お約束通り、少しまとまった時間が取れたので、本日は「NHK訴訟」について取り上げます。参照するのは最高裁判決文です。
2017/12/09 21:30 追記
佐助 様のご指摘により、誤植を修正しております。
いよいよNHK訴訟について考えてみます
最近、当ウェブサイトでは取り上げたいと思う話題がたくさんあり、なかなか記事が追い付きません。
こうした中、本日は、数日前からぜひ取り上げようと思っていた、この話題に切り込むことができそうです。
NHK受信契約、成立には裁判必要 最高裁/支払い義務、テレビ設置時まで遡及(2017/12/6 15:25付 日本経済新聞電子版より)
すでに報じられている通り、12月6日に、いわゆる「NHK訴訟」の最高裁判決が出ました。
これについて、日本経済新聞、朝日新聞、その他の主要紙、あるいはテレビ局、はてはNHK自身に至るまで、「NHK訴訟」については「NHKの勝訴だ」と報じました。
リンク先の日経記事も含め、これらの報道にはやや誤解を招く部分があります。それは、最高裁判決では、NHKとの受信契約が「自動的に成立する」と判じたわけではない、という点です。
しかし、すでに多くのメディアが「テレビを設置したらNHKとの契約義務が生じる」「NHKからは訴訟を仕掛けられる」との印象を与える報道を行ってしまったため、世の中的には「これでNHKとの契約をしなければならなくなったのだ」という誤解が蔓延しつつあります。
では、これは果たして正しいのでしょうか?
そして、この判決がもたらす意味とは、いったい何なのでしょうか?
端的にいえば、報道は正しくありません。そして、こうした報道自体が、テレビ業界全体の衰退を招く行為です。
というのも、この判決により、「テレビを設置すれば自動的にNHKと契約をしなければならなくなった」と勘違いされているからであり、逆に、今後はテレビを持たない世帯が急増するであろうことが想定できるからです。
契約自由の原則に照らすならば、消費者にはいかなる商品であっても、「買わない自由」があります。テレビを買えばNHKと契約しなければならないということであれば、テレビ自体を買わないという選択肢があり得るからです。
実態はNHK敗訴に近い
NHK訴訟とは?
ここで話題になっている「NHK訴訟」とは、いったい何でしょうか?
これは、NHKが受信契約の申し込みに応じない男性に対し、受信料などの支払いを求めた訴訟です。訴えられた側の男性は、NHKと受信契約をしなければならないと定めた放送法第64条の規定が、私有財産権を定めた憲法第29条などに違反すると主張。受信契約を締結することを法律で義務付けていること自体が憲法に違反しないかが焦点となったものです。
これについて、まずはNHK自身の報道を確認しておきましょう。
NHK受信契約訴訟 契約義務づけ規定は合憲 最高裁大法廷(2017年12月6日 18時32分付 NHK NEWS WEBより)
(※なお、余談ですが、NHKは数営業日経過するとリンク先自体が閲覧できなくなります。こうした姿勢自体、NHKが「公共放送」を名乗る資格がないことを示しています。)
それはともかくとして、リンク先の記事から要点を抜粋して紹介しましょう。
- NHKが受信契約の申し込みに応じない男性に対して起こした裁判で、最高裁判所大法廷は、「受信料は憲法の保障する表現の自由のもとで国民の知る権利を充たすための制度で合理的だ」として、テレビなどを設置した人に受信契約を義務づける放送法の規定は憲法に違反しないという初めての判断を示した
- NHKは、テレビなどの設置者のうち、繰り返し受信契約を申し込んでも応じない人たちに対して、申し込みを承諾することや受信料の支払いなどを求める訴えを起こしている
- 6日の判決で、最高裁判所大法廷の寺田逸郎裁判長は、NHKの受信料について、「NHKの公共的性格を特徴づけ、特定の個人、団体または国家機関などから財政面での支配や影響が及ばないようにしたものだ。広く公平に負担を求めることによってNHKが放送を受信できる人たち全体に支えられていることを示している」と指摘した
- そのうえで、放送法の規定が憲法に違反するかどうかについて、「受信料の仕組みは憲法の保障する表現の自由のもとで国民の知る権利を充たすために採用された制度で、その目的にかなう合理的なものと解釈され、立法の裁量の範囲内にある」として、最高裁として初めて憲法に違反しないという判断を示した
- また、受信契約に応じない人に対しては、NHKが契約の承諾を求める裁判を起こして判決が確定した時に契約が成立し、支払いの義務はテレビなどを設置した時までさかのぼって生じるという判断も示した
この文章だけを読むと、最高裁の判決では、NHKの主張を全面的に認め、男性側が全面敗訴したかに見えます。
これは典型的な偏向報道でしょう。
実はNHKが敗訴していた!
ところが、NHKは何か勘違いをしていますが、現代社会にはインターネットがあります。
ひと昔前だと、一般の読者や視聴者が、直接、判決を入手するのは大変な手間でしたが、今では気軽に、判決の原文を読むことができるのです。
というわけで、さっそく、最高裁判決そのものを読みに行きましょう。
今回の判決文は、A4サイズのPDFファイルで27ページ分ですが、裁判官らによる補足意見部分を除けば17ページであり、しかも、結論部分については下線が引かれています。
ポイントはすぐに読めるでしょう。
平成26年(オ)第1130号、平成26年(受)第1440号、第1441号 受信契約締結承諾等請求事件 平成29年12月6日 大法廷判決(2017/12/6付 最高裁ウェブサイトより)
主文 本件各上告を棄却する。/各上告費用は各上告人の負担とする。
何と!主文は、原告(NHK)、被告ともに敗訴という結論です。
では、原告と被告の主張について、最高裁はどのように判断したのでしょうか?これを見る前に、双方の主張の要点を、次の通り、①~⑤でまとめておきましょう。
まず、NHK側の主張の要点は、次の通りです。
- ①被告男性はNHKとの契約に応じていないが、NHKが被告男性に対して受信契約の申込みが届いた時点で受信契約が成立しているはずである
- ②被告男性が受信設備を設置した2006年4月分以降、2014年1月分までの受信料(約22万円)に加えて、損害賠償として同額を支払うべきだ(つまり受信料の2倍の金額を支払え、ということ)
これに対して被告男性側の主張の要点は、次の通りです。
- ③受信設備を設置したらNHKと契約をしなければならないとする放送法第64条第1項の規定は「訓示規定」であり、契約を強制する規定ではない
- ④仮に契約を強制する規定だと考えるならば、契約の自由、知る権利、財産権など、憲法の規定(第13条、第21条、第29条等)に違反している
- ⑤受信料契約により発生する受信料債権の範囲や消滅時効について争っている
そして、今回の最高裁判決は、NHK側、男性側の双方につき、退けたものです。
受信契約の成立には確定判決が必要!
まず、①の論点について、見ていきましょう。これは、NHKが主張した「受信契約は自動的に成立する」というめちゃくちゃな論理が、裁判ではきっちりと否定されている、ということです。
最高裁判決では、次のように判じています。
「放送法64条1項は、受信設備設置者に対し受信契約の締結を強制する旨を定めた規定であり、原告からの受信契約の申込みに対して受信設備設置者が承諾をしない場合には、原告がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め、その判決の確定によって受信契約が成立すると解するのが相当である。」(同P12)
つまり、NHKとしては、放送法第64条第1項に基づき、受信設備を設置した人に対して、受信契約を求めることができるとしています。そして、仮に受信設備設置者が契約を結ばない場合には、いちいち裁判を起こして、判決を勝ち取ってから、初めて受信契約が成立する、ということです。
ということは、NHKが受信契約書を送り付けて来たとしても、NHKが裁判を起こさない限りは、契約を結ばなくても良いということです。
NHKとしては、おそらく「今回の判決で、テレビを買った人は絶対にNHKと契約をしなければならないことが確定したんです」などと喧伝して回ると想像できますが、これは大きな間違いです。わざと契約を結ばなければ、NHKとしては、いちいち裁判を起こす必要があるのです。
NHKによると「受信料の支払い率は79%」だそうですが、残り21%が断固としてNHKとの契約を拒否すれば、NHKとしてはこの21%の世帯に対し、いちいち裁判をしなければならないのです。
テレビを設置している世帯数が何世帯あるのか、私は詳しくは存じ上げませんが、仮に5000万世帯だったと仮定すれば、その20%、つまり1000万世帯に対し、NHKは裁判を起こさなければなりません。
これは、現実的に、無理です。
つまり、NHKが狙った「自動的に契約が成立する」というロジックは、最高裁により否定されたのです。このことは、非常に重要だと言わざるを得ません。
受信料のみを支払え
次に、②と⑤について確認しましょう。
NHK側は、男性が契約に応じなかったことで、男性側が不当利得を得ていると主張。受信設備を設置して以降の受信料だけでなく、それと同額の金額を「損害賠償」として請求しました。しかし、男性側はその「受信料債権」の範囲について争ったほか、消滅時効についても主張していました。
これについて最高裁は、次のように判断を示しました。
「受信契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合、同契約に基づき、受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生するというべきである。」(同P16)
「受信契約に基づき発生する受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(中略)の消滅時効は、受信契約成立時から進行するものと解するのが相当である。」(同P17)
これも当たり前の話でしょう。
NHKが「契約を結ばなければ、倍額を請求しますよ」と主張すること自体、かなりの無理があります。そして、今後仮にNHKが、「もし契約に応じなければ、倍額を請求しますよ」と脅したとすれば、それは恐喝という犯罪行為でしょう。
ただし、男性側が求めていた「消滅時効」については、「受信契約成立時から進行する」、つまり、NHKが「契約しろ!」と要求して裁判を起こし、裁判で契約が確定した瞬間から進行することになります。この点については男性側にとって不利な内容ですが、この点については、私はさほど違和感を覚えることはありません。
「私有財産権」については否定
ただし、今回の判決はNHKにとっての「全面敗訴」とはいえない側面があります。
この点を巡って、③と④についても確認しておきましょう。
最高裁は、次のように結論を出しました。
「放送法64条1項は、同法に定められた原告の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の受信契約の締結を強制する旨を定めたものとして、憲法13条、21条、29条に違反するものではないというべきである。」
この点については、確かに一般国民の常識からはかけ離れた判断であると批判されても仕方がありません。
放送法の趣旨は、NHKが受信料を徴収することができる理由が、国や企業などから独立して、公正な立場で番組を作ることにあります。そして、現在のNHKが公正な番組を作っているとは、とうてい言えません。
余談ですが、「放送法遵守を求める視聴者の会」の調査によれば、今年7月、学校法人加計学園による獣医学部設置を巡って行われた国会の閉会中審査を巡って、NHKはこの問題を巡る放送時間の87%を、意見が対立している参考人のうち、前川喜平・前文科省事務次官の発言だけに充てたことが判明しています。
このような組織が偉そうに「公正中立」を名乗ること自体、非常におかしな話です。
ただし、今回の判決そのものについて、最高裁を100%責めることもできません。なぜならば、放送法は法律であり、本来、法律とは国会が作るものだからです。
つまり、放送法第64条という規定自体が、時代にそぐわなくなっていることも事実でしょう。
この点、判決文をよく読んで見ると、次のようにも指摘されています。
「放送法による二本立て体制の下での公共放送を担う原告の財政的基盤を安定的に確保するためには、基本的には、原告が、受信設備設置者に対し、同法に定められた原告の目的、業務内容等を説明するなどして、受信契約の締結に理解が得られるように努め、これに応じて受信契約を締結する受信設備設置者に支えられて運営されていくことが望ましい。そして、現に、前記のとおり、同法施行後長期間にわたり、原告は、受信設備設置者から受信契約締結の承諾を得て受信料を収受してきたところ、それらの受信契約が双方の意思表示の合致により成立したものであることは明らかである。同法は、任意に受信契約を締結しない者について契約を成立させる方法につき特別な規定を設けていないのであるから、任意に受信契約を締結しない者との間においても、受信契約の成立には双方の意思表示の合致が必要というべきである。」(同P11)
つまり、判決の立場は、「あくまでも最終手段としては裁判により契約を強制的に成立させるという手法が残されているが、そうなる前に、視聴者に納得してもらい、視聴者から自発的に契約書に判子を押してもらうように努めるべきだ」、というものです。
私自身は自宅にも職場にもテレビを設置していませんし、今後も設置する予定は一切ありません。ただ、仮にテレビを買った場合には、「NHKの視聴者をバカにした報道姿勢が気に入らないので、絶対に視聴もしないし契約もしない。裁判でも何でもすれば良い」と述べて、あくまでも争うつもりです。
放送法は国会の問題
さて、判決文にはもう1つ、非常に気になる下りがあります。
「ところで、受信契約の締結を強制するに当たり、放送法には、その契約の内容が定められておらず、一方当事者たる原告が策定する放送受信規約によって定められることとなっている点は、問題となり得る。」(同P12)
これは、契約の当事者であるNHKが、一方的にその内容(受信料も含めて)を決定すること自体が問題だ、という指摘です。
さらっと流していますが、これは、実は国会に対する注文です。というのも、放送法に穴があることが指摘されているからです。
常識的に考えて、契約を強制するならば、その契約内容について、もっと透明性の高い仕組みが必要でしょう。
NHKは「公共放送」と名乗っていますが、公的組織ではありません。あくまでも特殊法人の1つです。
そして、この法人は、外郭団体をたくさん設立し、事実上の営利事業を営んでいるだけでなく、その役職員に対しては、高額の年俸が約束されています。
おりしも「韓流放送局」ことフジテレビが営業赤字に転落したとするニュースがありました。
フジテレビが赤字転落、もはや不動産会社がテレビ局を経営している状態(2017.12.07付 Business Journalより)
民間企業だと、フジテレビのように視聴率が不振であれば、営業赤字に転落するという事例もあります(※もっとも、フジテレビの場合は人件費を抑制すれば済むだけの話だと思いますが…)。しかし、NHKの場合は、どんな下らない番組を作ったとしても、国民から巻き上げた受信料で潤うため、基本的には赤字になりにくいと考えられます。
つまり、NHKのコーポレート・ガバナンス自体が大きな問題なのです。
NHKの受信料や人件費については、国会の監視の目が十分に行き届いていません。
仮に放送法第64条第1項の規定を維持するならば、まずは人件費を公務員並みに引き下げ、受信料もそれに見合った水準にまで引き下げさせることが必須でしょう。
それでなければ、NHKに高額の受信料を支払わされている一般視聴者が納得するとは思えないのです。
テレビ離れは加速する!
「押し売り商法」という常識外れ
さて、判決から離れて、冷静に考えてみたいと思います。
私が運営する当ウェブサイトの場合、基本的には全てのコンテンツを無料で公開しています。私にとっての収入源は、グーグル・アドセンスやアマゾンのアフィリエイトなど、わずかな広告料ですが、当ウェブサイトを閲覧して頂く皆様のため、いまのところ、広告は最低限に留めています。
(※もっとも、将来、広告を拡充する可能性はありますが…。)
私にとっての「儲け」の仕組みは非常に簡単です。
当ウェブサイトを閲覧して頂いた方のブラウザに広告が表示され、表示された回数やクリックされた回数に応じて、わずかながらの広告料が私に支払われる、という仕組みです。
(※余談ですが、興味もないのに表示される広告をクリックして頂く必要は全くありません。というか、そのような行為は広告主に対する背信ですので、むしろお断りします。)
そして、当ウェブサイトは有料サイトではありません(というか、お金を払ってまで閲覧したいという人が、どれほどいるのかはわかりません)。
ただし、ビジネスモデルとして、ウェブサイトの「続きを読む」ために課金する、というのはアリだと思います。
この場合は、お金を払えば続きを読むことができる、という仕組みです。新聞や雑誌を書店で買うのにお金が必要であることと同じようなものだと考えれば良いでしょう。
では、読んでもいない人からお金を取るのは妥当でしょうか?
インターネットのブラウザをPCにインストールしたら、当ウェブサイトにアクセスすることができるはずです。そして、私が日本全国のPCユーザーに対し、「あなたがたは私のウェブサイトを読むことができるのだから、毎月100円を私に払え!」とお願いしたら、皆様は鼻で笑ってお終いでしょう。
実は、NHKがやっていることは、これと全く同じことなのです。
スクランブルとは?
「テレビを設置したら受信料を払え!」と要求することは、インターネットの世界に照らせば、いかに常識外れで奇妙であるかがご理解頂けるのではないでしょうか?
ところで、インターネットの世界だと、「お金を払わなければ続きが読めない」という仕組みは、広く導入されています。日本経済新聞電子版や英フィナンシャル・タイムス(FT)、米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)などがその典型例ですが、ユーザー登録のうえでクレジットカードなどで支払いを済ませなければコンテンツを読むことができない、という仕組みです。
ひと昔前のテレビ放送だと、このようなことはできませんでした。要するに、電波は垂れ流し状態なので、流れている電波を拾うか、拾わないかは、視聴者の選択に委ねられていたのです。
ところが、現在の地上デジタル放送だと、テレビ端末側で誰が視聴しているか、把握することができます。技術が大きく進歩したのです。ということは、技術的に、NHKはスクランブル放送を行うことができる、ということです。
この「スクランブル放送」とは、「受信料を払わない人のテレビにはスクランブル(妨害)が掛けられ、受信料を払わなければスクランブルは解除されない」という仕組みです。
これを導入すれば、「見たい人はNHKにお金を払ってスクランブルを解除してもらい、見たくない人はNHKにお金を払わない」という仕組みが可能になります。
つまり、放送法の規定自体が、昭和時代の「アナログ放送時代」の技術を前提としたものとなっているのです。このような規定、さっさと修正すべきでしょうが、これを修正しないのは国会の怠慢と言わざるを得ません。
NHKの仕組みだと、番組の公正性は確保できない!
さらに、現行の放送法の規定だと、NHKの仕組みの公正性確保に、大きな問題があります。
先ほどの最高裁判決によれば、
「受信料制度は、国民の知る権利を実質的に充足し健全な民主主義の発達に寄与することを究極的な目的として形作られ、その目的のために、特定の個人、団体又は国家機関等から財政面での支配や影響が及ばないように必要かつ合理的な制度として認められたものであり、国民の知る権利の保障にとって重要な制度である。」(同P19、下線部は引用者による加工)
とされていますが、もともと放送法が受信料制度を設けた趣旨は、国家権力などからの独立性を確保することにあります。
ということは、受信料制度が存在するがために、政府、国会などから独立していることを奇貨として、国民の監視の目が行き届かないという、根本的な制度的欠陥を抱えているのです。
そして、そこにある思想は、「NHKの中の人は、絶対に間違いを犯さない」という、ある種の無謬性(むびゅうせい)という仮定です。
私は、このような想定を置くこと自体が大きな間違いだと思います。
現に先ほども引用したとおり、NHKの報道は公正からかけ離れており、国民の期待を踏みにじるものです。そのような組織には、そもそも、公共性を前面に打ち出す資格などありません。
腐敗したNHKに引きずられ、テレビ業界は視聴者に見捨てられる!
NHKがこうした制度的欠陥にホッカムリをする理由は、自分たちが放送法の規定により保護される特権組織だと理解しているからでしょう。
実際、NHKの役職員は、特権階級です。というのも、やたら高額の年俸を受け取っていますし、非常に安い値段で豪勢な社宅に入れるなどの福利厚生を含めれば、平均年収は1700万円とも、1800万円ともいわれています。
こうしたNHK役職員の厚遇ぶりは、かつてのソビエトや現在の中国における共産党党員を彷彿とさせるものがあります。
そして、特権階級が成立すれば、その特権階級に属するエリートたちは、全力で自分たちの利権を守ろうとします。その結果生じることは、古今東西、まったく同じ―「腐敗」です。
今回の最高裁判決はNHKにとっては必ずしも勝訴とはいえませんが、それでも、放送法第64条第1項自体に「合憲判決」が下されたことで、多くの国民が、「どこか納得がいかない」という思いを抱いたことは間違いないでしょう。
これは、一般庶民と特権的エリートの意識の違いです。
相次ぐ捏造報道で国民からの信頼がゼロに失墜した朝日新聞社や、「韓流放送局」として前代未聞の6000人デモを受けたフジテレビなどの例にもありますが、どんな組織であっても、理不尽な特権を持ったら、その瞬間、その組織は必ず腐敗します。政党でいえば日本共産党が腐敗政党の典型例ですが、NHKもソビエト共産党や中国共産党、日本共産党と並び、典型的な腐敗組織なのです。
「テレビ不視聴運動」が「テレビ不買運動」に発展する!
ここから先は、あくまでも私の考察です。
今回の判決がもたらすのは、将来的な「テレビ不買運動」です。
これまでであれば、「韓流放送局」であるフジテレビの番組を見ないという「不視聴運動」が広がることはあっても、テレビ自体を捨てようとする人は、それほどいなかったでしょう。
しかし、今回の判決を巡り、新聞やテレビが「NHKの勝訴だ!」と大々的に報じていることも事実です。ということは、判決をよく読まない人からすれば、「テレビを買えば無理やりNHKと契約を結ばなければならない」と勘違いしてしまうことは、容易に想像がつく点です。
NHKとしては、今回の判決を「受信契約は強制だ」と印象付けるために使いたいつもりだと思いますが、これは間違いなく、逆効果です。というのも、「NHKと受信契約を結ばされるくらいなら、最初からテレビを買わないでおこう」と思う消費者が激増することが予想されるからです。
テレビ業界は、自分たちの利害を守りたければ、今回の判決を、「実質的にはNHK敗訴だ」と正しく報じておくべきでした。しかし、民放各社はNHKと結託し、「NHKが勝訴した」と印象付けるような報道に終始したようです。
ということは、消費者がテレビを買わなくなれば、民放各社の経営も厳しくなるのです。
消費者のテレビ離れを促進するという意味では、いわば、今回のNHK訴訟を巡るテレビ業界の報道ぶりは、「オウンゴール」の1つであると見るべきでしょう。
メディア自由競争の時代はすぐそこに
というよりも、新聞やテレビが「一般大衆に対する唯一の情報提供手段」だった時代は、すでに終わりを告げました。インターネット上で、それこそ雨後の竹の子のように、にょきにょきと新メディアが勃興しつつあるからです。
その証拠に、「ブログ」や「評論サイト」も、同時多発的に、多数、発生しています。当ウェブサイトへのアクセス数が堅調に推移していることはその証拠の1つですが、今後、ウェブメディアが増えることはあっても、減ることはないでしょう。
そして、新聞やテレビが、旧態依然とした偏向報道を続ければ続けるほど、新聞離れ、テレビ離れは、勝手に加速するのです。
もう1度、申し上げます。
メディア自由競争の時代は、すでに到来しているのです。
前時代の発想に捕われた新聞社やテレビ局に待っている未来とは、「倒産」のみです。
もちろん、NHKは法律に守られ、受信料という名目の、「事実上の税金」を、視聴者から不当に巻き上げているため、滅多なことでは潰れません。しかし、NHKが自分たちの特権を守ろうとすれば、結果的に視聴者のテレビ離れを招き、NHKを除く民放テレビ局が倒産の憂き目に遭う可能性もあります。
そうなったらそうなったで、面白いかもしれませんね。
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テレビがなくてもワンセグ付きのスマホでテレビ視聴できます。
またNHKはテレビがなくともワンセグ付きのスマホを持っていれば受信料をを取れるように画策しており、実際2017年5月25日に出された水戸地方裁判所でのワンセグ裁判結果は「ワンセグでNHKが視聴可能な状態であれば、受信料の支払い義務がある」とするものでした。(最高裁の判決ではなく、上告もしているので確定ではありません)
テレビを捨てる人はいてもスマホを捨てる人はほとんどいない以上、「テレビ不視聴運動」が「テレビ不売運動」となったところで大した問題にならないのでは?
NHKのやつ、あれ別に勝訴じゃなかったんだね。テレビ見てると視聴が一方的に負けたと思ってしまうが実際には負けた人はBCASカードの番号を伝えてNHKにロック解除を申請してたとかいう話もあるし、なんか自業自得じゃね?って思うよね。あの判決を一般に敷衍して契約義務があるって言えないと思うよ。確定判決が無いとNHK側としても契約強制は出来ないみたいだしね。
それから佐助さんへ。
そうかな?スマホとテレビ端末じゃ画質も違うし利用目的も違う。全てのスマホでワンセグ視聴できるわけじゃないし、そもそも比較の議論は成立していないよ?「大した問題にならないと思う」って全然ロジカルじゃないよね。とマジレスしてみる。
一言居士さんへ
スマホとテレビを比較していません。
「受信料を取られるという意味で一緒だ」と言いたいのです。
確かにiphoneなどワンセグがついていない機種があるようですが、受信料の徴収は世帯単位なので「家族全員がiphoneなどワンセグがついていない機種&テレビそのものがない」という高いハードルを潜り抜けない限り、現状ではNHKの受信料発生するようです。
会計士さんは「受信料を払いたくないから、テレビ不買運動が発生する」との論調なので「受信料がテレビ以外にも発生するため、話はそう簡単ではないのでは?」と言いたいわけです。
また、一言居士さんもご存じだと思いますが、「電波受信媒体を持っている」ことで受信料が発生するので「画質も違うし利用目的も違」ったところで問題になりません。
こういった高いハードルを潜り抜ける人たちがいないとは言いませんが、多数派にはならないであろうため「大した問題にはならない」としました。
会計士さまへ
不買運動が一部「不売」運動になってますので修正願います
佐助様
貴重なコメント、ありがとうございます。
また、これに加え、誤植のご指摘を賜り大変ありがとうございました。早速、修正致します。
引き続きご愛読ならびにお気軽なコメントを賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
新宿会計士
数年前だけど中国の国営放送をネットでみていたことがある。ソフトをインストールしてみる方式。広告がうざいのでやめたが。国営放送なのにCMは入る。ただ、世界中どこでも放送が見られるのはすごいと思った。日本の場合、NHKは受信料があるためにネット配信では課金上の問題がある。民放は地方局があるのでキー局がネット配信したら地方局の経営が打撃をうけて、ネット配信できない。地方局はいまでも経営が苦しいのに、キー局がネット配信したらたぶん生き残れない。ということで、日本の場合は放送局がどん詰まり状態だ。たぶん、有効な打開策はないので、ズブズブと経営が悪化していき、まず地方局が脱落。次に公的資金投入とならざるを得ない。銀行に投入した公的資金と異なり、これはおそらく返済されない。人口減少が著しく、どうあがいてもダメな都道府県はキー局からの直接配信。やがてすべてがキー局配信となる。NHKはお金が無条件に入ってくるが、やはり地方局の地位の低下がおこるのは避けられないだろう。場合によっては放送局の再編がおこり、NHKと民放が2社の3社体制になったりするかもしれない。今は、売り上げがすぐにわかる状況。CMを打って、どの程度の増収になるかを大企業は当然にチェックする。効果がないとなれば打ち切り。気前よくお金を払ってくれるのは産業機器の会社とかで知名度さえ上がればよいという会社だけだろう。現在は高収入のテレビ業界だが、おそらくだんだん厳しくなっていくと思う。世の中、シビアになってきたね。
犬HKまぢウゼーw最高裁ってクソだよね
>不買運動が一部「不売」運動になってますので修正願います
ホントだw意味逆になっちゃってるよwww
私はデジタルに移行した時にテレビを捨てたので、その時NHKを解約して、その後は実家に帰った時くらいしかTV番組を見ないので(それも親が見てるからイヤイヤ付き合ってるだけですが)大手を振ってNHKに金を払ってません。
勧誘員が来れば後ろめたさゼロで色々おちょくれるのでむしろ心待ちにしてるんですが、何故か一度来たっきりなんですよね。無茶苦茶言う奴が来ないかなとちょっと期待してるんですが。
ただ、お陰でTV番組を見ることが可能な機器は買えないという状況でもあります。特に往時の携帯電話は総務省の陰謀説が出るくらいワンセグ付きしか無かったので、どうあがいてもシンプル携帯くらいしか買えないという不自由さがありました。
なんでNHKごときのせいでものを買う自由を制限されなきゃならんのだと憤慨した覚えがあります。
今はスマホになって選択肢は増えたのですが、それでもまだ「NHKのせいで買えない機種」が存在しているわけで、消費者の権利一部を阻害されている状況ですね。
< 毎日の更新ありがとうございます。
< 最高裁の判決がNHKの受信料は合憲、ということで、私など、釈然としない気持ちです。何故払わないといけないのか、判決文読んでも理解出来ません。むかーしから、NHKなど、無いチャンネルだと思ってましたから、あそこが料金取るのは納得出来ません。NHKの社員、特に幹部は特権階級です。一般庶民とは掛け離れたエリート意識、それが報道ぶりにも現れてます。だから世論とは掛け離れた報道姿勢になるのでしょう。ハッキリ言って、今のテレビ局など不要。NHKは組織を解体して出直すべきだ。民放も反体制、親韓、親中のキー局など免許を取り消して、選定からやり直して欲しい。
< その中の首魁、NHKはどうやら日本国有鉄道、ソビエト連邦、中国共産党と同じ穴のムジナ、腐敗した硬直組織だな。間違いなく潰れる。1,000万世帯は、安心して払わないよ(笑)。
NHK不買は、BS放送から。
放送法の下で契約の義務があってもオプションのBSなら意思表示できます。
まずはBSから解約して、経営に打撃を与えましょうよ。
N HKの受信契約判決,あれに納得する市民ってあまりいないと思います.理不尽ですもん.でも今日の会計士さんの説明を聞いて,N H H側も全面的な勝訴とは言えない事,非常に良く理解できました.でも彼等は「もう絶対契約しなきゃダメなんだ」と説明するでしょうし,それに騙される視聴者もいるかも.いっそのこと皆んなでテレビを捨てましょというのがスッキリするでしょうね.
最高裁の判決内容にものすごく違和感があったので、判決分と会計士さんの説明を見てそういうことかと思いました。
判決文の原本が簡単に見れるのも、インターネットのおかげですね。
最高裁は何らかかのプレスリリースやアクションを通じて判例内容を広く伝えないと、報道各社の印象操作のまま放置されると次の衆議院選挙の国民審査で罷免を可とする投票が増えるのではないだろうか。
すいません。これは会計士様の勘違いです。
本文中「NHK側の主張の要点は、次の通りです。
①被告男性はNHKとの契約に応じていないが、NHKが被告男性に対して受信契約の申込みが届いた時点で受信契約が成立しているはずである
②被告男性が受信設備を設置した2006年4月分以降、2014年1月分までの受信料(約22万円)に加えて、損害賠償として同額を支払うべきだ(つまり受信料の2倍の金額を支払え、ということ)」とありますが、NHKはこんな主張はしていません。
この部分は判決文中の「(NHKは)①主位的請求として,放送法64条1項により,原告による受信契約の申込みが被告に到達した時点で受信契約が成立したと主張して,受信設備設置の月の翌月である平成18年4月分から平成26年1月分までの受信料合計21万5640円の支払を求め,②予備的請求1として,被告は同項に基づき受信契約の締結義務を負うのにその履行を遅滞していると主張して,債務不履行に基づく損害賠償として上記同額の支払を求め,③予備的請求2として,被告は同項に基づき原告からの受信契約の申込みを承諾する義務があると主張して,当該承諾の意思表示をするよう求めるとともに,これにより成立する受信契約に基づく受信料として上記同額の支払を求め,④予備的請求3として,被告は受信契約を締結しないことにより,法律上の原因なく原告の損失により受信料相当額を利得していると主張して,不当利得返還請求として上記同額の支払を求めるものである。 」とあるのを誤読されています。
主位的請求が認められなかったらこの主張を認めてくださいというのが予備的請求であり、主位的請求と予備的請求を両方とも認めてくれという主張ではありません。だからNHKはそもそも受信料債権と同額の損害賠償を並行して請求してはいません。
NHKの主張は次のとおりです。
(1) 受信契約はNHKからの申込通知の到達時点で成立しているのだから、その時点からの受信料を払ってね(主位的請求)。
(2) もし(1)の時点で契約が成立していなかったとしても(主位的請求が認められなかったとしても)、被告には契約に応じる義務があり、被告はそれを怠っていのだから債務不履行責任として(1)の受信料と同額の損害賠償をしてね(予備的請求1)。
(3) もし被告には(2)の債務不履行責任がないとしても(予備的請求1が認められなかったとしても)、被告に契約に応じる義務があることには変わりはないので、速やかに契約に応じる意思表示をして(1)と同額の受信料を支払ってね(予備的請求2)
そして最高裁はNHKの予備的請求2の主張を認め、「被告がどうしても契約に応じる意思表示をしないのであれば、NHKは裁判所に行って民法414条2項但書に基づく債務者の意思表示に代わる裁判(判決)をもらって来てね」と判示したのです。
確かに、受信設備設置者が受信契約に応じない場合 、NHKには裁判を起こし民法414条2項但書に基づく債務者の意思表示に代わる判決を得る必要が生じることにはなりました。この意味では、今回の判決におけるNHKの敗訴部分ともいえます。
しかし、この債務者の意思表示に代わる判決を得るための裁判で、NHKが 敗訴するということがあり得るでしょうか?
今回の最高裁は、受信契約締結を定めた放送法64条の規定を強制力のあるものと認定し、かつ、この規定は合憲であると認めました。NHKが「被告が受信設備を設置している」ということを証明できるかぎり(民事訴訟ですから証明力は多少低くても裁判では認定される可能性があります)、ほぼ 確実に債務者の意思表示に代わる判決を得ることは可能だと思います。
しかも最高裁は、受信設備設置後受信契約成立までの間の受信料債権の消滅時効は受信契約成立時を起算点として進行する、と述べました(木内裁判官の反対意見があります)。結局のところ、受信設備を設置したら受信料を支払わねばならないというNHKの基本的な主張は認容されたとみるべきで、わずかに民法414条の裁判をやらねばならないという、ほとんど「事務上の手間」が増えたということに過ぎないのではないでしょうか?
なお、放送法64条を合憲としたこと、受信料債権の消滅時効を受信契約成立時を起算点としたことによって受信設備設置後の受信料債権を無制限に遡及して徴収できるようにしたことなど、私には今回の判決は到底承服しがたく、この意味では会計士様と同意見です。
また、NHKに対するご批判についても会計士様に賛同するものであって、このような長文のコメントをいたした非礼は、むしろ私が今回の判決を深刻なものだと受け止めているからだとご容赦いただければ、大変ありがたく存じます。
何その放送になり損ねた者って。NHKってのは公共性が高いんだし、ニュースも正確なのに、こーゆー不正確なことを言うネトウヨが世の中をダメにしてるんだよ?わかってるの?それにこのブログ、会計士とか名乗ってる割に企業会計のネタも出てこないし、簿記検定すら持ってないんじゃない?インチキ会計士のブログにインチキ法曹のコメント、お似合いじゃん。
「市民」さんへ
なんか随分と吠えてらっしゃいますが、他人に向けてインチキとか言う割には、全然論拠を示していませんね。このブログではそういう感情的な反論をしても、だれも聞いていませんよ?まぁここのブログ主さんって堂々と議論して批判する分には自由らしいのですが、反論になってない反論には説得力がないと思うんだけどなぁ。。。
「法曹になり損ねた者」さんへ
確かに今回のブログ、主位的請求と予備的請求のことをきちんと区別していなくて、法律記事としてはやややや粗いとは思います。ただ、ブログ主さんの主張は「主文」に注目しているのであって、最高裁が主文で請求を棄却している以上、NHKの「勝訴」とは言えませんよ?その意味では決して間違ってないと思いますけどね。まぁ、実務の世界では100%の勝利、100%の敗北というのはありえませんけどね。
銀行員さんへ
返信ありがとうございます
私も、今回の判決にNHKの敗訴部分があること、あくまでもNHKの「基本的な」主張が認容されたと認識しているだけに過ぎないことは、先の私のコメントのとおりであり、決してNHKが全面的に勝訴したと考えているわけではありません。
また、決して銀行員さんへ喧嘩を売るつもりはありませんが、判決主文にのみ(貴方が「主文にのみ」とおっしゃってはいないことは承知しています)注目した「法律論」は、法律論とはいえないと思います。
私はむしろ「今回の判決はNHKの勝訴ではなく相討ちに近い」といった意味合いの主張をされる保守系ブロガーが多いことを懸念しております。本判決の本当の問題点から目を逸らさせる効果があり、意図的ではないのでしょうが、いわゆる燻製ニシンの比喩のような結果になるのではないかと心配だからです。
とても読みにくいです。