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韓国学者「夷を以て夷を制す」、対中牽制の韓日友好論

日本を「夷を以て夷を制す」、普通に考えて大変無礼じゃないでしょうか?

昨日は、中韓国交正常化からちょうど29年目の節目だったようです。韓国の識者らは中国のことをどう考えているのでしょうか。ある調査によれば、韓国の若年層は日本よりも中国が嫌いなのだそうですがそんな中国から離れられないのもまた韓国の特徴でしょう。日本としても、「韓国と協力して中国に立ち向かう」などの考え方については、再考すべき局面ではないかと思うのです。

2021/08/25 06:00追記

記事公表日時がズレていたので訂正しております。

中韓国交正常化から29年

昨日・8月24日は中韓国交正常化からちょうど29年目の節目だったそうです。韓国メディアにやたらと中国に関する記事が掲載されていたのは、そういう事情によるものでしょう。

もっとも、日本に対してはやたらと高圧的な韓国ですが、個人的な主観に基づけば、韓国が中国に対しても、それと同じくらいに高圧的な姿勢に出たという記憶がありません。それどころか、中国はときどき、周辺国にかなり理不尽な圧力をかけるのですが、韓国がそうした圧力に抵抗したという記憶もないのです。

それどころか、やはり記憶に強く残っているのは、「THAAD制裁」と呼ばれるものです。

これは、2016年7月8日、当時の朴槿恵(ぼく・きんけい)政権が米軍との間で、在韓米軍への高高度ミサイル防衛システム(THAAD)の配備で合意したところ、中国がこれに強く反発。

中国に進出する韓国企業「ロッテマート」に対する営業停止処分などの嫌がらせ、韓国に対する団体旅行の制限などの措置を通じて韓国を経済的に締めあげたところ、2017年秋に文在寅(ぶん・ざいいん)政権が中国に「三不の誓い」を立てた、という結果に終わりました。

ちなみに「三不」とは、「▼THAADを追加配備しない、▼米国のミサイル防衛(MD)に参加しない、▼日米韓3ヵ国連携を軍事同盟に発展させない」、というものです。

「ちょっと経済的に締めあげただけですぐに恭順の意を示す」。

日本が2010年に「レアアース制裁」を受けたものの、毅然と対応し、代替品の開発などを通じて中国の制裁を無力化したという事例と比べれば、天地の差があるのです。

韓国の若者の間では「日本>中国」、NYTが「驚くべき結果」

では、実際のところ、韓国の一般国民は中国をどう思っているのでしょうか。

一部の調査によれば、韓国の若年層が日本よりも中国をより嫌っているとする結果が出たそうですが、これに関連して韓国メディア『朝鮮日報』(日本語版)に昨日、こんな記事が出ていました。

米NYタイムズ「韓国20-30代、日本より中国の方が嫌い…来年の大統領選挙に影響」

―――2021/08/24 09:01付 朝鮮日報日本語版より

(※朝鮮日報の記事は数日経過すると読めなくなるようですのでご注意ください。)

これによると、米ニューヨークタイムズは現地時間20日、「韓国の若年層が(一時植民地支配をしていた)日本よりも中国の方をより嫌っている」ことを巡り、「日本がかつて韓国を植民地支配していた点を考慮すると、このような調査結果は驚くべきことだ」と評したのだそうです。

(※日本が朝鮮半島を「植民地支配していた」という記述自体には大変な違和感もありますが、ここではとりあえずスルーしましょう。)

いちおう、ニューヨークタイムズの主張は、次期大統領有力候補のひとりである尹錫悦(いん・しゃくえつ)前検事総長が強硬な対中発言を通じて「反中感情が強い20~30代の票を集める」ことを目的としている、といったものだそうです。

しかし、ここで重要なのは、韓国国民にも反中感情というものは(いちおう)存在するのだ、という点でしょう。

中国が嫌いでも離れられない韓国

もっとも、韓国が中国とどう向き合うかを巡っては、さまざまな葛藤もあるようです。

朝鮮日報と同じく「保守系」などと呼ばれているメディアである『中央日報』(日本語版)から、こんな記事を紹介しておきましょう。

「もう中国と無条件で仲良く過ごそうという考えは捨てなければ」(1)

―――2021.08.24 12:04付 中央日報日本語版より

「もう中国と無条件で仲良く過ごそうという考えは捨てなければ」(2)

―――2021.08.24 12:10付 中央日報日本語版より

記事タイトルからもなんとなくわかりますが、これは、「米中衝突時代の韓国の生き残り方」を巡り、15年間、中国研究に没頭してきた鄭徳亀(てい・とくき)元産業資源部長官にインタビューを行ったものです。

非常にわかり辛い表現も出て来るのですが、ごく大ざっぱにいえば、「韓国にとって中国との関係は経済的に大事だ」としつつも、現状の中韓関係が決して良好ではない、などと指摘するものです。

そして、中国の崛起(くっき)は「米国的秩序と価値を威嚇する」ため「米国には危険」だとしつつ、韓国に対しては「米国的秩序に編入された韓国の基本秩序」を脅かし、「韓国に中国的秩序と価値、そして中国的国益を強要する」、などとしています。

要するに何のことはない、「韓国は現在、米国陣営から引き剥がされて中国に呑まれそうになっている」、という主張を、もったいぶった言い方で主張している、というわけです。

もっとも、記事に出て来る次のような記述に対しては、若干の違和感もあります。

中国の外交戦術は無慈悲だ。THAAD報復の際に中国は『猿を怖がらせるために鶏を殺す』という言葉のように韓国を見せしめにした。韓国はこうした中国の戦術を予想できなかった」。

「予想できなかった」のではなく、「怖くて立ち向かえなかった」の間違いではないでしょうか。

中国に呑まれゆく韓国

こうしたなか、個人的に参考になるのは、こんな趣旨の記述です(※箇条書きに変更しておきます)。

  • 中国は米国と競争する中で関連国を3つに分類している
  • 日本のような米国の確実な友好国には冷淡に接しながら実利を得ることに没頭する
  • フィリピンのような親中国には経済的恩恵を与えて味方につけておく
  • 韓国のように米中の間で綱渡りする国にはニンジン代わりにムチを振り回す
  • 中国は特に韓国を米国の同盟の弱点とみて見せしめのためにさらに荒々しく扱う

…。大変興味深い指摘です。

フィリピンが「親中国」かどうかはさておき、韓国は明らかに中国から見せしめのように邪険に扱われている、ということです。このあたりは中国の対日外交とは大きく異なる点でしょう。

また、インタビューでは「韓国外交は中国を恐れる恐中症に陥ったのか」と聞かれ、鄭徳亀氏ははっきり、「そうだ」と答えています。

その理由が、「朝鮮半島統一」「北朝鮮の非核化」「韓国の経済的発展」という3つの分野で、中国が大変重要な役割を果たしているとする「幻想」にとらわれてしまっているからだ、というのです。

このうち「中国という市場」などの幻想は、ほんの3年前まで日本にもたくさんいた「中国大好き」な企業経営者らが好むロジックですので、あまり日本も韓国のことを笑える状態ではありません。

日本に向かって「夷」とは失礼な!

こうしたなかで、この人物は日本に対し、相変わらず大変無礼なことを言ってのけます。

韓国が中国との衝突や隷属を回避するために、「みずから強くなる」、すなわち「自強の道」を進まねばならないとしたうえで、「夷を以て夷を制す」、「米国、日本、ロシアの全部を活用しなければならない」、などと言い放つのです。

「夷」という表現には決して良い意味があるとは思えませんが、いずれにせよ、「中国に呑まれたら困るから用日をしよう」という、韓国の保守派にはありがちな、非常に伝統的な考え方、というわけです。

もっとも、一般に「無能な味方は有能な敵を上回る脅威」であり、わが国としては「夷」などと呼ばれながら韓国とに利用されるのを良しとすべきなのかは微妙でしょう。

むしろ、国際的な約束を何度も何度も反故にしてきた韓国は、日本が中国に立ち向かううえで組む相手国としては適格ではありません。だからこそ、日本がやらねばならないのは「韓国がなくても大丈夫な国づくり」ではないかと思う次第です。

新宿会計士:

View Comments (43)

  • 李氏朝鮮末期並びに大韓帝国時代、同じように周辺国を利用する荷駄と勇ましく主張してた人物が多々いたんでしょうねぇ、国内向けに。百数十年前の勇ましさは純宗の勅諭で決着してしまったのですが今回はどんな展開になるのでしょうか!?

    よく「過去を顧みない民族に未来は無い」と某半島人民の方々は仰いますが、「仰る通り、今こそ顧みた方がいいですよ」と言いたい。今こそ顧みるべき時です。「同時の公式文書や新聞記事が読めない、漢字が使われているから」と言うのなら試しにGoogle翻訳を使ってみてください。もしかしたらちゃんと翻訳されるかも!?

  • 私は韓国が中国に併呑される方が東アジア全体が安定するのではないかと考えています。韓国の思考回路は中国のそれと親和性が強いし、自治能力も外交能力もアレだし、ガンビア以外の世界のどの国の役に立たないし、韓国が独立国として消滅しても誰も悲しまないのでは?
    但し、韓国の最新の軍事装備、特にイージス艦やF35は第三者の手に渡らないようにしないと。

    産業については、半導体、造船、自動車などは中国の吸収されてしまえば気違いじみた競争が和らぐかも。

  • 韓国人のアンケートで、「日本より中国が嫌い」というのは、韓国が朝鮮戦争で中朝に攻め込まれた過去や、万年属国だった過去からすれば、驚くべき事では無く、当たり前の話でNYTの認識が間違っています。

    韓国は、出来るだけ日本を米中の選択が出来ない国にして、盾にしたいと考えています。これは日本じゃ無くて、ヨーロッパやアジアの国でも良いんですが、日本が一番中国にとって価値が高く、韓国にとってツートラックで扱いやすいと考えているのでしょう。
    それだけで無く、日中が戦って韓国が反射利益を得る、米中関係が悪化しても、韓国が関わり合いにならずに利益を得る為にどうすれば良いかを考えて利益を得ようとするのが韓国です。

    韓国は、中国の方が嫌いだから、日米側を選択するという嘘には、注意するニダ。

  • 「夷」は「東夷、西戎、北狄、南蛮」という、支那大陸の王朝が周辺国家をケモノ同然に見下す際の表現で、韓国はその価値観のままの意味合いで使っているだろうから、まさしく差別意識ってヤツですね。

    日本を牽制する為に「夷を以て夷を制す」の精神でロシアの庇護下に入り独立国たる事を放棄した歴史を、また別の形でなぞるのだろうなぁと思います。

    • たしか日本の歴史でも「征夷大将軍」と言う役割の「夷」は東日本の意味で、東の野蛮人どもをやっつけて従わせるというモノだったのでは?

      中華思想の「東夷・西戎・南蛮・北狄」の一環で。

      しかし「夷を以て夷を制す」の感性は「ペテン師としての才能に長けているがそれ以外の実務では無能で無責任な民族」にはピッタリでしょうね。

      • 京都の公家の人が「あづまえびす」という言葉を使うのも定番です。

      • >中華思想の「東夷・西戎・南蛮・北狄」の一環
        本家中国大陸だから、中華思想なのですよね。東夷とされる朝鮮半島で育った小中華思想の国が本家中国を「夷」と呼称するってすごい違和感が漂います。通俗的な歴史からすれば、「思い上がり」と呼ばれそうです。

      • Ian Who? さん

        征夷大将軍はその通りですね。
        で、その内最高権力者に与える称号になって。

        ペテン以外の実務では無能で無責任云々ですが、就職詐欺で女性を集めてポン引きする才能なら世界最優秀かもですよ?

    • 「暴支膺懲」とか言って、自由民主主義国家陣営に立つ根性を見せれば良いのに。

  • 夷とは「東方の未開人」「未開の外国人」「えびす」という意味があるそうですが、日本に対しては甚だ失礼な、見下した言い方ですし、少なくとも学者たる鄭徳亀 元産業資源部長官が軽々に他人に話す時に使う言葉ではありません。

    「日本人より中国人が嫌い」は、ホンネとしてよくSNSや韓国人の発言として出てきます。普通でしょう。日本には「反日」という国是級のモノを左派系政権が打ち出しているので、「中国の方がより、嫌いだ」と言いにくいだけです。

    NYTは「植民地にしていた点を考慮すると、調査結果は驚くべきことだ」いや、それは北東アジアの事を知らなさ過ぎるだけです。

    また日本を使えるだけ使え的な発言ですが、「もう韓国とはまともに関与しない」日本には無理筋です。

  • 「夷を以て夷を制す」
    考え方としては在りなんですけど、
    自身が「夷」に依存している状況では、
    出来ない話なんですよね。

    自身が「夷」を敵に回す覚悟が要るのです。

  • (※日本が朝鮮半島を「植民地支配していた」という記述自体には大変な違和感もありますが、ここではとりあえずスルーしましょう。

    NYT の記事はこれだと思います:
    https://www.nytimes.com/2021/08/20/world/asia/korea-china-election-young-voters.html

    で著者紹介は以下となっています:

    Choe Sang-Hun is the Seoul bureau chief for The New York Times, focusing on news on North and South Korea.

    恐らく、この記事を書いた人は史実誤認や感性、そして姓名から朝鮮半島ゆかりの人物だと思えます。

    • 野様

      対中国上、日米韓の連携を願う人達にとっては、「韓国人は日本人より中国人の方を嫌っていますよ、だから日本人の方々嫌韓をやめましょう!」ということなんでしょう。

      過去から行われている各種世論調査では、日本と中国に対する好感度の低さは拮抗していますので、この調査をもって韓国人が日本人より中国人を嫌っていると断言するのは間違いでしょう。

      そもそもアンケートなんてどこまで信用できるのか、サンプリング方法とその合理性の説明が本来は必須なんでしょうが、納得できる説明が無いならば信用度は低いです。

      嫌っている好いている、ということでなく、いかに相手からメリットデメリットを得ているか、それが国際関係の価値判断の基本でしょう。

  • いつも知的好奇心を刺激する記事の配信ありがとうございます。

    半島の言う運転席理論は外部の国家が車の乗客ではなく運転される車です。
    外部の国家を対立を煽って自国に有利な利益供与を得て自分が利益だけを得て「相手先を考慮」の口実で義務を果たさない。

    利益は自分たちに。義務と責任は外部国家に。

    自分たちに矛先がくる場合は口先で別の国家に矛先を向けた国家を攻撃させて自国に矛先を向けないようにします。
    夷を以て夷を制すと言うことです。

    口先で他国を制すファンタジー理論と思いますが、彼らの存在がある意味偶然の産物です。

    何処かで彼らがツケを払う時に請求内容の代償に主権を剥奪出来るように日本が受けた不利益を金額換算して未来の為に記録する。
    これが大事と思います。

    以上です。駄文失礼しました。

  • > 米NYタイムズ「韓国20−30代、日本より中国の方が嫌い…来年の大統領選挙に影響」
    日本人も、中国より韓国の方が嫌いです。
    こっちを見るな。

    中央日報の記事は、妄想垂れ流しで疲れました。
    しょっぱなの

    米中衝突時代の韓国の生き残り方程式について尋ねた。

    を見た途端、「解なし」で終わってしまいます。
    属国には選ぶ権利などないのですよ。

    NYタイムズでは、ベトナムにおける、韓国軍によるフォンニィ・フォンニャット村での虐殺の件も取り上げられたようです。
    むしろ、こちらの方に興味があります。

    • しょっぱなの
      ”米中衝突時代の韓国の生き残り方程式について尋ねた。”
      を見た途端、「解なし」で終わってしまいます。

      韓国って諸外国にとって「足し算しても引き算しても結果がマイナスになる不思議な変数」では?

      2乗するとマイナス1になる虚数と似ていますが、そんな高尚なモノではなく。

      味方に付けても敵に回しても結果が必ずマイナスになるから無い方が良い変数です。

    • イーシャ 様
      >米中衝突時代の韓国の生き残り方程式について尋ねた。
       米中衝突時代での生き残り方程式は、どこの国も分からないので、どこの国も苦労しているのではないでしょうか。(例え属国でも、属国なりに抗うのではないでしょうか)
       駄文にて失礼しました。

  • >最後は韓国のように米中の間で綱渡りする国だ。これらの国にはニンジンの代わりにムチを振り回す。

    日米もこれに倣えばいい。
    ニンジンの効果は一過性で、ムチの効果は恒久のものなんですものね。

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