本日も2本目の記事配信で、話題は、首相官邸のホームページに掲載された、安倍総理の「施政方針演説」についてです。
目次
安倍総理が施政方針演説
安倍総理は昨日召集された「第193回国会」で施政方針演説を行いました。その内容については、首相官邸のホームページに全文が掲載されており、インターネットにつながる環境さえあれば、だれでも簡単にアクセスできます。
いつも思うのですが、安倍総理は演説が上手く、今回の演説でも非常に興味深い下りが多数出てきます。極左政治家・極左活動家らにとって、このような演説をすることができる政治家が日本の首相であるという状態を、「都合が悪い」と感じることは間違いないでしょう。
折しもちょうど先週土曜日極左活動家らが主体となって、渋谷で「アベシンゾウは総理を辞めろ!」などと叫んで練り歩くデモを行ったそうです。
市民と野党で政権打倒(2017年1月15日付 しんぶん赤旗より)
デモを行ったのがセンター試験の当日だったという事実もそうですが、彼ら極左活動家らには、自分たちの都合を押し付ける以外に、他人に配慮するという発想などはないのでしょう。
安倍政権の対韓外交の失敗
それはさておき、私は安倍政権による外交を、「基本的には」高く評価しています。
「基本的には」、と申し上げる理由は、安倍政権が日本にとっての「潜在的な脅威」を中国一本に絞り、全ての外交目的を「中国の軍事的暴発リスクの封じ込め」に置いているからです。
例えば、通常国会が始まる直前、安倍総理はフィリピン、インドネシア、オーストラリア、ベトナムを歴訪。行く先々で、それこそ「熱烈な」歓迎を受けたのですが(※日本のメディアはほとんど報じていないようですが)、これなども「安倍外交」が多大な成果を上げている証拠でしょう。
ただ、「基本的には」と申し上げる理由は、もう一つあります。それは、安倍政権の外交が、ただ一点において、うまく行っていないからです。それは、「対韓外交」です。
安倍政権は一昨年12月に、韓国の朴槿恵(ぼく・きんけい)政権との間で、「日韓慰安婦合意」を成立させました。この合意は、「慰安婦問題」に対し、日本政府が10億円を拠出し、韓国政府がソウルの日本大使館前に設置された慰安婦像問題の解決に向けて「努力する」ことで、慰安婦問題を「最終的かつ不可逆的に」解決する、というものです。しかし、この合意の中では、「戦時中に日本軍が朝鮮半島で少女20万人を拉致し、戦場に強制連行して性的奴隷として使役した」とされる、朝日新聞社と植村隆と韓国国民と韓国政府による捏造を、一切否定していません。
私は、この「日韓慰安婦合意」だけ切り出してみると、安倍晋三総理大臣と岸田文雄外務大臣は、「短期的な日韓関係の安定」というわずかな外交成果を得るために、過去・現在・未来の全ての日本人の名誉を犠牲にしたと批判されても仕方がないと考えています。
安倍総理がこの「日韓慰安婦合意」の失敗を回復するためには、少なくとも韓国側から「慰安婦合意」を破棄させるだけではなく、この朝日新聞社と植村隆と韓国国民と韓国政府の捏造により日本人の名誉が現在進行形で傷つけられている状態を解消しなければなりません。
安倍晋三、地球儀外交を語る
それはさておき、今回の施政方針演説では、「地球儀を俯瞰する外交」に言及がなされています。
安倍総理は、「自由、民主主義、人権、法の支配といった基本的価値を共有する国々と連携する」と述べた直後に、「ASEAN、豪州、インドといった諸国と手を携える」と述べました。
もちろん、ASEAN諸国の中には、ベトナムやシンガポールのように、民主主義が機能していない国もあります。その意味で、ASEAN全体が日本と「基本的価値」を共有するかどうかと言われると、それは疑問です。ただ、私はASEANと豪州とインドとの連携に言及したこと自体は、高く評価して良いと思います(もっとも、「台湾」に言及していない時点で満点を差し上げることはできませんが…)。
また、安倍総理は演説の中で、ロシアについては「関係改善は、北東アジアの安全保障上も極めて重要」と述べていますが、「基本的価値を共有」する相手だとは言っていません。さらに、韓国については「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」、中国については「平和的発展を歓迎」「戦略的互恵関係」と、いずれも日本とは「基本的価値を共有する国」だとはみなしていないことがよくわかります。北朝鮮に至っては、「対話と圧力」、「行動対行動」という強い調子で、核、ミサイル、拉致問題の包括的解決が課題だと述べています。
安倍総理の発言から近隣国に対する認識を拾っておきましょう(図表)。
図表 安倍総理の認識する近隣国との関係
国 | 表現 |
---|---|
ASEAN、豪州、インド | 基本的価値を共有する国々 |
ロシア | 関係改善は北東アジアの安全保障上も極めて重要 |
韓国 | 戦略的利益を共有する最も重要な隣国 |
中国 | 戦略的互恵関係 |
北朝鮮 | 「対話と圧力」、「行動対行動」 |
安倍外交の課題は韓国と台湾
以上から、私が考える安倍外交の課題とは、韓国と台湾にあります。
基本的に安倍外交は満点に近い
私は、ASEAN、豪州、インドとは日本と価値を共有することができる国々であり(※一部、そうでない国もありますが)、今後さらに関係を強化すべきだと考えています。そして、実際に安倍政権はそのように動いています。
一方、私はロシアについては、あくまでも「対中牽制」や「シベリアの資源開発」という限定的な目的で連携すべき相手だと考えていますが、日本と価値を共有し得る相手ではありませんし、ましてや日本領だった樺太や千島を不法占拠して返さない国です。そのような不法国家と、真の友誼を結ぶことなど、現状では不可能でしょう。私は、昨年12月のロシア・プーチン大統領の訪日については、日本として成果を焦るあまり、過剰な譲歩をしないかと心配していたのですが、対中牽制を行うに十分な成果は上がったと考えています(詳しくは『今回の日露首脳会談は日本にとって大成功』をご参照ください)。その意味で、対露外交についても安倍政権に委ねて問題ないでしょう。
さらに、中国との関係については、「戦略的互恵関係」のヒトコトに尽きます。日本としては、日本経済新聞あたりの過剰な扇動記事に乗せられて中国に進出した多くの日本企業の損失が気になるところではありますが、今後の中国とのおつきあいは、「お互いに利益がある分野に限定する」というスタンスで構わないでしょう。その意味で、私は現在の安倍政権における対中外交に、ほとんど不満はありません。
さらに、北朝鮮に関しては、安倍政権はむしろよくやっていると思います。ただし、日本が憲法第9条第2項という「殺人憲法」に縛られている状況下で、これ以上できることは限られています。北朝鮮問題に関して唯一の解決があるとすれば、さっさと憲法第9条第2項を削除し、自衛隊を日本軍に昇格させたうえで、北朝鮮に日本軍を派遣して金正恩(きん・しょうおん)ら北朝鮮政府幹部らの身柄を拘束し、日本人を全て取り返すことにあります。その意味で、憲法改正が進まない理由は、安倍政権の不作為というよりは私たち日本国民の覚悟が足りない点にある、という言い方もできるかもしれません。
軸足が定まらない対韓外交
以上、私は安倍政権による対アジア外交に、おおむね満足しています。ただし、対韓外交と対台湾外交については、どうも不満が残るのです。
まず、安倍政権の対韓外交は、どうも軸足が定まっていません。
一昨年の慰安婦合意にもかかわらず、また、昨年、日本政府は合意に基づいて10億円を拠出したにも関わらず、韓国政府には慰安婦像を撤去する気配すらないばかりか、却って慰安婦像が世界中で増える始末です。呆れて物も言えません。
これには、もちろん衆愚政治と化した韓国に最大の責任があることは間違いありませんが、韓国政府が「無能だ」ということをわかっていながら、敢えて慰安婦合意を締結した安倍政権にも大きな責任があります。
私は、もはや日本が「日韓友好」を唱える局面は過ぎたと考えています。また、「戦略的利益を共有する最も重要な隣国」という表現についても、改めるべきです。もはや、韓国には日本と「戦略的利益」を共有する資格などありません。
その意味で、対韓外交を巡る軸足のブレは、相変わらず気になるところです。
価値を共有する台湾に言及せよ!
もう一つ、安倍外交に対する不満があるとすれば、日本と基本的な価値を共有し得る相手である台湾に対し、一切の言及がないことです。
安倍総理は東日本大震災追悼記念式典などの場で、かねてより中国と別建てで台湾に言及されてきましたが、国会での施政方針演説では、相変わらず台湾への言及がありません。
しかし、台湾は自由・民主主義が徹底する国であり、また、随一の親日国でもあります。
もっとも、安倍総理が台湾に言及し辛い事情も、ないわけではありません。それは、他ならぬ台湾自身が、自分たちを「中華民国」だと考えているのか、それとも「中国ではない台湾という国だ」と考えているのか、その軸足が定まっていないからです。
ただ、アメリカでトランプ政権が成立した現在、中国が唱える「一つの中国」の原則が揺らぐことは間違いありません。その意味で、どうか安倍総理には、台湾を「国家承認」するためのシミュレーションや準備を、現段階から進めておいていただきたいと思います。
予告:トランプ政権について
さて、話題は変わりまして、日本時間の本日未明より、米国でドナルド・トランプ氏が第45代米国大統領に就任しました。正直に申し上げれば、トランプ氏はビジネスマンとしては優秀かもしれませんが、地政学、軍事などを理解しているようには見えません。ただ、安倍政権としては、日米同盟を「日本に有利な同盟」に作り替える絶好のチャンスを得たのではないかと考えています。また、米国でトランプ政権を生んだ背景にあるのは、米国の有権者の「既存メディア不信」なのかもしれません。その意味では、今年欧州で選挙が相次ぐ中、欧州でも米国と同様の「有権者の反乱」が生じるのか、私は深く注視したいと考えています。
これに関する話題を、明日、当ウェブサイトにて配信します。どうかご期待ください。
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私も覚えている中で1番出来の良い首相だと思います。
安倍ちゃん頑張って~