予定を変更して、本日2本目の記事を配信します。
目次
一つのテーマを「深掘り」する意味
当ウェブサイトはもともと、管理人である私自身が「金融規制専門家」としての立場から、既存のメディアが報じないような「専門的な内容」を執筆することを目的に立ち上げたものです。その意味で、当ウェブサイトで取り上げる記事は、あまり「時事ネタ」に偏り過ぎないようにしたい、というのが正直な気持ちです。
しかし、特にここ数日は大きなニュースが多く、また、これらの出来事に対し、既存メディアの報道が追い付いていないというのが実情でしょう。既存メディアは、新聞だと紙面、テレビだと放送時間の限界もあるので、それも仕方がない側面もあります。そこで、既存メディアが追いかけきれないような特定のテーマについて、当ウェブサイトのような「独立系ビジネス評論サイト」が、徹底的に深掘りするという余地が生じると思うのです。
安倍政権の対韓外交はダメダメ
「大使帰任見送り」報道の続き
ところで、昨日、私は当ウェブサイトから、『大使帰任巡る「毎日誤報」のインパクト』と題した記事を配信しました。配信時間も遅く、かつ、短い記事であるにもかかわらず、いくつかのウェブサイトに転載されているらしく、注目が集まっているようであり、転載をしてくださった方々には深く感謝申し上げます。
さて、本日の1本目の記事では「竹島慰安婦像問題」について触れたのですが、当記事では、再び駐韓大使・駐釜山総領事の一時帰国措置について触れたいと思います。
今回、日本の大使・領事の「一時帰国措置」が発動されるきっかけとなった「釜山慰安婦像設置問題」は、昨年暮れに急浮上したものです。改めて経緯を振り返っておきましょう。
- 12月28日:韓国・釜山市の日本領事館前の公道上に、地元の市民団体が慰安婦像を設置したものの、釜山東区庁は同日、これを強制排除し、撤去・押収した。ところが、慰安婦像撤去直後から、同庁には「業務がマヒするほどの抗議電話」が殺到した
- 12月29日:同庁ホームページには苦情の書き込みが相次ぎ、同日夕方4時頃にはホームページがダウンするという騒ぎに発展した
- 12月30日:同庁は結局、押収したこの慰安婦像を市民団体側に返還し、さらには慰安婦像の設置そのものを許可する方針に転換した
この一連の流れを見る限り、この韓国という国が「民族感情」を重視するあまり、「法治主義」を全く理解していない点を痛感せざるを得ません。
ただ、それと同時に、以前から私がもう一つ強く感じているのは、これに対する日本政府の対抗措置が、「遅すぎて緩すぎる」ことです。まず、12月30日に慰安婦像の設置が許可されてから、日本政府が1月6日に対抗措置を打ち出すまで、1週間も経過しています。
日本では年末・年始休暇期間が長く、一般に官庁や民間企業では、「仕事納め」から「仕事始め」まで1週間前後の休暇に入ります。こうした事情を考えるならば、釜山に慰安婦像が設置されてから、実際に大使らの一時帰国措置が発動されるまで1週間以上の時間を要したことは、仕方がないという側面もあるのかもしれません。
一方、日本政府の対抗措置が緩すぎる点も問題です。菅義偉(すが・よしひで)官房長官が1月6日に発表した対抗措置の内容は、次の4点です。
- 在釜山総領事館職員による釜山市関連行事への参加見合せ
- 長嶺駐韓国大使及び森本在釜山総領事の一時帰国
- 日韓通貨スワップ取極の協議の中断
- 日韓ハイレベル経済協議の延期
この4つの措置の中には、「現在存在している措置の撤廃」(例えば韓国人に対する観光ビザ免除プログラムの凍結、在日韓国人に対する特別永住許可の撤回)は一切含まれていませんし、「日韓通貨スワップ取極の協議の中断」を除けば、いずれも象徴的なものに過ぎず、韓国に「実害」をもたらすものではありません。特に大使や領事の「一時帰国」措置は、あくまでも「一時帰国措置」であって「召還」ではありません。
私は、安倍政権が取った今回の措置については、従前からの「事なかれ主義的外交」から脱却したという意味では評価したいのですが、「実効性のある対韓制裁」とはなっていない点については、強い不満を持っているのです。
疑問点①何に対する抗議なのか?
ところで、昨日も当ウェブサイトで取り上げたとおり、大使らの一時帰国措置は当初予定よりも長引きそうです。昨日時点で複数のメディアが、「安倍政権は駐韓大使らの帰任時期を、当面は見送る方針を固めた」と報じています。この報道については菅官房長官の記者会見などで事実確認が取れた訳ではありませんが、時事、日経を含めた複数のメディアが報じているので、それなりに信憑性はあると考えて良さそうです。
私は、この決定が事実ならば、それは「結果的には」正しいと思います。慰安婦像が撤去されていない状態で大使らを帰任させると、そのことにより韓国側に対し、慰安婦像を巡って「誤ったメッセージ」を与えかねないからです。
ただ、日本政府・安倍政権が発動した今回の一時帰国措置は、あくまでも「釜山の慰安婦像設置」に対する抗議ですが、今回の措置を「釜山の慰安婦像設置への対抗措置として」国民が支持している、と考えるのは正しくありません。
私は、今回の措置に対して国民の圧倒的な支持が集まっている理由は、「釜山の慰安婦像問題そのもの」ではなく、「積年の韓国の日本に対する侮辱行為に対し、堪忍袋の緒が切れた」という点にあると考えています。
それに、万が一、釜山やソウルの慰安婦像が撤去されたときには、日本政府として韓国に過剰な配慮をしなければならなくなる可能性もあります。したがって、今回の措置が「釜山の慰安婦像に対する抗議」だと位置づけることは間違いです。
あくまでも、「4つの措置」が「釜山慰安婦像問題」だけではなく、「釜山の領事館前に慰安婦像の設置を許してしまうほど、韓国政府が不誠実であること」、もっと言えば、一昨年の「日韓慰安婦合意」を韓国側が誠実に履行しないことに対する抗議である、という点については、最低ラインとして保持しておかねばなりません。
そして、韓国が慰安婦像の放置を続けるならば、安倍政権としては「二の矢」「三の矢」を放つべきでしょう。
疑問点②そもそも「慰安婦問題」とは?
もう一つ、私が今回の安倍政権の措置を不十分だと考えている理由は、そもそも「慰安婦問題自体が朝日新聞社と植村隆の捏造記事に基づき、韓国国民と韓国政府がでっち上げた壮大な虚構である」からです。
韓国側が主張する「慰安婦問題」とは、「朝鮮半島で日本軍が組織的に少女20万人を強制徴発し、戦場に連行して性的奴隷にした」とされる、一種の「与太話」ですが、それにしては日本軍の命令書が1枚も残っていませんし、米国が3000万ドルもの国費を掛けて、8年間にわたって行った調査を取りまとめた「IWG報告書」でも、慰安婦問題で戦争犯罪の裏付けがなかったことが明らかにされています。
米政府の慰安婦問題調査で「奴隷化」の証拠発見されず…日本側の主張の強力な後押しに(2014.11.27 05:10付 産経ニュースより)
安倍政権が一昨年12月に韓国と締結した「日韓慰安婦合意」自体、こうした韓国が主張する「虚構」を追認したという意味で、大きな失敗でした。私は、安倍総理の外交手腕を高く評価していますが、それでも日韓関係だけに限定していえば、明らかに間違っている箇所が多いと断言して良いと思います。
余談ですが、私は、以前『慰安婦問題を巡る本当の戦いは始まったばかりだ』で主張したとおり、「慰安婦問題」を次のように定義し直すのが適切だと考えます。
慰安婦問題とは、文筆家の吉田清治の虚偽証言などに基づき、朝日新聞社の記者だった植村隆が朝日新聞に執筆した捏造記事をきっかけに、韓国政府が1990年代に『朝鮮半島で1941年12月8日から1945年8月15日の間に、日本軍が組織的に少女20万人を強制的に拉致し、戦場に連行して性的奴隷にした』とされる虚偽の事実をでっちあげ、韓国政府及び韓国国民が今日に至るまで日本人の名誉を世界中で傷つけている問題である。
慰安婦問題をこのように定義し直せば、日本人が名誉を回復するために、何をしなければならないかは、自ずから明らかになるでしょう(なお、この点についてはまだ論じ足りないので、後日、別稿にて触れたいと思います)。
どうすれば失点を回復できるのか?
では、安倍政権は、どのようにすれば「日韓慰安婦合意」という「失点」を回復することができるのでしょうか?
対韓国:韓国側から「合意破棄」を言わせる
まず、安倍政権には、日本と韓国の関係をきちんと再定義して欲しいと思います。
少なくとも、現状の韓国は、日本と「価値を共有する国」ではありません。日本と「価値を共有する国」であれば、法治主義が徹底されていなければなりません。そして、韓国では法治主義よりも「反日主義」の方が上位に来ます。この時点で、韓国が「日本と同じ価値」の通用する国ではないことを理解しなければなりません。
安倍総理が今年の施政方針演説で、韓国について、「基本的価値を共有する国」という表現を外し、「戦略的価値を共有する最も重要な隣国」と表現するそうですが、私に言わせれば韓国は「戦略的価値すら共有できない単なる隣国」でしょう。
安倍首相、韓国について3年連続で「基本的価値」を除外(2017.01.19 07:41付 ハンギョレ・ニュース日本語版より)
いずれにせよ、一昨年の「日韓慰安婦合意」も、韓国が相手となれば、「必ず反故にされる」という覚悟が必要だったはずです。そして、そうであるならば、岸田文雄外相は、なおさら「当時の軍の関与の下に」などと迂闊な発言をすべきではありませんでした。
ただ、国際合意を締結してしまった以上、「日本から覆す」ことは許されません。また、幸いにして、日本は既に日韓合意に基づく10億円の出資の履行を終えています。そこで、日本が対韓関係において、これからやらねばならないことは、
「国際社会において、韓国を名指しして、日韓合意の誠実な履行を一方的に求め続ける」
ことに尽きます。具体的には慰安婦像の撤去(またはその努力)ですが、2国間関係に外国を巻き込んで大騒ぎするという、韓国の「常套手段」のマネをすれば良いのです。
その際、大使らの一時帰国措置は継続しなければなりません。また、追加制裁(竹島領有権のICJ提訴を含む)のパッケージを、現在から準備しておくべきでしょう。
当然、最終的な目標は、韓国側から「慰安婦合意」の破棄を言わせることです。「日韓慰安婦合意」は日本人の名誉を回復するためにも破棄されなければなりませんが、「感情だけで突っ走っている」という現在の韓国の姿勢をうまく利用し、「韓国側からの日韓合意の破棄」を、何としても達成しなければなりません。
対米関係:米韓同盟を終わらせる
一方、日本が韓国との関係を「清算」できない最大の要因は、米韓同盟にあります。
ただ、米国では、日本時間の明日、トランプ政権が発足します。日本としては、このチャンスを逃すべきではありません。
もちろん、米韓同盟には「北朝鮮」という軍事的リスクに対処するという性格がありますが、北朝鮮の軍事的リスク自体、韓国を脅すために、中国が仕掛けているという側面もあります。逆説的ですが、米韓同盟を破棄すれば、米国にとっては韓国を防衛する責任から解放されますし、また、軍事情報が中国に流されるリスクも減少します。
ドナルド・トランプ次期大統領は、北朝鮮の最高指導者である金正恩(きん・しょうおん)との「首脳会談」を仕掛けるかもしれません。もちろん、日本人拉致問題が解決していない段階で、米朝国交正常化が実現することは、日本にとっては非常に困る話です。しかし、北朝鮮による日本人拉致問題は、違った方法で解決することができます(後述)。
安倍政権が、口先だけでは「日韓合意を守れ」と言いつつ、裏で米国に対し「朝鮮半島から手を引け」と勧誘し、「日韓慰安婦合意破棄」、「THAAD配備計画破棄」、「日韓GSOMIA破棄」の「3点セット」で米韓同盟破棄を実現するのが、一番現実的でしょう。
安倍政権は「憲法改正」から逃げるな!
ただ、私が一番申し上げたいことがあります。それは、
安倍政権は「憲法改正」から逃げるな!
という点です。まずは憲法第9条第2項だけで構いません。「日本国憲法」と名乗りながら、日本国民を守ることもできない「殺人条項」である憲法第9条第2項を、可及的速やかに削除して欲しいのです。
北朝鮮当局による日本人拉致は、北朝鮮政府による犯罪であり、到底許されません。しかし、それを許したのは日本国憲法第9条第2項の存在であり、その存在を長年放置してきたのは、歴代の政権、そして私たち日本国民自身でもあります。
米韓同盟が破棄されれば、対馬海峡が「国防の最前線」となります。当然、韓国が不法占拠する竹島についても、賠償金とともに、日本に返してもらわなければなりません。
その意味で、最終的には憲法第9条第2項の撤廃により、日本が攻め込まれたときにも「ちゃんと戦争ができる国にする」ための、覚悟を持つことが、私たち日本国民には求められているのです。
対韓関係では安倍政権を評価しない
私は、少なくともこれまでの対韓関係を巡っては安倍政権を評価しません。
「日韓慰安婦合意」は、過去・現在・未来に及ぶ、全ての日本人の名誉を傷つけた合意であり、この合意を存在させている限り、私が対韓関係を巡って安倍政権を評価することはあり得ないでしょう。
安倍政権が日本国民の名誉を売り渡した、2015年12月の「日韓慰安婦合意」を、「災い転じて福となす」に持ち込むことができるのかどうか。私は、この点をじっくりと見極めたいと思います。