X
    Categories: 外交

朝鮮半島は2割の確率で赤化統一される

年末が近いこともあり、本日は以前掲載した『韓国は7割の確率で中華属国化する』の補足として、北朝鮮情勢に関して、簡単にまとめておきたいと思います。

年末に出頭要請、社会保険事務所の非常識

本論に入る前に、余談をお許しください。

年末が近づいて来ました。

設立して3年目を迎える当社では、ただでさえ原稿の仕事を数本抱えている状況にも関わらず、年賀状の印刷や年末調整などに忙殺されています。

しかも、ただでさえ大忙しの年末に、社会保険事務所からは「出頭命令」(?)が来て、心の底から腹が立っています。

やはり、社会保険事務所は解体された社会保険庁のダメな伝統を引きずっているのでしょうか?税務署や都税事務所、区役所などと比べ、格段に事務処理能力が低く、当社のような中小零細企業にとっては、社会保険事務所関連の雑務は、いつも頭痛の種なのです。

大規模な「消えた年金問題」や個人情報漏洩事件などを頻発させる社会保険事務所に代わって、歳入庁を創設し、社会保険料や国税、地方税の徴収を一元化すべきだと考えるのは、私だけではないでしょう。

北朝鮮情勢を予測する

改めて解説する、朝鮮半島の6つのシナリオ

本日は年末ということもあり、久しぶりに北朝鮮について議論したいと思います。

私は『韓国は7割の確率で中華属国化する』の中で、朝鮮半島を待つ未来として、考えられるのは次の6つのシナリオだと主張しました(図表)。

図表 朝鮮半島の6つのシナリオ
シナリオ名 シナリオ概要 実現可能性
①赤化統一 韓国(南朝鮮)が北朝鮮により赤化統一されてしまう 20%
②韓国だけの中華属国化 韓国が中国の属国となるほかは、現状がほぼ維持される 30%
③クロス承認 韓国が中国の属国となり、北朝鮮を日米などが国家承認する 10%
④半島全体の中華属国化 南北朝鮮が統一され、そろって中国の属国となる 10%
⑤北朝鮮分割 北朝鮮をロシアと中国が分割占領し、韓国は中国の属国となる 20%
⑥現状維持 南北朝鮮はそのまま存続する 10%

(【出所】著者作成)

ここで示した6つのシナリオとそれに対する実現可能性は、いずれも私自身が評価・設定したものですが、この認識は、現時点でもまったく変わっていません。

このうち、②~⑤のシナリオは、いずれも韓国を含めた朝鮮半島が中国の勢力下に入ってしまうというパターンであり、私が考える「実現可能性」を足し上げたら70%であるため、これが「韓国は7割の確率で中華属国化する」と申し上げた論拠でもあります。

ところで、私が示した6つのシナリオを、「北朝鮮」という視点から改めて眺めてみると、次のように整理できます。

  • 北朝鮮が存続するシナリオ…①、②、③、⑥
  • 北朝鮮が消滅するシナリオ…④、⑤

このうち「①赤化統一」とは、北朝鮮が韓国(南朝鮮)を併呑するシナリオであり、また、「③クロス承認」とは、米朝(あるいは日朝)が国交を正常化するシナリオです。

この期に及んで、この①、③のシナリオが実現する確率は、私は①については20%、③については10%と評価していて、決して高くはありません。しかし、あえてそれが実現するとしたら、それはどういうことなのかと考察を加えておくのも有益でしょう。

米国は「対話に応じる」のか?

それでは、シナリオ①やシナリオ③とは、いったいどのような代物なのでしょうか?

このうちシナリオ①とは、北朝鮮が主導する形で朝鮮半島に統一国家が成立するというものです。ここに至るためには、必要条件が3つあります。

1つ目の条件は、北朝鮮の現行の独裁体制が維持されることであり、2つ目の条件は、韓国で親北派(あるいは反米派)大統領が就任すること、そして3つ目の条件は、韓国が米国、中国のいずれの「属国」にもならないこと、です。

シナリオ③が実現するための3つの条件
  • 【1つ目の条件】北朝鮮の現行の金正恩(きん・しょうおん)体制(あるいはそれに準じた独裁体制)が維持されること
  • 【2つ目の条件】韓国で親北派(あるいは反米派)政治家が政権を握ること
  • 【3つ目の条件】韓国が米国、中国のいずれの「属国」にもならないこと

最低限、この3つの条件が整っていないと、シナリオ①が実現することはありません。

あくまでも私の理解ですが、韓国は自分たちで自分たちの将来を決められるほどの決断力、実行力を持っている国ではありません。強い者になびき、弱い者をいじめるという、まことにその場しのぎの国であり、逆にいえば、韓国はかならずどこかの国の属国にならなければ生きていけない国なのです。

そして、先ほど示した3つの条件のうち、2つ目の条件は、すでに達成しています。つまり、盧武鉉(ろ・ぶげん)氏の「盟友」であり、また、極端な親北派でもある文在寅(ぶん・ざいいん)氏が今年5月に行われた大統領選挙を制し、韓国大統領に就任したからです。

ただ、文在寅氏は現在、米国から離れる方向に舵を切っていることは間違いないものの、北朝鮮に近付こうとしているのか、中国に近付こうとしているのか、いまひとつ、見極めることができません。つまり、3つめの条件が達成されるかどうかは、不透明だ、ということです。

さらに、1つ目の条件についても、不透明感が漂っています。米国が北朝鮮を攻撃し、それによって北朝鮮の体制が崩壊すれば、そもそも「赤化統一」を主導するはずの北の体制がなくなってしまいます。

ただ、米国が北朝鮮攻撃を見送った場合や、北朝鮮攻撃が限定空爆に留まり、結果的に北朝鮮の体制が残った場合には、やはり「①赤化統一」のシナリオが現実味を帯びてくるのです。

「3つ目の条件」が達成されなければどうなるか?

ここで、「1つ目の条件(金正恩体制の維持)」、「2つ目の条件(韓国で親北派政権、あるいは反米政権)」の2つの条件は維持されていたとしても、「3つ目の条件」が達成されていない場合には、どうなるのでしょうか?

答えは簡単。ほかのシナリオが実現する、という話です。

たとえば、韓国が現行通り、米国との同盟関係を維持する、という選択を取ったのであれば、シナリオ⑥、つまり「現状維持」という状況が生じます。この場合、韓国は米中二股外交を続け、日米両国を苛立たせながらも、いちおうは「海洋同盟チーム」に所属することになります。

ただ、私はこの「シナリオ⑥」については、実現可能性が10%程度しかないと見ています。なぜなら、韓国が米韓同盟を維持し続けることが、ますます難しくなるからです。

一番わかりやすい理由は、北朝鮮を牽制するための高高度ミサイル防衛システム(THAAD)を配備したことに対し、中国が韓国に対し、苛烈な経済制裁を加えていることにあります。

韓国は現在、軍事的には米国に依存している一方で、経済的には中国への依存を強めています。中国が「経済」を武器に、韓国に対してさまざまな嫌がらせを仕掛けるならば、韓国としてはやがて耐え切れなくなり、中国の属国になってしまいます。

このシナリオこそ、私が現状でもっとも実現可能性が高い「シナリオ②」、すなわち、「韓国だけが中国の属国になる以外は、ほぼ現状が維持されるシナリオ」なのです。

核をカネで買う妥協案

ただし、このシナリオの派生形として、「シナリオ③」があります。

これは、米国が北朝鮮との交渉に応じ、北朝鮮に対して支援を与える、というものです。これについて、昨日、参考になる考察が掲載されています。

2018年「北の核」は軍事攻撃か体制崩壊で決着/かすかに残る「核をカネで買う」妥協案(2017/12/26付 日経ビジネスオンラインより)

リンク先の記事は、私がいつも参考にする、日本経済新聞社編集委員の鈴置高史氏が執筆する大人気シリーズ『早読み深読み朝鮮半島』シリーズの最新記事です。

鈴置編集委員は「北の核問題が解決するとしたら、それは(米国による)軍事攻撃か(北朝鮮の)体制崩壊がメインシナリオだ」、主張しているのですが、私が着目するのは、その副題にもある

核をカネで買う妥協案

です。さすがプロフェッショナルのジャーナリストだけあって、鈴置委員の表現は極めて適切です。

この「核をカネで買う」とは、簡単に言えば、北朝鮮が中東のならずもの国家やテロリストに核を売るくらいなら、米国が代わりに買う、という構想です。つまり、米国が北朝鮮との「対話」に応じる、というものですね。

ただ、これを究極にまでわかりやすく要約すると、

北朝鮮が核放棄に応じる代わりに、米国が金正恩体制を保障してやる

というものです。

当たり前の話ですが、これは日本としては悪夢であり、現段階で米国が「核をカネで買う妥協案」を考えているならば、同盟国としてこれを諌め、全力で止めなければなりません。また、この場合、北朝鮮が米国(と日本)の「友好国」(?)に転じるわけですから、中国が簡単にこれを容認するとも思えません。

ただ、国際政治の現実においては、「絶対にあり得ない」という考え方はありません。つまり、「核をカネで買う妥協案」が通ってしまう可能性も、ゼロではないのです。

つまり、韓国(南朝鮮)は実質的に中国の属国になってしまい、北朝鮮は日米の援助を受ける国になるというのが、私が懸念するシナリオ③(クロス承認シナリオ)の本質なのです。

北朝鮮は「崩壊」するのか?

北朝鮮崩壊の可能性は30%に過ぎない

以上、「北朝鮮が存続する」と仮定した場合のシナリオが、シナリオ①(赤化統一)、シナリオ②(韓国だけの中華属国化)、シナリオ③(クロス承認)、シナリオ⑥(現状維持)の4つです。

あらためて図表を読み返していただくと、この4つのシナリオの実現可能性を積み上げれば、70%と計算できます。つまり、私は70%の確率で、北朝鮮の体制がそのまま維持されると見ている、ということです。

そうなれば、北朝鮮に拉致されたままの日本人を、そのままでは取り返すこともできません。また、北朝鮮という体制が存続すれば、独裁者による北朝鮮人民に対する人権弾圧も続くことでしょうし、世界平和に脅威を与える大量破壊兵器の開発も続けることは間違いありません。

ここで、逆に北朝鮮が崩壊する可能性について考えてみましょう。

これは、先ほど示した【条件1】の部分が成り立たない確率であると定義することができます。

北朝鮮の体制が崩壊するとしたら、可能性は大きく2つあります。

  • (A)内部から崩壊する。
  • (B)外敵攻撃により崩壊する。

このうち、「(A)内部から崩壊する」という可能性としては、たとえば、クーデターが発生する、経済が崩壊して体制が維持できなくなる、といったパターンが考えられます。ただし、後述するように国連安保理決議による経済制裁はそれなりに効いているようですが、クーデターが発生する可能性については、非常に低いと見るべきでしょう。

一方、北朝鮮の体制が崩壊する可能性が高いのは、「(B)外敵攻撃により崩壊する」というものです。

この点、「北朝鮮の体制は米国による攻撃により崩壊する」と考える人も多いようですが、私はそうは考えません。なぜなら、米軍が北朝鮮攻撃に踏み切ったとしても、体制の全面的な崩壊をもたらすほどの全面攻撃は難しいからです(この点については後述します)。

可能性があるとしたら、米国だけでなく、中国とロシアが談合し、合意した結果、金正恩を亡命させて、北朝鮮の体制を周辺国の意思により変革することです。

私は、シナリオ④(半島全体の中華属国化)については実現可能性が10%と見る一方で、シナリオ⑤(北朝鮮分割)については、実現可能性は20%と考えています。なぜシナリオ④よりもシナリオ⑤の方が、実現可能性が高いのかといえば、北朝鮮が崩壊した場合には、中国だけでなく、ロシアが深い利害を持っているからです。

これについて、もう少し詳しく見ていきましょう ((余談ですが、私は以前、「朝鮮半島が米国主導で実現する(つまり韓国が北朝鮮を併合する)」というシナリオを提示していたこともありますが、韓国で文在寅政権が成立し、米韓間で急速に亀裂が入っていることを踏まえ、現在はこのシナリオを撤回しています。))。

北朝鮮攻撃が行われても、体制は崩壊しない

さて、私は『12月18日が晴天ならば北朝鮮奇襲か?』の中で、「米国がこの冬の間に北朝鮮攻撃に踏み切る可能性はそれなりに高い」としつつも、「攻撃が行われたとしても北朝鮮の体制を変革するほどのものにはならない」と申し上げました。

その趣旨は、非常にシンプルです。韓国が北朝鮮攻撃に協力しないからです。

仮に、現在の韓国の大統領が朴正煕(ぼく・せいき)だったとすれば、韓国の政権は米国に対し全面的に協力し、場合によっては在韓米軍基地から韓国軍が38度線に向けて出撃し、陸上から北朝鮮を制圧する作戦を許したかもしれません。

しかし、残念ながら、現在の韓国大統領は朴正煕ではなく、文在寅氏です。

その文在寅氏は、よりにもよって中国の習近平(しゅう・きんぺい)国家主席に対し、次の4つの原則で合意してしまったからです(詳しい内容は『米国が激怒?それを言ってしまうとは…』もご参照ください)。

  • ①朝鮮半島での戦争は絶対に容認しない
  • ②朝鮮半島の非核化原則を確実に堅持する
  • ③北朝鮮の非核化を含むすべての問題は対話と交渉で平和的に解決する
  • ④南北間の関係改善は最終的に朝鮮半島問題を解決するのに役立つ

この報道が事実であれば、米国が在韓米軍に出撃命令を出したとしても、韓国当局はこれに協力しないということです。

そして、米国とは世界最強の軍事力を持っている割に、同盟国との協力という「メンツ」を非常に重視する国でもあります。

このため、仮に米国が北朝鮮攻撃を決断したとしても、その攻撃手段は、朝鮮半島の米軍基地を使うことはなく、主に海上(とくに日本海や太平洋)に展開している空母からの爆撃機やミサイルに依存せざるを得ません。

逆にいえば、北朝鮮にとっては、東側だけ警戒していれば済むだけの話です。

それだけではありません。

北朝鮮には金正恩の影武者が複数名存在していて、しかも、北朝鮮各地に潜んでいるとの情報もあります。仮に米国が金正恩の身柄拘束を目的として北朝鮮に地上軍を派遣したとしても、確実に金正恩の身柄を確保することは困難です。

場合によっては、金正恩本人が密かにロシア領内に逃れ、影武者たちが北朝鮮人民に「徹底抗戦」を命じれば、戦闘も長引きますし、米軍にもそれなりの犠牲・損害が生じます。

現状で考える限り、北朝鮮の体制除去を目的とした攻撃(つまり「斬首作戦」)は非現実的であり、あえてやるならば、ミサイル基地などを重点的に破壊するための「サージカル・アタック」(局所的な攻撃)に留まらざるを得ないのです。

従って、米軍の軍事作戦によって、直ちに北朝鮮の体制が崩壊すると考えるのは尚早でしょう。

米中露談合にロシアは乗らない?

もちろん、ミサイル基地を破壊されれば、金正恩体制に対する求心力が低下することは間違いありません。そして、中国が北朝鮮を経済的に締め上げ、結果的に中国の息のかかった勢力がクーデターにより北朝鮮の実権を握るという流れで、金正恩体制が崩壊する可能性もゼロではありません(この場合はシナリオ④、つまり朝鮮半島自体の中華属国化が実現する可能性が高まります)。

しかし、米国が北朝鮮を攻撃したとしても、それを契機に北朝鮮の体制が自動的に崩壊すると考えるのは、非常に短絡的な発想です。

何より、北朝鮮に対しては中国だけでなく、もう1つ、強い利害を有している国があります。

それが、ロシアです。

北朝鮮の体制が崩壊しそうになったときに、すかさず、ロシアが北朝鮮に支援の手を差し伸べてくる可能性があります。そうなれば、結局のところ、北朝鮮の独裁体制は何も変わらず、ただ単に核危機のみが問題先延ばしとなって終了、ということです。

ただ、ここまでで議論していないシナリオがあります。それが「シナリオ⑤」、つまり「北朝鮮分割案」です。

これは、金正恩をロシアかスイスあたりに亡命させ、北朝鮮の現体制を終了させるシナリオです。

当然、これが実現するためには、米中露3ヵ国が談合する必要があります。

では、中国はともかく、ロシアはこの「談合」に乗るのでしょうか?

現状で見ると、これは非常に苦しいところです。なぜなら、米国とロシアの関係は、非常に悪化しているからです。

日本ではあまり報じられていませんが、実は、米露両国は、おもに中央アジア・中近東各地で「代理戦争」を戦っています。そして、その火種は次々と発火しているのです。

中東では先日、ISILが事実上、壊滅状態に追いやられましたが、その過程でクルド人勢力が活躍したこともあり、今度はクルド人国家創設問題が浮上することは間違いありません。

また、2014年3月以来、ウクライナ東部で分離独立運動が生じています。英米メディアは、東ウクライナ独立運動にロシアが支援しているとしきりに報じていますが、ウクライナを米国(やEU)が支援していることも事実です。

つまり、米露両国は直接、干戈を交えているわけではないものの、現在進行形で「代理戦争」が続いている状況にあるのです。

経済制裁に伴う、アクシデンタルな体制崩壊

このため、米中露3ヵ国が積極的に北朝鮮の体制崩壊を談合する可能性は、現状では高くないと見るべきでしょう。

ただ、その一方で、金正恩体制が「偶然」、崩壊する可能性もあります。なぜならば、北朝鮮に対する経済制裁は、次第に強化されているからです。

こうした中、今月22日には、新たな北朝鮮制裁に関する国連安保理決議が全会一致で採択されています。

Security Council further tightens sanctions against DPR Korea(2017/12/22付 国連ウェブサイトより【原文英語】)

国連ウェブサイトによると、今回の制裁決議は11月28日の弾道ミサイル発射を含めた北朝鮮の核開発に対して新たな制裁を加えるもので、今年9月の経済制裁をさらに強化するものです。

この決議により、北朝鮮に対して原油、石油精製品、各種資源の売却にいっそうの制約が課されました。これに加えて安保理決議では、加盟国に対し、北朝鮮出身の労働者の雇用を24ヵ月以内に停止するように求めています。

また、米国や日本は、国連安保理決議とは別に、経済制裁を少しずつ強化しつつあります。この中でもとくに効果を発揮しているのは、中国などに対する「セカンダリー・サンクション(二次的制裁)」と呼ばれるもので、これは、北朝鮮の企業や個人と取引を行っている外国(とくに中国)の企業・銀行・個人に対して金融取引停止処分などの制裁を下すものです。

これらひとつひとつの制裁は小規模かもしれませんが、積み上がればそれなりに威力を発揮します。場合によっては、北朝鮮という国家が、負担に耐えられずに内部から崩壊してしまうかもしれません。

そうなれば、米中露ともに、否が応でも北朝鮮の「その後」に関わる必要が出てきます。これが、「突発的な体制崩壊」です。

北朝鮮について議論する時には、「米中露3ヵ国談合」だけでなく、こうした「アクシデンタルな体制崩壊」についても考慮に入れる必要があります。これこそが、私がシナリオ⑤の確率を、10%ではなく20%と置いている理由なのです。

来年早々も軍事オプションの可能性

さて、漏れ伝わる米国政府内の動向を見ていると、トランプ大統領本人が、勇ましい発言をする割には北朝鮮に対する軍事的オプションの行使に必ずしも積極的ではない一方、ティラーソン国務長官はしばしば、「北との対話」を持ち出してはあとでそれを引っ込めるといった「ちぐはぐさ」が目立ちます。

米国が今後1年間で軍事的オプションを行使する可能性自体、私はせいぜい50%程度だと考えていますが、トランプ政権は共和党政権とは思えないほど、北朝鮮攻撃に消極的です。

また、うえで考察してきたように、仮に米国が北朝鮮攻撃に踏み切ったとしても、それは限定空爆に留まると考えられ、必ずしも北朝鮮の体制崩壊につながるものではありません。ということは、北朝鮮と日米間陣営との「不思議な膠着状態」は、まだ当面続く可能性が高いということであり、それが長引けば長引くほど、韓国が北朝鮮に取り込まれ、赤化統一の憂き目に遭う確率も上昇する、ということです。

ただ、仮に米国が北朝鮮攻撃に踏み切るとすれば、それは「サプライズ」を狙うことは間違いありません。

たとえば、今年の年末から来年の正月にかけて、電撃的な攻撃を行う可能性もありますし、また、2月に予定されている平昌(へいしょう)五輪の期間に攻撃することだって、アメリカならばやりかねません。

その意味で、当面は北朝鮮情勢から目を離すことは難しいといえるでしょう。

新宿会計士:

View Comments (4)

  • お疲れ様です。
    北朝鮮は大型ロケット(人工衛星)の打ち上げを予定し準備を進めているようです、北朝鮮は国連安保理で人工衛星をともなうロケット打ち上げも禁止されているのではないでしょうか。ロケット発射が実際に行われたとき関係諸国はどう動くか・・・今まで通りのワンパターンも予想されますが、北朝鮮は同盟国側の攻撃を何とか阻止して時間を稼ぎ完成まで持っていくことに全力を傾けるのではないかと思います。
    最近、非公式ではありますが藩属国に戻った南朝鮮はさらに厳しい指導(躾)を受けて組み込まれていくのだろうと考えます。将来的には統一というスタイルになるのかと思いますが宗主国としては恭順(在韓米軍撤退)を示せば半島の一地方自治区的な扱いで二つの自治区とするのではないでしょうか。北朝鮮は宗主国寄りの幹部をことごとく粛正しているので強権的な圧迫で指導者の交代を促し(暗殺・亡命の選択)現体制を維持しながら属国化を進めるのではないでしょうか。南北朝鮮には恭順の状況次第でチベット自治区のように反対組織には厳しい弾圧と排除がおこなわれると思います。隣国の日本としては難民、不法入国、不法滞在者の増加が予想されるので十分な対策を準備しておかなければならないと考えます。2018年の日本は遠交近攻がさらに進むのではないでしょうか。

  • 言葉尻を捉えるつもりは全くありませんが、{赤化統一}というのは間違っています。今の北朝鮮に社会主義、共産主義の理念・夢・希望は欠片でもあるでしょうか。金独裁王朝による{智腕統一}です。
    金正恩のイチかバチかの大ばくちは世界にとって迷惑至極、全く以て許せません。成功率は高くはないとしてもよく考えたなあ、実行したなあと感心しています。こういうのは国際社会として徹底的に叩き潰さなければなりません。

    • < ketsuro8da 様
      < コメント拝見しました。「赤化統一」でいいんじゃないでしょうか?何も「間違ってます」なんていうほどのものでもない。共産主義の理想なんてスターリン、毛沢東の頃にはすでにないですよ。皆、自分さえ生き残ればいい。腹心といえども簡単に粛清する。伸びそうな奴は早めに除去する。「赤化」というのは衣食住、財、土地等すべて個人所有を認めず、党に帰属する、なんて嘘もすべて含めた意味で、新宿会計士様は共産主義モドキを「赤化」とよんでいる。なにもマルクスやレーニンの頃を言ってる訳じゃない。前後の文意を読めば分かるでしょ?
      < 赤軍の虎の威を借りた金日成ソビエト軍駐在大尉、幼子の弟を池に落として殺した金正日、母親が在日踊り子の金正恩、3代の嘘つき王朝の仕業というのは、万人が知っていること。だから貴方の言う「智腕」の方がよほど日本語としておかしい。『謀略による独裁3代』ではないでしょうか。たいした知恵もない名も無き逃げ回ってた抗日金日成から始まり、3代目が非道な史上稀に見る極悪人ということ。「よく考えたなあ」「感心した」なんて戯れ言、本気で言ってるなら貴方の知見を疑います。
      < さて、①から⑥の朝鮮半島のシナリオですが、米韓に亀裂が入ってしまった以上、また中国の属国にすすんでなろうとする文大統領を見ていると(ホンマかな?)選択幅が前より狭くなりましたね。私は①の赤化統一は中華が離さない、南鮮が離れないので無いと思う。③のクロス承認、④の半島全体の中国属国化も会計士様の分析を読んで、ないと思います。あと、⑤の北分割は米中露が折り合い付けれるか疑問。⑥は今のままであり、日米が南鮮を見限っているので可能性は低い。となると②か。南鮮は属国化したし、北はサージカルアタックで危急の事態だけ遠ざかる。セカンダリーサンクションで日干しにし、年末年始および平昌での米主力の夜襲に期待しますか。日本も後方支援しなさい!
      < 失礼いたしました。

  • 相も変わらぬ呆け老人のコメントです。
    私も韓国が中国の属国になる可能性は高いと思います。というより、今度のムンジェイン大統領の訪中で、中国による非礼冷遇ぶりを甘受して抗議しない姿勢には、すでに韓国は精神的に属国状態に置かれていると見てよいでしょう。更に驚いたのは大統領支持者の盲目な追従態度です。同行した記者が中国の警備員に暴行されたが、支持者たちは暴行された記者達を大統領の行動に制限を与えたと非難しまくっている。彼らは大統領が召使のような待遇を受けたことにも気づかず、ただ大統領擁護に走っている。またアンケート調査では大統領の訪中を過半数が成功と認めていた。これでは韓国の行く末は決まりでしょう。
    >トランプ政権は共和党政権とは思えないほど、北朝鮮攻撃に消極的です。
    新宿会計士様の目にはトランプ大統領が北への攻撃をためらい臆病者のように見えるのかも知れませんが、私はこれだけ長く圧力を続けているのはアメリカの高騰威嚇戦術とみます。日本海での日米共同訓練や、アメリカ偵察機の深度巡回などの他、真偽は分かりませんがキンジョンウン斬首作戦、新月空爆説など北を震え上がらせる情報が流れてます。この春にはシリアのISに対しアメリカはミサイル攻撃をして、その威力を世界にまざまざ見せつけた。更にアメリカの偵察機に北は全く反応しないばかりかレーダー照射もなかったとわざわざ公開している。キンジョンウンにとってこれほど恐怖と不安に感じることはないでしょう。空襲警報すらないまま夜中に突然アメリカのミサイル攻撃や空爆を受けてしまうのです。この状況下キンジョンウンが平静でいられたら、相当な傑物、豪胆な人物です。
    私にはキンジョンウンがそれほどの豪胆な人物とは思えない。裏切りを恐れNo2だった叔父を殺し、多数の部下を処刑し、更にはほとんど無害な存在だった兄まで暗殺した。これなどキンジョンウンが部下を信頼できず、疑心暗鬼になり、少しでもミスを見つけたら容赦なく処刑してしまう小心な性格を表している。猜疑心が強く小心な性格だから非情なことでも行えるもので、とてもではないが豪胆な性格ではない。こんな性格の人物がアメリカの圧力にどれだけ耐えられるだろうか。私はキンジョンウンが正気を失い、グアムやハワイ向けにミサイルをしてしまう事態もありえると考えている。こうなればアメリカは世界に北の攻撃があったことを理由に戦端を開くのは簡単だ。アメリカはひそかにこれを待っているのではないか。
    ジョンウンが正気を失うかはともかく、アメリカの先制攻撃に備える北の兵士たちの緊張は長くは続きません。いつ来るかもしれないアメリカ軍の攻撃を備え、日夜緊張状態を続けるのは数か月がやっとです。北の兵士の越境亡命もあるように、北の兵士たちには緊張からの疲れや怠慢などが見られる。アメリカにとって圧力は先制攻撃の準備期間にすぎない。北の兵士の疲れをみはらかっているのではないでしょうか。