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「日本人の過半、日中関係が悪い」を無視する人民日報

いつも当ウェブサイトで報告しているとおり、わが国とほかの国との関係を議論する際には、「現時点で両国がいかなる関係にあるか」という数字面を使った評価もさることながら、その国がわが国と「価値や利益を共有し得る国かどうか」、といった視点が非常に重要です。これに関連し、今週、「言論NPO」が興味深い調査結果を公表しています。

日中共同世論調査、大変厳しい結果に

「言論NPO」は今週、第16回目の日中共同世論調査の結果を発表しました。

第16回 日中共同世論調査 結果

言論NPOは11月17日、16回目となる日中共同世論調査結果を公表しました。<<…続きを読む>>
―――2020年11月17日付 言論NPOウェブサイトより

言論NPOによると、今回の調査では、日本人の対中意識が悪化する一方、中国人の対日意識は改善傾向が「足踏み状態」になったのだそうです。

具体的には、現在の日中関係を巡り、中国人側は「良い」、「悪い」のどちらともいえないとする判断が半数を超え、「悪い」も22.6%と、前回の35.6%から減少しているのに対し、日本人の側では「悪い」とする回答が54.1%と半数を超えているのだとか(図表)。

図表 現在の日中関係
回答 日本→中国 中国→日本
良い/どちらかといえば良い 3.2%(8.5%) 22.1%(34.3%)
悪い/どちらかといえば悪い 54.1%(44.8%) 22.6%(35.6%)

(【出所】言論NPO)

ひとことでいえば、「大変厳しい結果」だと思います。日本人はものごとをあまりハッキリ言わない傾向にある(※著者私見)にも関わらず、その日本人の54.1%が「日中関係は悪い」と述べている一方、「日中関係は良い」が3.2%に過ぎないからです。

また、この1年間の日中関係を巡っても、日本人の側では「特に変化していない」とする回答が41.7%で最多を占めたものの、「悪くなった」と考える日本人も39.7%と迫っており、「良くなった」は2%に過ぎないのだそうです。

さらに、今後の日中関係の見通しについても、日本人側は現状のまま「変わらない」との見方が41.7%で最も多いとしつつ、「悪くなっていく」という見方も28.7%と3割近くに達しているのだとか。

これに対し、中国側では「(中日関係が)良くなっていく」との見方が38.2%と4割近く、逆に「悪くなっていく」という見方は9.6%で昨年から半減したそうであり、言論NPOは「ここでも日本人との認識の違いは顕著である」と結論付けています。

武漢コロナに言及しない時点で…

さて、日本人がこの1年で中国への印象を悪化させた要因について、言論NPOは「中国が南シナ海や尖閣周辺、さらに国際社会で取っている行動や、軍事力の増強や政治体制の違いをその理由とする日本人が昨年よりそれぞれ大幅に増加」したことなどを挙げています。

(※余談ですが、中国自身が世界にばら撒いた新型コロナウィルスについて言及していない時点で、どうも分析としては物足りなさを感じる次第です。)

また、米中対立局面において「日本は米中いずれにもつかず、世界の協力発展に努力すべき」とする日本人が約4割に達していて、「米国との関係を重視すべき」とする回答を大きく上回っている、などと記載されています。

具体的には、「米中対立下での日中協力」という質問項目で、「日本は米国と行動を共にする」が14.2%、「米中対立の影響を最小限に管理し、日中間の協力を促進する」が37.1%、「米中対立と無関係に日中協力を発展」が10.3%だったのだとか。

もっとも、これについては質問の設定そのものが対照的ではないという問題点もあるため、「日本人の大多数が米中対立局面で米中間で中立を選択した」とは言い切れないとは思いますが…。

「日中関係が悪い」に言及しない人民網

さて、この調査結果に関する話題については、昨日、中国共産党の機関紙『人民日報』が運営するウェブ版『人民網』(日本語版)にも掲載されていました。

中日両国の国民は両国関係重視し、協力強化を期待 「中日共同世論調査」

第16回北京―東京フォーラム「中日共同世論調査」の結果が、今月17日に、オンライン形式で北京と東京で同時発表された。<<…続きを読む>>
―――2020年11月18日14:55付 人民網日本語版より

中国メディア『新華社』の報道を引用する形で、「両国の回答者は中日関係を非常に重視している」と述べていますが、日本側で日中関係が「悪い」とする回答が多数を占めている事実には言及されておらず、いかにもご都合主義的な報道だと思わざるを得ません。

※ ※ ※ ※ ※ ※ ※

もっとも、日中関係は、「今この瞬間の数字」で見る限りは、経済的に非常に重要な関係にあることはたしかですが、それと同時に「未来永劫、日本にとって中国が重要である」という話でもないという点には注意が必要でしょう。

わが国と外国との関係を議論する際には、「現在、両国がどういう関係にあるか」という視点だけでなく、「その国がわが国と価値や利益を共有しているか」、「わが国や世界の発展のために、その国が必要かどうか」という視点が重要だからです。

なお、これについては近日中に、何らかの形でまとまった議論を提示する予定ですので、どうかお楽しみに。

新宿会計士:

View Comments (21)

  • 中国内陸部へ工業進出を計り事業発展を意図した経営計画は、21世紀のインパール作戦ではないでしょうか。重慶爆撃のつもりでいたとは申しませんが、ウィズコロナ新時代にふさわしい進出地として武漢が正当化できるのか冷静に経営判断して欲しいものです。

  • どこぞで、日中関係が良いか悪いかのアンケートでなく、中国に好意を持っているか否かのアンケートにおいては、日本とアメリカはほぼ同じで約80%が中国に嫌悪感を持っているとの結果を見た覚えがあります。あまり正確に覚えていないので違っているかもしれません。
    中国人というより、中国共産党に対するアンケートだったかも。

    いずれにしても、ニコニコして友好を唱えながら尖閣諸島水域に毎日のように公船(一説には武装してるとか)を侵入させ、日本漁船を威嚇するやり方を好きになるひとはいないでしょう。

  • 数日前に病院だか薬局だかで流れていた経済系のテレビ番組(おそらくテレビ東京)で「新型コロナを世界に先駆けていち早く克服した中国~」とシレっと言ってた事を思い出しました。
    中国当局や信奉者にとっては中国とソレは関係のない事、まして中国への好感度に影響するなどとんでもない!と考えていそうですね

  • しかし新華社…
    「観たいものしか見えないアル!」全開の接続!!

    という感想を持ちましタ

  • 中国共産党が無くなれば、日中関係は改善すると思います。
    韓国は、韓国人が居なくならないと、関係改善出来ないので、それよりはマシだと思います。

        • 中共帝国が瓦解したら、難民がわんさとやってきますよ。今の比で無く。

        • 人生初海外旅行先が日本だった中国人が絶対多数だったはずです。旅行先で経験した快適さは半端でなかった。ものもの、サービスの値段はべらぼうに安かった。値打ちに比べてという意味においてです。安売りし過ぎているんですよ、日本人は。何もかも。
          当方の住んでいる住宅街は取り壊しが進んでいますが、建て替え後に移ってくるのは(帰化した|帰化予定の)中国人ばかりです。事実報告の一部として。

        • >やはりそのうち、中国になっちゃうかな

          即金で買って、高級車乗ってますからね。金は持ってそうです。

  • 人民網が中国にとって不都合な記事を載せないだなんて、当たり前のこと過ぎて、わざわざ取り上げる方がむしろ不思議です。人民日報以外のメディアも、基本的には中国政府のプロパガンダ機関であることを中国政府自身が明言しているくらいですから。強いて言えば、「中国政府としては、日本の世論が中国に対して非常に厳しいということを、中国人民に知って欲しくはないと考えている」以上の意味はありません。
    ただし、中国指導部はどこぞの国の政府とは違い、今回の調査結果をそれなりに深刻に捉えているだろうと推測します。言論NPOとかいう明らかに左巻きの団体の調査ですらこの結果ですから。親玉の中身は空っぽであるにせよ、実務レベルはそこまで無能というわけではないでしょうから。
    もっとも、尖閣など、具体的な行動が伴ってこない限り、こちらから動く必要はないでしょうけれども。まあ、アメリカ大統領選が決着するまでは、中国としても新しい動きは見せられないでしょうね。

  • 親韓として知られている言論NOPが(韓国東アジア研究院と共同で行った)世論調査の結果を、DIAMOND ONLINE の 記事「日韓関係「再出発」の時・・」の中で田中均氏が引用していることをご存知の方々も多いと思います。その2ページ。
    https://news.yahoo.co.jp/articles/e640494645f89e8f7d3eb088a013767d5e29daaa?page=2

    この記事の中で、田中氏は自分の意見として、たとえば、
    「(韓国は)最も重要な国の一つであることに疑問の余地はなく・・・」
    「興味深いのは、2020年の言論NPOと韓国東アジア研究院の共同世論調査では、韓国国民の82%、日本は約48%が『日韓関係は重要だ』としていることだ。『重要でない』とするのは韓国の13%、日本の21%に過ぎず、関係改善に努力すべきという声が多数を占めている」 等々と、勝手に述べています。

    田中氏が言いたいことは、「慰安婦合意の破棄、(自称)徴用工の判決、GSOMIA破棄問題・・・などいろいろあるけれども、それには目をつぶって、年内の開催がいわれている韓国での日中韓サミットに菅首相は参加するべき、双方の外交当局もお互いを満足させるような解決策を導き出す知恵を持っているはずだ。協力せよ。」ということらしい。

    この田中氏のような人が2002年頃まで、外務省アジア太平洋州局長であったであれば、過去、日本国外務省が、韓国、中国などにやられ放題であったことは当然です。日本国は安倍元首相、菅首相の下で、どうどう自分の主張を行うようになったので、もう過去とは決別しました。もう左翼のプロパガンダには乗りません。

    そして、言論NPOさんへ、世論調査を操作して、その結果をばらまくのは、いい加減にしてください。あなた方の結果は、その他多くの世論調査の結果と大きく乖離しているので、バレバレなのですよ。

  • 更新ありがとうございます。

    日本人から見て日中関係が悪くなったのが54.1%。でも中国から見たら前回より改善?(爆笑)どこをどう見たら日中関係が良くなったのでしょうか。

    新華社や人民網が共産党に都合悪い事、載せません。しかしNBOの日本人への質問も、フェアじゃないですね。

    『米中対立の影響を最小限に管理し、日中間の協力を促進する』が37.1%
    『米中対立と無関係に日中協力を発展』が10.3%。

    なんで中国に協力する、というのが付いてくるのかな?質問の設定そのものが結論ありきになってますね。歪んでますよ。

    「言論NPO」のHP見たけど、あんまり心に響くところが無かった。『北東亜細亜と友好』が大きな案件の一つになってますが、そんなのほとんどの人が期待して無いし、今や正面敵と属国と愚連隊国と思うがな〜。

  • ログインしてないので調査結果の詳細はわかんないから、調査内容を想像してみたのです♪

    記事から見える設問と選択肢は、
    「米中対立下での日中協力の在り方について(、最も適切と思うものを選択してください)
    1 米中対立の影響を最小限に管理して日中間の協力を促進する(日本人の回答の約4割)
    2 米中対立とは無関係に日中の協力を発展させる(1と合わせて日本人の回答の約半数→この回答は1割くらい?)

    なのです♪

    選択肢はふたつだけって訳じゃ無いだろうから、記事に出てこない選択肢を想像してみるのです♪

    1も2も、選択肢の後段は「促進」と「発展」という言葉の違いはあっても、日中関係を深めるという点では変わらないので、選択肢自体の差異は、前段にあるのかなって思うのです♪

    だとすると、他にありそうな選択肢は、

    3a 米中対立に影響されない部分での日中間の協力関係を継続する

    じゃないかなって思うのです♪
    ( •´ω•` )ﻭドヤッ

    次点として、というか、最初に考えたのは、
    3b 米中対立を考慮して日中間の協力関係を縮小する
    なんだけど、これが正解だとこれを選択した人が半数以上になっちゃうので、記事の内容がミスリーディングになっちゃうので、これは無いと思って却下したのです♪

    あとは1と2で、米中対立を「考慮する」「考慮しない」のどちらも選択肢になってるから、
    3c よくわからない。その他、回答なし。
    だという可能性もわずかにあるように思うのです♪

    というのが、あたしの推理なのでした♪

    誰か答え合わせをして欲しいのです♪

    • (。゚ω゚) ハッ!

      選択肢は3つじゃなくても良いんだ!!

      3bと3cがあって、
      1 米中対立の影響を最小限に管理して日中間の協力を促進する(日本人の回答の約4割)
      2 米中対立とは無関係に日中の協力を発展させる(1と合わせて日本人の回答の約半数→この回答は1割くらい?)
      3(3b) 米中対立を考慮して日中間の協力関係を縮小する
      4(3c) よくわからない。その他、回答なし。

      の4択だったという可能性も捨てがたいのです♪

  • 共産主義が未だに残っているのは独裁傾向のある国が多い。
    又は人間そのものが独裁傾向がそもそもあるのか。
    たぶんそのどちらもあるのだと思います
    中国は御存知のように独裁国家ですしロシアもその通り。
    その他あまたある独裁国家も「民主主義・共産主義」を唱えて居るようです。(王政のところもありますね)
    我々は自由民主主義を標榜していますがその欠点も十分に理解し運用していかなくてはなりません
    それは「よく知ること」「知らなくてはならないこと」「選挙で意思を示すこと」 だと思っています。
    つまり積極的(常に注意を払い選挙に行く程度のこと)に政治に関わらないと民意は迷走し自由民主主義は崩壊します。
    所謂左翼的な方は議論が出来ないけいこうにあります。
    つまり話が出来ず一方的な結論を押しつけてくる(これが独裁になるのかな)
    政治は究極のリアリズムと言われ話し合いにて決めていくしか無いのです。
    それには多数決が問題はありますが今のところ最良かと思います。
    これに正しいとこ間違っているとかは含まれないと思っています。