ジョー・バイデン政権を眺めていて、不安は尽きません。ご本人が認知症ではないかとの疑いもさることながら、バイデン政権が出してくるペーパーが、どうも非常にわかり辛くて総花的なのです。こうしたなか、現地時間の3日に公表された「国家安全保障戦略暫定版ガイダンス」の内容を読むと、FOIPやクアッドなどの文言が抜けてしまっています。
読み辛いガイダンス
ホワイトハウスは現地時間の3日、国家安全保障戦略ガイダンスの暫定版を発表しました。報告書自体はA4サイズで24ページ程度であり、全文はPDF版で読むことができます。
Interim National Security Strategic Guidance
Today, more than ever, America’s fate is inextricably linked to events beyond our shores. We confront a global pandemic, a crushing economic downturn, a crisis of racial justice, and a deepening climate emergency. We face a world of rising nationalism, receding democracy, growing rivalry with China, Russia, and other authoritarian states, and a technological revolution that is reshaping every aspect of our lives. Ours is a time of unprecedented challenges, but also unmatched opportunity.<<…続きを読む>>
―――2021/03/03付 ホワイトハウスHPより(※下線部は引用者による加工)
とっ散らかっている文章
前文の箇所で、コロナ禍だ、低成長だ、人種差別問題だ、気候変動だ、などと「さまざまな課題」が列挙されていて、やや言葉は悪いのですが、ずいぶんと「とっ散らかった文章」だという印象を受けます。悪い意味でバイデン政権の味が出ているのかもしれません。
報告書では、 “keep Amerincans safe, prosperious, and free” (アメリカ人の安全、繁栄、自由を維持する)という表現も出て来ますが、これはドナルド・J・トランプ前政権が掲げた “make America great again” と比べれば、地味な印象もありますね。
もちろん、記事タイトルにもあるとおり、あくまでも主題は「安全保障上の暫定的な運用ガイダンス」であり、本来重要なのは、下線で示した「中国、ロシアなどの独裁主義的な国々との競争の激化」という部分にあるのでしょう。
しかし、残念ながら、この報告書自体、議論がぼやけているという点もさることながら、読み進めていくと、トランプ政権時代と比べて安全保障戦略が後退しているのではないかと懸念する部分もあるのです。
読むと不安になる:FOIPが欠落
報告書自体、「とっ散らかったテーマ」から重要な部分を拾ってくのがやや困難なのですが、おそらく一番言いたいことは、「国際秩序における同盟、制度、協定、規範が試されている」として、同盟を強化すべきだ、ということなのだと思います。
実際、報告書の10ページ目には、こんな趣旨の記述が確認できます(著者の文責で抄訳しています)。
「北大西洋条約機構(NATO)や、我々の同盟国(豪州、日本、韓国、その他の世界のパートナー)は、米国にとっての最も重要な戦略資産である。我々は同盟国と協力して責任を分担し、現在・将来における共通の脅威に対し、優位に対処できるよう準備を行うことを推進する」。
トランプ政権時代と比べて報告書の表現がやたらと回りくどくて読み辛い点もさることながら、「我々の同盟国」からインドが抜けて韓国が復活している点には、悪い意味で、新鮮な衝撃を受けます。
もっとも、インドについてはこの記述の直後に、ニュージーランド、シンガポール、ベトナム、その他ASEAN諸国と並んで「パートナー関係を深める相手国」に列挙されていますが、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」という表現が欠落し、クアッド連携の記述もない点については、正直、戸惑います。
ちなみに日本に対して言及されている箇所は、「豪州、日本、韓国」を「我々の同盟国」と位置付けているくだりと、もう1箇所、北朝鮮の核・ミサイル開発に関する「韓国と日本と密着して(soulder-to shoulder with the Republic of Korea and Japan)」のくだりです。
安全保障という重要な分野で、環境だの人種差別だのといった総花的な課題を盛り込んで議論がとっ散らかっている点もさることながら、この暫定報告書が米国のFOIPに対するコミットの後退であってはならないと思う次第です。
View Comments (11)
おじいちゃん、もう判断できないです。
カマラ・ハリス、スーザン・ライス、バーニー・サンダース、ナンシー・ロペシらの意見がガチャポンされているので統一性無いです。十数年前の日本の民主党の悪夢が米国で再びです。
大統領選出馬時点で既に…
認知症が疑われていたバイデン氏のことですから、彼を支えるスタッフの協調次第ということでしょうか。案の定のボケボケというという気もしますが、過度に悲観しないで様子見しましょうか…
よく言えば八方美人的であり、中国とも協調の道を残していますが、時代がそのような八方美人を許さないでしょう。大統領というより新スタッフのアジアの認識がずれているようで、もはやトランプ大統領以前には戻れないことが分かっていないように思います。
韓国が北との融合に向け3カ国安保から離脱するための行動を取っている現実を認めたくない人がいるかも知れませんね。それがバイデン自身かもしれませんが。
旗振り役としてはどこまで出来るか。日本もやれることをすべきです。改憲できれば何よりですが。
銀河英雄伝説じゃありませんが、「衆愚政治vs統一された専制君主制度」の構造。
後者が勝った暁には、宮内庁の一役人が「本日、中華帝国皇帝を名乗る人物が来朝」と記録するのです。
でも、プーさん笑って許してくれないっす
あと、その場合GAFA騎士団って一掃されちゃうんでしたっけ
アメリカの民主党はずっと昔から日本嫌いでパンダハガーですから、バイデンも民主党らしい大統領だというだけなのでしょう。
しかも昨秋の大統領選では共産チャイナによる両候補の獲得票数に対するクラッキング操作の疑念も幾つもの州で出され、最終的には獲得票数に従い「バイデン勝利」となりましたが、この選挙結果は単に「疑わしきは罰せず」の大原則に従っただけであって、これらのクラッキング疑惑が完全に晴らされた訳ではありませんからね。
そもそもバイデン政権がFOIPを対共産チャイナの基本戦略として重視しているならば、FOIPの要の位置に存在しているインドに対して、トランプ政権がトルコに対して下したのと同様に、ロシア製武器を大量購入することに対して既にインドが導入済のアメリカ製兵器の維持を不可能にするペナルティを下すなどという話は出て来ませんよ。FOIP戦略を推進する上で、地政学的に見てインドとトルコとでは全く重要度が違うのですから。
事実、トランプ政権では対トルコと違いインドに対してはこのロシア製武器の大量導入の問題について目を瞑ってFOIPを推進しようとしていましたし。
しかしバイデン政権がFOIPを放棄するとなっては、日本にとって非常に厳しい状況になりましたね。バイデン当選の報で不安を感じた事柄が次々に現実になってしまっている印象があります。
少なくとも今後4年間はアメリカ政府がパンダハガーに支配される訳ですから、日本も対中および対米戦略を全面的に考え直すことが不可欠になってしまいましたが、政界のパワーバランスの取り扱いには熟知していても外交音痴で世界の中での日本の将来進路をどうするかの戦略が欠落している菅さんではどうしようもありませんね。
FOIPという戦略理念を実現して対チャイナ包囲網を敷くという最も重要な時にアメリカも日本も最悪の政権になってしまいました。
これでバイデンが日ー米ー韓の三角同盟(というよりも米を支点とするヤジロベエ同盟)重視に戻って、旧来のアメリカの諸政権のように「日韓対立は日本を脅して譲歩させる」という戦略に戻ったら我が国にとって悪夢ですね。
北朝鮮の核武装に関しては、バイデン政権は前回の民主党政権であるオバマ政権と同じく戦略的忍耐(要するに北朝鮮の核武装解除のためには何もしない)戦略に戻るだろうという観測が既に報じられていますし。アメリカが北に対して戦略的忍耐戦略を採るということは日本が北の核によって恫喝されても別に構わないというスタンスに戻るということに等しいので、要するに大嫌いな日本は(同盟国ではあるが)どうなっても構わないというのがバイデン政権の基本的な考えということでしょう。
4年後に、世界はそして日本はどうなっているのやら。
リターン オブ トランプ
2024はカマラ ハリスとトランプの
対決になる予想
これから四年間、バイデンのボケが
進行して南朝鮮に負けてやれが出ても
日本には突っ張って欲しい
その前に叩いておかんとあかんな
https://jp.mobile.reuters.com/article/amp/idJPKCN2AV2CX
米、中国「最大の地政学上の課題」と認識 国務長官が外交演説
これは大きなニュースだと思います。
このたび、ブリンケン国務長官は、ポンペオ前国務長官の路線を踏襲することを明確にしました。
米国務省の特徴なのですが、アメリカの政権が共和党であろうと、民主党であろうと、国務省における外交政策にそう変化がないことが今回も示されました。たとえ、政権のスタッフが入れ代わったとしても、米国務省の方向性は受け継がれることがやはり明らかとなりました。
これで、日本はバイデン政権から梯子を外される危険性がぐっと少なくなったと言えるでしょう。
日本もまた米民主党と歩調を揃えて、中共に対して心おきなくウイグル民族の『ジェノサイド』に対して非難できる道筋が見えて来たとも考慮できます。
ジェノサイドを非難し、北京オリンピックのボイコットを匂わせるならば、日本のオリンピック開催において中共から影の支援を受けられなくなり、様々な面で反対意見が噴出して来るでしょう。
ですが、気にすることはありますまい。北京オリンピックの開催を日本が公式に否定するならば、IOCやG7はより強固に日本のオリンピック開催を後押しすることは間違いありません。
メディアの論調も必ず変わって来ますよ…
FOIPが入ってないとかアメリカにケチつけるのはええのんやけど、そんなら日本はどうなのかというお話で。こんなん言うてもここだと反発されるだけなのは理解してるけど。