菅総理を招待したのに文在寅韓国大統領のことは無視した米国
人間関係が常に変動するのと同様、外交関係も常に変動します。ただ、基本的な価値をしっかり共有し、お互いに信頼関係を醸成する努力を続ければ、両国の結びつきは非常に強くなります。日本外交はたったこの1年で、大きく変わりました。菅総理は昨日、訪米を前に、空港で記者団に対し、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の重要性を強調しました。じつは、このFOIPこそが日本の外交的な立場を大きく変える可能性がある概念なのです。
目次
人間関係と外交関係
永遠の同盟など存在しない
当ウェブサイトでは常に申し上げているとおり、外交の世界では、「永遠の敵対国」、「永遠の友好国」などというものは、存在しません。
日本人は子供のころから「みんな仲良く」と教えられて育つ(※著者私見)、というきらいがありますが、人それぞれ個性も好みも立場も違ううえ、その人が置かれている条件(年齢、結婚歴、家族構成、学歴・職歴など)も刻々と変わっていくため、「みんなと仲良くする」というのは、現実には不可能です。
中学生時代は親友だと思っていたけれども、その後、異なる高校に進学し、さらにある人は大学に進学し、ある人は就職し、…、と、それぞれの道を歩むにつれて疎遠になり、ひょんなことから10年ぶり、20年ぶりに顔を合わせたらまったく話題が噛みあわなくなっている、というのは、人生では非常によくある話です。
そして、国家もしょせんは人間の集合ですので、外交も人間関係の延長で議論すべきものです。
この点、「永遠の同盟というものは存在しない、あるのは永遠の国益だ」とする趣旨の名言を残したのは19世紀の英国の首相・パーマストンだと伝えられていますが、これは現代に生きる教訓でもあります。
ほんの数年前まで、「あの2つの国は仲が良いね」、などと思われていたのに、気が付いたらその両国関係が緊張していたり、あるいは極端な話、敵対関係になっていたりすることも、国際社会ではよくある話なのです(中国と豪州の関係、豪州とフランスの関係など)。
まさに、外交は人生とそっくりですね。
あるいは、政治の世界の不透明さについては、よく「一寸先は闇」などと表現されることもありますが、それは外交の世界であっても同じことでしょう。
人間関係を4パターンに分けると…?
ところで、人間関係をつぶさに眺めていくと、夫婦・家族・親戚などの「血縁・姻戚関係」を除けば、大きく2つの軸があります。
それは、「好き・嫌い」の軸と、「付き合う必要がある・付き合う必要がない」という軸です。
たとえば、俗に「親友」「恋人」などと呼ばれる関係だと、「その人が好き」という特徴があります。また、職場の上司・同僚・部下など、その仕事を続けるうえでおつき合いしなければならない相手は、「利害関係上付き合う必要がある」という言い方をしても良いでしょう。
これを組み合わせると、人間関係にはざっくり、次の4つのパターンがあります。
人間関係の4パターン
- ①その人のことが好き、利害関係上付き合う必要がある
- ②その人のことが嫌い、利害関係上付き合う必要がある
- ③その人のことが好き、利害関係上付き合う必要はない
- ④その人のことが嫌い、利害関係上付き合う必要はない
(【出所】著者作成)
このうち、たとえば「職場で良い人間関係に恵まれた」などと感じている幸運な人がいますが、たいていの場合、その人にとってのその職場の人は①に該当していますし、また、「昔の学校や職場で仲が良く、いまでも交流が続いている相手」などの場合は③に該当します。
また、④のような人間関係であれば、相手がストーカーかなにかという特殊なケースを除けば、そもそも人間関係が成立しません。あるいは相手が「職場の嫌な上司・部下」などに該当していて、あなたか相手がその職場を辞めれば、あなたとその相手との関係は、ほぼ間違いなく消滅します。
少しだけ予断を述べておくと、人間関係において「大変に困る相手」は、ほぼ間違いなく②です。実際、著者自身の調べによれば、「人間関係に困っている」という人の悩み相談を聞いてみると、100件中99.83件は、この②の人間関係に関するものです。
やれ「姑とうまく行かない」(既婚女性)、やれ「職場の上司が嫌だ」(新卒後、就職して3年目の青年)、やれ「学校で問題のある生徒とモンスターペアレントに悩まされている」(50代のベテラン小学校教師)といった具合に、さまざまな悩みが世の中に存在します。
もちろん、人間関係の相談事のなかには、「たまたま見かけた素晴らしいイケメン男性(※ただし既婚者)と結婚したい」(自称「婚活女子」)など、頭からネジが何本もぶっ飛んでいるパターンもないではないのですが、こうした「ぶっ飛び系」のお悩み相談は本稿と無関係なので割愛します。
外交も4パターンに分けられる
余談はさておき、本論です。
外交関係も人間関係の延長で議論すべきものですが、上記①~④は、ある国(たとえば、日本)にとって、相手国(たとえば、米国)がいかなる相手に相当しているか、という議論にそのまま応用できます。
外交関係の4パターン(※人間関係の延長版)
- ①国民感情に照らしてその国のことが好き、利害関係上付き合う必要がある
- ②国民感情に照らしてその国のことが嫌い、利害関係上付き合う必要がある
- ③国民感情に照らしてその国のことが好き、利害関係上付き合う必要はない
- ④国民感情に照らしてその国のことが嫌い、利害関係上付き合う必要はない
(【出所】著者作成)
先ほどの「人間関係」と対比させるうえで、やや強引に、「国民感情に照らしてその国が好き/嫌い」などと表現してしまいましたが、もう少しこなれた表現にするために、次のように言い換えてみると、そのまま外交用語に変わります。
外交関係の4パターン(※専門用語版)
- ①基本的価値を共有していて、利害関係上付き合う必要がある国
- ②基本的価値を共有しておらず、利害関係上付き合う必要がある国
- ③基本的価値を共有していて、利害関係上付き合う必要はない国
- ④基本的価値を共有しておらず、利害関係上付き合う必要はない国
(【出所】著者作成)
もちろん、厳密なことを言えば、「国民感情」云々と「基本的価値の共有」はイコールではないのですが、ただ、もののたとえとしては、このように考えると非常にわかりやすい、ということです。
大事なのは①の相手国
さて、先ほどは「よもやま話」的に、「人間関係の場合、議論すべきは②に尽くされている」、などと申し上げましたが、外交の場合、最も大事なのは①の相手国をどれだけ増やしていくか、という議論です。
そして、①のパターンは、日本政府の表現でいえば、次のような具合です。
「XX国はわが国と自由、民主主義、法の支配、人権尊重などの基本的価値に加え、戦略的利益を共有する、わが国にとっては大事な友人であるとともにパートナーである。」
じつは、この表現、最近の外交青書には頻繁に出て来るものでもあります。たとえば、『令和3年版外交青書』を読むと、次のように記載されています。
- 「台湾は、日本にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有し、緊密な経済関係と人的往来を有する極めて重要なパートナーであり、大切な友人である」(同P55)。
- 「日本とインドは、民主主義や法の支配などの基本的価値や戦略的利益を共有するアジアの二大民主主義国であり、『日印特別戦略的グローバル・パートナーシップ』の下、経済、安全保障、人的交流など、幅広い協力を深化させてきた」(同P64)。
- 「基本的価値と戦略的利益を共有する日本とオーストラリアの『特別な戦略的パートナーシップ』の重要性はこれまで以上に高まっている」(同P67)。
- 「日本とニュージーランドは、民主主義、市場経済などの基本的価値を共有し、長年良好な関係を維持している」(同P70)。
- 「日本は、基本的価値を共有するグループとして、太平洋同盟との連携を重視している」(同P92)。
つまり、基本的な価値を共有している相手とは、良好な関係を築くうえでの前提条件が整っている、という意味です。
中露朝韓vs台湾
厄介なのは②の国
ただ、非常に残念なことに、全世界の国が日本や西側諸国と同じ体制を採用しているわけではありません。
そのような場合であって、日本にとってどうしても付き合わなければならない国については、次のような具合に「基本的価値を共有している」という文言が飛ばされることが通例です。
- 「東シナ海を隔てた隣国である中国との関係は、日本にとって最も重要な二国間関係の一つである」(同P21)。
- 「インド太平洋地域の戦略環境が大きく変化しつつある中で、ロシアと安定的な関係を構築することは、日本の国益のみならず、地域の安定と発展にとっても極めて重要であり、日本としてロシアとの関係を重視する姿勢に変わりはない」(同P22)。
- 「韓国は重要な隣国であり、北朝鮮への対応を始め、地域の安定には日韓、日米韓の連携が不可欠である」(同P21)。
言い換えれば、日本にとって中国、ロシア、韓国はいずれも重要な相手国ではあるものの、日本と「基本的な価値は共有していない相手国」、というわけです(※ちなみに、かつて日本は韓国についても「基本的な価値と利益を共有する、日本にとって最も重要な隣国」とみなしていました)。
基本的価値を共有しない相手との付き合いは疲れる
ではなぜ、「基本的価値の共有」が重要なのでしょうか。
とても当たり前の話ですが、相手国がわが国と、この「基本的価値」を共有しているかどうかによって、その国と付き合うのに必要となるエネルギーが、まったく異なるからです。
たとえば、実力者に賄賂を贈らなければビジネスが円滑に進まない国もあるようですし、訴訟を起こされた際、訴訟に勝ちたければその裁判の裁判官を接待しなければならない、などの国もあるそうですが、そんな国でビジネスを進めること自体、気苦労も絶えません。
これに対し、契約書に書かれたこと、法律に定められたことがそのまま実現するという、ある意味ではクリーンで透明な国もありますが、そのような国でビジネスをする場合、予見可能性も非常に高いため、リーガルコストも非常に低く抑えることができます。
そして、基本的価値を共有していれば、何らかの事情で相手国との関係がギクシャクしたとしても、ちょっとしたきっかけがあれば、また元通り修好関係を回復することが容易です。
人間関係も利害だけで結びついていた場合は非常に脆弱ですが、「人間的な親しみ」で結びついていた場合には、その後もさまざまな局面でそうした人間関係が役に立ちます(実際、「しっかりとした人間関係」は、著者自身も起業したあとで大変に役に立ちました)。
だからこそ、国づくりというものは、次の2点が基本であるべきなのです。
- できるだけ多くの国から共感が得られるような価値を大切にする国になる
- 全世界に自国の味方を増やす
中露朝韓との付き合いがうまく行かないのは…
さて、当ウェブサイトでは以前から、日本の外交を見ていて、どうにももどかしいと感じる部分が多々ある、などと申し上げてきました。とりわけ、対韓外交、対中外交、対北朝鮮外交、対露外交などにおいて、そうした傾向が顕著でもあります。
あくまでも個人的な主観ですが、これらの国との外交における最大の失敗は、「みんな仲良く」、「話せばわかる」、「ウソをつかず、約束をちゃんと守る」、といった「日本的な価値観」に基づいていたことにあります。
実際、日本はこれら4ヵ国との関係構築に成功しているとは言い難いでしょう。
それどころか、これら4ヵ国は、ときとして日本から不当な利得を得ようとしてきますし、実際にそれで日本の政府、企業、個人などが損害を被ったことも多々あります。
だからこそ、日本が「基本的価値」を大切にする外交に舵を切ったことについては、個人的にはもろ手を挙げて歓迎したいと思っています。
もちろん、相手国との良好な関係を築き上げるためには、基本的価値を共有しているだけではダメで、相手国と戦略的な利益を共有している、相手国と信頼関係を築き上げている、といった要因も必要でしょう。
このことから、中露朝韓4ヵ国との外交がうまく行っていない理由は、次の2点ではないかと思われます。
- ①相手国が日本と基本的価値を共有していないから。
- ②日本が「相手国が日本との基本蹴貴価値を共有していない」ことを正確に認識してこなかったから。
逆に、中露朝韓4ヵ国は日本に「地理的に近い」だけの国であって、基本的価値をまったく共有していないという前提に立ち、十分に警戒して外交にあたるようにすべきなのです。
台湾とのトラブル?価値共有していれば話し合いが可能
もっとも、日本と基本的価値を共有していない中露朝韓は「論外」として、基本的価値を共有している国同士においても、二国間関係においてトラブルが皆無であるということは、現実的にはあり得ません。
たとえば、昨日の『大事な友人・台湾のTPP参加を日本が支援すべき理由』では、台湾が環太平洋パートナーシップ(TPP)への参加意思を表明した、とする話題を取り上げましたが、これに関連して茂木敏充外相は米国の記者会見で興味深い発言をしています。
茂木外務大臣臨時会見記録(令和3年9月22日(水曜日)19時06分 於:米国)
―――2021/09/22付 外務省HPより
以下、原文のままで紹介します。
「台湾はですね、我が国にとって、自由、民主主義、基本的人権、法の支配といった基本的価値を共有して、密接な経済関係を有する極めて重要なパートナーであります。また、かねてからTPPへの加入申請に向けた様々な取組を台湾は公にしてきていると承知しておりまして、そのような台湾が今般加入申請を提出したことを、我が国としてまずは歓迎したいと思っております」。
この台湾に関する表現、外交青書に出てきたものと整合しており、べつに新味はありませんが、ただ、この茂木氏の発言からは、台湾が日本にとって単に戦略的利益を共有しているだけでなく、もっと根源的な基本的価値の部分を共有しているとする認識がうかがえます。
もちろん、茂木外相は「台湾を無条件に参加させるべし」、などとのべたわけではなく、むしろ次のような趣旨の発言を通じて、「見るべきところはしっかりと見る」と牽制しています。
「TPP11は市場アクセスの面でも、ルールの面でも、高いレベルの内容であり、我が国としては、加入申請を提出した国・地域がTPP11のこうした高いレベルを完全に満たす用意ができているかどうかについて、まずはしっかりと見極める必要があると考えている」(※原文を著者が要約)。
その台湾は、経済的に見れば日本にとって、最近、韓国を抜いて「第3位の貿易相手国」に浮上しつつありますが、ただ、それと同時に台湾は福島第一原発事故を受けた日本産食品の輸入規制を講じている相手国でもあります。
さらには、わが国固有の領土である沖縄県石垣市尖閣諸島への領有権を主張しているようであり、この点についてはわが国の立場とは相容れません。
ただ、国同士の関係においてトラブルが皆無であるということはそもそもあり得ません。
台湾が日本と基本的価値を共有していることは間違いありません。
そして、ここでいう基本的価値は、自由、民主主義、法の支配、人権といった表面的な部分だけでなく、「ちゃんと約束を守る」、「こちらの支援をちゃんと覚えている義理堅さ」、人々の考え方や態度など、非常に広い範囲のものも含まれます。
実際、台湾に旅行をすれば、台湾の人々の温かさに触れ、台湾のことが大好きになってしまった、などの話をよく聞きます(個人的にも台湾で人々に親切にされたことが何度もあります)。
なお、もう少しだけ個人的な主観に基づく余談を申し上げておけば、「台湾の人々が親日的だ」、などと言われることがありますが、それは間違っています。正しくは、「台湾の人々は、すべての外国人旅行者に対し、優しくて親切」なのです。
逆に、私たち日本人も、外国人旅行者には優しく親切でありたいものですね。
ありがとうガースー
任期末にFOIPクアッド首脳会合
余談はさておき、たった1年でこんなにも変わるものか、と痛感する話題が、もうひとつあります。
米国訪問等についての会見
―――2021/09/23付 首相官邸HPより
菅義偉総理大臣は昨日空港で、これからの米国訪問について、次のような趣旨のことを述べました(内容は当ウェブサイト側にて要約しており、また、下線部は引用者による加工です)。
- 今回の訪米は、米国が主催する初めての日豪印の4ヵ国の会合であり、この会合に参加することが訪米の目的の1つである
- この4ヵ国の間で、ワクチン、新技術、気候変動などの重要な課題についてそれぞれ話し合い、「自由で開かれたインド太平洋」の具体化の道を探っていくのが趣旨だ
この「日米豪印4ヵ国」、世の中的には「クアッド」または「クワッド」などという用語で知られていますが、もともと「クアッド」の語源は「4つ」であり、この「4」自体にあまり意味はありません。
重要なのは、どちらかといえば菅総理の発言部分で下線を付した「自由で開かれたインド太平洋」です。
英語の “Free and Open Indo-Pacific” を略して「FOIP」と呼ばれますが、このFOIPこそ、麻生太郎、安倍晋三両総理の「置き土産」であるとともに、この1年間で菅総理や茂木外相が具現化した、一種の価値同盟なのです。
といっても、現状、FOIP自体が何らかの条約機構の発足を伴っているわけではありません。
あくまでも現時点では概念的なものに過ぎず、(これまでのクアッド会合でも公然と述べられたわけではありませんが)「台頭する中国の無法を牽制する」という側面の方が強いように思えてなりません。
ただ、基本的価値でつながる関係というものは非常に強固でもあります(※インドが日米豪3ヵ国とどこまで基本的価値を共有しているといえるかは別として)。
とくに、伝統的に近隣国外交(とくに中露韓3ヵ国との関係)を重視してきた日本外交が、菅政権下で明らかにFOIP重視に舵を切ったのです。
麻生総理が提唱し、安倍総理が具現化させ、菅総理が実行に移したという意味で、まさに2012年12月に発足した安倍晋三政権の総仕上げが、今回の菅総理の訪米なのです。
日韓両国に対する米国の態度の違い
そういえば、あまり世の中では話題になっているフシはありませんが、日本がFOIP重視に舵を切ったということは、伝統的な「日米韓3ヵ国連携」の重要性が薄まりつつある、という意味でもあります。
先日の『文在寅氏は「韓国人2人目のノーベル賞」を取れるのか』では、「朝鮮戦争終戦」を訴えた文在寅(ぶん・ざいいん)韓国大統領の国連総会演説について、ちょっとだけ触れましたが、じつはこの話題に関連し、もっと重要なのは、米韓首脳会談が行われなかったという事実ではないでしょうか。
菅総理と文在寅氏はともに「米国の同盟国の首脳」であるとともに、菅総理はおそらく来月早々に、文在寅氏は来年5月に、それぞれ辞任(内閣総辞職)または退任することが決まっています。つまり、米国にとっては「去り行く同盟国の首脳」、という共通点があるのです。
残された任期で比較すれば、菅総理がせいぜい1~2週間であるのに対し、文在寅氏はまだ7ヵ月以上残っています。
それなのに、どうして文在寅氏との米韓首脳会談は実施されず、どうして菅総理がジョー・バイデン米大統領に招待されたのか、その違いはどこにあるのかについては、もっと注目する価値があるはずなのです。
というよりも、じつは、この「基本的価値の共有」、「日本から見た米国」だけでなく、「米国から見た日本」に関しても、まったく同じことがいえます。
わずか数年で関係がガラッと変わることもある国際社会において、日米両国が70年以上、(紆余曲折はありながらも)良好な関係を維持していることは、やはり両国がお互いに価値の共有を感じているからではないでしょうか。
韓国は約束を破り他人を裏切る「特殊な国」
これに対し、米韓関係には隙間風が吹いているように思えてなりません。
『鈴置論考、「日韓の」ではなく「韓国の」特殊性に言及』でも報告したとおり、優れた韓国観察者である鈴置高史氏が7月16日付『デイリー新潮』の『文在寅が菅首相をストーカーするのはなぜか 「北京五輪説」「米国圧力説」……やはり「監獄回避説」が有力』で、こんなことを指摘しています。
「平気で約束を破り、堂々と他人を裏切る韓国と首脳会談を開こうとする国はまず出てこない。何を取りきめようが、すぐに反故にされるからです。日本と韓国がうまくいかない原因は『日韓関係の特殊性』ではなく『韓国の特殊性』にあるのです」。
こうした表現を裏返せば、「一度交わした約束はしっかり守る」、「他人を裏切ったりしない」という日本の愚直さが、米国との関係では非常にうまく行ったという可能性を示唆しています。
この点、当ウェブサイトで韓国に関する話題を取り上げた際、「いかに韓国が国際法をないがしろにしているからといって、日本は彼らと同レベルに堕ちてはならない」「日本は国際法をしっかり守るべきだ」と主張すると、なかには「国際社会は国際法を守っている側の味方になるとは限らない」とする反論が来ることもあります。
しかし、日本の義理堅さは、通じる国にはしっかりと通じているのです。
むしろ、問題は「日本が国際法を愚直に守ること」ではなく、「日本が国際法を破る国に必要な制裁を加えないこと」であり、この両者を混同してはなりません。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
いずれにせよ、コロナワクチンの普及を筆頭に、たった1年で驚くほどの仕事を成し遂げた菅政権の仕上げが「FOIP価値外交」だというのも、いかにも仕事人の菅総理らしい有終の美の飾り方でしょう。
菅総理には、本当に「お疲れ様でした」と申し上げたいと思う次第です。
なお、ツイッターにアカウントをお持ちの方で、この見解に賛同してくださるならば、いちど「#ありがとうガースー」とツイートしてくださると幸いです(※「ガースー」は菅総理の愛称です)。
View Comments (20)
日本の周りって何でこうもならず者国家ばかりなのか?でも、シナや韓国の経済発展を支えてきた日本にも原因があると思います。その反省から、このならず者国家に毅然と対応できるリーダーが必要です。そう考えると、太郎や聖子はあり得ません。
おはようございます。賛成です。
さらに勝手に補足させていただければ、高市さんに首相になって欲しいが、どうしても今はだめなら、岸田氏でも仕方がない。とにかく小石河・太陽電池コンビニ袋有料化連合も二階・パンダキムチ同盟もあってはならない。野田さんは日本に仇なす人ではなさそうなので、子供大臣を務めてもいい。外務と防衛大臣は変えなくて良い。
総理になる人間はまずは国家観が大事。
政策論争するなら外交、国防、エネルギー政策に絞るべし。
子供庁がどうたらこうたらなんか大臣レベルでOK
ましてやモリカケ、学術会議の会員任命、エッセンシャルワーカーの待遇改善、それ国会でやることか?
お早うございます.今朝も更新有難うございます.
ところで,価値観の異同と付き合うべきか否かとの組み合わせに関してですが,
>④基本的価値を共有しておらず、利害関係上付き合う必要はない国
この④は,要するに「その国とは基本的価値観が異なるから付き合うには様々な意味で大きなコスト(これは金銭や物資などとは限らずその国と付き合うための特別な法整備を要する場合には専用の法整備が付き合いに必要なコストということ)を払う必要があるのだが,その国との間の利害関係が希薄であるのならば,付き合って得られる利益よりも付き合うために払わねばならないコストが大きいから,そういう国との付き合いはコスト的に赤字になるので付き合う必要がない」という意味だと理解しました.
ですが,その前の
>③基本的価値を共有していて、利害関係上付き合う必要はない国
この③に該当する国は原理的に存在しないのではないでしょうか?
何故ならば普段の利害関係がどれほど希薄であっても,例えば国連で日本が何かを提案したり主張したりする場合,賛同国が少なければ日本の提案や主張は通りません.つまり逆に言えば,普段の付き合いが希薄であろうと,相手国も国際社会の一員であり,基本的価値を共有していることで付き合いに要するコストが小さいのですから,いざ国連などでの議決の際の賛同票のために普段の付き合いがどれほど希薄であろうと,基本的価値を共有する相手とは付き合っておくべきだということになるのではありませんか?
人間の場合,基本的価値を共有する相手はそれこそ無数に存在しており,しかもその殆どは人生の中で一度も(物理的だけでなくネット上の議論なども含めても)出会うことなく=相手の存在を知ることもないでしょう.ですから,基本的価値を共有しても利害関係がゼロならば付き合う必要はない(どころか相手の存在すら知らないのだから付き合うことがそもそも不可能だ)という結論になります.
ですが,国家の場合は高々200ヵ国余りと数も知れており,その殆どは国連に加盟して議決権を有しています.
ですから普段は貿易や資金の遣り取りが実質的に皆無であろうと,基本的価値を共有して付き合いのコストが低い相手国とは,単なる外交面だけでも付き合っておく必要があると思うのです.
お疲れさまです。
ヤフーの記事に、信用と信頼は違うと優秀な営業の方がおっしゃってました。
信用は過去にやった事に対するもの、信頼は未来に対するもの。まず信用を得て、信頼を得る。
納得しました。
カイカイ反応通信の韓国人のコメントを読んでいると、朝鮮通信使節団の言った「朝鮮人より、日本人が良いのは気にいらない。」と全く変わってないと感じました。そのためには、国家単位で反日教育もするし、約束も破るし、同調圧力も命の危険があるほど。
最近、朝鮮民族の正体が日本人の多くに伝わるようになって良かったと思ってます。
そして、韓国問題に対して話題を避けようとする政党には、私は投票しません。
カイカイ通信はあれでも親日派の割合が多いサイトだけどね
>韓国は約束を破り他人を裏切る「特殊な国」
韓国だけで無く「中露朝韓」の共通点として、「約束を守らない」、「力による現状変更を志向する」か有ると思います。
中国と南北朝鮮は、階層の概念が有りますので、力(軍事力、経済力)が上になれば、それが下の国に優越しているという「特殊な価値観」が有る事が、分かる記事です。
中国の強硬姿勢は「当然」 反中ブロックは冷戦思考=韓国外相
https://m-jp.yna.co.kr/view/AJP20210923001800882
>鄭氏は中国の強硬な外交に対し、「経済的に一段と強くなっているため、当然だ」と述べ、「20年前の中国ではない」と指摘。「彼らは国際社会の他のメンバーに中国の声を伝えたいと考えている」とし、「私たちは中国が主張したがっていることを聞く努力をすべきだ」と述べた。
こうやって中朝工作員に乗っ取られた韓国が、自由民主主義国家のフリをして、中国、北朝鮮の擁護をするのが、国際社会を騙すのに効率的だと思いますので、当面中国、南北朝鮮は、このような状況を志向するように思います。
韓国は自称情熱の国らしいので先走るパトスに身を任せついうっかり火器管制レーダーを照射してしまったり大法院の裁判官が日本企業に敗訴判決を言い渡してしまうのかもしれません。
日本のような規則やルール、マニュアルでガチガチ?(と彼らが言っている)の国に比べると理性が足りない又は存在しないように思えます。法は理性的な存在ですので韓国は近代法が出来た経緯をフランスから学び直す必要があると思います。
中国とロシアが無法な理由は特に分かりません。もしかしたらシベリアの寒気に当たると陰気なことをするのが大好きになるのかもしれない。
伝統的に中露韓3ヵ国との関係を重視してきた日本外交が、菅政権下で完全に近隣国よりもFOIP重視に舵を切りました。あれだけ相手を思いやり、忖度する日本的外交手段が通用しなかった(大概の国は理解してくれたが)。
根腐れしている根性の悪い人達は、日本を騙しやすい相手、真面目一辺倒、脅せば譲歩する、とてもタカりやすい相手だった。
しかし、永遠の友邦国は無いとは言え、米英豪NZ台仏加尼越南星印らとは、長い友邦関係にあります。一気に崩れることはありません。
また国連で南北統一、朝鮮戦争終結宣言を叫んだ韓国文大統領ですが、アピールも賛意得られず、米国高官、ましてやバイデン大統領とは会談も無く、手ぶらでハワイ観光に行ったようです。あ、コレが末期の旅行か(爆笑)。
反対に菅総理は、任期切れ近いのに、「是非クアッドに来てくれ」とバイデン大統領からの依頼。人間、徳のある人というのは、菅総理のような人を言うのでしょうね。
いつもためになるコラムをありがとうございます。
質の高い論評がネット環境さえあれば無料で読めるのは本当にありがたいです。
菅内閣は環境エネルギー関連にちょっとひっかかるものもありますものの、コロナの影響を下げるために目に見える実務を形にされたことや、安倍さんの置き土産を無駄にせずさらに強固な形にしたことは評価されるべきですよね。
野党にマスコミ、マスコミに目眩ましされて不満しか言わない世論に苦労されたのは痛々しかったです。
次の総裁も安倍さん、菅総理とつないだバトンを踏襲された上でさらに発展させていただきたいですが、この観点だと今現在ぼろを出しまくって中国利権まで大っぴらになったあの人はないな、というのがざっくりした感想でした。
乱文失礼します。
>質の高い論評がネット環境さえあれば無料で読めるのは本当にありがたいです。
同意!
新聞を読まない、テレビもドキメント以外観ない私にはこのサイトがとてもありがたいです。
まさに海洋国家連盟と大陸国家連盟といったところですね、
アメリカもインドも、根底は実は海洋国家だったわけです。
ところで結局、ニューヨークで日米韓外相会議が行われましたね。
アメリカもなかなか日米韓連携を諦めきれないようです。
>「日本は、基本的価値を共有するグループとして、太平洋同盟との連携を重視している」(同P92)。
韓国がIPAという単語を用いていますが、案外その由来は太平洋同盟(Pacific Alliance?)なのかな?と思いました。
IPAに擦り寄っておこぼれを得ようとする姿勢は姑息ですけど、飴をちらつかせて鞭で打つ対応が今の日米の対韓姿勢なのかな?と。
菅:有終の美 ・・菅々しく実務を全うして頂きありがとうございました。
文:憂愁のBe・・な訳ないですよね。懲りないのだけが取り柄だものね。