本稿はちょっとした「メモ書き」です。韓国メディア『中央日報』(日本語版)に、「東京特派員」と名乗る人物が執筆したコラム記事が、ある意味では興味深いものです。「日韓関係を改善するためには韓国が約束を守らねばならない」というのが日本政府の一貫した立場なのですが、ここに旧来型の「韓日関係への忖度」を求める韓国メディアの焦りが出てきた思いがするからです。
何でもアベノセイダーズ
皮肉な話ですが、ハチャメチャな論考を読んだ方が、却って現状をすっきり整理することができることもあります。自称元徴用工問題や輸出「規制」撤回要求など、韓国が日本に対して仕掛けて来ている瀬戸際外交、不法行為の数々を巡って、「アベが悪い」と糾弾するかのようなコラム記事を発見しました。
【コラム】忖度とコード…意志なき者にふさがれる韓日外交(2020.06.08 09:29付 中央日報日本語版より)
末尾には「ソ・スンウク/東京特派員」とありますが、日本に在勤していたとしても日本社会のことをきちんと理解しているとは限らないという意味では、まことに良い事例です。
あるいは、少なくとも「日本などの先進国では法律や約束を守ることが大切にされる」という、ごく当たり前の常識を持っていたとしたら、こんな文章にはならなかったのかもしれない、という気もします。
実際の文章についてはリンク先で直接確認していきたいのですが、だいたい文脈に沿って主張内容を箇条書きにしておくと、つぎのようなものです。
- 日本政府が260億円を投入して配布した、「あまりにも小さくて口と鼻を同時に覆うことができない」とされる「アベノマスク」の着用を義務付けるという、埼玉県のある公立中学校による指針が日本全国で波紋を呼んだ
- 森友・加計学園や「桜を見る会」の問題でも明るみに出たとおり、長期政権にへつらう官僚の態度は、日本社会の「忖度」文化に対しては、否定的な意味が強まっている。8年近い記録的な長期執権が植え付けた「忖度」という名のウイルスは、このように日本社会のあちこちに傷を残している
- 韓日関係もまたこうした忖度文化の影響を避けられずにいる。日本政府内の事情に詳しい東京の情報筋は「韓日外交の最前線に立つ日本外務省の存在感が消えたのも忖度の影響」、「韓国に対する首相官邸の強硬気流を意識した茂木敏充外相が韓日関係に全く意欲がない」などと話した
ところどころ、日本語表現として不自然なものも混じっていますが、早い話、安倍政権が長期化するにしたがい、茂木外相の安倍総理に対する「忖度」、あるいは官僚社会で根付く「忖度」文化などの影響で、日韓関係の改善が進まなくなった、といった主張のようです。
日韓関係が悪化した大きな要因のひとつである、自称元徴用工判決の違法性などにまったく触れようとせず、あたかも「安倍総理に対する忖度という日本社会の悪弊が韓日関係の関係改善を阻んでいる」とでも言いたげな記事は、正直、読んでいても呆れてしまいます。
アベノセイダーズの勘違い
最近、日本社会に出現しているのが、何でもかんでも「アベ」が悪い、と主張する人たちですが(通称「アベノセイダーズ」)、韓国メディアと「アベノセイダーズ」は相性が良いのでしょうか。ここまで見事な「アベノセイダーズ」的主張は、見ていてむしろ清々しい(笑)ほどです。
さらに、とくに驚くのが、末尾の次のような記述です。
「昨年11月の韓国政府の韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)終了猶予、ようやく実現した12月の首脳会談などでしばらく小康状態だった韓日葛藤の時計が最近、時限爆弾のようにまた動き始めた」
しばらく小康状態(というよりも膠着状況)にあった日韓関係が、ここにきてまたぞろ動き出したのは間違いありませんが、それを動かし始めたのは日本の側ではありません。韓国の側です。また、
「韓国政府は2日、日本の輸出規制措置に対してWTO(世界貿易機関)提訴手続き再開を宣言した。『韓日関係の火薬庫』という徴用関連の日本企業差し押さえ資産の現金化手続きも韓国裁判所の公示送達でまた速度を出している」
の部分に関しても、日本政府のメッセージは一貫しています。
自称元徴用工問題を巡っては「国際法を守れ」であり、輸出管理適正化措置に関しても、「輸出管理上の優遇措置を元に戻して欲しければ、韓国が輸出管理の仕組みをきちんと整えて運用しろ」、というものです。
(※余談ですが、この記事でも、輸出管理適正化措置のことを「輸出『規制』」などと平気で誤記していますね。)
つまり、日韓関係を改善するためには、韓国が国際法、約束を守らなければならないとするのが日本政府の一貫した立場であり、それ以外に日韓関係を改善する方法はありません。逆に言えば、いつも報告している次の「日韓関係の3つの落としどころ」については、②か③しかあり得ないのです。
日韓関係の3つの「落としどころ」
- ①韓国が国際法や約束をきちんと守る方向に舵を切ることで、日韓関係の破綻を避ける
- ②日本が原理原則を捻じ曲げ、韓国に対して譲歩することで、日韓関係の破綻を避ける
- ③韓国が国際法を破り続け、日本が原理原則を貫き続けることで、日韓関係が破綻する
これはこれである意味有益な記事
ただ、視点を変えれば、物事を正確に分析することができないままで東京特派員になってしまったら、こんな文章を執筆してしまう、という典型例のようなものでもあり、これはこれで彼らの心理状態を理解するうえでは参考になります。
そのうえ、今回の中央日報の記事では、こんな分析も掲載されています。
「日本の韓日関係専門家の中には『一部の韓国外交官は公私を分けず、誰に会っても最初から最後まで一方的に自己主張ばかりする』『外交官というよりも政治家のように振る舞う』という不満を吐露する人が少なくない」。
このあたり、興味深い記述ですね。
今朝の『読者投稿から読む、韓国の産業を待つ「真っ暗な未来」』における議論とも少しだけ重なるのですが、少なくともこれまでは、ビジネスや外交などの現場の最前線では、「日本との関係を損ねるのは韓国の国益に反する」という考え方が一般的だったようです。
ただ、韓国では一般国民や政府(とくに文在寅(ぶん・ざいいん)政権関係者一味)の反日感情が酷すぎるためか、日本との関係を積極的に損なう方向に走り始めています。
もしこの中央日報の指摘が事実なのだとすれば、現場レベルでも、「日本との関係を損ねること」を恐れずに突っ走る人が増え始めている、ということなのかもしれませんね。
つまり、以前であれば日本政府・外務省の関係者などから、「このままでは日韓関係がダメになってしまうから、相手のためには日本がある程度譲歩することが必要だ」とする発想が出ていたのでしょう。
韓国メディアの側の「焦り」は、待てど暮らせど、日本の側からこうした「日韓関係への『忖度』」が出てこないことにあるのかもしれませんね。
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雑談部屋に投稿しようと思ったんですが、忙しかったニダ。
韓国メディアの焦りというよりは、韓国政府の誤算という感じがしますね。
新宿会計士さんは、韓国外交官が自分の主張しか言わない事をピックアップしていましたが、私は、逆に日本外務省の問題を感じました。
以下引用します。
韓日外交の最前線に立つ日本外務省の存在感が消えたのも忖度の影響」と話した。この情報筋は「韓国に対する安倍首相と首相官邸の強硬気流を意識した茂木敏充外相が韓日関係に全く意欲がない」とし「安倍内閣で外相を務めた前任者2人と比較すると、韓国に対する理解度が非常に低く、韓国に関心もない」と話した。
引用ここまで。
茂木外相は、優秀で韓国に対しての理解度が高いと思います。
ここで韓国人が言う理解とは、韓国人の考える日韓関係=「韓国が被害者で、日本が加害者。だから韓国が倫理的にうえだから、日本は韓国に譲歩しなければならない」という話だと思います。
結果的にここに書いてある「外務省の存在感」が、ある意味「諸悪の根源」だったのでは無いかと思います。
韓国人外交官は、自国の利益を一方的に主張し、日本人外交官は、御用聞きの様に相手国の要望を聞いて廻る訳です。
こんな状態で、外務省に任せておけば、日本が損をする話しか出て来る訳は有りません。
韓国外交官は、日本人外交官を馬鹿にしていたでしょう(武藤元大使を含めてです)。
韓国では、左右が入れ替わる政権交代により、過去から日本(それ以外も全て)と関係が有った外交官は、閑職や飛ばされるかをしているでしょう。
韓国外交の手詰まりの原因の一つだと思いますが、誰がやっても、自分の主張ばかりする所は、変わらないのかなとも思います。
私は茂木外相を、良く韓国をコントロールしていると評価しています。
もう、昔の外務省の様な対応をされると、国益を損ないますので、彼らの評価方法から考え無いといけないと思います。
>もう、昔の外務省の様な対応をされると、国益を損なう
牧野愛博朝日新聞編集委員がご自身の記事においてよく言及する「日韓関係者」の正体とは一体だれだれのことなのか自分は気に掛かってしょうがありません。
田中均、藪中三十二、あたりでしょう。
だんな様
財務省、外務省についてはブログ主様も手厳しいし、私も同じ意見を持つのですが、安倍政権になってから変わっている部分もあると思っています。官僚組織は内閣の方針に合わせて動くのですから、今の安倍政権が上手く進路を変えつつあると捉えることもできるかと。また、官僚にもその方針に納得する人が増えているのではないでしょうか。
日本政府は図らずしも、二階氏の発言を実践してるのかもです・・。
譲れるところは譲り切ったから、〔ビジネスライクに〕大人の対応をしてるんですよね。きっと。
*甘やかすだけが大人じゃないですものね。
日中関係での二階幹事長に当たる人が日韓関係ではヌカガ(すみません どうしてもカタカナです)さんやカワムラさんですが 力不足なんですね。(ニカイさんのように力があったら大変なことになっていますけど)
皆さんお忘れになっていると思いますが、一部の方の
アベ又はアベガーと唱えている相手は、日本の安倍総理大臣ではありません。
日本の安倍総理大臣が神であると、その人達が認識しているから
アベ又はアベガーと崇めているのです。
神であるから、今回のコロナウィルス問題においても
いつこの事態が収束するか解っているはずだと夜盗の方々が
総理大臣に難詰しているではありませんか?
ちょろんぼ様
アベガーではなくアガペー(神の無条件・無限の隣国愛)を訴えているのですね。
②か③ではなく、①か③では???
中国もいるし、絶妙はバランスで対処してるのでしょう
独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。
(だから訴えないでください)
(まず『笑点』のテーマを流して、司会は『アベノセイダース』で)
「山田君、韓国に忖度しない安倍総理の座布団を、全部、取りなさい」
「それから、マスコミ様と韓国様に忖度しない、ここにコメントする連
中を、韓国の裁判所に訴えなさい」
と言われたら、皆さんはどうしますか。(えっ!まず私が訴えられる)
蛇足ですが、韓国が北朝鮮からヘイトで訴えられそうです。
おあとがよろしいようで。
引きこもり中年さま
韓国の司法権は、日本国内に通用しないニダ。
私も、重罪なんでしょね。
韓国はいつも自分の姿を投影して相手を見ますね。
韓国の方が、忖度社会でしょう。
序列社会ですので、序列が上の人の考えを忖度するし、韓国社会全体の意識(例えば反日)に忖度して行動(反日行動は無罪放免)するのが韓国ですね。
価値観が違いすぎる様へ
私もそう思いました。
日本の官僚・政府関係者が安倍総理に忖度する度合いより、韓国の官僚(司法・検察を含む)や政治家がムン氏に忖度する度合いの方が、桁違いに大きいと思いますね。
日本が全て与えてあげた下朝鮮。
被害妄想下朝鮮。
乞食根性下朝鮮。
未熟、幼稚国家下朝鮮。
韓国政府が読み違えて追い込まれ焦ってるのは分かるんですが、もう一つ特に今回のコロナ騒動で見えた事が有ります。
それは書かれてる様な韓国のマスコミの意見、多分韓国政府の影響下に有るんでしょうけど、このような意見と同じ論調での安倍政権批判が日本のマスコミやネット上に連動して行われる事が繰り返された事です。
また芸能界も安倍政権打倒に大規模に動員された事も有りました。
そして共同通信社の執拗なまでの意図的な誤報による政権攻撃。
放送、マスコミ分野は韓国政府の考えを垂れ流すプロパガンダ機関と成り下がった事に多くの人が気がついたのではないでしょうか?
またネット上でも世論を誘導しようとする動きも強烈な物がありました。
この分野でのコリアパージが早急に必要と思われます。