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中韓との出入国制限、もしも長期化したらどうなるのか

先日の『時事「政府、中国などへのビジネス渡航解禁」記事の怪』では、「日本政府が中国などに対するビジネス渡航を容認する方向で検討している」とする報道を紹介しました。さまざまな点から考察するに、現時点でこの報道は虚報、あるいはアドバルーンの類いと見ておいてよいと思いますが、その一方で、韓国メディアには、「日本とビジネス目的の入国の議論は行われていない」とする報道も出てきました。

JNTOの「2020年4月の訪日客」データ、本日公表予定

予定では本日、日本政府観光局(JNTO)が2020年4月分の『月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)』を公表するそうです(JNTOによると発表時間は夕方4時15分ごろだそうです)。

先月の『3月の訪日外国人は93%減少して20万人を割り込む』でもお伝えしましたが、すでに3月の時点で、訪日外国人は前年同月比93%という大幅な落ち込みを記録しているのですが、これから発表される4月は数値は、さらに大きく落ち込んでいるのではないでしょうか。

これについてはデータを待ちたいところです。

先週発生した時事通信の「飛ばし報道」

さて、『時事「政府、中国などへのビジネス渡航解禁」記事の怪』では、「日本政府が『陰性証明書』を発行したビジネス渡航者に対し、中国などへの渡航を容認する方向で検討に入ったことを、15日、政府関係者が明らかにした」とする時事通信の報道を紹介しました。

政府、ビジネス渡航解禁を検討 新型コロナ非感染証明が条件(2020年05月15日22時01分付 時事通信より)

この点、ビジネス界からは、ビジネス目的での外国への渡航制限を緩和するような要望が強い、といった報道も目にします。ここで、冷静に考えていくと、「渡航制限」とは、少なくとも次の3つの要素から構成されています。

  • ①航空便が運休となるなど物理的に外国に行く手段が限られている
  • ②日本人が相手国に入国できない、あるいは相手国で自由に行動できない
  • ③感染地域から日本に帰って来たときに、空港などで隔離の対象となる

この3つの論点についてはきちんと分けて考える必要があります。

まず、①については、たとえばJALやANAは9割の減便に追い込まれるなどしているようですが、これについてはあくまでも航空会社の側の問題であり、基本的に日本政府がどうのこうのできるものではありません。

ANAとJALは公的資金投入なしで耐えられるか

コロナ禍は航空業界にも激震を与えている。緊急事態宣言による外出の自粛要請や海外への渡航制限により、全日空(ANA)と日本航空(JAL)は利用客が1~3月期は国内、国際路線ともに空前の減少を記録、当面は金融機関からの資金借り入れでしのぐ構えだが<<…続きを読む>>
―――2020年5月16日付 WEDGE Infinityより

次に②についても、日本政府にどうこうできる問題ではありません。なぜなら、日本からの入国を認めるかどうか、隔離措置を命じるかどうかは、相手国政府が決める話だからです。

外務省『海外安全情報』のページによると、現在、184ヵ国・地域が日本人などに対する入国制限措置を取っているほか、67ヵ国・地域が入国後の行動制限措置(たとえば2週間の自己隔離措置など)を課しています。

新型コロナウイルス(日本からの渡航者・日本人に対する各国・地域の入国制限措置及び入国後の行動制限)(令和2年5月15日 午前6時更新)(外務省『海外安全情報』HPより)

そして、①や②などの制限を乗り越え、相手国に渡航したとしても、帰国後には③の問題点に直面します。

厚生労働省の『帰国された皆様へ』によると、過去14日以内に『入国制限対象地域』に滞在していた人に対しては全員にPCR検査が実施され、しかも検査結果が出るまで自宅(あるいは空港内や検疫所が指定した施設など)で待機しなければならないのだそうです。

時事通信の記事では、こうした基本的な問題についての整理がいっさいなされておらず、また、この記事を執筆した記者が、わが国の出入国に関する基本的な法制度についてもきちんと理解しているのか怪しい限りです。

さらに、この時事通信の記事が配信されたのは先週金曜日時点の話ですが、毎日新聞が5月18日付朝刊で掲載した『新型コロナ 政府、出入国緩和を検討 ビジネス・研究限定』などという記事を除けば、「日本政府がビジネス渡航を解禁する予定」とする情報に目立った続報はありません。

こうした事情を総合的に判断するならば、先週の「日本政府がビジネス渡航を解禁する方向で検討している」とする趣旨の時事通信の記事については、現時点では「飛ばし報道」だと結論付けて良いでしょう。

ビジネス客中心に渡航需要があることは事実

ただ、ビジネス客を中心に、海外に渡航するという需要が存在していることは間違いありません。

実際、先週金曜日の茂木敏充外相の記者会見でも、読売新聞の大藪記者の質問に対し、出入国規制の緩和については慎重姿勢を示したものの、ビジネス客などを優先して移動制限を緩和していくことの必要性に理解を示しています。

具体的には、茂木外相は『茂木外務大臣会見記録(令和2年5月15日(金曜日)14時19分 於:本省会見室)』のなかで、まずは日本での感染拡大の収束に加え、海外への渡航が安全化どうかについてもしっかりと見極めることが必要だとしつつ、

『ファストトラック』と呼ぶかどうかは別にしまして、仮にこの入国制限等々、移動制限等々を緩和する場合でも、ステップバイステップといいますか、段階を分けてやっていくということになるのではないかなと思います。おそらく最初は、人でいいますとエッセンシャル人材といいますか、どうしてもビジネス上の必要な人であったりとか、専門家であっていろいろな意見交換が必要な人であったりとか、そういう必要不可欠な人材というのが急がれるのだと思います。なかなか観光客も含めて一般ということになると、それよりはかなり遅い段階ということになると思います。

などの見解が示されています。

非常に当たり前の発想でしょう。

先行する中韓の事例

こうしたなか、出入国制限が続く日本をしり目に、5月1日からすでに「ファストトラック」が実現しているのが、中韓両国だそうです。

中韓、企業関係者往来の「迅速手続き」新設で合意(2020年4月22日 15:13付 AFPBBニュースより)
中国 韓国企業関係者の例外入国実施へ=上海など5地域(2020.04.29 21:32付 聯合ニュース日本語版より)
中国「陰性」条件に制限緩和を日本に打診:中韓では「ファスト・トラック」で入国実施開始(2020年5月14日 14:30付 exciteニュースより)

これは、たとえば中国のビジネス客が韓国を訪れる際、中国国内で陰性証明書を取得し、韓国到着後に再度検査で陰性が確認されれば、14日間の隔離措置が免除される、といった措置のことです。

おそらく、中韓両国が日本に求めているのは、こうした「ビジネス客に対するファストトラック」なのでしょう。

そして、もしかすると時事通信の記事も、単純な虚報というよりはむしろ、政府のどこかの部局の役人が閣僚や国民などの反応を見るために、「アドバルーンを上げる」という意味で流した情報だ、という可能性もあるかもしれません。

(※ただ、もしそうだったとしても、さすがに時事通信の記事は情報が整理されてなさすぎて、お粗末ですが…。)

韓国側では「ビジネス入国の議論なし」報道も

さて、韓国メディア『聯合ニュース』(日本語版)に昨日、興味深い記事を発見しました。

ビジネス目的の入国 日本とはまだ議論なし=韓国外交部

韓国外交部は19日、韓日の間で両国のビジネスマンの入国を円滑にするための議論はまだ行われていないと明らかにした。<<…続きを読む>>
―――2020.05.19 17:02付 聯合ニュース日本語版より

聯合ニュースによると、ビジネス目的の入国円滑化に関して、韓国政府・外交部当局者は「日本と(の間で)は特に伝えるほどの状況はない」などと述べたそうです(※余談ですが、これも先ほど紹介した時事通信の報道を否定する材料のひとつでしょうね)。

聯合ニュースはほかにも、日中間3ヵ国の保健相が15日に開いたコロナ対策テレビ会議で、韓国が「科学者、医師、ビジネスマンなどの移動を広げていくことを提案した」としているのですが、現時点において日本側の報道でも

日本は自国内の感染状況が改善するまで入国制限の緩和は難しいとの反応を示した

などとされている点を指摘。

あわせて外交部の当局者は、日本との新型コロナ対応経験の共有についても、

特に(外交ルートで要請されたことは)ないようだ

と述べたのだそうです。

ヒトの往来の断絶が長期化すれば…

さて、現在、コロナ防疫を目的とした入国制限・移動制限措置が世界的に広まっていて、日本は「ビジネス上の関係が深い」とされる中国や韓国、台湾などとの往来もしばらく途絶えている、などとされます。

ただ、いつまでも関係断絶状態が続くわけにもいかないでしょうから、遅かれ早かれ、茂木外相が言うように「エッセンシャル(重要)な人材」に対して入国制限を解除する、という議論が出てくることは間違いありません。

こうしたなか、個人的に注目しているのは、その「順序」と「段階」です。

とくに、日本でコロナ騒動がほぼ終息すれば、台湾のようにほぼ防疫に成功したとされる国とのあいだで限定的に相互往来制限が解除されるという事例が出てくると思われる反面、「ゲイクラスター」の国との相互往来制限解除がすんなりいくのかどうかには注目したいところです。

さらには、特定国の場合、日本国民に対する入国ビザ免除措置の再開に当たっては、両国間の懸案を巡り、日本の側が「輸出『規制』を解除すること」だの、「歴史問題で譲歩すること」だのを求めて来るケースもあるかもしれません。

そして、こうした事情で特定国との入国制限措置の解除が遅れれば遅れるほど、ヒトの往来の断絶が長引くということであり、日本とほかの国の関係が正常化しつつあるのに、特定国のみ関係正常化が遅れるような事態があれば、そのような相手国との経済関係は次第に薄まっていくのかもしれません。

そういう点からも、出入国制限の動向には注目する価値がありそうです。

新宿会計士:

View Comments (14)

  •  独断と偏見かもしれないと、お断りしてコメントさせていただきます。

     中国には(大学教授でも)下手に入国するとスパイ容疑で拘束され、韓
    国では(韓国メディアからの引用でも)ソウル支局長でも収監されます。
    ならば、新型コロナウィルス感染に関係なく、中韓には入国しない方が良
    いのではないでしょうか。

     駄文にて失礼しました。

    • 入国しないのなら、入国させないのも必要です。
      中韓二ヶ国にはビザの厳格化が必須です。

  • コロナの闇からの侵入防止のため。
    入国禁止でなく、入国後2週間の検疫を主張しましょう!

    実質ビジネスお断りになりそうですね。

  • K”防疫を揶揄して脊髄反射を引き出すのも面白いかもしれません。

    真面目な話として、中韓からの入国が実質的に途絶えてから、6月中に90日を迎えます。
    ビザなしで入国し、出国しないままになっている中国人・韓国人は不法滞在となるわけです。
    入出国管理記録を確認し、ビザなし入国したまま不法滞在している人の数を国別に洗い出し、その数が多い国は「信頼に値しない国」としてビザを復活させてもらいたいものです。
    (既に、某国会議員にお願いしました)

    不法滞在が多そうな国として、みなさんは何処を思い浮かべられますか?

  • 難しい問題ですね

    中韓に関してはずっと続けて欲しい
    製造業での工作機械は日本製が多いと聞きます
    故障→中韓の技術者では対応できない→生産中断→経済的打撃
    になってくれないかなw

    K国
    直接日本政府に聞けばよいものを
    韓国メディアに発表(日本語版)→バカな国内メディアが報道→政府対応
    毎回使われる姑息な手段ですね
    政府は正式なものでなければ黙殺してよい

    • わんわんさま

      >直接日本政府に聞けばよいものを
      >韓国メディアに発表(日本語版)→バカな国内メディアが報道→...

      ATM報道に限らず、NHKでも日本経済新聞でも、半島系読者の「関心を惹きそうな見出しの記事」を連発しています。その意図は、韓国報道に引用してもらうためと当方は判断しています。すなわち会計士どのの嫌っている?「循環参照」を実行して、根拠なきものを相互に引用し合って事実にコネ上げる「ジャーナリズム錬金術」が実行されている。オンライン記事参照が増えて広告収増したりもするのでしょう。そのような観点で記事に接すれば、当該記事の作成者がどんな意図をもって活動しているかはっきりするのではありませんか。

      • はにわファクトリー さま

        ありがとうございます

        私はメディアはできるだけ中立的に判断しようと努力してますが無知故に難しいところがあります

        ロビー活動(プロパガンダ)は中韓が圧倒的優位にたってます
        本来なら日本のロビー活動を支えるべきメディアがこれでは…
        気分が↘します

  • 更新ありがとうございます。

    航空業界、旅行業界はコロナ禍で死活問題ですね。イキナリ脱線しますが、日本の2大キャリアーは両社とも乗りたくない会社です。

    理由はJALは労働組合がいくつにも分かれ、それぞれが厳しい要求を出す。まるで韓国企業のように。 会社自体、半官半民でスタートした国策会社。代議士の阿呆息子や大手企業の重役の令嬢を、スキル無しでも採用してました。

    御巣鷹山以外にも事故は多く、隠蔽体質も改善されたかどうか、知りません。経営トップは金融機関や経済界の重鎮が腰掛け程度にやってる。赤字体質はコロナ以前から指摘されてます。

    ANAは、言わずと知れた朝日新聞社の重役が創業期から関わってます。純民間と言いながら、ココも社内は酷いもんでした。JALと売り上げで同等になったのも、運輸省との濃い繋がりを作った為。国際線開業なんか、自力では出来ませんよ。またココもずっと以前は事故が多かった。

    ですから、JAL、ANAが赤字になろうが昨年比10%台の搭乗率に落ちようが、倒産しようが、気にしません。ある意味、2社で正規国際線を牛耳っていたのが、断たれるのは良かったとさえ、思います。LCCにも期待はしませんが。

    中韓北露などの入国制限措置の解除が遅れれば、ヒトの往来の断絶が長引くということであり、自由主義国等ほかの国の関係が正常化しても特亜等のみ正常化が遅れれば、それでヨシ!自然消滅ですね。

  • イーシャ様

    〉不法滞在が多そうな国

    皆さんご存知、反日原理主義の
    K国でしょう
    しかも絶対神慰安婦を掲げて
    反日しながら最大の輸出品として
    各国で稼がれている売春婦の方々
    が多数ではないでしょうか

    おっと、忘れずに
    特別という名の永住者も

  •  入国制限の緩和については、直近の感染状況を基準に、まず台湾、次に中国、最後に韓国の順に実施することが望ましいと思います。
     「世界をリードするK防疫」を自負する韓国を途上国扱いすることで、日韓の人的交流再開をできる限り先送りし、日韓関係の自然消滅を実現するべきだと思います。

  • 最初の流行が緩和した後、
    3月半ばから流行が再発したことを鑑みれば、

    渡航者の規制を緩めることは難しいのでは???

  • >日本政府が『陰性証明書』を発行したビジネス渡航者に対し、中国などへの渡航を容認する方向で検討に入ったことを、15日、政府関係者が明らかにした

    そりゃ中国から要請はあるでしょうし検討ぐらいするでしょうから、これを持って飛ばしというほどではないんじゃないでしょうか、という点についてはさておき、渡航中止勧告先に日本から出国することを禁止する法的根拠も、中国が入国を許可することを日本が禁止することもできないのですから、ここで日本が検討しているとされるのは「日本政府が」陰性証明書を発行するかどうかという点でしょう。全体主義国家と揉めるとすれば政府が認可した指定検査機関での検査結果をもって、とするか、日本政府署名付き陰性証明書を発行するかという点になると考えます。それとも出国ロビーでPCR検査をしろって言ってきてるんでしょうか?それなら検査結果は入管が出すことになるので日本政府お墨付き検査結果ということになるのかな?中韓はどうやってるんだろ?

  • サプライチェーンの中国一極化を避けることが重要であることは、既に周知のこととなりました。当面の短期的渡航需要はともかく、長期的経済関係は減衰していくことが自然の流れです。その前に中国が米中経済戦争で頓死するかもしれませんが。

    韓国との関係も同様の傾向になると思いますが、もう一つブレーキ要因があります。日中が渡航制限を相互の防疫上の措置として認証したのに対し、韓国は日本の制限に対する対抗措置として、つまり政治的措置としてそれを行ったということです。であれば、日本政府もここは意地悪く、韓国が先に制限解除しない限り現況を継続すると言い続けて欲しいものです。もし韓国が痺れを切らして解除に踏み切ろうという動きを見せたら、「韓国は日本に屈した!」とでも騒いでやれば…。

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