭に①、②などの記号を付して項数を示し、見やすくした。」とあります。
       なお、古い法令にはいわゆる見出しもなく、例えば憲法9条の冒頭に「【戦争の放棄、戦力及び交戦権の否認】」とあるのも同様に編集者等の配慮によるものです。

       また、古い法律といっても刑法(平成7年)や民法(平成16年)など全面口語化されたものについては、口語化の際に「原本レベル」で「見出し」や「(第2項以降の)項番号」が付されたはずです。
       
       以上をまとめますと、もともと「項番号」なんてなかったけど、それでは不便なので第2項以降については付番することにした、という辺りが実態ではないかと思います。

       なお、所詮は無学な老人の言葉、以上について誤りがあった場合にはご寛恕賜りますよう、お願い申し上げます。

      • 匿名さん 無学な老人さん 丁寧な返事いただき恐縮です。江戸時代の文書などから推測するに全部1のほうがわかりやすいのにと思いました。勿論古文書には全く詳しくありません。五箇条の誓文も全部 一、〇〇です。

    • 赤ずきん 様
      1に相当する項は制定当初からある項で、2以降を想定していない。なので1と附番する必要もないのでしょう。実際1項だけで終わる条文が多いと思います。
      状況が変わって2以降を策定する必要が生じて、初めて本来の項が1になる訳ですが、遡って全て修正するのも面倒くさい(適用した判例全てを書き直す必要がある)。
      で、1は無しで2以降のみ附番(附番なきものは1と看做す)なのでは無いでしょうか。
      勿論制定当初から2以降を持つものもありますが、それは書式を揃えたという事じゃありませんか。

  •  ASEANの話題ですね。ここではインドネシアは「ASEANの韓国」と喝破されてしまいましたが。
     データで見ると一人当たりのGDPはマレーシアがタイを抜いているんですね。タイ人が「マレーシアは汚い」なんて避難していましたので、てっきりタイの下かと。データで見るのはホント、大事ですねえ。

     大震災の後、台湾+ASEAN諸国をざっと見てみようと、フェイスブックを利用して大人数と交流してみたことがあります。苦労して得たので好きな話題でもあります。

     国力を見る個人的な指標は、人口、統合度(内乱がないか、言語が統一されているかなど)、その他要素(教育など)です。
     人口1億人を超えていて統合度もある国と言えば、日本とアメリカしかありません。※アメリカは分裂気味ですが。

     一つの基準を置いて判断してました。「こんにちは」「ありがとう」などのあいさつがちゃんとできるのが「ちゃんと話が終わる国民」と判断しました。
     最初にこりゃダメかなと思った国はフィリピンとシンガポールです。フィリピンは国になった経験がなく分裂していて、日本統治経験のある韓国・台湾の良い比較対象になります。アメリカの統治政策が間違っていたのでしょう、フィリピンが世界経済の舞台に飛び出ることはまずないと思います。
     フィリピン人とは落ち着いて話ができない、勝手に空回りしているような感じです。似たような感覚があったのがシンガポール人です。人口が少ない国民だからでしょう、地が足についてない印象でした。地理的に、情報やマネーのハブとなる地域なので、お仕事で行く人も多いでしょうが、小国なので期待できません。

     ちゃんと「話が終わる」という手ごたえを感じたのが、ベトナム人とインドネシア人でした。なぜなのかと自分なりに原因を考えてみると、「独立戦争経験」、やっぱりこれが大きいと思いました。「あなたの祖先は立派なことをしてくれたのよ」と言ってくれたのもインドネシア人でした。

     ただその後、別経路で探っていくと、インドネシア人もどことなく「弱い」と感じました。王国が3つくらいに分裂してできて、多言語国家であり現在の国民の感情も分裂しているからでしょう。
     その点、ベトナムの国民感情も、「南北分裂」があります。彼らが言うには北朝鮮と韓国のようだと。もっとも、元々社会主義国だった点も考える必要があります。

     よい感情を持つ経験しかしたことがないのがタイ国です。国民は比較的みな善良です。日本の特許輸出国1位がタイだったと思います(買っているのは現地日本企業ですが)。が、第2次大戦のとき2枚舌3枚舌で裏切ったのもかの国です。
    http://www.newsclip.be/article/2012/04/30/13999.html
     震災後から、投資額トップが日本から中国(シンガポール経由)に変わっている点も、どこか成長率の点で日本企業に疑われているのかも。

     「中興の罠」、あるところまでは成長するけれどどこかで、内部分裂したり成長が止まるという意味と理解していますが、韓国が現在、この罠にはまっていると思います。

     ざっと見て、どこの国も内部分裂、人口の伸びの意味で途中で止まってしまう運命が見えます。右肩上がりで成長すると断言できる国もないと。

     インドネシアは大きく成長する前に、信義則、あるいは内部分裂といった点が不足して足踏みしてるようですね。韓国の成長は、問題点を日本がすべて目をつぶったからでしょう。

    • インドネシア高速鉄道とは話はずれますが、、、、。

      東南アジアでは(シンガポールを省いて)マレーシアは先進国だと感じました。10年前ですが、5年ほどマレーシアで暇つぶしを兼ねて、旅行に行きました。で、タイ、ミャンマー、中国、韓国の人達が(女性)が仕事に来ていました。マレーシアはあの辺りでは、人を惹きつける魅力のある土地なんだと感じました。ツイデニ云えば、タイはカンボジア、ラオスの人達がお仕事に来ています。

      蛇足です。
      此処までカキコをしたら、ナンかダソクをと思いました。
      ひとつだけ、、、。むかしシーロムのソイタニヤでお酒を飲んでいたら、ママさんが教えてくれました。(就労ビザを持っていない)カンボジア、ラオスの女性が居れば、1人あたり月1000B警察に袖の下を払えへんかったらアカンネンと、言っていました。あの辺りはシンガポールを省いて、何でも有りの、、、、素敵な土地柄です。警察に飲酒運転で捕まっても、お財布にお金が入っていたら、何も心配はありません。ただし、お財布は少し軽くなっています。コレは2年前のオハナシです。

      • >タナカ珈琲さま
         1969年に韓国と台湾に抜かれるまで、フィリピンは日本に次いでナンバー2の国でした。そのあともタイに抜かれ、マレーシアに抜かれ、最後にはバカにしていたインフォネシアにも抜かれ。その時の名ごりがいまでも続いているのか、フィリピン人はエリート意識が強くやや傲慢に見えます。(すいません、ここは書きたかったところです)

         1997年のタイ発のIMFの危機の時、外国勢を締め出して国の経済を守ったのがマレーシアです。そのあとも松下かなんかの援助で地道に発展してきた・・・という経緯があります。「ルックイースト」のマハティール首相がいて、いいイメージがありますよね。
         アメリカ人たちなどが「俺たちが東南アジアを解放してやった」など豪語しているところに、マレーシア人が、「誰が誰を解放したって?」と突っ込みを入れてくれたのを見た時があります。白人たちの意向に流されない、マレーシア人のような違う考え方を持つ人たちは大切に思いました。

         数年前か、タイのタクシーのぼったくりでなんか議論があって騒いでいた流れがありましたが、タイのタクシーがぼったくる金額なんて50円とか100円程度です。あのあたりでそのくらいのぼったくりにいちいち腹を立てずに、寛容でなくてはなりません。基本、善良な人達ですから100万も200万もだますことはないでしょう。

         もっとも、反中国意識が高くなってきたASEANの中で「(中国と)仲良くしていこうよ」と優柔不断なタイは浮きつつあるようです。

        • 昭和30年代のフィリピンの一人当たりGDPは日本より上だったと聞いたことがある。
          国富はみんなマルコスに食われちゃって今の惨状。

          • >sqsqさま
             へー、すごいですね。1人あたりでは上だったことは知りませんでした。
             今はもうないと思いますが、かつてアメリカによるフィリピン統治と、日本による朝鮮・台湾統治をデータや資料から分析しているサイトがありました。金額的な規模もアメリカによるフィリピン統治が上回っていて、なぜこのフィリピンと、韓国・台湾で差がついてしまったのかという結論は「教育の差」であるという結論でした。

             フィリピンでは「掃除は掃除夫の仕事」と差別を教え、日本式教育は先生も子供も学校の掃除を一緒にする。だから「知らない者同士の会社という場でともに協力して働く」という文化が台湾・韓国で芽生えたのだとか。

             そのサイト主も言ってた気がしますが、マルコス「だけ」が悪いのなら、なぜ今のフィリピンは発展せず1960年代で止まったままのようなのかが説明できないとありました。

             ここからも韓国は「日本製」というのが分かります。

          • そもそも、明治時代の唐ゆきさんはフィリピンに出稼ぎに行った日本女性の事ですしね。彼女らが体で稼いだお金は、明治日本にとって貴重な外貨であったそうです。

    • >データで見ると一人当たりのGDPはマレーシアがタイを抜いているんですね。

      マレーシアは昔から豊かな国です。
      なんといっても錫とゴムの輸出で潤ってますから。
      ちなみにマレーシアとインドネシアは仲が悪いって知ってました?

  • 「信頼の原則」が成り立たないような国への交通インフラには関わらない方がいい。日本では考えられないような事故が起きるに決まってる。

  • インドネシアで「在来線の高速化は日本」・「高速鉄道は中共」と運行基準も
    バラバラな各国のシステム導入問題
    これは過去の日本の軍事技術導入問題と同様な問題です。
    基本は
    1)技術がないから、判断できない
    2)仲間割れ、あっち・こっちの国の代理者になり争い始める
    3)資金不足
    4)相手から優遇措置があれば、すぐ飛びつく
    これは、発展途上国に良く見られる状態でありますが、発展途上国特有の
    問題でもありません。

    今回の武漢コロナウィルス病における、日本の医学界・マスコミ界隈の報道を
    見ると良く解ります。 検査しても、病気が治る訳でもないのに、検査・検査の
    大号令するばかり。 問題は検査した後、何をするのかが論議されないまま、
    検査数・感染者数オリンピックを勝手に開催してしまう始末。
    他国の状況を見て一喜一憂の番組や報道しても意味がありません。
    ワクチンを製造できた国をみれば、全て世界各地に軍を配置している国ばかり。
    何故そうなるかは皆様もご存じの事と思います。
    日本もかろうじてワクチン製造国の端くれに居ましたが、マスコミの激しい
    攻撃により、ワクチン製造国でなくなったのです。
    ウィルスを政治問題化しても、ウィルスに政治問題は解りません。
    できるのは、如何にして病気と共存できる事を願うか病気と闘う事しかありません。

    • 日本も明治時代にイギリス式、アメリカ式、ドイツ式、フランス式をチャンポンで導入したぞ

        • また鉄オタだと言われそうですがww
          黎明期はチャンポン状態ですが、やはり信号システムなどを英式としたので、全体に英国の影響が大きいのです。
          但し客車などは、木工の職人が多くいた関係で、割と早くから国産化してます。
          機関車は省の島技師長の意見が強く反映され、独式を手本に国産化が進んだのですが、米式の方が合理的だと言う考えもあったようで、島氏の影響が無くなると一気に米式が進みました(昭和期)。
          仏式は殆どありません。
          省から独立していた満鉄はパクリと言って良いほどの米式で、私鉄の電車も殆どはWHかGEでした。
          国鉄は米式の設計で近代化したと言えます。日本式と言うものが確立したのは、やはり新幹線からでしょうね。

  • インドネシアの鉄道プロジェクトの件。中国に行ったのは何といってもワイロの差じゃないですか?
    アメリカってこういう案件ほとんどカヤの外。アメリカにはFCPAがあり海外でワイロ払ったのがみつかると会社がつぶれるほどの罰金とられる。
    EUはまだゆるい。よく日本企業の受注が土壇場でヨーロッパの企業に持っていかれてるのはみんなコレ。

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