杉田水脈氏が『新潮45』に「LGBTには生産性がない」とする論考を発表した問題で、一昨日、自民党が彼女に対して指導を行ったことを明らかにしています。いい加減、この論点を続けるのもいかがなものかと思うのですが、いちおう、いくつかの論点について説明を行っておきたいと思います。
目次
LGBT議論を政治利用する人たち
簡単ではない、LGBTの議論
「LGBT」、つまり同性愛者や性同一性障害を抱える人などに関して、自民党の杉田水脈衆議院議員が『新潮45』に寄稿した内容が大きく問題視されています。しかし、奇しくも当ウェブサイトでは、杉田氏の寄稿が問題視される直前に、この問題について取り上げています。
それが、『私たちが思うほど単純ではない「LGBT」とセクハラの議論』という記事です。
この中で述べた私自身の見解を繰り返しておくと、「LGBT」、あるいは「性的少数派」と呼ばれる人々が、さまざまな面で不便を蒙っていて、また、社会的にも理解されず、差別を受けているという事実を無視してはならないと考えています。
このあたりについては、最低限の法的な手当てをしなければならない部分も多く(たとえば相続や贈与、所得税法上の扶養親族控除や社会保険等)、このような問題を放置し続ければ、やがてLGBTを巡る運動自体が日本共産党などに乗っ取られる恐れもあると思います。
ただ、その一方で、だからといって「LGBT」と呼ばれる人たちに対する過度な配慮は不要です。いや、むしろ同和利権のような、「差別されている人は特権階級だ」といった利権構造が出現することには警戒しなければなりません。
いずれにせよ、もういい加減、この話題ばかり繰り返すのもいかがなものかとも思うのですが、やはり、LGBT問題を巡っては「保守派」の間でもさまざまな意見があるため、本日は自民党の動きなどについて紹介しておきたいと思います。
自民党が杉田氏に異例の注意喚起
自民党は8月1日付で、『LGBTに関するわが党の政策について』と題する文書を公表。あわせて、2年前に公表した次のような資料を改めて提示しています。
- 性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指す為のわが党の基本的な考え方(平成28年5月24日)
- 政策パンフレット:性的指向・性同一性(性自認)の多様性って?~自民党の考え方~(平成28年6月作成)
- 性的指向・性同一性(性自認)に関するQ&A(平成28年6月作成)
まずは、自民党の報道発表の本文を見ておきましょう。
「わが党のLGBTに関する政策については、「性的指向・性自認に関する特命委員会」において議論され、平成28年5月、「性的指向・性自認の多様なあり方を受容する社会を目指すためのわが党の基本的な考え方」が取りまとめられ、同年7月の参議院選挙及び昨年の衆議院総選挙の公約に明記されたところです。わが党は、公約に掲げたように性的な多様性を受容する社会の実現を目指し、性的指向・性自認に関する正しい理解の増進を目的とした議員立法の制定に取り組んでいます。/今回の杉田水脈議員の寄稿文に関しては、個人的な意見とは言え、問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現があることも事実であり、本人には今後、十分に注意するよう指導したところです。/わが党は、今後ともこの課題について、各国の法制度等を調査研究しつつ、真摯かつ慎重に議論を進め、議員立法の制定を目指していく所存です。/皆様のご理解とご協力をお願いいたします。」
つまり、自民党は杉田議員に対し、(LGBTの)問題への理解不足と関係者への配慮を欠いた表現があるとして、「今後、十分に注意するように指導した」としていますこれを受けて、報道によっては、自民党が個別の議員に対してこのような指導をするのは異例だ、といった論評も出ているようです。
もっとも、記事末尾に「皆様のご理解とご協力をお願いします」とありますが、残念ながら、今回、杉田議員や自民党を手厳しく批判している勢力とは、自民党の政策に「ご理解とご協力」をしてくれるような人たちではありません。
端的に言えば、杉田氏を攻撃しているのは、極左活動家や日本共産党、あるいは「パヨク」と呼ばれる勢力です。彼らはLGBTの権利向上という本来の目的はどうでも良くて、とにかく自民党・安倍政権を攻撃する材料に食いついているだけであり、そもそも「理解し、協力してくれる人たち」ではありません。
その意味で、杉田氏の今回の論考は、内容の稚拙さ、杜撰さもさることながら、安倍政権に対する要らぬ攻撃材料を提供したという意味でも不適切でした。彼女には猛省を促したいと思います。
ただし、具体的に、杉田氏の論考のどこが問題なのかについては、彼女が執筆した記事の本文を読んだうえで、『原文を読んだうえで、それでも杉田水脈氏の不見識を批判する』にまとめてありますので、本稿では繰り返しません。次の記事をご参照ください。
まだ続く周辺論点
立憲民主党に「違憲立法」というブーメラン
ところで、自民党が改めて示したリンクを読むと、いわゆる同性婚・パートナーシップについては、次のような記載があります。
「憲法24条の『婚姻は、両性の合意に基づいて成立』が基本であることは不変であり、同性婚容認は相容れません。また、一部自治体が採用した『パートナーシップ制度』についても慎重な検討が必要です。」
この点については私も同意します。
あくまでも日本国憲法の規定は「婚姻は両性の合意に基づいて成立する」というものであり、憲法を守るべき立場にあるのならば、同性婚は容認すべきではありません。ところが、立憲民主党の福山哲郎幹事長は先月30日の会見で、「同性婚を可能とする法整備を検討している」と明らかにしました。
立民、同性婚の法整備検討 LGBT差別解消へ(2018/7/30 19:00付 日本経済新聞電子版より)
あれ?
あれほど「安保法制は違憲立法だ」と大騒ぎしていた人たちは、このニュースを聞いて、立憲民主党がやろうとしていることは違憲立法だと批判しないのですか?
もし今でも民主党政権が続いていたら、「数の力」で押し切って、同性婚を容認する法律が成立していた可能性だってあります。そう考えると恐ろしい話ですが、同性婚自体は違憲立法であり、このような法律など、許されるはずがありません。
ただし、LGBTの方々が、相続や所得税法などの面で不利益を被っているという点については、自民党の認識も甘いと言わざるを得ません。同性婚を認めないという姿勢そのものについては私も支持しますが、だからといってLGBTの方々が置かれている不利益を放置して良い、という話にはなりません。
そして、杉田水脈氏の論考は、こうしたLGBTに関する社会的議論を喚起したという点では、意味があったといえるかもしれません。
なぜ近親婚や児童性愛が認められないのか?
ついでに、私は杉田氏の論考について、「そもそも不勉強であり稚拙だ」と批判しましたが、この点については読者コメント欄にもいくつかのコメントを頂きました。そのなかで、「同性婚も近親婚も児童性愛も、両者の合意の上であれば、認められてよい」といった意見があったことも事実です。
しかし、私はこの見解には賛同しません。
まず、そもそも私は「同性愛者が法的な不利益を被っている点について手当てした方が良い」と述べただけであって、「同性婚を容認する」と申し上げたことはありません(いちおう、自分自身でもウェブサイトを読み返してみましたが、そのような誤解を与える下りもないと思います)。
そのことを踏まえつつ、なぜ近親婚(親子婚、兄弟婚)が認められないのかといえば、近親者の間で子供を作ることに倫理上、大きな問題があるからです。したがって、「成人した大人同士であり、かつ、同性同士であれば、LGBTに準じたパートナーとなることができる」という屁理屈は成り立つかもしれません。
一方、ある定義によれば、児童(小児)性愛者については「13歳までの児童に対して継続的に性的関心を持っていて、性的関心を持っている対象年齢よりも5歳以上年上の人間」のことをさすのだそうですが、確かにこのくらいの児童の場合、自分の意思で大人と恋愛することは不可能です。
もちろん、理屈の上では児童が自身の意思で大人に対して恋愛感情を抱くというパターンもあり得ると思いますが、それでもこの場合は、未熟な児童の「自由意思」よりも、「健全に育つ権利」の方が大事です(※この「健全に」の部分については異論があるかたもいるかもしれませんが、ひとまず置きます)。
逆に、児童がそのような行為に関心がないにも関わらず、大人が児童に対して不適切な関係を強要する、といったことを社会的に認めてしまえば、児童の人権が著しく阻害されます。したがって、「大人から児童に対してアプローチする権利」というものは認めてはなりません。
余談ですが、立憲民主党の小川勝也参議院議員、聴いていますか?おたくの息子さん、児童性犯罪者ですよ?「部下のセクハラの責任を取って麻生副総理兼財相が辞めなければならない」と主張したのなら、息子の性犯罪の責任を取って自身も議員辞職しなければ理屈に合いませんよ?
小川勝也参院議員長男を再逮捕 女児の体触った疑い 防犯カメラから浮上(2018.7.9 11:51付 産経ニュースより)
少なくとも私は自分の子供を、立憲民主党の小川勝也参議院議員の息子のような児童性犯罪者からは全力で守るつもりですし、もし大人が児童に対して恋愛や性的関係を持つことを容認する法律が成立してしまったならば、そのような法律の違憲性を問う訴訟も起こします。
立憲民主党の小川勝也参議院議員の息子は性犯罪者であるという事実は重要な点なので、何回も何回も繰り返し強調しておきたいと思います。
なお、現在の民法では結婚可能な年齢は女子が16歳以上、男子が18歳以上とされており、法的には未成年であっても、結婚可能年齢を超えていて、かつ、結婚していれば、その夫婦間ではいわゆる淫行は成立しないと見て良いでしょう。
ただし、近い将来、成人年齢は18歳に引き下げられ、かつ、女子の結婚可能年齢も男子と同じ18歳に改正されると見られています。この改正が実現すれば、この「女子の16歳~18歳のグレーゾーン」問題は解消するでしょう。
「同性愛カップルに子供ができない」の誤解
それから、世間一般に多いのは、「同性愛カップルには子供ができない」、とする誤解です。この点については先日の当ウェブサイトでも相当に議論したのですが、生殖能力と恋愛は別問題です。極端な話、男性同性愛者と女性同性愛者が結婚し、人工授精すれば、子供は生まれます。
これを利用して、たとえば男性同性愛者のカップル2人と、女性同性愛者のカップル2人がいて、このうち法的には男女の夫婦を2組作り、それぞれが人工授精を行えば、普通に子供を産むことは可能です。
杉田議員の主張にあった、「同性愛者(や無性愛者)は子供を作らないから生産性がない」という議論については、それこそ稚拙すぎてお話になりません。実際、このような方法で子供を産み育てている人たちの事例を、私自身も現実に存じ上げています(ごく近い人である、とだけ申し上げておきます)。
政治利用を嫌悪する
繰り返しになりますが、杉田議員が寄稿した論文は「稚拙である」のヒトコトに尽きます。なぜなら、あんな論考を世に送り出してしまえば、「自民党に対する批判」という形で、保守政治家全体に対して迷惑が掛かってしまうからです。
ただ、杉田議員が辞職すべきかどうかと問われれば、私はそうは思いません。今回の寄稿の件については、彼女自身が適切に判断し、有権者に対して説明すべきだとは思いますが、彼女は何らかの深刻な性的不祥事を発生させたわけではないからです。
それを言い出したら、少なくともセクハラ実行者である初鹿明博衆議院議員や青山雅幸衆議院議員の方がはるかに問題ですし、さらに、山尾志桜里衆議院議員の不倫行為も、明らかに人倫から逸脱しています。このような者たちが国会議員を務めているということ自体、信じられません。
したがって、杉田水脈議員が辞職をするならば、それよりも遥かに深刻な事件を発生させている、
立憲民主党の、初鹿明博、青山雅幸、山尾志桜里、小川勝也、の4氏こそ、直ちに議員辞職すべき
ですし、そのような者たちの処分が甘すぎる立憲民主党という組織こそ、解体的な出直しが必要です。
それなのに、こうした自分たちの振る舞いを棚に上げて、何が「杉田(氏)は辞職せよ!」ですか。何が「安倍(氏)は辞めろ!」ですか。むしろこうしたダブル・スタンダードの方が、はるかに恥ずかしいと思います。「立憲民主党は国民の敵」だと、改めて申し上げておきたいと思います。
View Comments (2)
毎日の更新ありがとうございます。
いつも楽しく時には自分の考え方とは違う切り口での発言が有り、私自身の思考の幅を広げてもらえるブログでほぼ毎日拝見させてもらっています。
今回のLGBTの方々に対する杉田議員の主張はかつて私が彼らに持っていた偏見です。また私の周りの多くの人たちも同じ様な偏見を持っていました。しかし今、私はLGBTについて完全に理解できなくとも理解するために意識を向ける様になっています。
杉田議員の意見は、国民の抱く意見の一つとして尊重されるべき事ではないでしょうか。意見の是非については議論すべきでだと思います。まずは、LGBT批判なのか税金の使い方の問題なのか、私は税金の使い方の問題だと認識しています。税金の使い方について何を是とし何が非となるのか、モリカケに一年半もの時間を割いたのだから出来ない事ではないでしょう。今回の騒動で私が恐怖を感じるのは一つの意見を集団で封殺しようとする集団意識です。
LGBTの人たちが以前より市民権を得ているのだとしたらそれは忍耐と寛容を持って世間に対していたからであって自分たちの意見や考え方を押し付けてこなかったからだと思っています。
議員さんの意見なんだから議論によって解決できないものですかねぇ
子供の頃から作文が下手くそで大変読みにくい文章になりましたすみません。
多種多様な意見もありということで、時間が許せばを見ていただきたい。
http://yopparae.sblo.jp/s/article/184045992.html
LGBTので関してこれ以上私見を述べません。
最近モリカケのモリのほうから陰謀論が籠池子息から出ているようですが、もともと真偽も曖昧な話なので、単に賞味期限切れという扱いなのか。
貴兄の投稿文中に倫理という言葉が出て来る度に、郷土の偉人である和辻哲郎の書籍を読まないといけないなと思う夏の午後ですね。