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米軍駐留経費負担から見える日本の防衛

本日は、「防衛予算」という、一見するとマニアックなデータを通じて、日本が米国に対して、どれだけ大きな貢献をしているかという観点を紹介したいと思います。折しも今年、日本の隣国では大統領選挙が行われますが、日本の防衛について考える良い機会ではないでしょうか?

日本の駐留経費負担は70%?

仕事始めから多難な「新宿会計士」です。

専門書の執筆と業界紙への寄稿については、「自分の仕事」としてきちんと認識していたのですが、年初のセミナー案内資料作成の仕事を完全に失念しており(!)、年明け早々、大慌てで作成するという大失態を演じてしまいました。

さて、そんなおっちょこちょいな管理人のことはどうでも良いとして(笑)、本日は、「きちんとした統計を見ることの大切さ」について議論したいと思います。

韓国大統領候補「韓国の駐留経費負担は77%」

私たちは人間ですから、きちんとした統計・根拠も示さずに、その場の雰囲気だけで話をしてしまうことがあります。そして、我々のような一般人なら許されることでも、たとえば「大統領の有力候補」ともあろう人間が、迂闊なことを口にすると、思わぬ波紋が生じます。そのことを痛感させる記事が、年初の「あのネタ新聞」に掲載されました。

韓国大統領選の有力候補「在韓米軍駐留負担、日本並の水準まで下げるべき」(2017年01月04日06時45分付 中央日報日本語版より)

中央日報日本語版は、韓国城南(じょうなん)市の市長で、次期大統領選の「有力候補」でもあるとされる李在明(り・ざいみん)氏が

韓国は米軍に過度に従属的な態度を取っていて、防衛費分担金を77%も出している。だが、ドイツは18%、日本は50%台だ」とし「駐留費の負担を日本並の水準に合わせべきではないかと考える

と発言した、と伝えています(誤植含め原文ママ)。

この情報源は不明確ですが、韓国が米軍の防衛費を77%も拠出していて、日本が50%台にあるとは、私も初めて聞きました。しかし、これは本当でしょうか?

結論から言えば、「真偽は不明」です。ただ、それと同時に、李市長が駐韓米軍の防衛費負担割合を「知り得る立場」にあるとは思えません。本日は、これについて「きちんと公表されている情報」をベースに、事実関係を推定してみたいと思います。

米国防総省「2004年統計概要」

少し古い統計ですが、米国防総省(U.S. Department of Defense, DoD)は、「2004年一般国防への同盟国からの貢献に関する統計概要」と称する資料を公表しています。

2004 STATISTICAL COMPENDIUM on ALLIED CONTRIBUTIONS TO THE COMMON DEFENSE(米国防総省ウェブサイトより)

これによると、米国の同盟国の、2013年における駐留経費負担額のうち、直接貢献(Direct Support)、間接貢献(Indirect Support)、負担率(U.S. Stationing Cost Offset Percentage)については、負担額、負担率ともに日本が諸外国と比べて群を抜いて高いことがわかります(図表1図表2。ただし、金額単位は百万ドル)。

図表1 米国の同盟国の貢献額(負担率上位順)
国名 直接貢献 間接貢献 合計 負担率
ノルウェー 10.32 0.00 10.32 83.50%
日本 3,228.43 1,182.92 4,411.34 74.50%
サウジアラビア 3.64 49.73 53.38 64.80%
カタール 0.00 81.26 81.26 61.20%
ルクセンブルク 0.96 18.29 19.25 60.30%
クウェート 252.98 0.00 252.98 58.00%
スペイン 0.00 127.26 127.26 57.90%
トルコ 0.00 116.86 116.86 54.20%
イタリア 3.02 363.52 366.55 41.00%
韓国 486.31 356.50 842.81 40.00%
ドイツ 28.70 1,535.22 1,563.93 32.60%
ギリシャ 2.03 15.66 17.69 32.00%
英国 27.50 210.96 238.46 27.10%
ベルギー 2.21 15.56 17.78 24.00%
ポルトガル 1.65 0.82 2.47 3.60%
デンマーク 0.03 0.09 0.12 0.60%
図表2 米国の同盟国の貢献額(合計金額順)
国名 直接貢献 間接貢献 合計 負担率
日本 3,228.43 1,182.92 4,411.34 74.50%
ドイツ 28.70 1,535.22 1,563.93 32.60%
韓国 486.31 356.50 842.81 40.00%
イタリア 3.02 363.52 366.55 41.00%
クウェート 252.98 0.00 252.98 58.00%
英国 27.50 210.96 238.46 27.10%
UAE 86.95 130.42 217.37 N/A
スペイン 0.00 127.26 127.26 57.90%
トルコ 0.00 116.86 116.86 54.20%
カタール 0.00 81.26 81.26 61.20%
バーレーン 8.20 45.20 53.40 N/A
サウジアラビア 3.64 49.73 53.38 64.80%
ルクセンブルク 0.96 18.29 19.25 60.30%
ベルギー 2.21 15.56 17.78 24.00%
ギリシャ 2.03 15.66 17.69 32.00%
ノルウェー 10.32 0.00 10.32 83.50%
ハンガリー 0.00 3.51 3.51 N/A
ポルトガル 1.65 0.82 2.47 3.60%
デンマーク 0.03 0.09 0.12 0.60%

この「米国の同盟国の駐留経費に対する貢献額」に関する統計は、残念ながら現時点で最新のものは公表されていません。ただ、2003年時点で日本が米軍の駐留経費の74.5%を負担していたというのは、米国側が公表している事実である、という点は間違いないでしょう。

日本側の経費負担の推移

一方、防衛省・自衛隊は、米軍の駐留経費について公表しており、この推移は、図表3の通りです。

図表3 在日米軍駐留経費の推移

(【出所】防衛省・自衛隊ウェブサイト『在日米軍駐留経費負担の推移』、および『平成28年度予算』、『平成27年度予算』、『平成26年度予算』、『平成25年度予算』、『平成24年度予算』、『平成23年度予算』、『平成22年度予算』。なお、「SACO関係経費」、「米軍再編関係経費」、「在日米軍の駐留に関連するその他経費」については、防衛省が2009年(平成21年)以前のデータを公表していないため不明)

日本側の「米軍駐留経費負担」とは、直接的には「在日米軍駐留経費負担」を意味しますが、広い意味では「SACO」(Special Action Committee on Okinawa, 沖縄に関する特別行動委員会)や「米軍再編関係経費」、さらには周辺対策や施設の借料など(「在日米軍の駐留に関連するその他経費」)までが含まれます。

防衛省のデータ公表が不十分ですが、直接的な「在日米軍駐留経費負担」は2003年時点と比べて横ばいからやや減少しているものの、その他の駐留経費まで含めれば、必ずしも「減少している」とはいえません。

米国の国防支出

では、米国の国防予算(National Defense)はどのように推移しているのでしょうか?

これについては、近年、2003年と比べて随分と「水膨れ」しています(図表4)。

図表4 米国の国防予算の推移

(【出所】米国政府出版局ウェブサイト。グラフの縦軸の単位は百万ドル。ただし2016年以降のデータについては「予測」estimate)

ただ、現在の米国の「国防費」が2003年と比べて増大している最大の要因は、イラク戦などの対外戦費負担が増えたためであると考えられるため(著者私見)、単純に米軍が世界で駐留する部隊を増やした、というわけではなさそうです。

結論:韓国大統領候補者の主張は「デタラメ」?

以上の議論をまとめます。客観的事実は次の4点です。

  1. 2003年時点で日本の負担している駐留経費は約44億ドルと、ドイツ(約16億ドル)や韓国(約8億ドル)、さらにはイタリア(約4億ドル)を遥かに上回っている
  2. 米軍の駐留経費の負担率は74.5%であり、これはノルウェー(83.50%)に次いで高い
  3. 日本側の駐留経費負担はやや低下傾向にあるが、2003年と比べるとほぼ横ばいである
  4. 米国の国防費は2003年と比べ倍増している

このうち、「4.」については、イラク戦などの対外戦役に伴うものであると考えられるため、米軍部隊の「対外駐留コスト」自体が増えているとは考え辛いのが実情です。よって、現在でも日本の米軍駐留経費負担額は40~50億ドル、経費負担率も50~70%で横ばいとなっていると考えられます。

米国にとっての「同盟国」の意味

米国にとって最も重要な国は日本

よく勘違いする人がいるのですが、米軍は「日本を守ることだけ」を目的として、日本に駐留しているのではありません。もちろん、日本にとっては米軍が駐留しているから、外国(中国や北朝鮮)から攻め込まれないという側面はあるでしょう。しかし、日本は米軍にとって、重要な拠点である、という側面が強いのです。

日本は世界で最高水準の技術を抱える先進国であり、日本の基地では米軍の機体の整備なども行われています。

日本は確かに太平洋戦争で米国と開戦し、敗戦しましたが、焼け野原になった日本は力強い復興を遂げ、いまや世界第三位の経済大国であり、かつ、立派な「自由民主主義・法治主義国家」です。日本では法による支配が貫徹しており、私が政府を批判したところで、拘束されることはありません。

日本とは似て非なる韓国

これに対して、韓国は法制度こそ日本と同じ「自由民主主義・法治主義国家」ですが、その実態は「情治主義」です。現在の韓国は、猛烈な反日を「国是」に掲げていますが、それだけではありません。伝統的に中国の属国だったという事情もあり、「米国の同盟国」でありながら「中国と内通する」という、ある意味で非常に危険な国です。

米国としては、第二次世界大戦後の1945年に38度線の南部を手に入れ、その3年後に独立した南朝鮮が北朝鮮と「朝鮮戦争」を起こしてしまい、仕方なしにそれ以来、朝鮮半島南部に駐留しているという側面が強いのです。

アチソン・ラインに学べ!

日本には、「日韓友好関係の維持こそが大事だ」と考える人が多いことは事実です。

私自身も、もし近隣国と友好関係を維持し、ともに手を携えて未来に向けて発展することができるなら、それは素晴らしいことだと思います。しかし、現実はそうではありません。

国が崩壊の直前にあるという状況の中でも、慰安婦像などを通じて日本に敵対することだけはしっかりと忘れない―。そんな国が、日本の隣にあるという事実を、私たち日本人は共有しなければなりません。

その意味で、私は「アチソン・ライン」に学ぶことが必要だと思います。端的に言えば、日本は対馬海峡を「国防の最前線にする」、という考え方です。

確かに、対馬から最短で50km未満の「日本と目と鼻の先」にある釜山に中国海軍の船舶が出入りするようになることは脅威です。しかし、日本を貶めるような隣国が、表面上は日本の友好国を装い続けること自体、もっと大きな日本の脅威なのです。

折しも、韓国では今年、大統領選が行われます(早ければ3月、遅くとも12月)。次の韓国大統領が誰になるにせよ、朴槿恵(ぼく・きんけい)大統領よりもさらに先鋭的な反日政府が登場することは、ほぼ間違いありません。その意味でも、今年は日本人が「アチソン・ライン」を再認識する、良い機会なのではないでしょうか?

新宿会計士: