衆議院議員総選挙は、今年中に間違いなく実施されます。こうしたなか、当ウェブサイトが懸念する隠れたテーマのひとつは「2009アゲイン」、すなわち「メディアクーデター」の再来です。ただ、現時点であまり楽観視すべきではないにせよ、「インターネット」という当時と現在の大きな違いがあるほか、少なくとも枝野幸男代表を筆頭とする立憲民主党の皆さまの行動を研究すると、彼らに政権奪取ができるとも考え辛い点です。
「2009アゲイン」をどうやって防ぐか
『内閣支持率最低水準も「メディア禍克服」の試金石に?』でも指摘したとおり、今年の総選挙の「隠れたテーマ」といえば、「2009アゲイン」です。
これは、2009年8月30日の衆議院議員総選挙で、新聞、テレビを中心とするマスメディア(あるいは「オールドメディア」)の偏向報道を主因として、麻生太郎総理が率いる自民党が惨敗し、かわって鳩山由紀夫代表が率いる民主党が圧勝した「事件」のことです。
鳩山代表はその後、日本の首相に就任し、「トラストミー」などの珍発言、奇行を連発。
一説によると米国のバラク・オバマ大統領(当時)からは、「ルーピー」という、大変ありがたくない称号が授けられたそうですが(JBプレス・2012年3月21日付『「ルーピー」鳩山に怒り心頭だったオバマ大統領』等参照)、それだけではありません。
自身で「最低でも県外」などとのたまっていた沖縄県普天間飛行場移設問題の行き詰まりを受け、2010年6月8日、就任からわずか266日で政権を投げ出してしまったのです。
その後は菅直人、野田佳彦の両元首相がそれぞれ452日、482日、日本の舵取りを担いましたが、とくに菅直人政権下に生じた東日本大震災や福島第一原発事故、そしてそれらに対する民主党政権の最悪ともいうべき対応は、まさに「悪夢」と呼ぶには生ぬるいというレベルでしょう。
テレビ局に政権批判をする資格はない…特にテレ朝!
こうしたなか、昨今はそれこそ主要メディアがいっせいに「菅義偉政権のコロナ対応の不十分さ」をでっち上げ、「菅義偉下げ」に邁進しているフシがあります。
オールドメディアとは、本当に醜く、本当に学習しない業界だと思わざるを得ません。
もちろん、事実に即して政権批判をする分には問題ないのですが、現在の日本ではワクチン接種が急速に進んでいるという事実を完全に無視し、それどころか一部メディアは、「菅政権が東京オリパラを強行開催したから感染が爆発した」など、証明されてもいない事実関係で舌鋒鋭く政権批判を続けています。
そのくせ、テレビ朝日や朝日放送、日本テレビなど、テレビ局関係者がコロナ感染拡大につながる行動を取っていた事実(『テレ朝、日テレに続き今度は朝日放送でも大人数飲み会』等参照)に関してはダンマリを決め込んでいます。
(※余談ですが、とくに泥酔転落事件を発生させたテレビ朝日に、コロナ関連報道をする資格はまったくないでしょう。)
最大の違いは「ネット環境の普及」
もっとも、ひとつ幸いなことがあるとしたら、2009年と2021年においては、インターネット環境が発達している、という違いがあります。
2009年当時だと、メディアの酷い偏向報道に気が付いていたとしても、それを多くの人に伝えるすべは、ほとんどありませんでした。
実際、2009年8月に法事で地元に帰った際、親戚がみな一様に「今回の選挙では民主党に投票する」と口を揃えていたことは、今でも記憶に残っています。
その際、著者自身が「自分は自民党に投票する」と述べると、その場にいた全員が「新聞、テレビを読んでないの?」と反論して来たので、「あなたたちこそ、21世紀臨調の党首討論をインターネットで視聴しなかったの?」と聞き返すと、みな不思議そうな表情をします。
そこで、偶然持っていた、麻生総理と鳩山代表のやり取りを自分自身でメモしたもの(『立憲民主党の先祖返り、今度のポスターは「変えよう」』等参照)の印刷物を見せてやると、その場にいた全員が、「いま初めて読んだ」と驚いていたのが印象的でした。
これに対し、現在はたしかに内閣支持率こそ低いものの、政権交代が生じる可能性は大変に低いと考えて良いでしょう。というのも、政党支持率に関していえば、現在の政権与党である自民党を、最大野党である立憲民主党が上回っているとうい事実はないからです(図表)。
図表 政党支持率(2021年8月)
メディアと調査日 | 自由民主党(前回比) | 立憲民主党(前回比) |
---|---|---|
朝日新聞(8/7~8) | 32.0%(+2.0) | 6.0%(±0) |
読売新聞(8/7~9) | 32.0%(▲4.0) | 5.0%(±0) |
時事通信(8/6~9) | 23.7%(+2.3) | 3.9%(▲0.6) |
日経・テレ東(8/27~29) | 39.0%(+1.0) | 11.0%(+2.0) |
(【出所】各社報道より著者作成)
自民党に対して辛辣な報道をすることで知られる朝日新聞や時事通信などの調査でも、立憲民主党に対する支持率は1桁台ですし、日経・テレ東の調査でも辛うじて2桁台に乗せているものの、自民党に対する支持率にははるかに及びません。
つまり、「最大野党」であるはずの立憲民主党に対する支持率は、最も高い日経・テレ東のそれで11%と自民党の3分の1に満たないのです。これが、麻生総理に対するメディアクーデターが成功した2009年8月との最も大きな違いであり、また、希望を感じる点でもあります。
枝野氏「単独過半数」
もちろん、メディアが実施する政党支持率と現実の選挙での有権者の投票行動は一致しませんし、現実には「投票したい政党・候補者がない」などといいながら、「棄権・白票によって意思表示する」などとして、実質的に投票しない有権者もいるでしょう。
(※余談ですが、当ウェブサイトでは、「棄権・白票」については有権者が取り得る意思表示手段のなかで、最も卑怯な方法だと考えています。このあたりについては過去に何度か触れたこともあると思うのですが、選挙が近づけば、どこかの機会でまた説明したいと思います。)
さらには、野党連合(略して「野合」でしょうか?)が統一候補を出すなどして、選挙協力を進めれば、その分、自民党が苦戦する可能性はあります。
ただ、現在の支持率などから合理的に判断するならば、自民党は2017年に圧勝している分、多少議席を減らすかもしれないにせよ、政権を失うとは考え辛いところです。
こうしたなか、最大野党である立憲民主党の枝野幸男代表のインタビューが、産経ニュースに掲載されていました。
枝野氏、衆院選単独過半数掲げる 共産との連立否定
―――2021/9/1 19:32付 産経ニュースより
産経によると、枝野氏は1日、共同通信のインタビューに対し、次のような趣旨のことを述べたのだそうです。
- 次期衆院選では単独過半数獲得を目指す
- 日本共産党とは日米安全保障条約や天皇制といった長期的に目指す社会像に違いがあり、連立政権は考えられない
- 日本共産党とどういう連携ができるかは公示までに具体的に示したい
「天皇『制』」という単語を使っている時点でお里が知れるというものですが、この点はさておき、もしも立憲民主党が日本共産党と選挙協力をするというのであれば、仮に「枝野幸男内閣」が出現でもしようものならば、日本共産党が入閣しなくても、同党の意向が大なり小なり反映されることは想像に難くありません。
それに、日本共産党との具体的な連携については「公示までに明らかにしたい」というのも、じつに無責任です。
枝野氏「詳細は秘密」
こうした無責任な「枝野語録」は、じつはこれだけではありません。
J-CASTニュースには先月末、こんな記事も掲載されていました。
世論調査で「十分に政権変わる可能性」→詳細は「部外秘」 立憲枝野氏、選挙戦略の発信に慎重
―――2021年08月31日19時41分付 J-CASTニュースより
これによると枝野氏はラジオ番組に出演し、「党の世論調査の結果」を根拠に、政権交代の可能性が「十分にある」などと述べたのだそうです。
ただ、びっくりするのは、その次の記述です。
「2021年8月31日の定例会見で具体的内容について質問されると、枝野氏は『まさに一番の部外秘』だとして説明を避けた。選挙戦略を話すことは『敵に手の内を明かすことになる』というのが枝野氏の持論で、ラジオの発言から慎重姿勢に一転した形だ」。
なんだか、「政権交代可能」だと言ってみたり、「具体的方法は秘密だ」と言ってみたり、ずいぶんと面白い方です。さすが、2017年の結党時には2ケタ台だった政党支持率が、主要メディア調査で軒並み1ケタ台に落ち込むだけのことはあります。
何より驚くのは、こうした状況においても、枝野代表の更迭論が出てこないことでしょう。
ただ、それと同時に、立憲民主党という組織については、調べれば調べるほど謎が深まるのもまた事実です。ここ数ヵ月の間、当ウェブサイトで紹介した話題に限定しても、次のとおり「これでもか」というほどに「奇行」が目立つからです。
- メディアが立憲民主党の行動を「審議拒否」と報じたことを巡り、村田蓮舫・代表代行や安住淳・国対委員長らが「メディアが『審議拒否』を『常套句』のように報じている」と立腹(『審議拒否」報道に立憲・村田氏ら「常套句」と逆ギレ』等参照)
- 立憲民主党を筆頭とする野党議員の質問通告の遅れが官僚の長時間労働の原因となっているとの指摘に対し、安住淳氏が「陳腐な話」としたうえで「むしろ政府に問題がある」と逆ギレ(『「逆ギレの立憲民主党」質問通告遅れを政府に責任転嫁』等参照)
- 安住淳氏が国民民主党、日本共産党の国対委員長とともに、「コロナ第4波が到来したならば内閣総辞職に値する」との認識で一致したと発表(『野党3党「コロナ第4波到来なら内閣総辞職に値する」』等参照)
- 枝野幸男代表が記者会見で、「菅義偉内閣が退陣し、立憲民主党を少数与党とする『枝野幸男内閣』を暫定的に組閣したうえで、次期衆院選まで危機管理に当たるべきだ」と述べた(『さすがに無理がある、民意を否定する「枝野内閣」構想』等参照)
- 福山哲郎氏幹事長が京都市内の中心部に近い交差点の車道側に立ち、鳴らされたクラクションを「応援のメッセージ」と述べてツイートする(『福山哲郎氏、交差点で演説しクラクションを鳴らされる』等参照)
図表2 車道で演説する立憲民主党・福山哲郎氏
(【出所】福山氏ツイート)
とくに、最後の福山氏の件もそうですが、「どうして立憲民主党の政治家は法律を守らないのか」と思わざるを得ません。
いずれにせよ、2009年の総選挙から今年でちょうど12年目であり、おなじ丑年に行われる総選挙で、いかなる審判を有権者が下すのかは見物ですが、立憲民主党において「枝野/福山体制」が続く限り、自民党も安泰といえるのかもしれませんね。
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選挙戦略が秘密って、もりかけみたいなスキャンダルもどきをメディアと結託して捏造拡散する事を考えているのかな。そうなら、揚げ足取り以外はできませんと公言するようなもんですが、そんなところに国民が政権を任せると本気で思っているのかな。国民もこう言う事に流されないようにする必要がありますが。
日本国憲法の第九条と第一章の天皇皇室に関する条項を改正するのと、どちらが簡単でしょうね。
「ちょっと自民党に反省させよう」
こんな煽り文句が聞こえてきそうですが…
選挙は政権政党にお灸を据えたり懲らしめるための機会ではありません!
有権者を勘違いさせて利を得ようとする勢力の跳梁に要注意でアリマス
まぁ、そう簡単に引っかからないと、それぐらい懸命だと信じたいのですが・・
横浜市長選みたいなこともありますし‥
世論調査の質問に加えてほしい項目があります。
・立憲民主党の政権をとったら、彼らの言うようにコロナゼロを達成できると思いますか?
または
・誰が首相になったら一番うまくコロナ禍に対処できると思いますか?
結果はどうなるでしょう。
>枝野氏「詳細は秘密」
北海道二区みたいな状況を作るってことかな? 友愛?
というのは冗談として・・・・
細かい話だけど、「ワクチン接種の予約がなかなか取れない」、「緊急事態宣言が何度も出てるのに、なんでロックダウンしないんだ」って、現状に不満を持ってる人はあたしの周りにも結構いるのです♪
感染者というか陽性の人が増えているって言っても、「どこそこの会社・学校で陽性の人が出た」とか「知り合いの知り合いが感染して大変だった。」という伝聞はそこそこ聞くけど、身近には意外といないのです♪ そんな状況の中、終わりが見えないことになんとなく不満を感じているんだろうなって思うのです♪
政権が変われば、こういったことが一変する訳じゃないのはわかっているんだけど、そんな不満のはけ口を上手く掴めば2009アゲインもあり得るのかも?って不安が拭えないのです♪
それはそうと、あたしなんかは国会議員の先行接種を拒否したことも立憲の奇行のひとつかな?って思うのです♪時期が前後するけど、新型コロナ対策に対する国会の役割が重要として臨時国会の開催を要求するなら、その構成員のワクチン接種は必須だと思うのです♪
国会議員のワクチン先行接種「国民理解得られず」 立民の安住氏
https://www.sankei.com/article/20210526-N4STY7RIX5MZVJEUXNJ6UTVGU4/
野党4党、憲法53条に基づき臨時国会の召集要求
https://cdp-japan.jp/news/20210716_1806
秘密というのは、「腹案が有る」と同じ事でしょう。
ベンチウォーマーを秘密兵器と言うようなものですかね。
>日本共産党とは日米安全保障条約や天皇制といった長期的に目指す社会像に違いがあり、連立政権は考えられない
これだけは評価できますが、これをもって、野党連合は自民党政権よりましかもしれない、と勘違いする国民が増えないことを祈っております。
2009年と同様の風を吹かせようとマスメディアも必死なので、楽観は禁物です。
総裁選と組閣、極めて重要です、誰になっても負けるでしょうが、ダメージを最小限に抑えるために。。
枝野さんが政権奪取するとしたらそれは、枝野軍を率いてクーデターを起こすしかないのでは?
軍全部隊が枝野さん。
恐ろしい・・・
>「棄権・白票」については有権者が取り得る意思表示手段のなかで、最も卑怯な方法だと考えています。
絶対に入れてはいけない政党を含め、すべての政党に均等に票を投ずる行為です。
白紙委任状にサインするも同然ですから、自由民主主義における権利と義務を放棄することです。
義務を放棄する点において「卑怯」、権利を放棄する点において「愚か」と言えます。
私としては「意思表示」として成立していないと思っており、低い投票率を見るたびに悲しい気持ちになります。
是非とも機会を見て、ご説明をお願い致します。
サア、今から枝豆とビールなんで枝野幸男氏の話は書きたくないのですが、「単独過半数」とか「日本共産党との連立はしない」なら、立憲民主党は面黒い事に、惨敗するヨ。
何にも考えてないから、打ち手はないでしょうに。ハッキリ言えば〜?(笑)