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米国務長官「日米韓」に茂木外相「日米豪印」で応じる

茂木敏充外相は昨日、米国のアンソニー・ブリンケン国務長官と電話会談を実施し、日米豪印を「同志国」と呼んだうえで、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の重要性などについて意見交換を行ったそうです。そして、米国務省側の発表に含まれていた「日米韓の連携」については、日本側の報道発表には含まれていませんでした。

茂木外相はFOIP+クアッドを強調

外務省のウェブサイトに、なかなか興味深い話題を発見しました。

茂木外務大臣とブリンケン米国国務長官との電話会談

―――2021/01/27付 外務省HPより

これは、茂木敏充外相が昨日午前8時から約30分間、アンソニー・ブリンケン米国務長官と電話会談を行ったとするものです。

ここには5つの項目が箇条書きで列挙されており、そのうちの2番目には尖閣諸島への日米安保第5条の適用に関して明言があったとの話題も含まれています(これは「中国に対する牽制」というよりも「バイデン政権に対する牽制」でしょうか?)。

また、箇条書きの3番目には、こうあります。

両外相は、中国や北朝鮮、韓国等の地域情勢や『自由で開かれたインド太平洋』の重要性について意見交換を行いました。また、厳しさを増す地域の安全保障情勢について認識を共有するとともに、引き続き、地域や国際社会が直面する諸課題について、日米や日米豪印などの同志国間で緊密に連携していくことで一致しました。また、北朝鮮による拉致問題について、茂木大臣から早期の解決に向けて理解と協力を求め、ブリンケン国務長官から支持を得ました。

自由で開かれたインド太平洋(FOIP)は、もともとは安倍晋三総理が提唱した概念であり、米国のドナルド・J・トランプ前政権時代に日米が共有するビジョンとして大きく前進したという経緯があります。

さらに、このFOIPは現在の菅義偉政権にもしっかりと引き継がれており、昨年10月には、コロナ禍の最中にも関わらず、日米豪印(クアッド)外相が東京に集って第2回のクアッド外相会談が実施されています。

当然、当時のマイク・ポンペオ米国務長官もこのFOIPには深くコミットすると述べたわけであり、その意味で、茂木外相が政権交代直後の米国のブリンケン国務長官に対し、具体的に「日米」と「日米豪印」の重要さに言及するのは当然のことでしょう。

日米外相の大きな齟齬

ところが、以上を読んだうえで米国側の報道発表に接すると、強い違和感があります。

Secretary Blinken’s Call with Japanese Foreign Minister Motegi

The following is attributable to Spokesperson Ned Price: Secretary of State Antony J. Blinken spoke today with Japanese Foreign Minister Toshimitsu Motegi. During the call, the Secretary and the Foreign Minister affirmed that the U.S.-Japan Alliance is the cornerstone of peace, security, and prosperity for a free and open Indo-Pacific region and across the globe. Secretary Blinken highlighted the importance of continued U.S.-Japan-Republic of Korea cooperation and stressed President Biden’s pledge to strengthen U.S. alliances and engage with the world again.
―――2021/01/26付 米国務省HPより

じつに短い報道発表です。

このうちの “the U.S.-Japan Alliance is the cornerstone of peace, security, and prosperity for a free and open Indo-Pacific region and across the globe” というくだりに関しては、日本側の発表と整合しているとは言い難いまでも、いちおう矛盾はありません。

しかし、 “Secretary Blinken highlighted the importance of continued U.S.-Japan-Republic of Korea cooperation” 、つまり「ブリンケン長官は日米韓3ヵ国連携の重要性を強調した」という記述に相当する内容は、日本側の発表にはいっさい含まれていません。

要するに、「日米韓3ヵ国連携」は米国のブリンケン氏が一方的に主張したものの、日本側はこれをスルーした、という可能性が出てくるわけです。こうした見立てが事実なら、日本の外務省も、たまには良い仕事をします。

だいいち、報道発表の長さも大きく違うのですが、米国側が発表していない内容を日本側がバシバシ発表し、「尖閣諸島云々に対する日米安保の適用」、「FOIPの重要性」、「日米豪印連携」を巡って米国に釘を刺すのは、非常に良いことです。

中央日報が反応

これに対し、韓国メディア『中央日報』(日本語版)に今朝、こんな記事が掲載されていました。

日米外相会談の資料から「韓日米協力」の部分を外した日本

―――2021.01.28 07:56付 中央日報日本語版

記事冒頭には「アントニー・ブリンケン米国務長官と某縁気茂木敏充外相間の電話会談の内容を発表しながら『韓日米3者協力の重要性』に関する内容を外した」とありますが、「某縁気」はおそらく入力ミスでしょう。

それはさておき、中央日報は外務省の報道について、次のように報じています。

だが、日本外務省が発表した資料にはこの内容がなかった。(中略)韓国が中国・北朝鮮とともに日米が議論すべき『地域情勢』に言及され、日米と意見を一致する強力パートナーからは外したわけだ。

中央日報はこれについて、日本の外務省が「両国が各自の観点により重要だと考えることを発表資料に入れただけで、意図的脱落ではない」と釈明した、などと報じていますが、もしわかっていてこれをやったのだとしたら、なかなか興味深いところでしょう。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

くどいようですが、当ウェブサイトでは「FOIP」こそが日本にとっての活路であると考えています。

バイデン政権下の米国が「日米韓3ヵ国連携」に回帰するであろうことは、十分に想定されている話でもあります。というのも、米国にとって朝鮮半島は地政学的に中露などを牽制するうえで非常に魅力的に映るからであり、だからこそ、米国が日本に対して韓国に譲歩することを強要する要因となるのです。

しかし、そもそも外交とは「仲良しごっこ」ではなく、「国益を最大化するための手段」です。

国益とは平和と発展のことであり、「ルールや約束を守る」、「ウソをつかない」などの基本的な価値観を共有しないだけでなく、日本になかば公然と敵意を向けているような国との関係を深めることが、日本の平和と発展に寄与しないことは明らかです。

このように考えていけば、安倍政権のうちにインドや豪州、ASEANを巻き込み、日本が口を酸っぱくして強調したFOIPこそ、米国の政権が安易な「日米韓3ヵ国連携」に回帰しないための留め金のようなものなのです。

いずれにせよ、韓国の位置付けをめぐる日米両国政府の応酬は始まったばかりと見るべきでしょう。

新宿会計士:

View Comments (42)

  • 穿った見方をすれば、茂木外相はアメリカ側に「アメリカが日米韓協力体制を維持したいというのであれば、アメリカがきちんと韓国を躾けろ」と言外に要求しているのかもしれませんね。
    それならばGJと言っても宜しいのですが。

    • 龍様

      そうですね。
      日本が、「今の韓国を見てごらんなさい。貴国の仲介で慰安婦合意をしたが、この有様です。もはや保守だろうが革新だろうが韓国政権に日本が関わるのは、東アジアの安定にまったく寄与しないか、マイナスになります。それよりも現下における中国の脅威による香港・台湾・南シナ海・東シナ海の情勢を考えればFOIPの方がよほど重要。アメリカが日米韓の枠組みに拘るのならば、韓国による慰安婦合意の不履行は反米反日行為であるとの認識をもって、韓国の同盟国であるアメリカが対応すべきです。」
      という日米の話し合いがあったのならば、
      アメリカは日米韓に言及し、日本は韓国に言及しない、という結果になるのではないかなぁと。

    • 龍様

      あの国とうまくやるつもりがないなら、日米関係も見直すぞ、などとは、口が裂けても言えないことを見越しての対応なんでしょうね。

      アメリカが、グローバルKスタンダードで舞い上がっているあの国を躾けるなんて、出来ようはずもありませんが、まあ、やるならどうぞ、と言うところですね。

  • 日本側発表は韓国抜き、アメリカ側発表は日米韓の重要性を強調。
    これは、日米間に「見解の相違が有る」と言うんじゃないでしょうか。

    • > 日米間に「見解の相違が有る」

      それは前提でしょう。私は、今後米国が日韓関係をどのように利用しようとするかに興味があります。

      相も変わらず「韓国と仲良くしなさい」なのか、韓国抜きの安全保障体制、つまりFOIP重視に舵を切るのか、あるいは、日本を強く巻き込まない形で、つまり、日米同盟と切り離して米韓同盟を維持するのか、などです。

      私は米民主党の東アジアに対するインテリジェンスは、良くて「当てにならない」、普通は「的外れ」と見ていますので、日米韓三角同盟の強化を迫られる可能性は高いと予想します。

      それに対して、日本政府が今回のように意図的に韓国外しで切り返したのは吉報と言えます。共和党政権と異なり民主党政権下の日米関係はどのみちギクシャクするのですから、少々の齟齬は恐れずに、日本なりの世界の秩序に対する貢献を主張していってもらいたいです。

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
    (そう自分に言い聞かせないと、舞い上がってしまいそうなので)
     日本としては、バイデン新大統領に日韓仲介の拒否と、日米印豪という対中での別の選択肢を示したと考えるのは甘いでしょうか。(もちろん、それでもアメリカが、日本に対韓譲歩圧力をかけてくるかもしれませんが)
     駄文にて失礼しました。

    •  すみません。追加です。
       韓国としては、日米韓協力関係に日本は戻れ、つまり韓国に譲歩せよ、と言いたいのでしょう。
       駄文にて失礼しました。

  • 外交に関する発表で「意識せず」なんてことはあり得ないので、日米韓ということを表現を外したことには絶対に意味があります。日米韓に日本は興味ない、まさにそういうことかと。

    逆にアメリカが日米韓を残したということは、そちらへの興味が若干でもあることを意味します。これが今後どう動いていくかは興味ありますね。まあ、日本の文章から外れることをアメリカも容認してるでしょうから、それほどの興味でないことも読み取れますね。

    • G様へ
      >外交に関する発表で「意識せず」なんてことはあり得ないので
      確かに、外交とは言葉一つで戦争になることもあり得る世界ですからね。
      蛇足ですが、日本の憲法9条信者は、自分たちの世界に発信する言葉で、(それこそ稀かもしれませんが)戦争になることもあり得るということを分かっているのでしょうか。(過去には新聞の見出しで戦争になったプロシアとフランスの戦争もありました)
       駄文にて失礼しました。

    • 私もそう思います。そして民主党側の外交メンターや米外務省国務省は日本側の発言を見過ごす事はないでしょうから、「なにか」を感じて、自らの極東政策の「なにか」が日本を苛立たせているということ、それは米-日の関係でも(20世紀のように親分子分ではもはやないので)咳払い一つで言う事を聞かせて日本に無理強いすることが出来ないという事にもアホではない彼らは気づき始めるのではないか。

  • 本日未明、菅首相とバイデン米大統領との間で電話会談があったようです。
    https://news.yahoo.co.jp/articles/970e686d216ff546fbec3229d62564c4d64d1253

    通常ですと、その後 米韓首脳会談があると思うのですが、今のところまだですね。 中央日報がそわそわしています(笑)
    https://news.yahoo.co.jp/articles/a3c15b3fefab4467aa72b9ac6742f010ea09c63d

    そういえば、文大統領は26日に重要な電話会談を行っています。 「中韓首脳会談」
    https://news.yahoo.co.jp/articles/94c2a89a6d272e4b016568275d22cae8435a3f4e
    これは「かまってくれないと中国側へ行くよ~」という いつものヤルヤル詐欺の一環ですかね。

    更に念を押すように本日、ウズベキスタン大統領と電話会談です。
    https://news.yahoo.co.jp/articles/8498f36a597a40e96c0b9f37a9db26c40e7b065a
    こちらは「一帯一路にまい進するよ~」でしょうか。

  • 更新ありがとうございます。

    米国のブリンケン国務長官側の文面に「日米韓」とあるのは、まだそれに拘る勢力と、どちらかと言えば日本にあまり勢力拡大、敢えて言うならあまり好感を持たない勢力が居るという事ですね。

    しかし、オバマ大統領=バイデン副大統領の時代に、日本は対韓で自称慰安婦の件、「大人の対応」を迫られました。で、立会人・保証したのはバイデン副大統領だった。6年後、このザマ見て如何ですか?日本は馬鹿が付くほど、正直に全て履行しました。

    韓国はどうですか。約束事、決め事をぶっ壊して、更には国同士の漏洩厳禁事項、オフレコの部分までマスコミに流した。また徴用工判決、海自レーダー照射撃墜一歩手前事件、GSOMIA破棄声明とか無理な事を勝手に発表します。

    日本は韓国が絡むと、アジア和平の為に動いても、韓国が脚を引っ張るんですよ。もうずっと前から今現在も!
    いい加減に目を覚まして下さい。朝鮮半島など昔と違って大きな意味を持ちません。

    海路陸路で上陸ー占領する時代じゃない。海軍力で完璧に支配する時代でもない。ユーラシア大陸の果て、盲腸みたいなモンです。何の役にも立たない地域です。

    戦争或いはその前段階では、戦士が守り抜こうと、敵を遮断しようと言う熱いハートが第一なんです。FOIPは同盟国、友邦国が団結してチカラを発揮出来ます。が、日米韓では、背後からタマが飛んで来ますヨ!

    茂木外相の発言である、日米豪印中心のFOIPに、是非切り替えて下さい。英も参加するでしょう。

  • 韓国を留めておきたいなら米国が面倒を見ればいい。
    我が国は協力は無理であることは既に証明されました。

  • 現在の日韓関係は、完全に前政権の頃とはステージがちがっています。前政権までも得意の瀬戸際外交を繰り広げていましたが、ギリギリの一線を踏み越えることはありませんでした。でも文政権になってからは、その一線を越えっ放しです。米韓関係も同様です。
    自称徴用工判決、慰安婦判決はその象徴で完全に国家間の関係を築く土台を破壊しましたし、GSOMIAの
    破棄、火器管制レーダー照射事件は、日韓関係だけでなく同盟国への敵対行為ということで当然米韓関係にも影響したはずだし、三不の誓いや南北軍事協定は、休戦ラインの護りを脆弱にしたし、米韓軍事演習の縮小や対北朝鮮の経済制裁やぶりなど、国際協調の破壊と限りがありません。当然米国もこれらのことは充分承知しています。だから新政権発足の儀礼的な政府高官の会談で話されたことをあれこれ言っても意味がないように思います。今発表されている内容は外交辞令か建前に過ぎないと思うのです。今後の動きを見ながら本音がどこにあるか見極めることが必要かと思います。

    • 失礼しました。
      HN間違えました。
      ↑イジワルばあさんのコメントです。

  • 朝鮮半島の南半分の土地はアメリカにとっては朝鮮戦争を通じて米国兵士2万人以上を犠牲にして獲得した橋頭堡ということが出来、簡単には切り捨てられない事情があるのでしょう。だから今まで日本を言い含めて面倒を見させてきたのだが、日本にとってK国は北朝鮮との関係においてのみ重要な国であり、周辺諸国への軍事的圧迫を始めた中国に関するアジアの安全には何も寄与しないばかりか、一部中国に通じたり日本に対して敵対行動を取る国でもあります。

    数十年に渡り我慢しながら面倒を見てきたのだからいい加減に「もう面倒みきれません、必要ならご自分でみさっしゃい」と米国に申し出るチャンスがきたと思います。日韓は同盟国じゃないし、レーダー照射してくるような部隊と軍事行動を一にするなんて危険すぎて出来るわけないでしょ。

    • > 朝鮮半島の南半分の土地はアメリカにとっては朝鮮戦争を通じて米国兵士2万人以上を犠牲にして獲得した橋頭堡

      かつて大日本帝国は似たような言い訳でずるずると大陸で戦線を拡大した挙句、国力を消耗し、破滅に至ったんですけどねえ。当時の日本の国力と国防上の必要性という観点で考えると、せいぜい遼東半島と満洲の南半分くらいが関の山だったと思いますが、北満洲はまだしも、長城線を越えたのはどう考えても要らんことしたとしか思えません。
      血で贖ったのだからそうそう手放せない(≒戦死者に申し訳が立たない)という軍人さんの感情は想像つかないでもないですが、もう少し戦略眼というものが必要だったかと思います。

      さて、バイデン新政権にまともな戦略眼を持ったメンバーが居るのでしょうかね。

      • まともな戦略眼を持ったメンバーがいたとしても、アメリカ退役軍人会は最大の政治圧力団体らしいですから、朝鮮戦争の生き残りがいなくなるまで続くんではないでしょうか。
        特に、朝鮮戦争は停戦中であり、まだ終わっていませんし。

        • そうだった!!
          そういえば、朝鮮戦争はまだ終わってないんでしたっけ。となると、少々面倒が増えますねえ。アメリカとしても、朝鮮半島から完全に手を引くためには、まず朝鮮戦争から終わらせなければなりません。
          米韓相互防衛条約だけであれば、アメリカ軍に駐留義務はないので、さっさと撤兵しちゃっても問題ないんですが。

          後は、実戦部隊を張り付けておくコストとの兼ね合いかもしれない。

    • 匿名29号 様
      ベトナム戦争では15万人もの犠牲を出しながらも、撤退(南越見殺し)したのですから、朝鮮半島も幕引き出来ると思います。
      大義名分はどうとでもなるでしょう。「南北人民の総意」でも良いんじゃないですか、中国の名前さえ出なければ。
      勿論米撤退後の日本の覚悟が問われる訳ですが、同盟と言う餌に騙されてズルズルと金蔓にされるのに耐えられなくなってると思います。感情的にも、経済的にも。
      梅田氏に決断できるかどうかですが、民主党だから出来るんじゃ無いでしょうか。知らんけど。

      • ベトナム戦争は最終局面ではサイゴンまで陥落して米軍はベトナムから撤退を余儀なくされました。 多くの米国民は負けたと感じたと思います。
        朝鮮戦争が違うのはまだ負けても勝ってもおらず停戦中であることです。

        しかしK国駐留経費に対して効果が北朝鮮警戒だけではコスパが悪いことこの上ないですし、自分もいい加減にけりをつけて引き揚げたらとは思うのですが、何分よその国のことなので。

  • 韓国が国際協調に参加すると、諸国の足並みが揃わなくなるんですよね。
    彼らの存在意義は「和(日本?)」を乱すことにあるんですものね・・。

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