最近、当ウェブサイトでは「時事ネタ」が続いていたのですが、もともと、当ウェブサイトは政治経済に特化した「独立系ビジネス評論サイト」です。本日は私自身の経験をベースに、「キャリア開発」について考えてみたいと思います。
目次
キャリア開発を考える
気が付けば40代半ばに
私自身、気が付けば40代半ばになってしまいました。
2015年に、10年近く勤務した会社を退職して起業し、それから3年近くが経過。お陰様で、ビジネスについては「順調」とは言い切れないにせよ、最低限、家族を食べさせていくことができる状況にまで成長させることができました。
こうしたなか、昨日は公認会計士資格を持つ旧知の友人・A氏と一緒に、ある会社に商談をしに行きました。詳細については、こちらに述べることはしませんが、商談自体がうまくいけば、もしかすると、この友人と一緒に仕事をすることになる可能性もあります。
商談の直後にA氏と久しぶりにゆっくりと話をしたのですが、実に刺激的でした。私とA氏は、同じ公認会計士という資格を持っていても、キャリアも現在のビジネスもまったく異なるからです。そして、ごくたまに自分と全く違う仕事をしている人と接するのは、無上の楽しみでもあります。
共通の若い知り合いの悩み
ところで、私自身は3年前まで大企業で働いていたという事情もあり、若い人(や若くない人)から、キャリアの相談を受けることがあります。多いのは「転職したい」、「どんな資格を取ったら良いでしょうか?」といった相談です。
10年近く前の話ですが、A氏の事務所にインターンとして働いていた若いB君という学生と知り合いになりました。このB君が志望する業界が、当時私の勤務していた会社と同じだったという事情で、A氏の紹介で、まだ学生だったB君の「キャリア相談」に応じるようになったのです。
その後、B君は大学を卒業し、ある大手の銀行に就職したのですが、今度は「転職したい」だの、「どんな資格を取ればよいか」だのといった相談を持ちかけられ、そのたびに、私の拙い経験に基づくアドバイスをしていたような記憶があります。
最近、B君とはあまり会っていなかったのですが、昨日A氏と会った際、そのB君が人生で4社目の転職を果たしたらしい、という話を聞きました。B君は、当時は20代の若者でしたが、私の計算が正しければ、今年33歳になるはずです。
B君は果たして、現在の職場でどのような活躍をしているのか…。その点については、非常に気になるところです。
キャリア開発の失敗事例
A氏と私の共通の友人は、B君以外にも多数います。A氏は私以外の同期の公認会計士の動静に詳しく、中には、キャリア形成に失敗した人もいるからです。それを、仮にC君とでもしておきましょう。
C君は今年、41歳になるはずです。公認会計士第二次試験(※当時の試験名称)に合格したのは23歳のころでした。当時の公認会計士試験は「難関試験」とされていて、合格するためには数年の勉強が必要であり、したがって20代前半で合格するのは「非常に優秀だ」とされていたのです。
しかし、私に言わせれば、C君は試験に合格するテクニックだけは優れていたものの、キャリア形成としては完全に失敗したようです。
最初に就職した会社については1年半で退職。会計士業界が軒並み人材難だったという恵まれた環境にかまけて、途中で海外に語学留学をしたり、当時流行だった「内部統制監査のコンサルティング会社」に転職したり、IFRS導入支援の会社に転職したり、と、コロコロ会社を転職していたのです。
ただ、人間、いくら資格を持っていようが、40代になってくると、そう簡単に転職などできなくなります。会計士といえども、何らかの「ウリ」が必要ですが、どうもC君のキャリアからは、「これが彼の強みだ」というものが見えてこないのだとか。
このように考えていくと、ビジネスマンであれば、「自分自身のコアとなるキャリアを開発し、育成すること」こそが重要なのだと思うのです。
試験至上主義に物申す
資格試験を勧奨するウェブサイトに違和感
さて、あくまでも一般論ですが、ビジネスマンが即戦力のある資格を目指すのならば、「英語」「パソコン」「簿記・会計」の3分野が良い、という話をよく聞きます。多分、英語だったらTOEIC、パソコンだったらMOS、簿記・会計だったら日商簿記検定などが「鉄板」なのでしょう。
ただ、これらの資格については、あくまでも「持っていたら誰かが評価してくれる」という手掛かりに過ぎません。簡単に取れるものならば、取っておいた方が良いことは間違いありませんが、自分自身のキャリア開発を犠牲にしてまで取るべきものだとは思えません。
月並みな言い方ですが、もし私自身が若い人たちから「資格を取るにはどうすればよいか?」と尋ねられた時には、「資格を取ること自体を目的にするよりも、今の目の前にある仕事を一生懸命こなした方が、はるかに良い」と答えるようにしています。
ところが、私が強い違和感を抱いた記事があります。少し古い記事で恐縮ですが、それが次のものです。
取らなきゃ損する!? 男性注目の「今からでもとりたい」資格5つ(2017.04.06 11:56付 マイナビウーマンより)
記事のタイトルで「取らなきゃ損する」などとキャッチーな表現が出てきますが、「英検・TOEIC」、「簿記」、「FP」、「宅建」、「大型免許」などがつらつらと列挙され、記事の末尾は「これから資格を取る予定なら、ぜひ上記のような資格を検討してみては?」という文言で締められています。
もちろん、資格は持っていないより持っていた方が良いに違いないと思いますが、より重要なのは「資格そのもの」ではなく、「資格を取る目的」にあります。たとえば、経理部への配属を希望する人が簿記検定を受験することは有益ですが、ビジネスマンがわざわざ簿記検定を受験するのは、とてもナンセンスです。
あるいは、「旅行が好きだから」という理由で、普通自動車やバイクなどの免許を取るのは素晴らしいと思います。しかし、記事の中で
「大型免許やフォークリフト免許。製造業関連で直結できる資格だと思う」(34歳/アパレル・繊維/営業職)
とありますが、「34歳/アパレル・繊維/営業職」の男性が大型免許・フォークリフト免許を取得してどうするつもりなのでしょうか?アパレル・繊維の営業職から製造業に転職するつもりでしょうか?意味がわかりません。
難関試験合格者が優秀とは限らない
むかし、ある会社で、「弁護士・公認会計士」という、難関資格(?)を2つも取得しているという、Dさんという人物に出会ったことがあります。このD氏、20代前半の頃は資格試験に受かることだけを目的に勉強三昧の生活を送っていたようで、実務のセンスには何かと疑問が付く人物でした。
たとえば、ビジネスマンに求められる「対外交渉能力・調整能力」とは、自分の会社の主張・利害を相手に伝えつつ、相手の立場を理解し、妥協点を見つけて合意することです。そのためには、相手の主張だけでなく、場合によっては、自分が所属する組織を説得しなければならないこともあります。
しかし、D氏には、こうした調整能力は皆無であり、こちらが要望を伝えても、「法律によればこうなる」だの、「原則はこうだ」などの一点張りであり、まったく話が通じなかったのです。
私自身がこれまでに出会ってきた人のなかには、こうした「実務能力が欠落しているのではないか」と疑わしい人もたくさんいます。中には、某野党から国政選挙に出馬を目指しているという人物もいます(※といっても、その人物の特定はしません)。
そういえば、難関資格や難関試験に合格した人物が優秀であるとは限らない、という事例は、たくさんあります。
不倫と政治資金規正法違反の疑いが濃厚な立憲民主党の山尾しおり衆議院議員は元検事だそうですが、彼女も司法試験という難関試験を突破しているはずの人物です。また、「クイズ王」こと小西洋之参議院議員も、元官僚だそうです。
このように考えていくと、やはり、ビジネスマンであれば、目の前の仕事を一生懸命、まじめにこなし続けること以外に、キャリアを高めていく方法はない、という私自身の持論は、そう見当外れではないと思うのです。
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私は教育研究職に付いてますが、我々の分野での「博士号」も資格みたいなもので、持っていないと研究職に就くのには不利ですが、持っていたからと言って就職が出来るというものではありません。実際に1つのポストの公募に10人以上が応募してきます(分野によっては50人以上というのもザラです)。博士号取得者に比べて職が極端に少ないので、博士号を持ったところで職に就けるようなものではありません。
私も博士課程に進む際には本気で悩みました。修士までだと就職は幾らでもあるけど、博士課程まで進むと教育研究職に就く以外の道が大きく狭められるからです。博士課程に進んだ後は、博士号取得もそうですが、常に『これだけは世界で勝負できる』という自分の武器を手に入れないと職に就けないと常に焦っていました。今考えてもあの3年間には絶対に戻りたくないです。
博士課程の頃は、何かを突き詰めようと頑張っても壁にぶつかって挫折。また、別なものを突き詰めようと頑張って壁にぶつかって挫折の連続でした。ただ、世の中は何が功を奏するかは分からないもので、私の場合、1つ1つは世界で勝負できるレベルまではいかなくても、挫折が多かったおかげで、そこそこのレベルのものが複数個出来ました。そして、ふと立ち止まった時に、1つのものに飛びぬけた人はそこそこ居ても、そこそこのレベルのものを複数持っていて、それらを総合して考えられる人は思ったよりも少ないということに気づきました。そういったことも充分自分の武器になると気づいてからは自分の進む道が見えてきました。
一方、博士号を取るということにだけに終始していた人達の殆どは、私と同じ分野での職に就くことは出来ていません。一方、ポストが私の分野よりも全然少ない分野に進んだ私の友人は、「博士号は何時でも取れるけど、公募はどのタイミングで出るかは分からない」と博士課程在学中に公募が出た際には応募していました。そして、在学中にポストを勝ち取って、在職中に博士号を取得して、更に条件の良い職へと渡って行っています。
結局は、私の分野でも資格云々では無く、自分に武器をもっているかが重要です。
長々と私事を書きました。
非国民は技術者。仕事のし過ぎで体が壊れたが50歳でも仕事があった。芸は身を助けるとは本当だ。