武漢コロナウィルス新規陽性者数急増を受け、わが国では1都3県に緊急事態宣言が発令されるなど、緊迫した状況が続いています。しかし、中国・韓国・ベトナム・シンガポールを対象としたビジネストラックについては以前として続いていて、入国時の検査自体は義務付けられたものの、入国は継続しているようです。こうしたなか、自民党の青山繁晴参議院議員は政府にビジネス往来の全面停止を要請したそうです。
ビジネストラックは停止されず
先週の『緊急事態宣言は7日に発令、ビジネストラックも停止か』では、武漢コロナウィルス新規陽性者数急増を受けた緊急事態宣言を前に、朝日新聞が報じた「ビジネストラック停止」なる情報を取り上げました。
しかし、結論的に言えば、現時点で中国、韓国、ベトナム、シンガポールの4ヵ国に対するビジネストラック、この4ヵ国にタイ、マレーシア、カンボジア、ラオス、ミャンマー、台湾、ブルネイの7ヵ国に対するレジデンストラックについては停止されていません。
入国パターンと枠組み
少しややこしいので、外務省などの官庁が発表する資料をかみ砕きながら、順を追って事実関係を確かめておきましょう。
日本に入国する際のパターンは9つあります。
日本に入国する際の9つのパターン
- ①日本に居住する日本人が外国(4ヵ国)に出掛けて帰国する場合
- ②日本に居住する日本人が4ヵ国以外の国に出掛けて帰国する場合
- ③外国(4ヵ国)に居住する日本人が帰国する場合
- ④4ヵ国以外の国に居住する日本人が帰国する場合
- ⑤日本に居住する外国人が外国(4ヵ国)に出掛けて日本に再入国する場合
- ⑥日本に居住する外国人が4ヵ国以外の国に出掛けて日本に再入国する場合
- ⑦外国(4ヵ国)に居住する外国人が日本に入国する場合
- ⑧外国(7ヵ国)に居住する外国人が日本に入国する場合
- ⑨11ヵ国以外に居住する外国人が日本に入国する場合
(【出所】外務省ウェブサイト『国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について』より著者作成)
①~④が日本人、⑤~⑨が外国人です。
日本人には基本的に帰国する権利がありますので、欧州、米国、英国などからであっても自由に帰国することは可能です(ただし、入国時の検査や14日間の公共共通機関の不使用・自宅待機などが要請されます)。また、渡航先が4ヵ国である場合には、ビジネストラックを利用することが可能です。
これに対し、外国人は無条件に日本に入国することはできません。
日本に居住する資格を持っている外国人が外国に出掛けた場合、日本人の通常の帰国に準じた扱い(検査、公共交通機関不使用、自宅待機など)を条件として、再入国が認められます。また、渡航先が4ヵ国である場合にはビジネストラックの利用が可能であるという点も、日本人と同じです。
しかし、日本に居住する資格を持っていない外国人の場合は、日本に入国するためには、4ヵ国についてはビジネストラック、この4ヵ国に7ヵ国をあわせた11ヵ国に対してはレジデンストラックの適用が可能です。
なお、現時点では「短期出張ニーズに対応する枠組み」、「全世界を対象とした新規入国」という2つのカテゴリーの枠組みは停止されています。
以上をまとめたものが、次の図表です。
図表 日本に入国する際に利用可能な枠組み
区分 | 概要 | 対象者 |
---|---|---|
(1)日本人の通常の帰国 | 入国時の検査、入国後に14日間の公共交通機関不使用・自宅待機など | ①、②、③、④ |
(2)在留資格のある外国人の入国 | 入国時の検査、入国後に14日間の公共交通機関不使用・自宅待機など | ⑤、⑥ |
(3)ビジネストラック | 入国時の検査など | ①、③、⑤、⑦ |
(4)レジデンストラック | 入国時の検査など | ⑦、⑧ |
(5)短期出張ニーズに対応する枠組み | 現在停止中 | ③、⑥ |
(6)全世界を対象とした新規入国 | 現在停止中 | ⑦、⑧、⑨ |
(【出所】外務省ウェブサイト『国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について』より著者作成)
これを見て気付くのは、外国人に関しては、基本的には「在留資格がある」か、「ビジネストラック」「レジデンストラックの対象国に居住している」かのいずれのかの条件を満たしていない限り、つまり、11ヵ国以外に居住する外国人が観光・やビジネスの目的で日本を訪れることはできない、ということです。
このように考えていくと、これらの11ヵ国や、とりわけ4ヵ国については、入国条件が非常に緩和されているということがわかるでしょう。
主な国別の入国者数
ここで、日本政府観光局(JNTO)が発表する『月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)』から、2020年11月における主な国別の入国者数を拾っておきましょう。
入国者数が1000人を超えているのは次の9ヵ国・地域です。
- 中国…18,100人
- ベトナム…14,700人
- インドネシア…3,400人
- 韓国…2,800人
- フィリピン…1,700人
- 台湾…1,200人
- 米国…1,100人
- インド…1,000人
- タイ…1,000人
ビジネストラックの対象国であるシンガポールからの入国者は200人に過ぎません。また、フィリピン、米国、インドなど、ビジネストラック・レジデンストラックの対象国ではない国からの入国者も1000人を超えています。
検査の義務付け
さて、このビジネストラック、レジデンストラックについては、今月、次のような変更が加えられました。
入国時の検査の義務付け
- 2021年1月9日午前0時以降、緊急事態宣言が解除されるまでの間、ビジネストラックを利用して一定の帰国する日本人、ビジネストラックおよびレジデンストラックを利用して入国する外国人に対し、新たに入国時の検査を実施する
- 2021年1月13日午前0時以降、ビジネストラックを利用して帰国・入国する日本人・外国人、レジデンストラックを利用して一定の国・地域から新規入国する外国人に対し、新たに出国前72時間前の検査証明の提出を求め、それを受入企業・団体に誓約してもらう
(【出所】外務省・1月8日付『国際的な人の往来再開に向けた段階的措置について』を要約)
ただし、ビジネストラック、レジデンストラック自体は継続しています。
青山繁晴参議院議員らが往来停止を要請
こうしたなか、産経ニュースに昨日、こんな報道が出ていました。
自民「護る会」青山繁晴氏ら、政府にビジネス往来全面停止を要請
―――2021.1.12 18:30付 産経ニュースより
産経ニュースによると、自民党の青山繁晴参議院議員が代表を務める「日本の尊厳と国益を護る会」が12日、首相官邸を訪れて岡田直樹官房副長官と面談し、「一部の国との間で継続しているビジネス往来の全面中止などを政府に求める緊急提言」を手渡したそうです。
青山議員は面会後、記者団に次のように述べたのだとか。
- 海外から人を受け入れ、日本で変異種のウイルスが市中感染を引き起こすと、政府の責任は重大になる
- 1日どころか1時間、完全に止めるのが遅れたら、リスクは乗数効果で大きくなっていく
- 国民に厳しい制限をお願いしておきながら、ビジネスだけで入ってきているはずの、特に中国の方々で、観光している人が非常に多い
文脈からしてビジネストラックとレジデンストラックのことをさしているのだと思いますが、もし青山氏の指摘どおり、ビジネストラックで入国しておきながら観光がメインとなっている人がいるのだとすれば、それはたしかに本末転倒でしょう。
いずれにせよ、産経ニュースによれば、青山議員は岡田氏が「完全中止の選択肢に入れて検討している」と述べたと明らかにしたのだそうですが、本件については政府の対応につき、注目したいと思う次第です。
View Comments (10)
日本には中国人や韓国人が経営している企業が、規模の小さな家族経営的なものも含めればたくさん存在していると思います
そういった企業が観光を目的とした家族や親戚を日本に入国させるのに、ビジネストラックを利用している可能性もあり得るのではないでしょうか
それが可能なら祖国のブローカーと手を組めば、際限なく日本へ入国させることが出来ると思います
ビジネストラックは書類さえ揃っていればだと思いますから
そう考えるとビジネストラックの仕組みはだいぶザルなんだろうと思います
私事ですが、昨年末に私用で新幹線(のぞみ)に乗っていたところ、後ろから少なくとも日本語でも英語でもない言語(恐らく中国語)での会話が聞こえてきました。
もちろん日本在住の方なのかもしれませんが、あまりいい気分ではありませんでしたね。
更新ありがとうございます。
ビジネストラック、レジデンストラック、中国・韓国・ベトナム・シンガポールを対象とした対応は続いている、という事ですが、もう中止にしてください。危ないです。
私も昨日、看護師長さんから「ワクチン受けて貰えますよネ?」と打診がありました。スタッフ皆に聞いてるようです。断りにくい雰囲気でした(笑)。近々、ワクチン注射があるんだなぁと思いました。
2階に住んでる人のお許しが、なかなか出ないのでしょうかね?
本来こういう主張って野党がやるもんじゃないですかね。ワカランケド
こんなの(私は)当たり前の主張だと思いますが、出来ない、見えない壁でもあるのでしょうか。
青山さん応援します!
なんか、日本では新型コロナウィルスの独自の変異が起こらない、
変異を起こすのは外国人株だと妄想しているみたい。
そんなんいややわ。
新宿会計士殿、読者の皆様、先ほど、日本経済新聞からビジネストラック停止の速報が出されました。掲載された記事の冒頭をご紹介します。
中韓など11カ国・地域のビジネス入国停止 政府方針
2021年1月13日 16:50 (2021年1月13日 16:51更新)
政府は13日、新型コロナウイルスの水際対策を強化するため、ビジネス目的の新規入国を停止する方針を固めた。現在は中国や韓国など11カ国・地域からは例外的に入国を認めていた。緊急事態宣言の拡大にあわせ、14日にも停止する。期間も宣言期間の2月7日までとする。
続きは下記URLからご確認下さい。
https://www.nikkei.com/article/DGXZQODE137840T10C21A1000000
どうせ停止するならば、何故、感染力が強い変異種対策と共にビジネストラックも停止するとの判断が出来ないんでしょうかね。
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(なにしろ、素人考えなので)
(曖昧な記憶で申し訳ないのですが)マルクスの『資本論』によれば、「資本家は、自分が利益を確保した後なら、後はどうなっても構わない」と考えているそうです。これと同じで、「日本マスゴミ村は、自分の誤報を公にするのは、自分が定年退職した後にしてくれ。その時は日本が滅んでも構わない」、「変異新型コロナが日本に流入して問題が発生しても、自分が死ぬまで事実解明を遅らせてくれ」と思っているのでしょう。
駄文にて失礼しました。
すみません。追加です。
日本では、(仲間である限り)仲間の責任を追及するのを避ける傾向があります。
駄文にて失礼しました。
本当に政権がだらしない執政を行っているときに鋭い提案をするために夜盗が有るのに輪を掛けてだらしない。
”政権わたせ”が決まり文句で他に出る言葉は揚げ足取りだけ
国民は頭が痛い
何処に投票すれば良いのか