本稿は、速報（？）です。当ウェブサイトでこれまでたの心配に見守ってきた、韓国による「東京オリパラ・ボイコット問題」を巡って、ＩＯＣから韓国側に、（問題となっている地図には）政治的な宣伝の意図はないとする見解が届いたのだそうです。これで再び韓国国内でオリパラ問題は燃え上がるのでしょうか、それとも…。

心配なボイコット問題

このところ、個人的に本当に心の底からたの心配にしていた論点のひとつが、韓国による「東京オリパラ・ボイコット問題」です。

これは、東京オリンピック・パラリンピック（東京オリパラ）組織委員会の公式ウェブサイトに掲載されている日本地図に、島根県竹島らしきものが描かれているとして、韓国で首相経験者２人や次期大統領選の有力候補と目される政治家らが、相次いで「五輪ボイコット」を呼びかけたものです。

といっても、先日の『東京五輪、勝手に高まり勝手に潰えた平昌アゲイン期待』でも指摘したとおり、どうも韓国では一時的に盛り上がったものの、このままボイコットまで突っ切るわけでもなく、勝手に立ち消えそうになっている状況です。

なぜなら、『東京五輪南北同時不参加の可能性』などでも取り上げたとおり、見たところ、韓国政府自身がこの「問題」にさほど前向きではないからです。

ただ、これに関連し、韓国メディア『中央日報』（日本語版）に今朝、こんな「続報」が掲載されました。

東京五輪のホームページに独島表記…ＩＯＣ「政治宣伝ではない」

―――2021.06.11 06:33付　中央日報日本語版より

韓国の「大韓体育会」の李起興（り・きこう）会長が１日、国際五輪委員会（ＩＯＣ）に対して仲裁を求める書簡を発送したところ、ＩＯＣ側はこれに対し、ジェームズ・マクラウド・オリンピック連携局長名義で次のような内容を含めた回答が届いたことが、10日に判明したのだそうです。

「東京オリンピック組織委員会とこの問題を議論したが、独島の表記は単に地政学的な表示であるだけで政治的宣伝ではない」。

まったく予想どおりの反応です。

どこかの国と違って、べつに「竹島はわが島」とするスローガンを公式ウェブサイトに掲載しているわけでもなく、韓国など近隣国を挑発しているわけでもわけでもない以上、ＩＯＣとしてはこれ以上、反応のしようがありません。

もし地図に何か書き込むこと自体がいけないということであれば、極論すれば、世界地図なども掲載できない、という話になりかねないからです。

中央日報は冒頭で、「受け入れがたい回答が届いたことがわかった」などと記述しているのですが、報道機関を自称するなら、少なくとも事実関係を説明する記述のなかで、書き手の主観的な形容表現が付された文章を掲載するのは慎重であるべきです。

特別な関係が終わった日韓

ただ、それ以上に興味深いのは、これを報じた中央日報自身を含め、韓国の政治家、メディアを挙げた「難癖」と言ってもよい申立てに対し、日本もＩＯＣも一貫して冷静かつ淡々と対応している、という点でしょう。

ひと昔前なら、韓国がこの手の子供じみた主張をしてくるときには、日本側も外務省の韓国スクールあたりが水面下で動くか、親韓派の政治家が「よっしゃ、一肌脱いでやろう」とばかりにしゃしゃり出るかして、韓国に配慮した「丸く収まる解決策」を考えてあげていたところでしょう。

しかし、現在の日本からは、そのような動きが（すくなくとも表面上は）何も見えてこないのです。

これは、ほんの10年前と比べれば、考えられないほど大きな変化です。

これには、日本でも新聞、テレビを中心とした大手マスメディアの情報独占構造が崩れ、「報道しない自由」で都合の悪い情報を隠すという手法が通じなくなっている、といった事情があることはたしかでしょう。

政治家や外務省が水面下でコソコソ動こうとしても、有象無象のネットメディアがそうした動きに目を付け、監視しているからです（もちろん、その手の動きが少しでも見えてきたら、当ウェブサイトでも積極的に取り上げるつもりです）。

ただ、それ以上に文在寅政権下の韓国が日本に対して仕掛けてきた、自称元徴用工判決、主権免除違反判決、天皇陛下への無礼、レーダー照射といった不法行為があまりにも大きすぎ、しかも韓国がその対価をいまだに支払っていないため、韓国への譲歩は日本の国民感情が受け入れないのでしょう。

おそらくこれは、日韓国交正常化以来、初の局面です。

そして、あくまでも個人的な関心として、日韓両国の国民レベルでガチンコにぶつかったときには、いったいどうなるのかについて知りたい気がします。

腰が引けた韓国、次の展開は…？

もっとも、この東京オリパラ問題に関しては、韓国側で「ボイコット」まで進むことは考え辛いのが実情です。

今回の東京五輪ボイコット騒動、2019年８月から11月にかけての「日韓ＧＳＯＭＩＡ破棄スルスル詐欺」騒動を思い出すと、構造としてはたしかによく似ています。

• ①輸出規制→②ＧＳＯＭＩＡ破棄→③米国が仲介→④輸出規制撤回
• ①独島地図→②東京五輪ボイコット→③ＩＯＣが仲介→④独島地図修正

「輸出規制」とは、日本政府が2019年７月に発表した、韓国に対する輸出管理の運用の変更（厳格化ないし適正化措置）を、韓国が勝手に「自称元徴用工問題に対する報復」と位置付けた呼び方です。また、「独島（どくとう）」は竹島のことです。

ＧＳＯＭＩＡ、つまり『秘密軍事情報の保護に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定』の破棄騒動の際には、米国を引き込んで日本の輸出「規制」を撤回させようとしました。現実には③、④に至らず、韓国は無様にも、「②ＧＳＯＭＩＡ破棄」の撤回を余儀なくされました。

そして、今回の構図が前回と大きく異なるのは、韓国政府の腰が大きく引けている点でしょう。今回も韓国はＩＯＣを巻き込んで「独島」地図を修正させようとしたものの、③の部分も不発であり、かつ、②の部分については韓国政府側の意思統一が図られていないのです。

もともと「ボイコット」を唱え始めたのが政治家であるという事実に加え、韓国政府からは今週、外交部の崔泳杉（さい・えいさん）報道官による「東京五輪への不参加までは検討していない」とする発言も出て来ているからです。『聯合ニュース』（日本語版）の記事リンクを紹介しておきましょう。

東京五輪ＨＰ地図の独島表示　韓国政府「五輪不参加は検討していない」

―――2021.06.08 17:17付　聯合ニュース日本語版より

いずれにせよ、韓国側が本気で五輪不参加を賭けて日本側に竹島地図の修正を迫るのかと思って楽しみ心配していたのが、どうも中途半端です。

どうせレームダックで指導力も低下しているのですから、文在寅（ぶん・ざいいん）氏が訪問先の英国で菅義偉総理大臣にツカツカ歩み寄り、「東京五輪はボイコットするからね！」と叫んでそのまま退出するくらいのことをすれば、もしかすると文在寅氏も来年の監獄行きまたは天国行きを免れるかもしれません。

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もっとも、先ほど紹介した中央日報の記事には、こんな記述もあります。

「韓国政府は受け入れられないという立場だ。政府はこの日、文化体育観光部の黄熙（ファン・ヒ）長官の名義で仲裁を促す書簡をＩＯＣ会長に緊急発送した」。

もうひと波乱くらいはあるのかもしれませんね。