自称元徴用工判決問題といえば、当ウェブサイトではかなり以前から、「売却スルスル詐欺のようなものだ」と申し上げて来たのですが、それと同時に韓国側にもうひとつの特徴があるとしたら、サラミを本当に薄~~~~~くスライスるするように、本当に少~~~~~~しずつ手続を進めている、という点ではないかと思います。手続を4分割した三菱重工業の即時抗告の件も、その一例でしょう。こうしたなか、自称元徴用工判決から3年が経過しようとするなかで、日本政府は何らかの対抗措置を取るのでしょうか。
三菱重工の抗告の一部の一部が却下
正直、当ウェブサイトで取り上げようかどうか悩んだ話題がひとつあります。
2018年の韓国大法院(※最高裁に相当)による自称元徴用工判決で損害賠償を命じられた企業のひとつが三菱重工業ですが、原告である「元挺身隊員」らが差し押さえている同社の資産を巡り、また報道がありました。
三菱重工の抗告また棄却 韓国地裁
―――2021/7/25 18:28付 産経ニュースより
これまでの報道やこの産経ニュースの記事などをもとに、事実関係だけをそのまま記述しておきましょう。
「2018年11月の判決で損害賠償を命じられた三菱重工に対し、原告側が韓国国内の差押を行ったところ、これを不服として三菱重工側が申し立てた即時抗告のうち、大田(だいでん)地裁が今年2月、差押資産の一部について即時抗告を却下していたが、残る資産の一部についても20日付で却下する判断を下した」。
…。
???
なんだか、よくわかりませんね。
手続は4つに分割されていた!
これについては、当ウェブサイトの過去記事『だらだら引き延ばされる、韓国の「売却スルスル詐欺」』などでも整理した内容を思い出しておくと良いかもしれません。ポイントのひとつが、こんな報道です。
資産差し押さえ命令 三菱重工の即時抗告を棄却=韓国地裁
―――2021.02.16 15:37付 聯合ニュース日本語版より
「強制労働賠償拒否」三菱…特許権差し押さえ命令抗告も棄却
―――2021.02.16 17:03付 中央日報日本語版より
ここに示した韓国メディアの今年2月の報道によれば、大田地裁は原告4人が申請した差押案件を4分割して審理しているらしく、2月の時点で却下された1人分を除けば、残り3人分を「民事控訴第2部、第3部、第4部」の3つに分けて審理している、などとしています。
おそらくは細かく細か~く手続を分割し、ゆっっっっっっっっっっくりと、少~~~~~~しずつ、審理を進めているのでしょう。
ちなみに今回の「即時抗告」は、三菱重工の在韓資産である知的財産権(商標権2件、特許権6件)の売却手続に関し、三菱重工側が申し立てたものだそうです(※余談ですが、もしも三菱重工側がこの申立てをしていなければ、裁判所としては却って困ったことになっていたのではないでしょうか)。
以上を踏まえたうえで、産経ニュースの記述をもういちど読んでみます。
これによると、今回韓国の地裁が却下したのは、「韓国大法院が三菱重工に命じた元挺身隊員らへの賠償判決」を巡り、三菱重工側が差押命令を不服として行った即時抗告の「一部」に関して、大田地裁が20日付で判断を下したものなのだそうです。
今年2月時点の「民事2~4部」という情報と、産経ニュースの記載ぶりから判断して、あくまでも却下されたのは「民事2~4部」のうちの一部、ということなのでしょう。
手続?進んでいないでしょうに…
また、産経ニュースは次のように報じています。
「先に即時抗告が棄却された資産分については同社が再抗告し、韓国最高裁で審理が進められている。同社側は今回も同様の再抗告手続きをとるとみられる」。
ただ、個人的には、三菱重工がわざわざご丁寧に再抗告をしなくても、あまり困らないのではないか、という気がしています。どうせなら、三菱重工は抗告手続をすべて取り下げ、「売却できるものなら売却してみろ」、と開き直ってはいかがでしょうか。
そのようにしたとしても、どうせ売却手続は進みっこありません。
なぜなら、韓国側の本当の狙いとは、おそらく、2018年の一連の大法院判決をもとに、自称元徴用工のための「基金」ないし「財団」などの仕組みでも作らせ、それらの仕組みを通じて、日本企業や日本政府から無限にカネを引き出すことにあるからです。
したがって、放っておけば、日本側が「越えてはならない」と示した一線の向こうでいつまでも踊っているだけなのです。やり口が北朝鮮と全く同じですね。
加藤官房長官の発言に注目
なお、加藤勝信官房長官は本日午前の記者会見で、産経新聞の記者の質問に対し、次の趣旨の内容を述べています(動画の12:12~)。
「韓国の国内手続のひとつひとつについてこれまでもコメントをしていないが、旧朝鮮半島出身労働者問題に関わる大法院判決及び関連する司法手続は明確な国際法違反である。仮に現金化に至ることになれば、日韓関係にとって極めて深刻な状況を招くことは明らかであり、避けなければならないことは、日本から韓国に対し、これまで繰り返し、強く指摘している。今後とも韓国側には、早期に日本にとって受け入れ可能な解決策を示すよう、強く求めていく考えだ」。
日本政府の立場、まったくブレていません。
ここで、「資産の現金化」を「越えてはならない一線」だと示してしまったことが、日本政府の戦略として正しかったのかどうかという疑問はありますが、この点はとりあえず脇に置きましょう。
日本政府の要求は、「自称元徴用工判決自体が国際法違反であり、その国際法違反の状態を解消するための解決策を『韓国が』取りまとめて持ってこい」、というものです。
こうした立場を日本政府が示すのは、1965年の日韓国交正常化以来、韓国にとっては異例のことなのでしょう。だからこそ、韓国側は戸惑い、事態の引き延ばしを図っているものと思われます。
人的往来の制限などの発動は?
なお、個人的な希望を申し上げるならば、やはり自称元徴用工判決から3年が経過するなか、日本政府にはそろそろこの問題で「次の一手」を講じるのかどうかが気になります。日本政府は2019年1月に日韓請求権協定に基づく外交協議、仲裁などを申し入れて以来、この問題では何も動いていないからです。
(※ちなみに韓国側は「日本政府は意趣返しとして輸出『規制』を発動した」、などと騙っていますが、『数式で見る、「日本が輸出規制撤回」があり得ない理由』などでも指摘したとおり、こうした言説自体、基本的な事実関係すら踏まえておらず、明確な間違いだと断定して良いでしょう。)
もちろん、加藤官房長官の発言に見られるような日本政府としての要求は、国としての原理原則に照らせば非常に正しいものではあります。ただ、万が一、菅義偉総理大臣が退陣し、「脇の甘い首相」が誕生することにでもなり、韓国に変な譲歩をすることにでもなれば、目も当てられません。
この点、拙著『韓国がなくても日本経済はまったく心配ない』などでも報告したとおり、日本が韓国に対して発動できる制裁には現時点で限界もありますが、それでも法的に発動可能な対抗措置を今のうちに準備しておくことは有意義でもあります。
そのなかで、やはりもっともやりやすいものは、「人的往来の遮断」、すなわち2006年3月以降に恒久措置化された、韓国国民に対する観光ビザ免除プログラムの修正ないしは停止ではないかと思います。
具体的には、韓国国民は現在、観光や短期商用目的であれば、ノービザで入国したうえで90日までの滞在が可能で、この措置自体はコロナ防疫により一時凍結されているものの、コロナ禍が終息したとしても復活させない(あるいは滞在可能日数を15日に短縮する)、などの措置が考えられます。
この措置、閣議決定などが必要な外為法などによる制裁措置と大きく異なるのは、法的には政府の一存ですぐに発動できる、という点にありますし、おりしも現在、コロナ禍のために日韓の人的往来がほぼ停止しているというタイミングでもありますので、発動しても直ちに影響が生じないという点も魅力的でしょう。
五輪閉会式直後、ないしは大法院判決から3年目の2021年10月30日などのタイミングなどで、日本政府による決断があるかどうかには注目したいところです。
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五輪閉会式直後、ないしは大法院判決から3年目の2021年10月30日などのタイミングなどで、日本政府による決断があるかどうかには注目したいところです。・・・これは 憲法の主権在民の主旨に基づいて 政府に指示しているように読み取れました。同じやるなら 早いタイミングが希望です。
事態を引き延ばしたいのは日本政府も同じかもしれません。
それは置いといて、ビザ免除プログラムの停止、いいですね♪
それだけで、彼らは火病って、「対抗措置ニダ!」と勇ましい掛け声とともに、また自縄自縛に陥ります。
新たなエンタメの始まりですw
是非、日本政府には、そこから取り組んでいただきたいです。
サラミスライス、向こうが透けて見えるぐらいの薄さですね。いや、もう舌にのせただけで、溶けて味が無いぐらい(笑)。
産経によると、「三菱重工業は、先に即時抗告が棄却された資産分を再抗告し、韓国最高裁で審理が進められているので、今回も同様の再抗告手続きをとる」。いや~三菱重工業様、もう日本政府に言って、「我、関知せず」路線はいかがですか?
政府はオリパラ終わったら、選挙もありますが、コロナ禍の終焉を急ぐと思います。更にこの際、ビザ免除プログラム国の見直しです。K国は当面除き(復活させない)、制裁をカマす、と。
現金化に至れば対抗措置というのが我が国のスタンスのようですけど
すでに日本企業に実害が出ているんですけどね、この壮大な茶番劇への対応や即時抗告費用など諸々の損害が。
犬HK 様へ
韓国裁判所の「4分割審理」は、意味深長な作戦なのかもしれません。
つまり、4分割審理すれば、弁護士報酬などの訴訟費用は4倍になります。その4倍になった弁護士報酬を、原告が「戦犯企業を弁護して得た弁護士報酬は不当利得だ!」と返還を要求して裁判所に訴えて勝訴し、返還された弁護士報酬を、被告日本企業から原告に支払われるべき損害賠償金(慰謝料)に充てるのです。
そうすれば、日本政府の「差押財産を現金化すれば対抗措置を講ずる」には抵触せず、対抗措置を受けることなく、少しずつ損害賠償金を受け取ることが出来るという作戦ではないでしょうか
するする詐欺も飽きたし、温い官房長官のコメントも飽きた。
だんな様
そういう日本人らしい反応こそが彼らの狙い。
ネチっこさなら絶対負けないという妙な自信は、
併合時代に十二分に身につけたんじゃないかな。
千年だってルビコンの向こう岸で
これ見よがしに踊っているでしょう。
こちらが根負けしたら、
止めて欲しければ、エサを寄こすニダ
は、お約束(笑)。
だんな様
韓国政府「反日のネタ切れで困っているニダー!!」
じわじわとウォン安傾向ですね。
秋口にはウォ~んウォ~んと喚きながらまたぞろスワップ云々を言い出すでしょうね
逆に、各国においてワクチン接種が進行し、コロナ禍が一段落したタイミングで、日本政府が韓国や中国へのビザ免除プログラムを復活させたらどうなるでしょうか。
その時自民党政権だったら、政権が吹っ飛ぶと思います。
マスゴミの扇動に乗って、国民が再び立憲民主党(+野党連合?)を選択していたなら、どっちみち日本全体が吹っ飛んでいるのでどうでもいいです。
世論調査を見る限り、2009年の悪夢を忘れている有権者がかなりいるようなので、かなり憂鬱な気持ちでおります。
いい加減期限を設けて、いついつまでに是正しなければ制裁を発動する形に日本政府は代えるべきである。モラトリアムを与えるにしても、大統領の1任期間も与える必要はないので、ダラダラプロレスやるのはやめて欲しいです。
>こうした立場を日本政府が示すのは、1965年の日韓国交正常化以来、韓国にとっては異例のことなのでしょう。だからこそ、韓国側は戸惑い、事態の引き延ばしを図っているものと思われます。
そもそも韓国が自力で解決出来た問題にはどんな問題があったのか、不思議です。
今までまともに自力解決出来てこなかったなら、韓国側が意図しているのは事態の引き延ばしではなく、日本に如何に解決させるかでしかない気がします。。。
日本が取るべき最善の次の一手は「ビザ免除プログラムの停止」ですね。
韓国には恥を掻かせるのが一番です。
ホワイト国からの格下げに以上の面白い火病が見られそうです。
秋の選挙対策にもなると思います。